伊達淳一が徹底解剖!「OM-D E-M1 Mark II」の先進性

【実写検証編 その1】動きモノはどこまで撮れるのか?

AF・連写・プロキャプチャー……一眼レフ並みといわれる高速性能を試す

本稿の筆者、伊達淳一氏の主要なオリンパス機材。ここまで集まった経緯は後ほど。

前々回の【高速性能編】、前回の【高画質編】と、2回にわたりお贈りしたOM-D E-M1 Mark IIの開発者インタビューは、いかがでしたでしょうか。

【高速性能編】一眼レフに迫る動体性能の秘密
【高画質編】前モデルE-M1から大幅に向上した画質性能

今回からはインタビュアーの伊達淳一さんが実際に撮影した結果をもとに、OM-D E-M1 Mark IIの性能にレビュー形式で迫ります。

まずは高速性能編のインタビューで話題にのぼった、AF・連写関連の性能を検証しました。

その前に……筆者所有の主要オリンパス機材について(上の画像について)

最初に購入したPROレンズは、M.ZUIKO DIGITAL ED 12-40mm F2.8 PRO。

その後、M.ZUIKO DIGITAL ED 40-150mm F2.8 PROとMC-14を追加し、1年前のキャッシュバックキャンペーンに釣られてM.ZUIKO DIGITAL ED 7-14mm F2.8 PROとM.ZUIKO DIGITAL ED 8mm F1.8 Fisheye PROも購入。

M.ZUIKO DIGITAL ED 12-100mm F4.0 IS PROは、まさに待ち望んでいた常用ズームだったので、E-M1 Mark II本体よりも先に予約購入。

さらに追い討ちをかけるようにE-M1 Mark IIとPROレンズ2本購入で5万円のキャッシュバックキャンペーン(2017年3月31日まで期間延長)というオリンパスの甘い罠にハマり、本来は購入する予定はなかったM.ZUIKO DIGITAL ED 300mm F4.0 IS PROにまで衝動買いしてしまった(汗)

そのM.ZUIKO DIGITAL ED 300mm F4.0 IS PROがE-M1 Mark IIの撮影でもっとも活躍していたりする。

検証−−「EVF」

遅延やブラックアウトが少なく、被写体の動きが見やすいファインダーに感激

E-M1 Mark IIを手にして最初に感じたのが、ファインダーの見やすさだ。横方向に動く動体を連写しながら追っても、これまでのミラーレスカメラとは比べものにならないほど安定したフレーミングで追い続けられる。

EVF(電子ビューファインダー)の見やすさは、E-M1 Mark IIの動体撮影能力に大きな役割を果たしている。

最初は、連写スピードが約18コマ/秒(静音連写L時)と高速化したためと思っていたのだが、実はE-M1 Mark IIは、連写Lおよび静音連写L時には、撮影した画像(アフタービュー)を連続表示しているのではなく、ライブビュー表示を行っているという。E-M1 Mark II以外にも、連写中にライブビュー表示を行えるミラーレスカメラはあるものの、連写スピードを落とさなければならず、個人的には例えアフタービュー表示でも連写が速いほうが使いやすかった。その点、E-M1 Mark IIは、約18コマ/秒の連写でライブビュー表示が行えるので、場合によっては一眼レフカメラよりも像消失時間が短く、動体の動きがファインダーでしっかり見えるのだ。

例えば、離着陸する旅客機を画面いっぱいに捉え続けながら連写するのは、これまでのミラーレスカメラではEVF表示の遅延とブラックアウトしている割合が多く、連写の途中でフレーミングが大きく乱れてしまうことが多かったのだが、E-M1 Mark IIだと安定したフレーミングで機体を捉え続けることができる。機体が画面からはみ出してしまいそうな場合でも、画面を傾けて機首や尾翼が切れないようにする余裕さえあった。

また、静音連写L時は無音で撮影できるので、野鳥や動物を撮影していても被写体を必要以上に威圧しないのは便利。特に、1人で河原に座って休んでいるときに野鳥から近づいてくるときがあるが、そんな際に連写しまくっても野鳥が逃げにくいのは一眼レフにはない大きな魅力だ。ただ、無音でカメラを構えている姿は、周囲から見たら何やってるんだろう? と思われているかも(笑)

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羽田空港第2ターミナル展望デッキから離陸する旅客機を狙う。機体の前後が切れないよう、できるだけアップで撮りながら連写で追う練習だ。E-M1 Mark IIのEVFは、連写中でも被写体がクッキリ見えるので、かなりギリギリのフレーミングが可能だ。

オリンパスE-M1 Mark II / M.ZUIKO DIGITAL ED 40-150mm F2.8 PRO + MC-14(175mm) / マニュアル露出(F5.0・1/1,250秒) / -0.7EV / SO100 / WB:オート
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京浜島から離陸する大型機を狙う。つばさ公園から撮影するとヒコーキの腹の比率が多くなるので、少し離れた京浜島緑道公園から840mm相当の超望遠で撮影。大型の747で画面に入りきらず、少し画面を対角線方向に傾けて機体が切れないようにした。

オリンパスE-M1 Mark II / M.ZUIKO DIGITAL ED 300mm F4.0 IS PRO + MC-14 / マニュアル露出(F7.1・1/1,600秒) / -0.3EV / ISOオート(ISO320) / WB:オート
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羽田空港に着陸する旅客機を浮島町公園から撮影。約18コマ/秒で連写した中から、管制塔とヒコーキの位置がもっともバランス良いカットを選んでみた。大気の揺らぎの影響で多少解像は低下しているが、展望デッキの人影もしっかり確認できる。

オリンパスE-M1 Mark II / M.ZUIKO DIGITAL ED 300mm F4.0 IS PRO / シャッター優先オート(F5.0・1/3,200秒) / -0.3EV / ISOオート(ISO200) / WB:オート
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羽田空港第1ターミナル展望デッキから着陸機を狙う。ハイライトに滲みが発生しているが、これはワイヤーフェンスの影響。機体を捉え続けるのに精一杯でちょっと水平が傾いてしまった。まだまだ修行不足だ。

オリンパスE-M1 Mark II / M.ZUIKO DIGITAL ED 300mm F4.0 IS PRO / シャッター優先オート(F4.0・1/400秒) / -0.3EV / ISOオート(ISO200) / WB:晴天
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E-M1 Mark IIの連写L/静音連写Lは、ライブビュー中は像面位相差AFが効く絞りまで開けるので、流し撮りでシャッタースピードを落とすと小絞りになるような明るいシーンでも、安定したフォーカスで追い続けることができる。

オリンパスE-M1 Mark II / M.ZUIKO DIGITAL ED 40-150mm F2.8 PRO + MC-14(170mm) / シャッター優先オート(F18.0・1/30秒) / -0.3EV / ISO200 / WB:晴天
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露出補正をかけるべきか迷うシーンだが、E-M1 Mark IIを初めとするミラーレスカメラは、ライブビューで仕上がりイメージを撮影前に確認できるのが強み。光学ファインダーよりも一歩離れて客観的に構図を判断できる点もEVFのメリットだ。

オリンパスE-M1 Mark II / M.ZUIKO DIGITAL ED 300mm F4.0 IS PRO / マニュアル露出(F5.6 1/1,600秒) / ISOオート(ISO500) / WB:晴天

検証−−「AF」

画面全体を広くカバーする121点の像面位相差AF

E-M1 Mark IIはAF性能もスゴイ。121点の像面位相差AFが画面を広くカバーし、約18コマ/秒の静音連写LでもAFが追従する、というのだから驚きだ。AFターゲットモードは、オール/シングル/グループ(5点)/グループ(9点0の4種類で、十字ボタンによる直感的な操作でAFポイント(測距枠)を移動でき、AFターゲット表示中にフロントダイヤルを回すと、順次AFターゲットモードを切り替えられるのも快適だ。

縦75%、横80%をカバーする像面位相差センサーの配置。しかもすべてクロスセンサーだ。(オリンパス提供)

EVF撮影時に背面の液晶モニターへのタッチ操作でAFポイントを移動できる「AFターゲットパッド」機能も搭載されているが、動体撮影のようにレスポンスが重視される撮影では、物理的な十字ボタンによるAFポイントの移動のほうが個人的には好み。特に、パワーバッテリーホルダーHLD-9にも、十字ボタンが装備されていて、縦位置撮影時でも横位置撮影時とほぼ同じ感覚で操作できるので、十字ボタンによるAFポイント移動を積極的に利用している。

パワーバッテリーホルダーHLD-9を装着した状態。

ちなみに、AFターゲットパッドによるAFポイント移動も、風景やスナップなどEVFを覗きながら構図を熟考する撮影には便利。EVFを覗きながら液晶モニターを2回タップすると、一時的にAFターゲットパッド機能をON/OFFできる。知っておくと便利な機能だ。

ところで、画面全体を広くカバーするオールクロス121点像面位相差AFでは、被写体を認識して自動的に追従する[C.AF+TR]モードにすることで、最初にAFフレームで被写体を捉えれば、後は被写体が画面のどこに移動しても18コマ/秒でAFが追従し、ピクセル等倍チェックでも全カットでピントの合った写真が撮れる……そんな夢のようなカメラを期待してしまうが、最新の像面位相差AFを搭載したE-M1 Mark IIといえども、残念ながらまだその域には達していない。やはり、AFターゲットモードをできるだけ小さく絞って、AFポイント内に被写体を安定して捉え続ける撮影者の腕も不可欠といえる。

ただ、不規則な動きの被写体を小さなAFポイントに安定して捉え続けるのは至難の業。それだけに、C-AF+TRモードの進化と、[オール]と[グループ(9点)]の間を埋める[グループ(25点)]や[グループ(49点)]といったものの追加に期待したいところだ。

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E-M1 Mark IIのAF性能をもっとも実感できたのは新幹線の撮影。多摩川を渡って東京駅に向かう上りの新幹線を跨線橋上から金網越しに狙ってみた。

AF方式は[C-AF]、AFターゲットは[グループ(9点)]に設定して、約18コマ/秒の静音連写Lで撮影している。AFポイントの位置は、画面中央よりも少しだけ下の位置に設定。

1コマ目と2コマ目はピントを外してしまったが、残りのカットはすべて新幹線の前面にピントが合っていて、窓ガラスのX21という文字やワイパーではピクセル等倍チェックでもズバピンが得られている。

このように、被写体の動きや速度が規則的で大きい場合は驚くほどの歩留まりでピントが合ってくれる。26コマ連写した中から、向かってボディの右側がキラリと反射している16コマ目をベストショットとして選んでみた。

連写したカットの一覧
ピントを合わせた箇所を拡大
ベストカット
オリンパスE-M1 Mark II / M.ZUIKO DIGITAL ED 300mm F4.0 IS PRO / シャッター優先オート(F5.0・1/2,000秒) / -0.7EV / ISOオート(ISO200) / WB:オート / C-AF / AFターゲットモード:グループ(9点)
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少し難易度を上げて、向かってくるカモメを600mm相当の画角で狙ってみる。

スナック菓子欲しさにフェリーと並んで飛ぶカモメならスマホでも撮れるが、このカモメは翼をはためかせて飛んでいるそこそこ本気モード。600mm相当の狭い画角である程度アップで捉えようとすると結構難しい。撮影者に気づくと急に進路を変更したりして、一度、フレームアウトさせてしまうと再び捉え直すのは難しい。

一眼レフカメラの光学ファインダーならファインダーのボケが少ない(空中像成分が多い)ので、多少アウトフォーカスになっても被写体がどこにいるかおぼろげに見えるが、ミラーレスカメラの超望遠撮影ではアウトフォーカスで大ボケになると被写体を画面に捉え直すのは極めて困難だ。

そこで、補助輪代わりに便利なアイテムが照準器。レンズのピントに関係なく被写体がよく見える照準器を利用し、照準器の光点と撮影画面の中心がほぼ一致するように調整しておけば、被写体がフレームアウトしてしまった場合でも画角が広く確保でき、レンズのピントに関係なく被写体がよく見える照準器を利用すれば、被写体をすばやく画面内に導入して再AFさせることができる。

ここではオリンパスのドットサイトEE-1を装着。パワーバッテリーホルダーHLD-9装着時でも両眼視(右目でファインダー、左目でドットサイトを見ながら撮影すること)できるよう、ホットシューに取り付けるフレキシブルアームを使ってEE-1を逆さにして装着。使わないときにはコンパクトに収納できるよう、EE-1とフレキシブルアームはReary Right Stuffのクイックシューで接続した。

ドットサイトEE-1をE-M1 Mark IIに組み合わせる。

連写の途中でピントが微妙に甘くなっているが、それでも背景にピントが抜けずに最後まで追い続けているのはスゴイ。

もちろん、AFフレームから被写体を逃すとピントが背景に抜けたり、全然違う箇所にピントが合ってしまうケースも当然あるが、粘り強く追い続けていると、背景にピントが抜けっぱなしにならず、ちゃんとピントが復帰することもあるのは立派。動きの不規則な被写体では自分の腕が未熟なこともあり、ピントの歩留まりはちょっと落ちるが、連写スピードが速いので最終的に残せるOKカットの数も並の一眼レフよりも多い。まさに“下手な鉄砲も数撃ちゃ当たる”的撮法だが、家に帰ってからの画像チェックが地獄だ(笑)

連写したカットの一覧
ピントを合わせた箇所を拡大
ベストカット
オリンパスE-M1 Mark II / M.ZUIKO DIGITAL ED 300mm F4.0 IS PRO / シャッター優先オート(F4.5・1/3,200秒) / -0.3EV / ISOオート(ISO200) / WB:晴天 / C-AF / AFターゲットモード:グループ(5点) (撮影:伊達淳一)

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カワウの飛翔シーン。被写体自身、色が黒っぽく、羽根の絵柄も不鮮明なので、飛び立ち始めた最初のほうのカットは背景にピントを持っていかれたが、連写の最後の最後でなんとかピントが合ってくれた。

オリンパスE-M1 Mark II / M.ZUIKO DIGITAL ED 300mm F4.0 IS PRO / シャッター優先オート(F4.5・1/2,000秒) / +0.3EV / ISOオート(ISO1000) / WB:オート (撮影:伊達淳一)
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近所の川べりでボーッとしていたらセキレイが近づいてきたので、カメラを向けたら逃げられた。羽根を広げた瞬間がうまく捉えられている。狙ったというより、偶然に助けられたカットだが、電子シャッターによる動体歪みも気にならない。

オリンパスE-M1 Mark II / M.ZUIKO DIGITAL ED 300mm F4.0 IS PRO / シャッター優先オート(F4.5・1/1,600秒) / -1.7EV / ISOオート(ISO320) / WB:オート (撮影:伊達淳一)
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日陰のカイツブリを840mm相当の超望遠で手持ち撮影。コントラストがあまりない茶色い羽根だが、細部までよく解像している。ピントがしっかり合っていなければ、どんなに高性能なレンズでもここまでの解像性能は発揮できない。

オリンパスE-M1 Mark II / M.ZUIKO DIGITAL ED 300mm F4.0 IS PRO + MC-14 / マニュアル露出(F7.1・1/640秒 -1.3EV / ISOオート(ISO1250) / WB:オート (撮影:伊達淳一)
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ロウバイ留まっているヒヨドリをパチリ。順光で明るいので驚くほどヒヨドリの羽根が解像している。梅園で撮影したのでフォーカスモードはS-AFのままだったが、動きが少なく、目にバッチリピントが合った。

オリンパスE-M1 Mark II / M.ZUIKO DIGITAL ED 300mm F4.0 IS PRO / 絞り優先オート(F7.1・1/400秒) / ISOオート(ISO200) / WB:オート (撮影:伊達淳一)
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早咲きの寒桜とメジロ。花の蜜を求めてチョコマカとすばしこく動き回るので、キレイに光が当たる瞬間は少なく、目にしっかりピントを合わせるのが難しい被写体だが、E-M1 Mark IIのEVFと高速AFのおかげで一眼レフ以上に快適にメジロを追えた。

オリンパスE-M1 Mark II / M.ZUIKO DIGITAL ED 300mm F4.0 IS PRO + MC-14 / マニュアル露出(F6.3・1/2,000秒) / ISOオート(ISO800) WB:オート (撮影:伊達淳一)
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同じく寒桜メジロだが、満開に近づいて下の方まで降りてきてくれたので、かなりのド・アップで撮影できた。ただ、撮影距離が短くなるほどピント合わせはシビアになる。AFポイントを移動する余裕も少なく、メジロの顔認識機能が欲しかった(笑)

オリンパスE-M1 Mark II / M.ZUIKO DIGITAL ED 300mm F4.0 IS PRO + MC-14 / マニュアル露出(F6.3 1/1,250秒) / ISOオート(ISO2000) / WB:オート(+B2) (撮影:伊達淳一)
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多摩動物公園のモルモット。AFターゲットモードを[シングル]に設定して、ケージの網目を抜いてモルモットの目にピントを合わせてみた。手前にこれくらい障害物があっても惑わされずピンポイントにAFできるが、さらに[スポット]も追加してほしい。

オリンパスE-M1 Mark II / M.ZUIKO DIGITAL ED 40-150mm F2.8 PRO(150mm) / シャッター優先オート(F2.8・1/250秒) / -0.3EV / ISOオート(ISO320) / WB:オート / 撮影地:多摩動物公園 (撮影:伊達淳一)
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多摩動物公園のレッサーパンダ「ヤンヤン」。おやつのリンゴタイムは、放牧場の手前に置かれているリンゴ探しで夢中になるので、さほど超望遠でなくても撮りやすいが、耳や口元が白く、お腹が黒いので、適正露出には苦労する。

オリンパスE-M1 Mark II / M.ZUIKO DIGITAL ED 40-150mm F2.8 PRO(125mm) / シャッター優先オート(F3.2・1/500秒) -1.0EV / ISOオート(ISO1600) / WB:オート / 撮影地:多摩動物公園 (撮影:伊達淳一)
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同じくリンゴ探しで夢中なレッサーパンダ「豆太郎」のアクロバティックな姿態をパチリ。2016年生まれの子どもなので元気いっぱいだ。バッファ詰まりにならないよう小刻みにC-AFで連写を繰り返しながら撮れた1枚だ。

オリンパスE-M1 Mark II / M.ZUIKO DIGITAL ED 40-150mm F2.8 PRO(125mm) シャッター優先オート(F3.2 1/500秒 -1.0EV / ISOオート(ISO640) / WB:晴天 / 撮影地:多摩動物公園 (撮影:伊達淳一)
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多摩動物公園のアムールトラ「シズカ」。放牧場を右に左にと動き回るので、AFポイントを動かすのがファインダー撮影ではちょっと大変だが、端から端へはすばやく移動できる。横位置と縦位置で設定したAFポイントなどを個別に保持してくれるとありがたいのだが……

オリンパスE-M1 Mark II / M.ZUIKO DIGITAL ED 300mm F4.0 IS PRO / 絞り優先オート(F5.0・1/1,250秒) / -0.7EV / ISOオート(ISO200) / WB:オート / 撮影地:多摩動物公園 (撮影:伊達淳一)

検証−−プロキャプチャーモード

反応の遅れをカバーし、決定的瞬間を逃さず撮る

これまでのミラーレスカメラは、高速連写中には直前に撮れた再生画を順次表示するものがほとんどだ。つまり、連写中に見えた画像は撮れているわけだ。しかし、E-M1 Mark IIの連写L/静音連写Lは連写中でもライブビューが表示されるので、一眼レフカメラと同様、ファインダーで見えた瞬間は実は撮れていない。なので、ファインダーでいい瞬間を目撃してしまうと、微妙に落ち込んだりしてしまう(笑)

そんなファインダーで見えている瞬間を逃さず撮れるのが、新開発のプロキャプチャーモード。シャッターボタンを半押し中は、常にバッファメモリに画像を仮保存しておき、シャッターボタンを全押しした瞬間、バッファメモリに仮保存されていたデータを最大14コマまで遡ってメモリカードに書き出せる、という機能だ。人間の反応速度の遅れをカバーし、決定的瞬間をプロのように逃さず撮影できる、という意味を込めて、「プリキャプチャー」ではなく、「プロキャプチャー」と名づけられているという。

プロキャプチャーHは約60コマ/秒でAF-S(半押しでピント固定)、プロキャプチャーLは約18コマ/秒でAF-C(動く被写体にも追従)。どちらもJPEGだけでなくRAWも記録できる。

ただし、オリンパス製マイクロフォーサーズレンズ装着時のみ利用可能で、他社のマイクロフォーサーズレンズやオリンパス製であってもフォーサーズ規格のレンズ装着時はプロキャプチャーが使えない点は要注意だ。

E-M1 Mark IIは、電子シャッターによる静音連写Lで約18コマ/秒、メカシャッターによる連写Lで約10コマ/秒と連写スピードが速いので、調子に乗って撮影しているとアッという間に撮影枚数が数百枚、数千枚となり、家に帰ってからの画像チェックで膨大な時間を費やすことに(笑)

第1回目の開発者インタビューで、プロキャプチャーLの使用を薦められたので試してみたのだが、通常の静音連写Lに比べるとフレームレートが落ちるのと、次のシャッターチャンスを狙う際、どれだけバッファメモリに余裕があるのかわかりづらく、正直な話、まだプロキャプチャーモードに馴染めていなかったりする。

とはいえ、これから何か起きるのがある程度予測できるようなシーンでは、プロキャプチャーは決定的瞬間を撮り逃がす失敗が少なく、便利な機能ではあると思う。

◇   ◇   ◇

羽田空港を離陸する旅客機と東京スカイツリーが絡む瞬間を狙う。飛行機によって離陸するタイミングが異なるので、いいバランスでスカイツリーと絡むとは限らないが、約60コマ/秒の高速連写で記録し続けるプロキャプチャーHなら、ベストな瞬間を厳選することが可能だ。

連写したカットの一覧
ベストカット
オリンパスE-M1 Mark II / M.ZUIKO DIGITAL ED 40-150mm F2.8 PRO + MC-14(210mm) / マニュアル露出(F6.3・1/2,000秒) / -0.3EV / ISOオート(ISO640) / WB:オート (撮影:伊達淳一)

スカイツリーとバランスが良い位置で、アンコリジョンライトが点灯した瞬間が撮れればベストではあるが、点灯周期が長めの787でもない限り、高速シャッターで光った瞬間を捉えるのは難しい。

実際、この42カット中、アンコリジョンライトが点灯していたのはわずか1カットで、残念ながらスカイツリーに機体が刺さったNGカットだが、何度もプロキャプチャーHでチャレンジすれば、いつかはベストなアングルでアンコリジョンライトが点灯した瞬間が撮れる率は高いと思う。

惜しい!
アンコリジョンライトの点灯を捉えたものの、スカイツリーに機体が刺さってしまった。
オリンパスE-M1 Mark II / M.ZUIKO DIGITAL ED 40-150mm F2.8 PRO + MC-14(210mm) / マニュアル露出(F6.3・1/2,000秒) / -0.3EV / ISOオート(ISO640) / WB:オート (撮影:伊達淳一)
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自分の縄張りに他のカモメが止まるとすぐに追い払おうとする意地悪なカモメがいたので、その瞬間をAFが追従するプロキャプチャーLで狙ってみた。

プロキャプチャー撮影時はシャッターボタンを全押しした瞬間から最大14コマまで遡って記録できるので、被写体が何かアクションを起したのを見て撮影者がシャッターボタンを全押ししても、その約0.7秒前の瞬間から記録できる(連写速度18コマ/秒で、プリ連写枚数14コマの場合)。

このカットの場合、羽根を広げて飛ぶ準備を始めたのをみてシャッターボタンを全押ししたので、柵から足が離れる瞬間は通常の静音連写Lでも撮れていたことになるが、被写体が不意に飛び立つような瞬間は、プロキャプチャーLでないと撮り逃してしまうところだ。ただ、その瞬間がいつ訪れるかは予測不能なので、それまでシャッターボタン半押しを続けなければいけないのはちょっとツライ。

AE-L/AF-Lボタンでプロキャプチャー開始、シャッターボタン全押しで記録というような設定もできると、バッテリーの消耗は激しくなるかもしれないが、もう少し撮影が楽になると思う。ボク自身も、もう少し、プロキャプチャーモードに慣れる必要がありそうだ。

連写したカットの一覧
ピントを合わせた箇所を拡大
ベストカット
オリンパスE-M1 Mark II / M.ZUIKO DIGITAL ED 300mm F4.0 IS PRO / シャッター優先オート(F4.0・1/5,000秒) / -0.3EV / ISOオート(ISO320) / WB:オート (撮影:伊達淳一)

【実写検証編 その2】に続く

伊達淳一

(だてじゅんいち):1962年広島県生まれ。千葉大学工学部画像工学科卒。写真誌などでカメラマンとして活動する一方、専門知識を活かしてライターとしても活躍。黎明期からデジカメに強く、カメラマンよりライター業が多くなる。