私はこれを買いました!

スペックではなく、意思の疎通を求めて選んだカメラ

キヤノン EOS R1(吉村永)

年末恒例のお買い物企画として、写真家・ライターの皆さんに、2024年に購入したアイテムを1つだけ紹介していただきました。(編集部)

プロの道具として追い求めた、違和感のない一体感

自分の主な撮影の対象は人物。そして、カメラ誌の執筆などを長年手掛けていると周囲からは「さまざまなカメラを試してうるさいことを言っているのだから当然、何よりも画質優先でメインカメラを選ぶのだろう」と思われがち。

けれどもそれはちょっと違っていて、僕が仕事のカメラに求める性能で一番重視しているのは使いやすさ。その点で、キヤノンのEOS-1系を歴代使い続けてきた。

直近3年ほどはR3を使ってきたのだが、このR1はR3に比べてファインダーの見えの良さが大きな進化だと感じて購入を決意。予約開始日にWeb予約を入れ、発売日に手にすることができた。

すでに数十回もの撮影に投入しているが、R3からは戸惑うところや違和感を覚える部分がほとんどないままに置き換えができた。それでいて握った時の信頼感や気持ちよくファインダー内で画面を構成することができるようになっていて期待通りの使い勝手に満足している。

「使いやすさ」という言葉からただただイージーなのか? と言われるとそれとはちょっとだけ違う。言葉を選ばずに表現すると、カメラと僕との意思の疎通がうまくいくか? というところがポイントだ。

カメラによっては操作している時に謎の待ち時間が生じたりするが、それを僕は「カメラさん、一体今何をやっているの?」と思ってしまうし、こちらが、「ここにピントを合わせたい」と思った瞬間にフォーカスポイントをその部分に移動したいが思わぬところに動いてしまうカメラもあるし、そうすると「こちらの意思が伝わりにくいカメラだな」と感じてしまう。「超高速で動く被写体専用」とか、「AF特化型カメラ」などと評価されることが多いR1だが、僕は年に1度くらいしか連写はしないし、スポーツを撮影することも少ない。

それでも自分の手の拡張機能のように指示を伝えられ、他のカメラより1ランク上のファインダーで情報と絵柄を伝えてくれるこのカメラはこれから数年間、僕の仕事のメインカメラとして期待に応えてくれるであろうと思っている。

撮影の合間、カフェでの1枚。使いやすさで選んだカメラだと書いたこのコラムだが、ハイライトトーンの豊かさと発色の良さで画質的にもお気に入り
EOS R1/RF28-70mm F2L USM/70mm/マニュアル(1/100秒、F2.5)/ISO 200

近況報告

体力も財力もない自分ですが、機材はヘヴィ級のものを選びがち。だけどなぜか皆さん心配してくださるほどに「重い」と思わないのです。去年から個人的な作品撮りを再開したので、今年も月1くらいのペースで続けられたらいいな、と思っています。

吉村永

東京生まれ。高校生の頃から映像制作に目覚め、テレビ番組制作会社と雑誌編集を経て現在、動画と写真のフリーランスに。ミュージックビデオクリップの撮影から雑誌、新聞などの取材、芸能誌でのタレント、アーティストなどの撮影を中心とする人物写真メインのカメラマン。2017年~2020年カメラグランプリ外部選考委員。