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ソニーの新RAW現像ソフト「Imaging Edge」とは何か?

画像管理、閲覧、現像、リモート撮影がシームレスに

「Imaging Edge」はソニーαやサイバーショットで撮影した画像の閲覧、セレクト、RAW現像のほか、カメラとPCをつないでリモート撮影を可能にするアプリケーション群で、従来のサポートソフトウェアである「Image Data Converter」および「Remote Camera Control」に置き換わるものだ。

大きく変わったのは画面の外観で、従来の「Image Data Converter」は明るいグレーを基調にした画面だったのが、新しい「Imaging Edge」は暗めのグレーと黒を基調にした今風のデザインに変更されている。また、機能の追加や強化などもはかられている。

ダウンロードはサポートサイトの「ダウンロード」ページから行なう。なお、テザー撮影機能については機種による制約もある(現時点では、全機能が利用できるのはα7R IIIのみのようだ)。詳細は、サポートサイトの「対応機器」ページを参照してもらいたい。

Imaging Edgeのハブとなるのが画像閲覧ソフトのViewerだ

「Imaging Edge」は画像の閲覧、セレクトのための「Viewer」、画像の調整を受け持つ「Edit」、カメラとPCをつないでテザー撮影を行なう「Remote」という3つのアプリケーションで構成されており、その中心となるのが「Viewer」だ。

「Viewer」は名前のとおり、画像の閲覧、セレクト作業を行なうためのアプリケーションだ。いわゆるエクスプローラー型で、画面左側の「フォルダーエリア」で見たい画像が保存されているフォルダーを選択する。

Imaging Edgeのハブとなる「Viewer」は、エクスプローラー型の画像閲覧ソフトだ。

画像を一覧表示できる「サムネイル表示」と、1枚だけを大きく表示する「プレビュー表示」がある。「サムネイル表示」では、RAW+JPEG同時記録の画像は、RAWとJPEGの両方が表示される仕様で、RAWだけを表示することもできる(反対に、JPEGだけを表示するオプションはない)。

画面右上のプルダウンメニューで「サムネイル表示」と「プレビュー表示」を切り替えられる。

「プレビュー表示」画面では、画像全体を大きく表示したり、一部分を拡大して微妙なピントのズレやブレのチェックが行なえる。画像の切り替えや拡大、縮小などの操作は比較的スムーズで、ある程度、パワーのあるPCであればストレスはあまり感じないと思う。

「プレビュー表示」画面では、1枚の画像を大きく表示できる。
「ヒストグラム」と「撮影情報」のパネルを開いて画面右側に置いておくと撮影データなども確認できて便利だ。

セレクト作業のためのマーキング機能は従来と同じ。「レーティング」は「★」「★★」「★★★」「★★★★」「★★★★★」からの選択。「カラーラベル」は「赤」「黄」「緑」「青」の4色で、こちらは重複して付けられる。どちらも「1」から「0」までのショートカットキーが割り当てられているので素早く設定できる。

「表示」メニューの「評価」で「★」から「★★★★★」までのレーティングを行なう。
「カラーラベル」は4色。複数のカラーラベルを設定することもできる。「評価」ともにショートカットキーがあるので素早く操作できる。

これらのマーキング機能を利用して表示する画像を絞り込むことが可能。撮影したモデル名(カメラ名)やレンズ名で絞り込むこともできる。

「★」の数や、撮影したカメラ、レンズによる絞り込みが可能だ。
「1つ星以上」の「評価」をつけた画像だけを表示した状態。こんなふうに、残したい画像だけを簡単に選別できる。
さらに「赤」の「カラーラベル」のついた画像だけに絞り込んだ状態。

個人的に気になったのは「サムネイル表示」と「プレビュー表示」を切り替えるショートカットキーがないこと。この2つの画面は頻繁に行き来するものだと思うので、素早く切り替えられるようにしておいて欲しかった気がする。

また、画像を拡大する際にクリックした部分を拡大する機能がないのも残念な点。Adobe Lightroomなどではクリックした部分をピクセル等倍表示する機能があるので作業効率がいいが、「Viewer」の場合は、ピクセル等倍に拡大してから見たい部分にスクロールする必要がある。

拡大するには「表示メニュー」から「ピクセル等倍」を選ぶか「control+↑」または「command+↑」を押すなどする。
初回は画面中央部から拡大する仕様なので、画面をドラッグするなどしてスクロールする必要がある。

1枚2枚を見るぶんにはちょっとした手間にすぎないが、数百枚の画像をチェックするようなときにはちょっとしんどくなる。そのあたりを改善してもらえるとだいぶ快適になると思う。

「ガイド」はマウスのドラッグ操作で移動が可能。水平や垂直の確認などに利用できる。
「グリッド」は「方眼」「対角+方眼」が選べる。
縦位置だとこんな表示になる。改善の余地ありだ。

RAW現像を受け持つ新アプリ「Edit」

「Viewer」でセレクトした画像を調整するのが「Edit」の役目だ。α7R IIIに搭載された「ピクセルシフトマルチ撮影」機能で撮影した画像の合成処理およびエッジ周辺ノイズの補正も行なえる。

「Edit」は独立したアプリケーションであり、単独で使用することももちろんできるが、「Viewer」とのコンビネーションで使うほうがスマートかつ手っ取り早い。

「Viewer」から「Edit」を起動するには、サムネイルをダブルクリックするだけでいい。「サムネイル表示」画面で複数枚を選択して画面上部のツールバーにある「Edit」ボタンをクリックすれば、まとめて「Edit」に受け渡せる。

絞り込んだ画像をすべて選択して、ツールバーの「Edit」をクリックすると……、
「Viewer」で選択した画像が「Edit」に受け渡される。

ただし、かなり大量にメモリーを消費するようで、多数の画像を調整するとやや不安定になるようだ。筆者の環境では一度に開くのは1、2枚ずつにして、調整が終わったら保存して閉じ、別の画像を開く、というパターンのほうが安定して作業できるのではないかと思う。

さまざまなパラメーターの調整を行なう「調整パレット」の内容は「Image Data Converter」と変わりはないが、「コントラスト」パレット内に新しく「白レベル」「黒レベル」「ハイライト」「シャドウ」が追加された(「Image Data Converter」は「コントラスト」スライダーだけだった)。

この4つのスライダーは、画面の中の明るい部分だけ、あるいは暗い部分だけを個別に調整できるもので、Adobe Lightroomなどに慣れている人にはおなじみのものだろう。これを使うとそれぞれの部分の階調を引き出したり、白飛びや黒つぶれを軽減したりといった操作がやりやすくなる。ソニーユーザーにとっては大きなプレゼントと言える。

従来は「Dレンジオプティマイザー」を使って全体の明るさ、「ハイライトトーン」と「シャドウディテール」で微調整、というのが基本パターンだった。
「Edit」では「コントラスト」パレットが新しくなった。ここでは「シャドウ」をプラスして暗部の階調を引き出しつつ、「黒レベル」をマイナスして引き締める処理をやってみた。

調整した画像をTIFFまたはJPEG形式で書き出すには、ツールバーの「Export」をクリックする。「Edit」から1枚ずつ書き出すこともできるが、バックグラウンドでの処理ができないため、書き出しが終了するまでほかの作業ができなくなる。

調整済みの画像は「ファイル」メニューの「現像出力」やツールバーの「Export」ボタンのクリックで書き出せる。
画像書き出しのダイアログ。
「ファイル形式」は「JPEGファイル」または「TIFFファイル」から選ぶ。
JPEGの場合は「画質(圧縮率)」を4段階で選択できる。初期設定は「圧縮レベル:2」だ。
「色空間」はおなじみの「sRGB」「Adobe RGB」のほか「Wide Gamut RGB」が選べる。
TIFFの場合も「色空間」はJPEGと同じ3種類から、bit数は「8bit」または「16bit」から選べる。

大量の画像を一気に処理したいときは、「Viewer」の「サムネイル表示」で書き出したい画像を選択して「Export」するといい。「Viewer」もバックグラウンドでの書き出し処理はできないが、前もって次に調整したい画像を「Edit」に受け渡しておけば、作業が停滞することもない。もちろん、全部まとめて一括「Export」してもかまわない。

複数の画像をまとめて書き出すには、「Viewer」で画像を選択して「ファイル」メニューから「現像出力」やツールバーの「Export」ボタンをクリックする。
「Viewer」の現像出力ダイアログ。一括処理でやれば、PCの前に張り付いていなくてもいいのでらくちんだ。

なお、「Edit」はJPEGやTIFF形式の画像の調整も行なえるが、利用可能なのは、画像の回転、周辺光量の補正、トーンカーブ、トリミングと傾き補正のみとなっている(ヒストグラム、白飛びや黒つぶれ、色域外の警告表示は可能だ)。

不満に思えるのは、調整用のスライダーをドラッグしているあいだは画面が変化してくれないこと。たとえば、明るさを「+2.00EV」に上げるときにドラッグ中は画面は暗いままで、マウスボタンから指を離してはじめて画面が明るくなる。

使う側としては、スライダーをドラッグして画面の明るさが変化していくのを見ながら、「このへんかな。いやもうちょっとか」などと考えたいのであって、だから、スライダーの動きに応じて画面の明るさも変わってくれると、「ここだっ」というポイントが見つけやすくなると思う。

操作する前から「この画像は+0.3EV補正するのだ」と決めて調整することもあるが、そうでないことも多い。そのあたり、くみ取っていただけるとうれしく思う。

ライブビュー表示が可能になった「Remote」

「Remote」は従来の「RemoteCameraControl」の後継となるテザー撮影(リモコン撮影)用アプリケーションで、従来版の機能に加えて「ライブビュー表示」機能を搭載したのが見どころだ。

「Remote」の画面。PCの画面にライブビュー映像が表示されるようになった。

「RemoteCameraControl」は絞りやISO感度を変えたりなどの操作はできたものの、画面を確認するにはカメラのファインダーなり液晶モニターなりを見ないといけなかった。それが「Remote」では、PCの画面にライブビュー映像が表示されるので(カメラのファインダーやモニターにも表示される)、快適度は相当にアップしたと言える。

ただし、対応するのはわりと新しめの機種だけで、ライブビュー表示が可能なのは、Eマウント機はα9、α7R III、α7R II、α7S II、α7S、α7 IIの6機種、Aマウント機ではα99 IIとα77 IIの2機種のみにかぎられる。APS-Cサイズのα6500なども非対応というのはちょっとさびしいところだ。

さて、「Remote」を使うには、カメラのメニューから「USB接続」を「PCリモート」に、「スマートフォン操作」を「切」に設定する必要がある。カメラに付属のUSBケーブルで接続したら電源をオン。PC側で「Remote」を起動する。このときに複数のカメラがPCに接続されているときは、デバイス選択画面から使用するカメラを選択する。

画面右側の「操作パネル」でカメラの操作を行なうが、ここに表示される項目は、接続するカメラによって異なる。原稿執筆時点では、PC側から全機能が使えるのはα7R IIIだけのようで、手もとのα7 IIではAFとMFの切り替えやMF時のピントの微調整などを行なう「フォーカスパネル」は表示されない。

α7R IIIの場合はAFとMFの切り替えなどを「Remote」から可能。MF時のピントの微調整も行なえる。
こちらはピントを遠距離側にずらす項目。キーボードの左手側のキーが割り当てられているところは要注目だ。
α7 IIではカメラ側で「ピント拡大」することはできるが、α7R IIIだと「Remote」側から拡大できるらしい。

注目したいのは、シャッター速度や絞り、ISO感度、露出補正、調光補正にもショートカットキーが割り当てられているところ。

画面右上の「撮影」パネルの静止画撮影用シャッターボタンをクリックするか、「1」キーを押すとシャッターが切れる。

多くのテザー撮影ソフトは、マウスでクリックして設定を変更するのが普通で、これだとマウスをあちこち動かして操作しないといけないのが面倒くさい。

「Remote」では、たとえばシャッター速度は「S」キー、絞りは「C」キー、ISO感度は「I」キー、露出補正と調光補正がそれぞれ「A」「F」キーで操作できる。キー単独では露出が明るくなる方向の変化、「shift」キーを押しながらだと暗くなる方向に数値が変化する(これもわかりやすくてよい)。

「撮影設定」メニューの内容。「シャッタースピード」は「S」キーで遅く、「shift+S」キーで速くなる。
「F(絞り値)」は「C」キーで開く(数字が小さくなる)、「shift+C」キーで絞る(数字が大きくなる)。
「ISO感度」は「I」キーで高く、「shift+I」キーで低くなる。
「露出補正」は「A」キーでプラス補正、「shift+A」キーでマイナス補正となる。
「調光補正」も「F」キーでプラス補正、「shift+F」キーでマイナス補正だ。

また、ISO感度以外は左手側だけで操作できるので(シャッターを切るのは「1」キーだ)、右手はマウス、左手はキーボードの操作に専念できる。使い勝手のいいテザー撮影ソフトだと思う。

ただし、カメラを縦位置にしたときに、PC側の画面を縦位置に回転させてやる必要があるのと、プレビュー機能がないのはやや残念な点。もっとも、Eマウントレンズは絞り込み状態での撮影となるので通常はプレビュー機能は必要ない(シグマのMOUNT CONVERTER MC-11経由で対応外のSIGMA APO MACRO 150mm F2.8 EX DG OS HSMなどを使用する際の問題なので、これはソニーの責任ではない)。

カメラを縦にしても「Remote」の画面は縦向きに切り替わってくれないので手動で回転させないといけないのはちょっと残念。

また、α7R III以外では画像の保存場所がPC側だけに限定されているのも気になった点(α7R IIIでは、カメラ側のPCリモート設定で「PC+カメラ本体」を選択すると、双方に画像が残る)。

今回、α7 IIでテスト的に手持ちでのテザー撮影していたときに、PC側でトラブルが起きて画像が保存できていなかったということがあった。α7R III以外のユーザーに対しては、PC側でのトラブルを知らせる通知機能があればより安心して使えるのではないかと思う。

初期設定では撮影した画像は「Viewer」に受け渡される。
転送された画像をピクセル等倍で拡大。ピントやブレ、ゴミの付着などを素早く確認できる。

まとめ

以上、駆け足で新しい「Imaging Edge」の機能、使い勝手について紹介してきたが、従来の「Image Data Converter」や「Remote Camera Control」よりも機能強化がはかられていて、着実に進化していると思う。

まだ、バージョンが若いだけに、こなれていない部分もいくつか目に付くものの、今後改良が重ねられていくほどに、便利なソフトに仕上がっていくに違いない。

北村智史

北村智史(きたむら さとし)1962年、滋賀県生まれ。国立某大学中退後、上京。某カメラ量販店に勤めるもバブル崩壊でリストラ。道端で途方に暮れているところを某カメラ誌の編集長に拾われ、編集業と並行してメカ記事等の執筆に携わる。1997年からはライター専業。2011年、東京の夏の暑さに負けて涼しい地方に移住。