カメラマンのためのNAS入門

NASを使った“快適写真保存術”|第2回:共有・ライブラリ構築・外部アクセス編

外付けHDDとは違う機能性の高さを確認

前回の記事ではNASの基礎知識や機種選択のポイント、Synology DS216jの導入方法や基本の使い方について紹介しました。第2回の今回はより発展的な写真管理の方法について紹介していこうと思います。

DS216jの良い所はウィザードに従うだけで簡単に使い始められる点と、応用しようと思ったら「パッケージ」というアプリを使ってどこまでも発展的な使い方ができる懐の広さです。今回は写真の管理や共有、スマートフォンやダブレットとの連携といった便利機能を紹介していきます。

エクスプローラー、Finderから写真を直接管理する

前回はブラウザ上で写真をドラッグ&ドロップするなどして写真を管理する方法を紹介しましたが、ブラウザベースでデータ管理するのが煩わしいという読者もいることでしょう。

ネットワークに存在するNASは通常エクスプローラーやFinderから姿をみることはできませんが(ネットワークの設定次第では見えている場合もあります)、ネットワークドライブをパソコンに登録(マウント)すれば普通の外付けHDD同様に使うことも可能です。

Windowsの場合は手動で登録しても良いですが、Synologyの提供する「Synology Assistant」を使うのが簡単です。ダウンロードサイトへアクセスしSynology Assistantをダウンロード&インストール。

起動すると自動的に今繋がっているNASが検出され、「マウント」を選択すればあとは画面の指示に従ってパスワードなど入力すればNASがエクスプローラーからアクセスできるようになります。

Macの場合はFinderメニューの「移動」→「サーバーに接続」を選択し、サーバーアドレス欄に「smb://(サーバー名).local」を入力して接続します。サーバー名がsynology_01なら「smb://synology_01.local」です。あとは画面に従うだけです。Finderの共有ドライブ欄にNASが表示されています。

こうしておくとデータの管理もかなり楽ですね。外付けHDDを複数のパソコンから同時にアクセスできるといった感覚です。

写真に特化した「Photo Station」機能とは?

今までの写真の管理は写真をただの「データ」として扱っていたため、これが音楽や文章、動画になっても同じ操作でファイル管理ができます。SynologyのNASにはさらに写真に特化した機能があり、それが「Photo Station」という機能。

NASに写真をアップロードするだけでアルバムが自動作成されたり、Exif情報を元に写真をフィルタリングして自動でアルバム化する事もできます。また、これらのアルバムは共有範囲を指定すればネット上で共有することも可能。非常に便利な機能です。

Photo Stationはパッケージと呼ばれる専用アプリの機能ですが、第1回で紹介したクイックセットアップ通りに作業していれば自動的にインストールされています。パッケージインストールのスキップをした場合はDSMデスクトップの「パッケージセンター」からインストールできます。

使い方はDSMのデスクトップ左上のメインメニューアイコンをクリックして「Photo Station」を選択。別画面にPhoto Stationが立ち上がります。

第1回で「Photo」フォルダに写真をアップロードしている場合はすでにここに写真が表示されているはずです。実は始めから用意されていた「Photo」フォルダはPhoto Stationに紐付いた専用フォルダなのです。また、「Photo」内に作ったサブフォルダ(日付別フォルダなど)はアルバムとして認識されます。

もちろんPhoto Stationから写真のアップロードも可能で、その場合は画面上部の「追加」のドロップダウンメニューから行えます。

この時注意したいのはPhoto Stationに写真をアップロードするとバックグラウンドでサムネイルの作成などの処理をするためにNASのCPUパワーを大きく使うことになってしまう点。

特に、数十枚や数百枚の写真を一気にアップロードするとバックグラウンドではCPUがしばらくフル稼働になってしまうため、一時的にNASの性能が落ちてしまいます。

そこで活用したいのが「Photo Station Uploader」というアプリケーション。これはNAS用ではなくパソコン用のアプリで、写真をアップロードする前にパソコン側のCPUを使ってサムネイルなどを準備しファイルのアップロードすることができます。本来NASが行う作業を事前にPC側で行ってからアップロードするためNASに負担をかけることなく写真をアップロードできるわけです。

Photo Station UploaderはSnologyのダウンロードセンターにアクセスし、該当するNASを選択してからPhoto Station Uploaderをダウンロード。画面に従ってインストールすればOKです。ダウンロードページが英語表記になっていますが、インストール画面は日本語なのでご安心を。

設定が終わったら初回のみプロファイルの設定をします。「プロファイル名」は自分がわかりやすい好きな名前をつけます。「サーバー名/IP」はドロップダウンリストに現在使用中のNASがあるのでそれを選択。「ポート番号」は特に変更していない限り80のままで問題ありません。

その後、NASのパスワードを入力し、アップロード先を「Photo Station」としたら設定完了。アップロードしたい写真を右クリックすると「Photo Stationにアップロード」という項目に先ほど作成したプロファイルがあるため、これを選択すれば最も簡単にしかもNASに負担をかけることなく写真をアップロード可能です。

Photo Station Uploaderでアップロードする際はデフォルトではファイル名が変更されてしまうため、オリジナルのファイル名でアップしたい場合はチェックを外しておきましょう。

Photo Station画面はシンプルなので直感的に操作するだけでもなんとなく使えてしまうかと思います。写真単体をクリックすれば大きな写真に、キーワードやExif情報などかなり詳しい情報を確認することが可能です。オンライン編集が可能なPixir EditorやAviaryといったサービスとの連携可能でそのなな簡単な画像編集を行うこともできます。

アルバムを共有してみる

NASの醍醐味はネットワークを介して様々な人とデータを共有できることです。DS216jなら同じLANに繋がっている機器間で共有できるだけでなく、インターネットを介して共有することもできます(QuickConnectの設定が必要)。

アルバムを共有したい場合は共有したいアルバムを選択して画面上部の「共有」のドロップダウンメニューから「公開して共有」を選びます。すると、このような設定画面が出てくるため適切に設定しておきましょう。

アルバムの写真にはコメントやラベルをつけることができ、写真の整理に役立ちます。また、写真の著作権を保護するため、写真にウォーターマークを加える機能もあります。

「有効期間をカスタマイズ」を選択すれば期間を限定して公開可能で、「パスワード」を選択すればパスワードを知っている人のみに安全に公開することができます。

設定が終われば公開用のURLが表示され、このURLを知っている人に向けてアルバムを公開できます。ネット経由での公開の場合はパスワードを設定するなど個人情報の漏洩には注意して公開しましょう。

スマートアルバムの設定

Photo Stationではユーザーが手動で作成したアルバム以外に、特定条件をもとに自動でアルバムを作成することもできます。それが「スマートアルバム」です。

画面上部の「追加」のドロップダウンメニューから「新しいスマートアルバム」で作成可能で、条件を指定してアルバム内の写真を自動振り分けできます。

例えばキヤノンの「EOS 5D Mark III」で撮影した写真だけ集めたければ、条件欄で「カメラモデル」を選択し、「EOS 5D Mark III」を指定すればOK。F2.8で撮影した写真だけとか、「紅葉」というキーワードが付いた写真だけなど様々な条件で写真を振り分けることができ非常に便利です。

DS photoでスマホと連携

Photo Stationのもう1つのメリットはスマートフォンやタブレットと専用アプリを使って連携できる点です。

自宅のメインPCで現像を行った写真を外からスマホでいつでも確認できるのです。仕事用の作品をNASに置いたままでもタブレットとインターネット環境があればいつでもプレゼンできるといったメリットもあります。

アプリを使うにはApp StoreまたはGoogle Playから「DS photo」をインストール。あとは画面に従って登録するだけでPhoto Station内のすべての写真やアルバムにアクセス可能です。

スマートフォンで撮影した写真をNASにアップロードすることも可能です。つまり、NASをスマートフォンで撮影した写真のバックアップ先として利用できるのです。

正直オマケ程度だと思っていたスマートフォンやタブレットとの連携ですが、思った以上にアプリが使いやすく十分使える印象です。このような連携は一般的なオンラインストレージを使っても実現できますが、NASであれば容量をほとんど気にしなくてもよく使い勝手も良いかと思います。

ただし、この機能はインターネット経由でのアクセスなのでQuickConnectの設定が必要です。初回セットアップ時にスキップして未設定の場合はDSMのデスクトップにある「コントロールパネル」>「QuickConnect」から設定しておきましょう。

NASに保存した写真のさらなるバックアップ

NASはRAID構成にすることでデータの安全性を高めることが可能ですが、非常に運悪く2台のHDDが同時に故障した場合や火事や水害といった家ごとダメージをうけるような災害時にはデータをすべて失うリスクは残ります。より安全性を高めるなら、データを遠方にも保存しておくことが必要になります。

もっとも手軽に利用できるのがDropboxやGoogleドライブといったオンラインストレージにもバックアップを作成することです。SynologyのNASなら「Cloud Sync」というパッケージを使ってNASとオンラインストレージを同期させることも可能です。

Cloud Syncを使う場合はDSMの「パッケージセンター」からバックアップの項目にある「Cloud Sync」を選択。クリックするだけでインストールが完了します。

Cloud Syncで同期できるオンラインストレージはDropbox、Googleドライブ、OneDrive、Amazon Drive、box、Azure Cloud Strage、Google Cloud Strage、S3ストレージなど日本でもよく使われる多くのストレージに対応しています。

無料で使える容量ではとてもすべての写真をバックアップすることはできませんが、NAS内の特定フォルダを同期することができますので、非常に大事な写真の保存場所をあらかじめ作成しておき、そこだけ同期させるといった使い方もできるでしょう。

また、Cloud SyncではAmazon Driveに対応しているということもポイントです。Amazon DriveはAmazonプライム会員であれば無制限にRAWデータを含む写真をアップロードできるという特典がついているため、Amazonプライム会員になっている読者ならCloud SyncとAmazon Driveを組み合わせることでさらに安全性を高めた写真の保存環境が構築できるようになります。

Amazon DriveとCloud Syncの連携はPC Watchのこの記事が詳しいです。

Amazon「プライム・フォト」×Synology NASで最強の写真保存環境を構築する 〜PC不要でNASとクラウドを自動同期。容量無制限、ランニングコスト不要(PC Watch)http://pc.watch.impress.co.jp/docs/topic/review/1027314.html

また、「Cloud Station ShareSync」というパッケージを使えば異なるSynologyのNAS間でデータを同期する事もできます。例えば自宅と実家にそれぞれNASを設置し、つねにデータを同期すると言った使い方も可能で、データの保全に関して様々なオプションが用意されています。

以上のように、もっとも普及価格帯のDS216jだけでも使おうと思えばかなり高機能な使い方ができるという所がSynologyのNASの良い所です。NASといえばネットワーク上でデータを保存する装置という認識をしている方も多いですが、近年のNASはそれだけでなく非常に様々なオプションも用意されているというところが外付けHDDとは決定的に異なります。

また今回紹介したPhoto StationやCloud SyncなどNASに便利な機能を追加できるパッケージはほとんどが無料で使えると言う点も嬉しいポイントですね。

今回は写真の管理について詳しく紹介してきましたが、次回はNASのアップグレードや動画の管理について詳しく紹介してみようと思います。

制作協力:Synology.Inc

中原一雄

1982年北海道生まれ。化学メーカー勤務を経て写真の道へ。バンタンデザイン研究所フォトグラフィ専攻卒業。広告写真撮影の傍ら写真ワーク ショップやセミナー講師として活動。写真情報サイトstudio9を主催