写真展告知
大西みつぐ写真展:NEWCOAST2 なぎさの日々
2019年10月1日 17:00

私は川(荒川)と海(東京湾)を行ったり来たりしながら写真家として生きてきたような気がする。「流れ」は常に逆行することもわかっている。どこかに還りたいがためにそうするのではなく、血流のようなほとばしりとはまた別の生きている回路をそこに見つけたいからかもしれない。
2016年に「川の流れる町で」を発表した後、再び「臨海」に立ち会ってみようと思った。あのバブル期の東京臨海部の妙に浮き足立った賑わいはただの幻だったのだといい切るつもりもないが、すでにこの「令和」という複雑な時代のはじめには、生温かい記憶でしかない。
いったい風景の何が変わったのか? あるいはまた繰り返しの季節を迎えているのか?
東日本大震災の直後に「線量計」を握り臨海公園や人口なぎさを計測した頃の、なんともいえない不安感は一掃されたわけではない。しかし、東京オリンピックという号令が鳴り響いた途端に、再び明るい、いや明るそうな臨海部が目覚めたようだ。東京イーストベイ構想とも深く関係するだろう施設や出来事も増えた。かつてのバブリーな休日に所在なげに集まり来た人々とはまた違う、時代の申し子としての家族や恋人たち、そしてインバウンドの外国人たちが人口なぎさに集いはじめている。 その人くさい風景は以前にも増して面白い。これまで無愛想に撮ってきた私だが、昨今はそうした人々に直接すり寄り、拙い会話を試みながら、この東京の波打ち際で慰留させる人間の営みとその時代を勝手に想像している。
大西みつぐ



会場
 コミュニケーションギャラリーふげん社 
 東京都中央区築地1-8-4 築地ガーデンビル2階 
 
開催期間
 2019年10月1日(火)~10月19日(土) 
 
開催時間
 火曜日~金曜日:12時00分~19時00分 
 土曜日:12時00分~17時00分 
 
休廊
日曜日・月曜日
作者プロフィール
 1952年東京深川生まれ。東京綜合写真専門学校卒業。 
 1970年代より東京下町や湾岸の人と風景、日本の懐かしい町を撮り続けている。写真集・著書に「下町純情カメラ」、「遠い夏」、「wonderland」、「川の流れる町で」など。個展、企画展多数。 
 1985年「河口の町」で第22回太陽賞。1993年「遠い夏」ほかにより第18回木村伊兵衛写真賞。江戸川区文化奨励賞。 
 2017年日本写真協会賞作家賞。2017年自主映画監督作品「小名木川物語」を公開。東京造形大学、武蔵野美術大学非常勤講師、大阪芸術大学客員教授を歴任。 
 現在、日本写真家協会会員、日本写真協会会員、東京綜合写真専門学校特別講師、ニッコールクラブ顧問。