写真展告知

大西みつぐ写真展:まちのひかり 深川 1980/2020

(深川江戸資料館)

大西みつぐ「まちのひかり 深川 1980/2020」より

東京の町を継続的に撮ってきた写真家は案外多い。洋食屋さんを営む傍ら、アマチュア写真家として昭和時代の庶民の暮らしぶりを熱心に撮られていた方、あるいは親子三代にわたり東京の「定点観測」を行なってきた方もいる。私もまた「下町を撮り続けてきた」ということになっているのだが、どちらかといえば気まぐれに、その時代ごとに勝手な解釈で町と水辺にこだわってきたというのが本音だ。この「深川」でさえ、そういえばこんな写真もあったなという具合。

私は昭和27年、深川も一番端っこの町で生まれた。労働者の皆さんが日々懸命に暮らす町だったこともあり、その明け透けのない日常と人々の営みは記憶として自分の中に色濃く積み重ねられていった。写真家を目指したのもそこからだ。デビュー作とも言える「横丁曲がればワンダーランド」(1980)には深川をはじめとした下町の70年代の日常が収まっている。

今回の写真展の前半は、80年代に中判カメラを肩に深川の町をゆっくり歩いて撮ったシリーズで、タウン誌「深川」に連載させていただいたもの。永井荷風の「日和下駄」のように項目を立てて歩いたものでなく、そこに被写体ありきという偶然の産物である。まだ緩やかな昭和時代のある日が記録されている。よく写真を見ると、今の深川風景とそれほど変わらないことに気づく。もちろん背景の町並みも女性の髪型も変わっているのだが、お参りしたり、そぞろ歩いたりという人々の振る舞いに大きな違いはない。それはこの深川という町の基層であり、風情でもあると言える。私は多分、そういうところが忘れられなくて、こうして今も懐かしい深川に戻ってくるのだろう。

写真展の後半は、3年前に公開した映画「小名木川物語」で撮った写真を含む「まちのひかり」というシリーズ。そして再度、昨年からタウン誌「深川」に連載中の「深川 日々の叙景」。どこがどう違うということでもなく、飽きもせず、ささやかな「まちのひかり」を感じつつ、日長町を歩いているだけの雑記帳。ゆっくりご覧いただければ幸いです。

大西みつぐ

大西みつぐ写真展 まちのひかり 深川 1980/2020

会場

深川江戸資料館 レクホール
東京都江東区白河1-3-28

開催期間

2020年8月5日(水)~8月19日(水)

開催時間

9時30分~17時00分(最終入館16時30分)

定休日

第2・4月曜日(祝日の場合は開館)

入館料

大人400円、小・中学生50円(常設展示室観覧料に含む)

作者プロフィール

1952年深川高橋生まれ。「河口の町」で第22回太陽賞、「遠い夏」ほかで第18回木村伊兵衛写真賞。2017年自主映画作品「小名木川物語」監督。同年日本写真協会賞作家賞。日本写真家協会会員。著書、写真集に「Wonderland」、「下町純情カメラ」、「川の流れる町で」、「まちのひかり」など。