イベントレポート

フォトブック展「MEKURU -めくる-」

楽しみ方を様々なジャンルで提案 各社の垣根を越えた展示に

フォトブック展「MEKURU -めくる-」が7月20日・21日にかけ、北千住マルイ11階シアター1010で開催された。複数の国内フォトブック関連企業が集まるこのイベントは、今年で2回目の開催だ。

前回の来場者はほとんど女性だったというが、今回の会場では男性の来場者も目立つ。「フォトブックに対する意識が男女問わず浸透してきているのでは」と、主催したフォトブック教室メモアルの徳本雅美さんはいう。

会場の中央には、テーマごとのフォトブックが展示されていた。これらはフォトブックメーカーが開催したコンテスト入賞者の作品だ。

「家族」「自然」「趣味」「結婚」「ペット」「旅行」の6ジャンルに分けて配置され、そのすべてのフォトブックを対象に、来場者の投票でグランプリと準グランプリが決まるコンテストが実施されていた。ユーザーからの投稿が一番多いテーマは「家族」。次いで「旅行」とのこと。

展示されているフォトブックはすべて自由に手に取れる。様々なサービスのフォトブックが混在して展示してあることで、判型や紙質の違いなども確かめられるのは、このイベントらしい試みだろう。

「一般的にウェディングでフォトブックへの意識が強くなりますが、それ以前にも手軽に思い出を残す楽しさを知っておいてほしい。そうすれば、子供が産まれてから慌てずにフォトブックを作成できます」と徳本さん。

現在、フォトブックの作成は30〜40代がコアユーザーとなっているという。作品集を作るというより、「自分のアルバムを新しい形で作る」という感覚が強いだそうだ。

徳本さんの話で興味深かったのは、約3年前よりフォトブック作成サービスの中心がパソコンからスマートフォンに移り、それにつれて利用者から「フォトブックを作る=複雑な操作が必要」という概念が無くなってきていること。スマートフォンさえあれば気軽に、しかも立派なフォトブックができる時代になったのだ。もちろんパソコンを使えば自由度が上がるなど、自分のスタイルにあわせて作成できる。

自身の興味のあるテーマを見ながらヒントを探したり、フォトブックの新しいアイディアを探したりと、来場者の熱心に眺める姿が印象的だった。

Phorino/Phorical

このイベントにはフォトブックサービスを提供する協賛各社のブースもあり、それぞれが自社サービスをアピールしていた。その中から新し目のものをいくつかピックアップして紹介しよう。

写真を使ったオリジナル手帳を作成できるサービスを展開している「Phorino」(フォリノ)。フォトブックではなく、自分の写真が入った手帳というのが大きな特徴だ。

タイプはカレンダー(1月始まりまたは4月始まり)、31日分の日記帳、無地などから選べる。子供の写真を使ってカレンダーやスケジュール帳として使ったり、検診の予定表としてオリジナルグッズを作るユーザーが多いそうだ。

1冊580円で作ることができるので、自分用に加えて、遠方に住む家族用など、複数冊作る人もいるという。

いつも10月頃から来年文を受け付けているが、昨年の注文が多かったことから、今年は前倒しで9月上旬から受け付ける予定だという。

Phorinoは手帳だが、同社の「Phorical」(フォリカル)はカレンダーに特化したサービス。縦・横写真それぞれのカレンダーテンプレートが用意されており、壁掛け・机置きが自在なケース付きとなっている。価格は880円。

「クリアファイルONE」は440円で写真入りのクリアファイルを1枚から作れるサービス。卒業する部活の先輩にプレゼントしたり、学校の先生が1クラス分を作成するなどの例があるそうだ。

ユーザーの8割はスマホからの注文とのこと。いずれも印刷は自社内で行なっているそうだ。アクリル板へのプリントサービスも近日開始される予定。

TOCOLLO

株式会社トーコロの「OMOIDE book」は、足立区の卒業アルバムを60年以上作り続けてきた職人のノウハウを個人向けにしたフォトブックサービス。レイアウト、トリミング、色補正などお任せで仕上げてくれる。

写真を1冊のフォトブックにまとめる際、並べ方ひとつで見え方は全く変わってくる。写真の明るさや色味も統一感があると写真集としての見易さが増すだろう。その工程をプロに任せられ、マット紙による1冊を作ることができるのが魅力。料金は10ページ1万2,000円〜。製本も手仕上げで重厚感があり、フルフラット製本なので開きやすい。

写真のアップロードや問い合わせはLINEで行うという点も現代的だ(メールによる注文も可能)。

BABY365

株式会社ポーラスタァの「BABY365」は、赤ちゃんの毎日を1日1ページで写真と文字で綴る1冊。印刷はDNP(大日本印刷)。しっかりとしたハードカバータイプで、上質なカバーやギフトボックスも付属する。

注文はスマートフォンから写真と144字までのテキストをアップロードするだけなので、忙しいママさんに寄り添った商品といえる。

サービス名はBABY365だが、1冊を作り上げるため、必ずしも365日アップロードする必要はない。最低101日分からフォトブックにでき、料金も最大366日分と変わらない。

アプリは無料で使用でき、フォトブックを注文しなくても写真保存アプリとして利用できる。写真はスマートフォン内ではなく、クラウド上に保存される。

Mags Inc.

Mags Inc.(マグズインク)のブースでは、ユニークなフォトブックが目をひいた。

雑誌風のフォトブックを作れるこのサービス、ペット雑誌風、選手名鑑風、学習帳風など、200種類以上のテンプレートが用意されてる。バーバパパやひつじのショーンなどのキャラクターテンプレートも用意されている。専用のクリアカバーが付いてくることも、ほかではなかなか見ないサービスだ。

8月末までは旅行雑誌の「ことりっぷ」と同じサイズ・用紙を採用したことりっぷテンプレートも利用可能。料金は12ページ500円から。

アプリから注文でき、フォトブックはPDFとして保存や友達とシェアすることも可能。

取材を終えて

その他、会場中央ではフォトブックサービス各社によるワークショップが行われていた。写真は富士フイルムのPhotoZINEワークショップ。

15社のフォトイメージング企業がそれぞれの特徴を披露しあい、そして協力していたこのイベント。テーマである「写真を撮ったらカタチにしなきゃ。」に賛同し、垣根を超えて向き合う様が見られた。

SNSやスマートフォンが普及したことで、写真を撮る機会は増えたが、逆に写真をプリントする機会が少なくなった方も多いだろう。あるいはカメラを買ったものの、本来の目的である写真を撮る行為から離れてしまった人もいるかもしれない。

カメラロールやパソコンの中で眠る写真を画面の中だけでなくどう活用するか。そのひとつの答えがフォトブックだ。

価格帯や印刷方法、テンプレートや紙質も各社さまざまで迷いやすいが、このようなイベントでは直接触って、色味や質感を確認することができた。

また、メーカーが用意している見本だけでなく、一般ユーザーが実際に作ったフォトブックをコンテスト形式で手元で閲覧・投票できるのも面白い。

イベント会場では来場者限定のクーポンを配っている会社が多く、いろんな人にフォトブックで写真を残す楽しさ、大切さを体験してもらいたいと願っているのを感じる。写真を撮ったあとにフォトブックを作ることを、ぜひ楽しんでいただきたい。

片岡三果

北海道三笠市出身。絵画を描く気持ちで写真を表現する写真画家。漫画家の両親、大叔父が油絵画家という家庭環境に育ち、幼い頃から美術、デザインを学ぶ。専門学校東京デザイナー学院にて「カメラと仲良くなる」をテーマに写真実習の講師をつとめる。アルバム大使。 カメライベント「Petit Trianon」を主催。2018年8月17日~23日に富士フォトギャラリー銀座で個展を開催。