交換レンズレビュー
SIGMA 500mm F5.6 DG DN OS | Sports
飛行機・鉄道・野鳥など、“手持ち撮影できる超望遠”の実力を体感
2024年3月27日 07:00
製品発表時から注目度が高く、CP+2024の同社ブースでも多くの来場者から関心を集めていたフルサイズ対応・ミラーレスカメラ専用の超望遠単焦点レンズ「SIGMA 500mm F5.6 DG DN OS | Sports」が3月14日(木)に発売された。
超望遠レンズだが、コンパクトで軽量。さらにクリアな描写が得られると謳う本モデルは、発売後間もなく販売店では入荷待ち状態になっている。対応マウントにはソニーE、Lマウント用が用意されている。
外観・操作性
ソニーEマウント用の場合、質量が1,365g、外形寸法はφ107.6mm×長さ236.6mmとなっている。
レンズ構成はFLDガラス3枚、SLDガラス2枚を含む14群20枚。レンズ前方に大口径の特殊低分散ガラスを複数枚採用し、レンズ構成をコンパクト化しているという。フィルターサイズは95mm。
レンズ各部を見てみると、レンズ前方にAFロックボタンが3カ所あり、縦/横位置のいずれでも押しやすい場所に設置されている。
AFロックボタンに続いて絞りリングを搭載しており、A(オート)とF5.6からF32までの絞り値が刻まれている。その横には絞りリングクリックスイッチを用意。絞りリングをまわした時のクリック感をなくすことが可能で、動画撮影時には効果的だ。また逆サイドには絞りリングの切り替えロックスイッチがある。
スイッチ部は、上からAF/MFスイッチ、フォーカスリミッタースイッチ(FULL、10m~∞、3.2m~10m)、手ブレ補正(OS)スイッチ、カスタムモードスイッチとなっている。
三脚座は360°回転可能で、固定ノブで止めることができる。アルカスイス互換形状になっているほか、着脱も可能。
鏡筒部には発売された年の下3桁が刻まれている。このレンズは2024年発売なので、「024」が刻まれている。
かぶせ式のフードも付属している。ロックねじで確実に固定できるのは、超望遠レンズにはありがたい。
画質
軽量、コンパクトな超望遠レンズなので、動きが速い飛行機、鉄道、野鳥の撮影を試みた。全体を通して、絞り開放から隅々まで、高い描写力を持っていると感じた。
下の写真は羽田空港を離陸する飛行機。周辺光量補正はカメラ側の設定でオートにしているが、青空を背景にすると絞り開放のF5.6では四隅で若干周辺光量が落ちている感じがした。
F8まで絞れば、周辺光量落ちが少なくなってくる。
絞りF5.6で撮影。空の隅に周辺光量落ちが見られる。
絞りF8で撮影。背景の空に若干周辺光量落ちが見られる。
絞りF11で撮影。この辺りまで絞ればほとんど周辺光量落ちが気にならない。
東北新幹線福島駅を出発する新幹線。F8で撮影しているが、画面の隅々まで鮮明な描写が得られた。
こちらはF5.6で撮影した写真。絞り開放でも安心して使える描写力を備えている。
福島駅を出発した山形新幹線のつばさ号が、福島と山形の県境にあたる登坂にさしかかる。直線距離で約6km離れた信夫山の烏ヶ崎展望デッキから撮影した。絞り開放でも風景の隅々まで優れた描写力を持っている。
桜の木の下から枝の隙間を見つけてヒヨドリを狙った。ハイライトが飛ばない程度に明るく露出補正しながら撮影した。ヒヨドリの目の描写力が際立った。
小鳥のツグミがエサを求めて動きまわっていた。警戒心が強い小鳥にはなかなか近づけないので、APS-Cサイズにクロップし、750mm相当で撮影した。
小鳥のツグミが木の実を食べているシーンを撮影。こちらもAPS-Cクロップの750mm相当で撮影した。ツグミに気が付かれないように木の裏側に身を潜めて撮影したが、目線がこちらを向いている気がする。
小鳥のヤマガラが現れた。ガラスの窓越しに撮影したが、描写力は悪くなかった。
福島市の阿武隈川に飛来している白鳥。白鳥は水中に顔を突っ込み、何かを探している様子だった。くちばしから落ちる水滴や顔に付いた水滴が美しい。
AF性能
AFはリニアモーターHLA(High-response Linear Actuator)を採用し、高速で正確なピント合わせが可能になっている。
α1のトラッキングAFにも対応しているので飛行機、鉄道、野鳥にも素早く反応して狙った瞬間を撮ることができた。
下の写真は高速で通過する山形新幹線「つばさ」の新型車両。AF精度も高く、狙った運転席部分にピントを合わせられた。
3月になり雪が降る東北。貨物列車が雪にも動じず力強い走りで通過していった。
機関車に付いた雪やつらら、線路に積もった雪などから寒さが伝わってくる。
実はカメラを構えてない時に来た貨物列車だった。慌てて撮影したにも関わらず高速AFのおかげで機関車へのピントのつかみも良く、迫力あるカットが撮れた。
カーブを通過する東京モノレールの10000形。ピントはトラッキングAFに任せて構図を意識しながらシャッターを押した。
羽田空港を離陸する飛行機を、トラッキングAFで機首部分を追尾させてシャッターを押した。
α1は鳥の瞳AFにも対応しているのでトラッキングAFを使い撮影。カメラのほうに向かって着地してくるオナガガモの瞳をしっかり認識してピントを合わせてくれた。
軽量なレンズなので、オナガガモが飛んでいるところを見つけてからでも、さっとレンズを向けることができた。そしてファインダー内でとらえてからも追いかけやすかった。
手ブレ補正
本モデルには最新の手ブレ補正アルゴリズム「OS2」が搭載され、5段分の手ブレ補正効果を備えている。手ブレ補正のOSモードスイッチには一般的な撮影に適したモード1と、流し撮りに適したモード2、OFF機能の3つがある。
まずはOSモード1で電子シャッターを使い、手ブレの限界をチェック。
下の写真は、夜の羽田空港で約1km先にある第3ターミナルを手持ちで撮影した。
シャッタースピード1/125秒まではブレが発生しなかった。手ブレが抑えられた確率は1/100秒で80%、1/60秒で50%、1/40秒で20%、1/25秒で10%となり、1/20秒以下ではブレを止めることができなかった。
手ブレ補正OFFでは1/500秒まではブレを抑えられたが、1/60秒で10%となり、1/50秒以下ではブレを止めることができなかった。
羽田空港第1ターミナルの駐機場からプッシュバックされる飛行機。私にとっての手ブレしない限界、シャッタースピード1/25秒で撮影した。
OSモード2は斜め方向からの流し撮りでも効果を損なわないとのことで、東京モノレールの10000形車両を斜めから流し撮りした。違和感なく先頭車両を追いかけることができた。
東急新横浜線開業1周年記念の、新幹線をイメージしたラッピングで走る東急電鉄3020系車両を流し撮り。
逆光耐性
本モデルにはスーパーマルチレイヤーコートを採用しており、逆光時などのフレアやゴーストの発生を抑えている。
下の写真は、薄雲に入った太陽を撮影した。電子シャッターの露出をコントロールすることで、日中でもNDフィルターなどを入れずに太陽を撮ることができた。
薄雲に入った夕日をバックに飛行機が着陸してくるシーンも、入射光の影響がなくコントラストも良く写った。
羽田空港を離陸した飛行機は、大きく左旋回して太陽と重なり西へ向かって行った。フレアやゴーストは最小限に抑えられていた。
太陽光が川面にキラキラと反射して、肉眼ではまぶしくて見えない状況だったが、撮影してみるとAFも反応して白鳥が綺麗に写し出された。
桜の木にとまっていたヒヨドリを逆光で狙ってみた。枝の間から太陽光が差し込んでいる状況だった。少々フレアやゴーストが発生したが、ヒヨドリの姿が消えるほどの影響は出なかった。
まとめ
本モデルは軽量でコンパクトなこともあり、超望遠レンズでありながら今回はすべてのシーンで手持ち撮影した。特に飛行機、野鳥が飛んでいるシーンの撮影では、レンズの重さを感じず楽に追いかけることができた。
また、絞り開放から高い描写力を持っているほか、シャッター速度5段分という高い手ブレ補正機能を兼ね備えているのも良い点だ。
手ブレ補正OFFでは構図が不安定になることもあったが、ONにすることで水平も取りやすく、超望遠レンズだということを感じさせない安定性を感じた。
1点気になったのは、テレコンバーター(1.4倍、2倍)がLマウント用レンズにしか用意されていないことだった。
今回は、ソニーEマウント機「α1」を使用したが、クロップ機能を使うことで、開放F値が変わることなく1.5倍の750mm相当で撮影できた。小鳥の撮影などにおいては、Eマウント用でもこういった運用は有効だろう。
そのほか、屋外撮影ではありがたい防塵防滴構造を採用した点や、逆光耐性に優れている点など、良い手ごたえを感じたレンズだった。