コーワPROMINARレンズ リレーレビュー

星景・天体写真編:星降る夜の美しさを再現、見事な解像力

シャープな超望遠システム「PROMINAR 500mm F5.6 FL」も登場

これまで建築写真、テーブルフォト、旅フォトと続いた「コーワPROMINARレンズ リレーレビュー」。今回はいよいよ、レンズの性能が露わになる星空写真にチャレンジします。撮影したのは当サイトでもお馴染みの飯島裕さんです。

マイクロフォーサーズ用のPROMINARレンズに加え、後半では高画質なことで知られるテレフォトレンズ、「PROMINAR 500mm F5.6 FL」も登場します。(編集部)

左からKOWA PROMINAR 8.5mm F2.8、KOWA PROMINAR 12mm F1.8、KOWA PROMINAR 25mm F1.8(撮影:桃井一至)

コーワPROMINARレンズ(マイクロフォーサーズ用)とは……

古いカメラファンなら名前を聞いたことがある「コーワPROMINARレンズ」が、マイクロフォーサーズ用の単焦点MFレンズで復活。往年のPROMINARの流れをくむ興和光学株式会社が設計・製造するだけあり、オールドファンも納得の見た目と描写力が、レンズマニアの間で話題となっています。

ラインナップは、KOWA PROMINAR 8.5mm F2.8、KOWA PROMINAR 12mm F1.8、KOWA PROMINAR 25mm F1.8の3製品。いずれもブラック、シルバー、グリーンをラインナップする。詳細はこちらのページで。

今回はテレフォトレンズのPROMINAR 500mm F5.6 FLも参戦。色収差を低減するため、フローライト・クリスタル(蛍石)やXD(eXtra low Dispersion)レンズを奢った超望遠レンズだ。マウントアダプターを変えることで、350mm、500mm、850mmの3種類に焦点距離を変化させられるのも特徴。

3本とも良好な画質・操作性。周辺光量にも余裕が

暖冬でなかなかスッキリ晴れてくれないこの冬だが、3本のPROMINAR マイクロフォーサーズレンズと、テレフォトレンズのPROMINAR 500mm F5.6 FLを携えて星空撮影に出かけた。

マイクロフォーサーズ用の3本は、8.5mm F2.8、12mm F1.8、25mm F1.8。いずれも星空撮影に適した明るいレンズだ。8.5mmと12mmは大きくて効果的な樹脂製花型フード、25mmは金属製のネジ込みフードとなっている。

PROMINARはMFレンズだが、星空撮影は基本的に露出もピント合わせもマニュアルなのでこの点はまったく問題無い。というよりも、むしろ金属製ピントリングのトルク感や滑らか操作感が微妙な星のピント合わせには最適で、いずれのレンズもライブビューの拡大MFでピントのピークがたいへんつかみやすい。ピントリングの滑り止めの刻みも深くて指がかりがよく、厚い手袋をしていても微妙な操作が快適だ。

◇   ◇   ◇

まずは25mm F1.8の明るさを活かした星景撮影。25mmの画角は、ひとつの星座に注目するような画面構成にちょうどいい。F1.8という明るさを活かして13秒という短時間露出、オリオンが東の空に駆け上ってくるところを写し止めてみた。

PROMINARマイクロフォーサーズレンズはいずれも周辺光量が豊富。コントラストを高めることの多い星景撮影でも、絞り開放で気になるほどの落ち込みは見られない。

KOWA PROMINAR 25mm F1.8 / OLYMPUS OM-D E-M5 MarkII / F1.8 / 13秒 / ISO3200 / LEEソフトNo.3フィルター使用

同じく25mm F1.8で、オリオン座とシリウスを追尾撮影してみた。絞り開放だと輝星に青にじみが見えるものの、画面の大部分はシャープな星像。さすがに周辺部の星が三角形になるが、F1.8にしては収差が少なく、星のような光源でない被写体であれば絞り開放でも安心して使えるだろう。

F2.8に絞り込めば、画面のほぼ全域がとても鋭い星像となる。冬の天の川に散らばる細かな星ぼしの描写がとても気持ちいい。

KOWA PROMINAR 25mm F1.8 / OLYMPUS OM-D E-M10 / F2.8 / 2分 / ISO1600 / LEEソフトNo.3フィルター使用 / ビクセンポラリエで追尾撮影

八ヶ岳に沈む星ぼしをOM-D E-M5 MarkIIのライブコンポジットで撮影してみた。星の光跡の一本一本がたいへんシャープに描き出されている。撮影中に東の空に昇ってきた下弦の月の光が山肌を赤く染めてくれた。

KOWA PROMINAR 25mm F1.8 / OLYMPUS OM-D E-M5 MarkII / F2.8 / ライブコンポジット40秒×37コマ/ ISO1600 / LEEソフトNo.3フィルター使用

12mm(35mm判換算で24mm相当)の画角には「冬のダイヤモンド」がピッタリ収まる。冬のダイヤモンドとは、シリウス・リゲル・アルデバラン・カペラ・ポルックス・プロキオンの6個の一等星が形づくる大きな六角形のこと。その中を天の川が流れている。ISO1600でたっぷり4分の露出をかけ、淡い冬の天の川を強調する処理をしてみた。

このレンズもF1.8という大口径ながら優れた星像で、F2.8では25mm同様の鋭い星像を画面のほぼ全面で結んでくれている。

KOWA PROMINAR 12mm F1.8 / OLYMPUS OM-D E-M5 MarkII / F2.8 / 4分 / ISO1600 / LEEソフトNo.3フィルター使用 / TOAST Technology TP-2で追尾撮影

北西の空に傾いたカシオペア座からペルセウス座にかけての天の川。これもISO1600で4分露出し、天の川の繊細な流れを見せるために、かなり強力なコントラスト強調をしている。周辺光量が豊富で電子補正なしでも高い光学性能で撮れるPROMINARマイクロフォーサーズレンズの画は、処理もしやすくありがたい。

星空に緑と赤っぽい色のカブリが見られるが、これは大気の分子が発光する「大気光」だ。画面左下にはアンドロメダ銀河M31とさんかく座銀河M33がハッキリ写っている。

KOWA PROMINAR 12mm F1.8 / OLYMPUS OM-D E-M5 MarkII / F2.8 / 4分 / ISO1600 / LEEソフトNo.3フィルター使用 / TOAST-Technology TP-2で追尾撮影

月明かりの空を行く旅客機の飛行機雲を、絞り開放の2秒露出で写し止めた。ゴーストやフレアの少ない単焦点レンズは画面内に強力な光源があっても、そのような障害をほとんど気にすることなく自由に構図を決めることができる。

KOWA PROMINAR 12mm F1.8 / OLYMPUS OM-D E-M5 MarkII / F1.8 / 2秒 / ISO3200

北極星を中心に巡る日周運動の光跡。OM-D E-M5 MarkIIで3時間のライブコンポジット撮影だ。

超広角レンズに分類される12mmの画角だが、星空撮影では「標準レンズ」という感じの存在になる。眼前に広がる星空が自然な広がりで画面に収まることが、北極星の位置からわかるだろう。

KOWA PROMINAR 12mm F1.8 / OLYMPUS OM-D E-M5 MarkII / F2.8 / ライブコンポジット50秒×215コマ/ ISO1600 / LEEソフトNo.3フィルター使用

歪曲収差の少ないPROMINARレンズは、直線の多い構造物が前景の都市星景撮影でも安心して使える。このときはあいにく雲の多い空で、星景というにはちょっと星数が寂しいが……

OM-D E-M5 MarkIIで30分のライブコンポジット撮影。もっと星の光跡を伸ばしたかったが、残念ながらこのあと曇ってしまった。

KOWA PROMINAR 12mm F1.8 / OLYMPUS OM-D E-M5 MarkII / F3.4 / ライブコンポジット1/2秒×3,654コマ / ISO1600

93.5度×77.1度の画角を持つPROMINAR 8.5mm F2.8で、冬の天の川全景を追尾撮影。これもISO1600で4分のたっぷり露出だ。絞り開放から十分にシャープで微光星の描写が美しい。周辺星像もかなりのものだ。

KOWA PROMINAR 8.5mm F2.8 / OLYMPUS OM-D E-M10 / F2.8 / 4分 / ISO1600 / LEEソフトNo.3フィルター使用 / TOAST-Technology TP-2で追尾撮影

月明かりの湖畔に昇ってくるオリオンと冬の大三角。このくらいの画角になると地上風景を大きく入れても星空が窮屈にならない。F2.8と明るいので、星景写真に使いやすいレンズだ。

KOWA PROMINAR 8.5mm F2.8 / OLYMPUS OM-D E-M5 MarkII / F2.8 / 60秒 / ISO1600 / LEEソフトNo.3フィルター使用

月夜のカラマツ林で星空を見上げる。木が風に揺れなければ、枝先まで繊細に表現することができる。ヌケのよいレンズで、上弦を過ぎた明るい月ながら、カラマツのシルエットや月光を浴びる幹肌までとてもスッキリと写る。ゴーストもまったく気にならない。

KOWA PROMINAR 8.5mm F2.8 / OLYMPUS OM-D E-M5 MarkII / F2.8 / 20秒 / ISO1600

富士山の裾野にて。富士山の上に見える明るい星は下から金星、火星、木星だ。三惑星が集合してにぎやかな明け方の空になっている。超広角レンズ8.5mm F2.8独特のパースで、風に流れる雲を伸びやかに描くことができた。

KOWA PROMINAR 8.5mm F2.8 / OLYMPUS OM-D E-M1 / F2.8 / 4分 / ISO1600 / LEEソフトNo.3フィルター使用

8.5mmで昇ってくる星をライブコンポジット撮影。稜線から飛び出してきた明るい星は金星「明けの明星」だ。天球の赤道上の星は直線で写り、北天と南天の星はそれぞれ反対向きに反った円弧になるのが超広角レンズ8.5mm F2.8の画角でよくわかる。

KOWA PROMINAR 8.5mm F2.8 / OLYMPUS OM-D E-M10 / F2.8 / ライブコンポジット60秒×約1時間 / ISO1600 / LEEソフトNo.3フィルター使用

なお12mm(左奥)のPROMINARは、ピント位置無限遠で通常のマイクロフォーサーズレンズより後玉が突出するので、ボディ内にソフトフィルターを仕込むときには注意が必要だ。他メーカーのリアレンズキャップを使用することもできないので、専用品を使おう。

ちなみにPROMINARマイクロフォーサーズレンズは、3本ともレンズ前にネジ込みでフィルター装着が可能。フィルターサイズは、8.5mmF2.8はフード併用で86mm、12mmF1.8は72mm、25mmF1.8は55mmになる。

細身で軽量な超望遠レンズ。どの焦点距離もシャープでくっきり

さて、ここからはテレフォトレンズの「PROMINAR 500mm F5.6 FL」を紹介したい。

この製品は、鏡筒後半のユニットを交換することによって、超望遠レンズやスポッティングスコープとして使うことができる。望遠レンズで悩ましい色収差を抑えるため、本体にはフローライト・クリスタル(蛍石)やXD(eXtra low Dispersion)を採用する。

マニュアルフォーカスだが、カメラメーカー製の同クラス超望遠レンズよりかなり軽量なところが魅力で、ポータブル赤道儀にも搭載が可能だ。イメージサークルは35mmフルサイズカメラにも対応する。

下の写真ではマイクロフォーサーズのオリンパスOM-D E-M5 MarkIIを装着し、ユニテック製ポータブル赤道儀SWAT-350に搭載したところ。長焦点なので、ドイツ式赤道儀タイプになる赤緯軸ユニットと微動装置を使用している。

ピントリングは粗動と微動の2段構成で、天体撮影の微妙な焦点調節がしやすい。また口径絞りも採用されていて、開放から2段ぶん調節することができる。

鏡筒後半部を構成するマウントアダプターを交換して、350mmF4.0(マウントアダプターTX07使用)、500mmF5.6(TX10)、850mmF9.6(TX17)の3つの焦点距離に変換できる。

対応するマウントはニコンF、キヤノンEF、ペンタックスK、マイクロフォーサーズ、ソニーAマウント。他に天体望遠鏡用に市販されている各種カメラマウントやチューブ、フィルターが使用できるTX10とTX07のTマウントアダプターが用意されている。

下の写真は前列3個がニコンFマウント用、後列がマイクロフォーサーズ用のマウントアダプターだ。

それぞれの焦点距離での写る月の大きさを比べてみよう。月は焦点距離のおよそ1/100の直径で像を結ぶ。500mmレンズなら約5mmの直径というわけだ。いつも感じることだが月は意外と小さい。

マイクロフォーサーズカメラだとこのような大きさで撮ることができる。PROMINARはどの焦点距離でもたいへんシャープな像で、天体望遠鏡にまったく遜色無い。クレーターなどの月面の地形がクッキリ写って、とても気持ちがいい(ボディはいずれもOLYMPUS OM-D E-M5 MarkII)。

KOWA PROMINAR 500mm F5.6+TX07(350mm F4.0)/ 1/800秒 / ISO800
KOWA PROMINAR 500mm F5.6+TX10(500mm F5.6)/ 1/640秒 / ISO800
KOWA PROMINAR 500mm F5.6+TX17(850mm F9.6)/ 1/250秒 / ISO800

テレフォトレンズはどの焦点距離でも35mm判フルサイズに対応している。350mmでアンドロメダ銀河を撮影してみた。

アンドロメダ銀河の渦巻きの腕や暗黒星雲、大きく広がった淡い広がりまで克明にとらえることができた。35mm判フルサイズでも画面最周辺まで星像はきっちりシャープ。周辺光量低下もそれほど気にならないレベルだ。

KOWA PROMINAR 500mm F5.6+TX07(350mm F4.0) / Nikon D750 / F4.0 / 2分×12コマ加算平均 / ISO3200 / ユニテック製SWAT-350で追尾

望遠効果の増すマイクロフォーサーズカメラなら、おうし座のプレアデス星団(すばる)が画面いっぱいになる。若い星ぼしの青い光を反射した星雲が美しいプレアデス星団だが、この星雲は肉眼では見ることができない。見えない天体の姿を見ることができるのが天体撮影の面白いところである。PROMINARなら、このようなさまざまな星雲の姿を堪能できる。

KOWA PROMINAR 500mm F5.6+TX10(500mm F5.6) / OLYMPUS OM-D E-M5 MarkII / F5.6 / 4分×9コマ加算平均 / ISO3200 / ユニテック製SWAT-350で追尾(オートガイダーM-GEN使用)

850mmでオリオン大星雲M42をねらってみた。この焦点距離になるとさすがに大迫力である。同じ焦点距離で撮影した月面に比べるとシャープさが無いように見えるが、これは流れる大気の密度差で星像がかげろうのように揺らぐところを長時間露出するために、少しボケて写ってしまうから。レンズの責任ではない。シャープな超望遠写真を撮るには、大気が安定していることが不可欠な条件だ。これは天体に限った話ではない。

KOWA PROMINAR 500mm F5.6+TX17(850mm F9.6) / OLYMPUS OM-D E-M5 MarkII / F9.6 / 4分×8コマ・30秒×8コマ加算平均 / ISO3200 / ユニテック製SWAT-350で追尾(オートガイダーM-GEN使用)

さすがに350mmを超えるような焦点距離になると、赤道儀の機械的な追尾精度が不足してくる。天体望遠鏡用大型赤道儀に匹敵する精度があるというSWAT-350でも、350mmの追尾成功率は半分程度。それ以上の焦点距離だとさすがに無理があるので、星雲撮影では、追尾エラーを修正できるオートガイダー「LACERTA・M-GEN」を使用した。

バーでPROMINARと並んでいるのがオートガイダーのCCDカメラ。カメラのアクセサリーシューには口径30mm6倍の天体望遠鏡用ファインダーを装着して、暗い天体の導入に使用した。

東京の上空を国際宇宙ステーション(ISS)が通過するという絶好の機会があったので、ISSのクローズアップ撮影に挑戦してみた。天体望遠鏡用の簡易なフリーストップ経緯台の高度軸先端にモノポッド用ヘッドを取り付けて3軸化し、天頂付近でISSを追いかけやすいようにした。

PROMINARと光軸を合わせた6倍の天体望遠鏡用ファインダーでISSをとらえながら連写するという方法である。

魚眼レンズでとらえたISSの光跡。この日は夕焼け空から現れ、南西から北東へと星空を横切って行った。画面中央付近には西空に傾いた夏の大三角。

550コマほど撮影した中で、もっとも写りのよかった1コマがこれ。ISSが写野中心から外れても全画面シャープなので安心だ。ここに人が乗って宇宙空間を飛んでいることを想像すると、人類はほんとうにスゴいことをしていると思う。

KOWA PROMINAR 500mm F5.6+TX17(850mm F9.6) / OLYMPUS OM-D E-M1 / F11.5 / 1/1000秒 / ISO1600

10コマ/秒で連続撮影した一連のISSの画像から出来の良かったシーケンスを一列に並べてみた。無理な姿勢で追いかけているので、ブレてしまったコマもけっこう多かった。

夕焼け雲の中に姿を見せる月齢3.6の月。

情緒ある天体の風景を超望遠レンズでとらえてみるのも面白いと思う。画角が狭いので難しいけれど。

KOWA PROMINAR 500mm F5.6+TX10(500mm F5.6) / OLYMPUS OM-D E-M5MarkII / F5.6 / 1/400秒 / ISO200

暗くなってから焦点距離を伸ばして撮影。三日月は高度が低いので鮮明に撮るのが難しい。

KOWA PROMINAR 850mm F9.6+TX17(850mm F9.6) / OLYMPUS OM-D E-M5MarkII / F9.6 / 1/60秒 / ISO800

埼玉県ときがわ町・堂平天文台のドームと、そのはるか彼方に沈む上弦の月だ。分厚い大気の層を通してみる昼間の月はたいへん淡く、肉眼ではほとんど見ることができなかった。直線で20kmほど離れた天文台ドームも春のような空気に霞んでいるので、RAW現像でかなり強引にコントラストを上げて仕上げた。

正午近い時間帯なので大気は太陽熱のため激しく揺らぎ、天文台ドームの輪郭はグニャグニャ。このようなときの超望遠撮影では、できるだけ速いシャッター速度にして、レンズを少し絞るとシャープさが増す。

KOWA PROMINAR 500mm F5.6+TX17(850mm F9.6) / Nikon D750 / F13.5 / 1/1000秒 / ISO400

PROMINAR 500mmのマウントアダプターをプリズムユニットと交換し接眼レンズを装着すると、高性能なスポッティングスコープになる。

これは25〜60倍の広視界ズーム接眼レンズTE-11WZ PROMINARを装着したところ。視野は像のヌケがたいへん良く、広い視界でとても爽快。月面の欠け際や輪郭は収差による色にじみや像の甘さが目立つところだが、最大倍率でもクリアな像で月面探訪が楽しめた。

またズーム接眼レンズは一般的に低倍率で視野が狭くなるものだが、TE-11WZは低倍率でも広視界が保たれるので、淡い星雲などを見るのも快適だった。

難しい被写体をハイレベルに再現

星空はレンズにとってもっとも厳しい被写体のひとつ。星は完全な点光源なので、レンズの各種収差があらわになってしまうからだ。しかも明るい星に対してはかなり過剰な露出になるので、一般的な被写体ではほとんど問題にならない弱い光のにじみまで写ってしまう。

その収差は、明るいレンズほど少なくするのが難しい。今回使用したPROMINARマイクロフォーサーズレンズはF1.8〜2.8という明るさでありながら、光学的な補正だけでハイレベルな星像を実現していて、使っていて気持ちのいいレンズだった。

また鏡胴のつくりが、その気持ちよさを倍増させてくれる。クラシカルな風貌のOM-Dとのデザイン的なマッチングもよく、フィルム一眼レフOM-1で星の撮影を始めた私の初心を思い起こさせてくれるような気がする。滑らかなピントリングや絞りリングの操作感の気持ちよさのためか、星が写るだけでワクワクしていた頃の気持ちがよみがえって来た。

いっぽう、PROMINAR 500mm F5.6 FLテレフォトレンズは、純粋に天体の姿を楽しませてくれるレンズだ。まったく目では見えない天体の姿を撮ることの面白さ、そして接眼レンズを通して目に入ってくる天体からの生の光の美しさ。これもやはり星を撮ること、見ることのリアルな「ワクワク」だ。

PROMINAR 500mm F5.6 FLが見せる星は、写真に撮っても眼で見てもほんとうに美しい。500mmで天体写真を撮るのはハードルが高いかもしれないが、肉眼で見る星や月などの天体の光の美しさは、ぜひ多くの人に楽しんでもらいたいと思う。

そして、星がきれいに見えるということは、他のどんな物でもよく見えるということ。いつもそれを楽しめるようにクルマに積んでおきたくなった。

制作協力:興和光学株式会社
機材協力:ユニテック株式会社

飯島裕

1958年埼玉県生まれ。1969年のアポロ11号月面着陸の際、はじめて天体望遠鏡で月を見て天文の面白さにはまったアポロ世代。大学卒業後、広告制作会社のカメラマンに。1986年からフリーの写真家として独立。現在はおもに広告、雑誌、書籍などの写真を撮影。科学関係雑誌や天文情報誌などには執筆も行ない、国立天文台の広報関係の撮影も担当している。科学的な天体写真をベースに表現性も付加した、いわゆる星景写真に早くから取り組む。