デジカメアイテム丼
あの「Anker」が投入したカメラ対応ワイヤレスマイク
AnkerWork M650 Wireless Microphone
2023年8月8日 07:00
モバイル充電ブランドのAnkerがワイヤレスマイク「AnkerWork M650 Wireless Microphone」(以下M650)を発売した。価格は税込3万4,990円となっている。ここでは実際の録音動画も含めてレポートしたい。
AnkerWorkはAnkerのサブブランドで、Webカメラやヘッドセットなどをラインナップしている
今回Ankerは、初めて動画収録用のワイヤレスマイクを発売した。同様のコンセプトのマイクはすでに他社からも出ているが、モバイル機器用ACアダプターで知名度トップクラスのAnkerが出したこともあり、話題になっていた。
バッテリー内蔵ケースで使いやすい
ワイヤレスマイクは口元で話し声を録音できるため、カメラの内蔵マイクよりも音が明瞭なのが特徴だ。カメラから離れても音量が変わらないし、部屋の反響音や周囲のノイズもカメラの内蔵マイクより拾いにくい。昔はプロの世界の高価なアイテムだったが、動画共有サイトの普及につれて多くのメーカーが参入、低価格化が進んだ。本製品もそうした低価格の一般ユーザー向けマイクのひとつになる。
ワイヤレスマイクには電波をアナログで送るタイプとデジタルで送るタイプがあるが、本品は2.4GHz帯のデジタルタイプとなっている。
マイク一体型のトランスミッターが2台セットされているため、2人の声を同時に録音できる。片方をオフにして1人用で使うこともできるが、インタビューや対談に2波同時受信は使いやすい。
デザインも凝っていて、従来のワイヤレスマイクのイメージとは一線を画す。化粧品を思わせる高級感のあるケースに入っており、円筒形のトランスミッターはお菓子のマカロンのような可愛さがある。トランスミッターの色を変えられる付け替え用のカバーまで付属しているという具合で、とにかく”オシャレ“の一言に尽きる。
このケースはバッテリーが内蔵されており、そこに収納することでトランスミッターとレシーバーの内蔵バッテリーが充電される。ワイヤレスイヤホンと同じ仕組みだと思うとわかりやすいだろう。
動作時間は最大6時間だが、ケースのバッテリーで1.5回分充電できるので、合わせると最大15時間の使用が可能。電池交換の煩わしさが無いのも良い。
フタを開ければペアリングが完了
ワイヤレスマイクというとチャンネルやグループの設定といったペアリング作業が面倒という側面もあるが、本品はケースを開けると自動的にペアリングが完了した状態になっている。そのため、使いたいときにパッと使えるのはありがたい。ちなみに、通信距離は最大200mとなっている。
トランスミッターに付いているクリップはマグネット式で外せる。クリップが付けられない服へはマグネットで挟んで固定する仕組みだ。クリップは90度ごとに回転も可能。現時点でオプションの設定は無いようだが、有線マイクの端子も備えている。トランスミッターの重量は約30gとなっている。
トランスミッター自体に録音機能があり、各4GBのストレージを内蔵している。録音時間は7時間30分ほど。カメラ側でうまく録音できなかった場合のバックアップとして使える。ストレージが一杯になると、古い録音から上書きしていくモードもある。
一方のレシーバーは重量約37g。カメラには一般的な3.5mmプラグのケーブルを介して接続できるほか、USB Type-CとLightningのコネクターでスマートフォンに装着することも可能だ。底部のクリップがカメラのホットシューに入る様になっており、カメラへの取り付けも簡単である。あとは、付属ケーブルをマイク端子に繋ぐだけで良い。
タッチパネルのわかりやすい操作
基本的な設定はレシーバーのディスプレイで行う。タッチパネルになっていて、上下左右にスワイプするとメニューが出てくる。階層が深くないので操作はしやすかった。
メイン画面では各ステータスのほか、音量がグラフで表示される。大きい音はオレンジや赤になるのでレベルオーバーになっていないか確認はしやすい。
マイク個別の設定画面。左はON/OFF切り換え。中央はトランスミッター側での録音開始ボタン、右はゲイン調整だ。
先ほどの画面で右上の三点マークを押すとストレージ容量と記録したファイル数を確認できる。
2つのトランスミッターを同時に制御することもでき、双方の録音を同時に始めることができる。
ノイズリダクションはオフ/弱/強の3つから選べる。
サウンドトラックはチャンネルの振り分けの設定。デフォルトのモノラルモードでは、動画ファイルの左右チャンネルに同じ音が記録される。ステレオモードではそれぞれのトランスミッターの音を、左右にそれぞれ振り分けて記録できる。
その他メニューのセーフモードは左チャンネルに本来の音量で記録し、右チャンネルに6dB低い音量で記録するモード。音割れが発生した場合に低い音量のトラックを使える保険的な機能だ。AUXは出力モードで、カメラ向けのレベルとヘッドホンモニタリング向けの出力から選べる。
ノイズリダクションの効果は?
今回は屋内と屋外でそれぞれ録音を試してみた。
まず屋内のシーンは、カメラの内蔵マイクとM650の比較となっている。カメラと被写体の距離は2mほど。カメラ内蔵マイクでは部屋の反響が混じっているのに加えて、ノイズも比較的多い。
一方ワイヤレスマイクでは反響音やノイズがほとんど無く、明瞭に録音できていた。プロが必ずといって良いほどよく使うワイヤレスマイクだが、その威力は大きい。
またデジタル方式だと遅延が気になる人もいると思うが、リップシンクはズレておらず遅延は問題にならなかった。本品はLC3plusコーデックに対応した独⾃の「TrueLink」という技術を使って低遅延を実現しているとのことだ。
続いては、屋外でノイズリダクションの「オフ/弱/強」の違いを試してみた。本機は独⾃技術というノイズリダクション機能「VoiceShield」を搭載し、周囲のノイズを低減しながら声を大きく収録できると謳っている。
撮影場所は道路のすぐそばなので、ノイズリダクションが「オフ」だと当然クルマの音が大きく入っている。「弱」に設定するとクルマの音は結構軽減されていた。「強」だとさらにクルマの音が抑えられているようだ。
ただし、ノイズリダクションを入れると副作用で音声にアーチファクト(本来無かった音)が付く。「弱」ではさほど目立たないが、強だと不自然さが増す。
なお、この時は風があったが付属の風防を付けていたので風切り音はほとんど抑えられていた。
PCソフトでイコライザーなどの設定も
PC用ソフト「AnkerWork」をインストールすると、そこから詳細な設定ができる。マイクをケースに入れて、ケースとPCを接続しておく。ファームウェアが古くなっていると、アップデートの案内も出る。
トランスミッターの設定画面では、ファイルの上書き設定やTXボタンのカスタマイズが可能だ。そして録音ファイルの再生や消去もここでできる。
レシーバーの設定画面ではイコライザー、低周波フィルターなどが設定可能だ。イコライザーは5バンドと簡易的なものだが、あらかじめ音を作れるのでライブ配信などでは便利かもしれない。低周波フィルターはローカットのフィルターで、風切り音の低減などに効果がある。
まとめ
2.4GHz帯デジタル、2波同時受信、本体録音、充電ケース付きといった仕様自体は目新しいものではないが、やはりあのAnkerが手がけたというのは注目すべきポイントだ。ワイヤレスマイクが気になっていてなかなか手が出せなくても、「Ankerブランドなら馴染みがあるので試してみようか」というユーザーもいるだろうし、ワイヤレスマイク普及のきっかけにもなりそうだ。
もうひとつAnkerならではの点を挙げれば、そのデザイン性の高さだろう。「収録時にマイクは隠したい」というのがこれまでの考え方だったと思うが、本品はオシャレに作ることで、むしろ”魅せるマイク”というレベルになっていると言えそうだ。今回は手にしていないが、もうひとつのホワイトモデルも綺麗である。
デザイン面では、プロが業務用としてそのまま使うのはためらわれるかもしれないが、アクセサリー感覚で付けられるといった新しいコンセプトはワイヤレスマイクにおけるパラダイムシフト的なものとも感じられる。昨今はやりのVlogなどでは、非常に使い勝手の良いシステムなのは間違いなさそうだ。
モデル:進藤もも(@MoMo_photograph)