私はこれを買いました!

記憶の中の「WALZ Flash Master」が蘇る

GODOX Lux Senior(豊田堅二)

年末恒例のお買い物企画として、写真家・ライターの皆さんに、2022年に購入したアイテムをひとつだけ紹介していただきました。(編集部)

記憶の中の「ワルツフラッシュマスター」を再現

中学生のころ、プロカメラマンだった叔父が変わったフラッシュガン(フラッシュバルブの発光器)を見せてくれた。ちょっと前の二つ折りのケータイのように縦方向に開く蓋があり、開くと蓋の裏に折り畳み式の反射傘があって、端のつまみをつまんでぐるりと回すと反射傘が開く。そのメカの面白さに魅せられて、触らせてくれるよう、何回もせがんだ覚えがある。このフラッシュガンの商品名は「ワルツフラッシュマスター」だということは、後に知った。

今回Godox Lux Seniorの発表をみて、まず感じたのがこのワルツフラッシュマスターに酷似しているということだ。おそらくこのモデルに範をとったと思われる。ただ、懐かしさは感じても、すぐに購入しようとは思わなかった。ストロボの類はカメラメーカーのものやアクセサリーメーカーのものを山ほど所有しているし、新しく買っても果たして使うのかどうか疑問だったのだ。

気が変わったのはWebサイトで価格を調べたときのこと。たまたまブラックフライデーのセール中だったこともあって、とても安くなっていたのだ。思わず「ポチ」ってしまった(編注:KPI扱いではない並行品には、日本語マニュアルが付属しません)。

こうして届いたGodox Lux Seniorだが、思ったより大柄だったことを別にすれば、記憶の中のワルツのフラッシュガンをよく再現している。小さなつまみを持ってぐるりと回すと開く反射傘はそのままだし、発光管は電球型で反射傘根元のボタンを操作するとポンと飛び出して発光位置にくる。これなどは往年のフラッシュガンのエジェクトボタンを思い出させる。

電球型の発光管はGNを大きくするのが難しいらしく、そのためかISO 100でGN14と小さめだ。マニュアル発光と外光式のオートストロボモードに切り換えられる。オートモードの絞り設定はISO 100でF2.8の1カ所のみ。これはせめてもう1カ所、F5.6ぐらいを設定できるようにしてほしかった。

外光オートなのでカメラ側はマニュアル露出で絞りやシャッター速度を設定しなくてはならない。またホワイトバランスもストロボの位置に合わせる必要がある。逆に現代のカメラと専用ストロボの便利さを痛感する羽目になった。

業界三社の有志が合同で開いた写真展での撮影。ISO 400に設定したので外光オートで本来の絞りはF5.6だが、明るめにするためF4.5で撮影した。35mm判換算で24mmの画角だが、配光は問題ない
ニコン Z fc/NIKKOR Z DX 16-50mm f/3.5-6.3 VR/16mm/マニュアル(F4.5、1/30秒)/ISO 400

近況報告

日大写真学科の講師を辞めて間もなく2年になる。いまだに業界をうろうろしているが、ここにきて教え子の卒業生が個展を開いたり、著名な公募展に入選したりという活躍の知らせが頻繁に入るようになってきた。楽しみなことである。

豊田堅二

(とよだけんじ)元カメラメーカー勤務。現在はカメラ雑誌などにカメラのメカニズムに関する記事を書いている。著書に「とよけん先生のカメラメカニズム講座」(日本カメラ社)、「カメラの雑学図鑑」(日本実業出版社)など。