イベントレポート

【CP+2019】橋向真さん×沖昌之さんのセミナー「写真を1,000倍楽しむためのプリントテクニック」

富士山写真家と猫写真家、それぞれのプリント事情

左から沖昌之さん、橋向真さん。

2月28日から3月3日にかけて開催されたCP+2019。イベント3日目となる3月2日(土)、キヤノンブースで写真をプリントする楽しさを発信するセミナーが開かれた。

登壇したのは、猫写真家の沖昌之さんと富士山写真家の橋向真さん。セミナーは、弊社デジタルカメラマガジン編集長・福島晃の司会進行のもと、「写真を1,000倍楽しむためのプリントテクニック」と題しておこなわれた。

左は弊社・福島晃(デジタルカメラマガジン編集長)。

ひとつの被写体を追うふたりの写真家が出会う

さっそくセミナーがスタート。作品とともに橋向さんと沖さんのプロフィールが紹介された。

まずは橋向さんの紹介から。地元である静岡・吉原から富士山の姿を捉えた作品の数々を披露した橋向さん。

橋向真さん

中でも台風後の夕方に撮影したという、こちらの作品を力強く解説。「夏の富士山です。夕方というシチュエーションの雲海がなかなか出づらいシチュエーションで撮れた、自分の中では最高の1枚です」

続いて、沖さんの紹介。この日着ていたシャツは、アパレルブランドのZUCCaとコラボレーションしたものだとか。南青山の本店などに並んでいるの、ぜひ見に行ってほしいとコメント。

沖昌之さん

作品は、神戸の写真展に在席した折に早朝の時間帯で撮影したものだという。

「廃タイヤの丸い感じがかわいいなとおもいながら、ここでネコが何かアクションしてくれたら超最高と思いながら待って、ぴょんと飛んでくれた白黒のハチワレが飛んでくれたところを撮ったんですが、ちょっとピントが甘くて……。ピントが甘いのが沖くんのいいところだよ、といじられています」

ぶさかわなネコ写真で会場をなごませつつ、話題はプリントに。

PCいらずでプリントできるXK80

会場が盛り上がってきたところで、話題はキヤノンのインクジェットプリンター「キヤノン PIXUS XK80」に移った。

PIXUS XK80の魅力は次の2点。

1つ目は、シアン、マゼンタ、イエロー、ブラックといった4色が定番であるインクジェットプリンター製品の中で、新たにフォトブルーインクを搭載したこと。これにより、プリント感の繊細さや鮮やかなプリントができるようになっている点だ。ちなみに、残りの1色は顔料ブラック。

そして、2つ目のポイントはスマートフォンとの連携だ。PC版とスマートフォン版で、それぞれ対応アプリケーションがあり、手軽にプリントが楽しめる、というもの。

このPIXUS XK80を実際に使った橋向さんと沖さんより、ポストカードのプリントを通じた具体的なワークフローや楽しみ方などが紹介されていった。

スマホでプリントまでが完結する:橋向さん

具体的なプリントに話題が移ったセミナー会場。

トップバッターはPCを使わないという橋向さん。メインの撮影機材はEOS Rを使用しているそうだ。「作業は全部スマホで」というテーマで、そのプリントワークフローを披露した。

まず、キヤノン純正のスマートフォンアプリ「Camera Connect」を使って、カメラ内の画像をスマートフォンに転送し、スマートフォン版のLightroom「Lightroom CC mobile」でレタッチを施して、同じくキヤノンのスマートフォンアプリ「Easy-PhotoPrint Editor」を使ってプリントするという流れだ。

「カメラ内で現像してスマホ内のLightroomでレタッチ、そのままXK80に転送してプリントします」

「ぼくはSNSがメインの写真家なので、速報的に(写真を)あげる流れが、この6年間ずっとあったんです」

スマートフォンの性能が向上したこともあり、PC版と遜色のない操作も可能になってきている。橋向さんは「レタッチがすごく下手なので、(画面を)なぞってできるのがいいんです」とコメント。「スマホと同じ色ででてくる」ところにも驚いたと、その使用感を紹介した。

写真展などで来場者にポストカードをプレゼントする場合にも、自分自身の手で手軽にプリントできるところもいいという橋向さん。プリントすることで、ピントがチェックできるところもポイントだと話す。

手書きで文字を作品に添える:沖さん

続けて、バトンはインスタグラマーからスタートしたという沖さんへ。撮影時も正方形を気にして撮影しているのだと話す。テーマは「手書きで思いを添える」だ。

まずは、プリントまでのワークフローが紹介された。正方形に留意しているという言葉のとおり、まずは写真を正方形にトリミング。続けて「Easy-PhotoPrint Editor」でプリントする、という流れ。沖さんはPC派。そして最後の一手間が沖流のプリント術だ。

何をするのかと思えば、余白部分を大きくとり、そこに手書きでメッセージやコメントを書き添えるのだという沖さん。

「温かみのあるもののほうが人に好まれているなと思うんですね。もともと僕は婦人服屋さんで勤めていたので、いっぱい流通しているものよりは、1点ものを着たいなと思うんですね」

こうコメントを添える行為の意図を話した。

「沖さんの、この一言を添えるあたたかみがいいですね。インスタグラムを見ていても、言葉が連想させるものがあるのも見ていていいなと思いますよね」(橋向さん)

さらに、沖さん自身から文字を添える行為をはじめることになったキッカケが紹介された。「通っていた写真教室で、写真のクオリティーが高くても、タイトルが悪いとダメだよ、と。タイトルから読み解いて写真に面白みがでるから」と言われたことがはじまりとなって、インスタグラムで文字を添えるようにしていったのだそう。

プリント後も楽しさがひろがる

ここまでは作品プリントの話だったが、プリントした後での楽しみ方も紹介された。

PIXUS XK80で使用できるプリント用紙には、マグネットシートタイプの「オリジナルマグネットシート」や、127×127mmの“ましかく用紙”「キヤノン写真用紙・光沢ゴールド」など、バリエーションが豊か。

マグネットシートでプリントして冷蔵庫に貼り付けたり、A4用紙にプリントして余白をいかしたアイデアが紹介された。カレンダーにするのもいいのでは、という提案も。

最後にプリントに対する思いやメッセージでセミナーは幕を閉じた。

以前コンテストなどに応募しようとした時に、いざプリントをしてみようと思って、お店で頼んだ時にぜんぜん自分の思ったとおりにでなくて、いやだなと思ってそれからプリントからは遠ざかっていたんですが、PIXUS XK70、PIXUS XK80になってからその考えが大きく変わりました。スマホの画面で見ているものが簡単に出せるというところに感動して、それからプリントにはまりました。(橋向さん)

ネコ写真家を名乗った時に、どこの出版社からも声がかからない状態だったんです。でも誰かに自分が表現したものを見てもらいたいと思って……。大好きな写真を撮って、自分の中で“やった”と思う瞬間ってあると思うんですね。それを自分の中に置いてしまうのではなくて、まずこうやって手軽に出せるものがあるのだから出してみて、それで友だちに見せてみるとか。そういう人と人をつなげていく、人が楽しむようなことでプリンターを使っていただきたいな、と思います。(沖さん)

本誌:宮澤孝周