OM-D E-M1 Mark IIで写す「0.0555555556秒の奇跡」

30分「後」ではなく、30分「間」を想像してシャッターを切る…夜景・星景写真家 中村貴史さんインタビュー

深夜0時、桜が満月と街明かりでうっすらと照らされていたのでライブコンポジットで星の軌跡とともに撮影した。薄暗い中での構図を決めるときには、LVブースト2にすると背面液晶モニターに明るく風景が映し出されるので簡単に構図を確認できる。
OM-D E-M1 Mark II / M.ZUIKO DIGITAL ED 7-14mm F2.8 PRO / 7mm(14mm相当) / ライブコンポジット / ISO 400

高機能・高信頼性でプロにも好評のミラーレスカメラ、OLYMPUS OM-D E-M1 Mark II。1年間に発売されたカメラの中で最も優れたカメラに贈られる「カメラグランプリ2017大賞」を獲得したことからも、その実力がうかがえます。

今回インタビューに答えていただいたのは、オリンパスデジタルカレッジの講師も務める写真家、中村貴史さんです。写真家になったきっかけや、自身の写真について、そしてE-M1 Mark IIの印象を語っていただきました。

中村貴史
なかむら たかし:埼玉県生まれ。専門学校を卒業後フリーランスに。風景写真を中心に人物や料理など幅広く撮影。写真教室やセミナー講師、書籍の執筆などでも活動中。

※タイトルの「0.0555555556秒」とは、E-M1 Mark IIの特徴の一つである秒18コマのコマ間速度のこと。E-M1 Mark IIの性能を現すキーワードの一つとして選びました。

OLYMPUS OM-D E-M1 Mark II

現在、どのような写真のお仕事をされていますか。

広告写真の撮影で飲食店の料理やポートレートの撮影をしています。また、オリンパスデジタルカレッジでの講師をはじめ、様々なセミナー講師を務めています。星空撮影についてのセミナーや執筆も担当しています。

バリアングルモニターで背景にボケが入る位置を探して撮った。ISO2000で被写体ブレを抑えての撮影。花のしべにしっかりピントが合うAFも頼もしい。
OM-D E-M1 Mark II / M.ZUIKO DIGITAL ED 12-40mm F2.8 PRO / 40mm(80mm相当) / 絞り優先AE(F2.8、1/80秒、+0.7EV) / ISO 2000

写真の仕事をされるようになったきっかけは?

もともとWebデザイナーをしていましたが、その際「使用する写真を自分ですべて撮影できたら、何でもできるようになるのでは?」という思いから写真の勉強を始めました。

最初は独学でしたが、限界を感じて専門学校に行きました。卒業後独立してからは写真の奥の深さに気づき、写真の仕事に専念することを決意しました。

光跡や街灯の配置が重要なシーン。ライブビューに表示されるガイド線の色や透明度を変更できるので、透明度を上げておけば、暗い部分でも見やすくなる。
OM-D E-M1 Mark II / M.ZUIKO DIGITAL ED 12-100mm F4.0 IS PRO / 100mm(200mm相当) / 絞り優先AE(F5、2秒、+1.0EV) / ISO 800

影響を受けた写真家、写真集、メディアは?

アンドレアス・グルスキーさんの写真には強い刺激を受けました。写真集をいくつも出されているHABUさんの写真にも、Webデザイナーの頃から何度も見て癒されていました。

また、写真を始めたばかりの頃からお会いしている写真家の方たちからも、とても影響を受けています。それまで撮らなかった被写体(花・人物など)を撮るようになったのも、周りにいた方々のおかげだと思います。

ライブコンポジットで飛行機の光跡を撮影。モニターを確認しにくい場所でもスマホアプリ「Olympus Image Share(OI.Share)」でリモート撮影すれば、途中経過も手元で確認可能。
OM-D E-M1 Mark II / M.ZUIKO DIGITAL ED 12-40mm F2.8 PRO / 40mm(80mm相当) / ライブコンポジット / ISO 800

その影響は自分の作品のどんなところに現れていると思いますか?

自分が良いと思うものを常に追求し続けること。「こうしなければいけない、こう撮る」というような決まった頭にならないように被写体と対話することを心がけていますが、気になる事はやってみるというのは今後も変わらずに続いていきます。

雨の日の夜は濡れた道路に街の光が映り込む。PROレンズと組み合わせれば防塵防滴となり、手持ち撮影で鮮やかな夜の街を切り取っていける。OM-D E-M1 Mark II / M.ZUIKO DIGITAL ED 25mm F1.2 PRO /25mm(50mm相当) / シャッター優先AE(F1.2、1/60秒、+0.7EV) / ISO 500

中村さんにとっての夜景・星景の魅力とは?

夜景・星景は想像力をより働かせるジャンルだと思っています。その場の状況で変化や工夫が生まれるスナップと違い、夜景・星景では、1枚の写真にするまで時間がかかります。30分後を想像するというよりは、30分間を想像してシャッターを切って行くようなイメージです。その待ち時間のワクワクした気分に毎回魅きつけられます。

明るい時間には人間の目には大抵の物が見えていて、写真にするときは、それらを見せないようにすることもあります。一方、暗い時間は大抵の物が見えづらくなりますが、写真にすると見えてくるものもあります。それも夜景・星景の魅力かもしれません。

暗い状況下での低速シャッター。しかもファインダーではなく、背面液晶モニターを動かしてのローポジション・ローアングルでの撮影だが、強力な手ぶれ補正機構のおかげでISO 800でもブレることなく撮影できた。
OM-D E-M1 Mark II / M.ZUIKO DIGITAL ED 25mm F1.2 PRO /25mm(50mm相当) / 絞り優先AE(F1.2、1/13秒、±0EV) / ISO 800

ご自分の撮影とE-M1 Mark IIとの相性について。

とにかく小型軽量なのがとてもありがたいです。カメラを複数台使って撮影に赴くことが多いのですが、機材の重量によって行動が制限されてしまう場合もあります。しかし小さくて軽いE-M1 Mark IIとM.ZUIKOレンズのシステムなら、複数台の持ち運びも苦になりません。小さなシステムはそれだけ有利に働きます。また、夜露にさらされながら撮影する可能性があるので、防滴性能にも安心を覚えています。

また、様々な撮影で可動液晶モニターを多用するのですが、星の撮影では地面に近いローポジションなど、ファインダーに捉われない撮影ができるのはうれしいです。

ライブコンポジット機能はどんなところが便利ですか?

とにかく、家に帰ってからのパソコン作業が楽になります。星を撮影していると撮影コマ数が2,000枚を超えるのですが、これを全てRAWで保存していると40GB近くなる上、すべてRAW現像して比較明合成して……と、気の遠くなる作業が待っています。それに、大容量のSDカードが何枚あっても足りません。家のHDDも増える一方です。それが現場ですべて作業でき、その場で完結するので、比較にならないほど精神面でゆとりができます。

また撮影中、液晶モニターには撮影の経過が表示されています。撮影中に突然職務質問されても「星撮ってます!」と言いながら液晶モニターを見せると納得してもらえました。途中でやめなくても理解してもらえたので、本当によかったです。

ライブコンポジットの途中で薄い雲が流れていったが、液晶モニターで星が消えてしまうほどではないのを確認。そのまま撮影を続けることができた。ライブコンポジットならではのエピソードだろう。
OM-D E-M1 Mark II / M.ZUIKO DIGITAL 12-40mm F2.8 PRO / 14mm(28mm相当) / ライブコンポジット / ISO 200

今後取り組みたいシリーズやテーマは?

「星と人の生活」をテーマに撮影をしているので、まとめ上げて写真展をしたいと思います。今は街並みと星景がメインの被写体になっていますが、花々や人物などと融合させることで、違う切り口が出てこないか探していきたいと思っています。

「0.555555556秒の奇跡」が写真展になります!

デジタルカメラマガジンと連動した本企画「0.555555556秒の奇跡」の出演者による写真展の開催が決まりました。

これまで登場した今浦友喜さん、宇都宮修さん、菅原貴徳さん、高桑正義さん、千田智康さん、中村貴史さんがE-M1 Mark IIで撮影した作品を展示します。

気鋭の6名それぞれが引き出したE-M1 Mark IIの実力を、ぜひ会場でご確認ください!

会場:オリンパスプラザ東京 クリエイティブウォール(東京都新宿区西新宿1-24-1 エステック情報ビルB1F)
開催期間:2017年6月9日(金)〜6月21日(水)最終日は15時まで。木曜定休

デジカメ Watch編集部