交換レンズレビュー
NIKKOR Z 180-600mm f/5.6-6.3 VR
軽量ボディで幅広い焦点域をカバー コスパの良さも魅力の超望遠ズームレンズ
2023年8月28日 07:00
ニコン Z マウントの「NIKKOR Z 180-600mm f/5.6-6.3 VR」が発売前から人気を集めている。
180から600mmの焦点距離を1本のズームレンズでカバーし、従来の一眼レフカメラ用レンズの「AF-S NIKKOR 200-500mm f/5.6E ED VR」より軽量化。また、インターナルズーム機構により、ズームをしてもレンズ全長の伸縮がなく、動く被写体にも安定したズーム撮影が期待できる。
各部解説
レンズ構成は17群25枚で、EDレンズ6枚、非球面レンズ1枚を使用。最前面のレンズは汚れが付着しにくく、付着しても簡単に拭き取れるフッ素コートが施されている。レンズ本体の全長(フードなし)は315.5mm、質量が2,140g(三脚座込み)。
レンズ先端から各部を見てみると、フード取り付け部と95mm径のキャップ・フィルター取り付け部、大きなラバーグリップのあとにレンズファンクションボタンを4か所配置。続いて、ズームリング、コントロールリング、三脚座、スイッチ部になっている。
スイッチ部は上から、フォーカスモード切替、撮影距離範囲切替の2つのみ。最短撮影距離はワイド端で1.3m〜テレ端になると2.4mになる。
180mmから600mmまでズームリングの回転角は70度。そのためテレ端からワイド端まで素早いズーミングを可能にする。
レンズフードはバヨネット式で、でっぱりがないロック付きになっている。
三脚座には太ネジと細ネジ穴を装備。三脚座リング部分には左右2か所にレンズストラップを付ける吊り金具がついている。三脚座リング(185g)を外すことでレンズ質量が1,995gになる。
コントロールリングのデフォルトは「フォーカスリング」に設定されている。その他に「絞り」「露出補正」「ISO感度」「設定なし」が選べる。
オートフォーカス使用中でもフォーカスリングをまわせば、自動でマニュアルフォーカスに切り替わる。シャッターボタンやAF-ONボタンの押し直しでオートフォーカスが復帰する。
レンズファンクションボタンのデフォルト設定はAFロックになっている。このボタンには割り当てられる機能がたくさんあるので、撮影状況に合わせて切り替えたい。機能を割り当てないこともできる。
ボディとのバランス/操作性/画質
飛行機撮影でのカメラ設定は、フォーカスモード=コンティニュアスAFサーボ、AFエリアモード=オートエリアAF、被写体検出設定=飛行機を選択。ファインダー内で飛行機をとらえると、AFフレーム枠がコクピットの窓付近をとらえてAF追尾してくれる。あとは構図を考えてシャッターボタンを押すことに専念するだけだ。
今回の撮影はZ 8で行ったが、構えたときのカメラとレンズとの重量バランスが良い。ズーミングもスムーズで、同じ飛行機で焦点距離を素早く変えながら、いろいろな構図で撮影してみた。ズームしても前玉が繰り出さないインターナルズーム機構なのも、バランスの良さにつながっているのだろう。
絞り開放のF6.3でも画質は良く、F8まで絞ればさらにシャープさが増す印象だ。また、青空を背景にしたときの周辺光量低下も、絞り開放で気になることはなかった。
なお連写中、急にズームするとピントが外れることがあったが、ピントの戻りは速かった。
フレア/ゴースト
本レンズには「ナノクリスタルコート」「アルネオコート」といった、上位レンズで採用されている特殊なレンズコーティングが施されていない。ただし、逆光や強いライトが写りこんだ時でも、フレアやゴーストは軽減されていると感じた。
5.5段分の手ブレ補正
本レンズには手ブレ補正のON/OFF切替スイッチがなく、ボディ側でコントロールする。
手ブレ補正モードは、静止した被写体を撮る時に補正効果が高い「ノーマル」、動きの変化が激しい被写体に適した「スポーツ」、そして「手ブレ補正なし」が選択できる。今回はすべて「スポーツ」設定で撮影した。
600mmの焦点距離で、速いシャッタースピードから1/3段ずつ落として撮影してみた。1/25秒までは手ブレする確率が低く、効果のほどが感じられた。
流し撮りにも手ブレ補正の効果がある。「ノーマル」「スポーツ」の設定でレンズを大きく振ると、縦方向の手ブレだけが補正されるためだ。流し撮り中のファインダー内の映像も滑らかで、被写体を追いやすかった。
AF性能
鉄道撮影でも試してみた。カメラ設定は飛行機とほぼ同じだが、被写体検出設定に鉄道がないため「乗り物」を選択している。
向かってくる新幹線にレンズを向けると、AFフレームは先頭部をとらえて追尾してくれた。また、STM(ステッピングモーター)の採用が効いているのか、被写体がフレームアウトするまで高速かつ静粛なピント合わせが続いた。
DXクロップ
「Z 8」の撮像範囲設定を「DXクロップ」にすることで、1.5倍の焦点距離相当の画角で撮影可能。記録画素数は約4,571万から約1,936万になるが、600mm以上の望遠画角が欲しい時に、エクステンダーを入れなくても望遠効果が得られる便利な機能だ。
本レンズのレンズファンクションボタンに「FX/DX切り替え」を割り当てることで、ボタン一つで600mm←→900mm(テレ端の場合)へと瞬時に切り替えられる。
なお「DXクロップ警告表示」をオンにしておくことで、DXクロップ状態であることがファインダー右上のアイコンで確認できる。フルサイズへの戻し忘れを防ぐのに役立つだろう。
撮影を終えて
光学性能を追求したS-Lineシリーズのレンズではないが、絞り開放から画質は良く、AF性能も優れている。
また、素早い操作性や軽量化による機動力の高さは、飛行機、鉄道はもちろんスポーツなどの撮影にも適していると感じた。5.5段分の手ブレ補正の効果もあり、今回すべての撮影で手持ち撮影ができた。
ちなみにテレコンバーターの「Z TELECONVERTER TC-1.4x」の装着で252-840mm F8.0-9.0、「Z TELECONVERTER TC-2.0x」で360-1,200mm F11-13」のズームレンズとしても使える。より広範囲での撮影が可能になるだろう。
ニコン公式オンラインショップでの直販価格は24万9,700円(税込)。幅広い焦点距離を持つ超望遠ズームレンズとしては価格的にも魅力があると感じた。