イベントレポート

助川康史さんが語る「ニコンZ 7が描く鉄道写真の世界」

ニコンファンミーティング2018 ステージイベントレポート

昨年に引き続き開催された「ニコンファンミーティング2018」。今年は9月1日、2日の東京会場を皮切りに、大阪、名古屋、札幌、広島、福岡、仙台と、約2ヶ月に渡って7会場をめぐる大規模なイベントとなった。

最大の目玉は、ファミーティング直前に発表されたニコン初のフルサイズミラーレス「Z 7」および「Z 6」。トークステージのプログラムもこの2機種の紹介やレビューでほぼ埋め尽くされ、実機体験会では長蛇の列ができた。

編集部は9月に行われた東京会場に潜入。助川康史さんによるステージ「Z 7で撮る鉄道写真」の様子をレポートする。

助川康史さん

まず助川さんが強調したのは、Z 7の解像力の高さ。スクリーンに新幹線の全体を写した、いわゆる「編成写真」が表示され、その脅威的な解像力の説明となった。

「鉄ちゃんが大好きな編成写真です。4,575万画素のZ 7で撮影すると、アップにしてヘッドライトに虫がついている様子や車体が少し凹んでいるところまで見えるんです。これだけの高画素でここまでディテールが緻密に見えると、やはり嬉しくなりますね」

大自然の中で電車が走る写真は、画面の9割を森が占めて電車は1割ほどの大きさに写していたが、ここでもZ 7の驚異的な解像力が垣間見える。

「わたらせ渓谷鐵道です。この列車の部分をアップすると、運転手の白シャツまでくっきり見えるほどの解像力です。このコンパクトなカメラでこれだけ写せるのは驚異的で、フルサイズ一眼レフカメラのD850と同じくらいの描写をこの小さなカメラで味わえるんです」

もちろんこれだけの描写はボディの力だけでなく、それに見合ったレンズも必要だ。この2枚はいずれもZマウント用の新大口径レンズ「NIKKOR Z 24-70mm f/4 S」で撮影されたもの。そのスペックの高さは助川さんも強調していた。

「鉄道を入れた風景写真は、主題はあくまで風景で鉄道は小さく入れるのがセオリーです。森の部分に目を向けても、葉っぱの一つひとつが非常に鮮明に写されています」

次は森林の中を走る車両のが流し撮りだ。ミラーレス機は撮影のたびに画面がブラックアウトしてしまう機種が多いため、流し撮りは難しい機種であるとされてきたが、どうやらZ 7では勝手が違うらしい。

「一眼レフカメラ並の感覚というか、ブラックアウトからの回復が早く、一眼レフカメラと同じ感覚で撮影することができます。私も流し撮りが得意でよく撮影するので、ミラーレスカメラでこれだけのものが撮れるようになったのは非常にありがたいです」

Z 7とNIKKOR Z 24-70mm f/4 Sは逆光にも強い。この1枚は太陽を画角内に入れた完全逆光だが、ゴーストもフレアもまったく出ていない。さらにいえば、今回表示される写真はすべてJPEGで撮ったままだという。

ここで性能の良さだけでなく、ちょっとしたテクニックも披露された。

「太陽を撮るときはF13が鉄板の数字です。光芒が自然に伸びる数字で、これを覚えるだけで風景写真の出来が違ってきます」

続いてスクリーンに表示されたのは、夜の山間部を列車が走る写真。撮影データを見るとISO 3200まで上げているようだが、目立ったノイズがみられないのが驚きだった。

「高感度を試したくて撮影しました。拡大すると、電車の横に立っている電柱の輪郭まではっきり見えるんですね。もちろん、これもレタッチしていません。Z 7は画像処理エンジンがEXPEED 6という、これまでの機種よりもひとつ上の世代のエンジンになりました。そのため、高感度耐性がとても上がっているんです。高感度の表現に関しては、フルサイズ一眼レフカメラのD850よりも上かもしれません」

ところで、Z 7で気になるのは「マウントアダプターFTZ」を装着し、既存のニッコールレンズをつけて撮影した時の機能だ。解像力はもちろんのこと、鉄道写真ともなればAFの速度や精度も重要になってくる。既存のレンズが使用できるのは古くからのユーザーにとっては嬉しい一方で、とかくアダプターをつけた際の駆動の遅さは目立ちがちで、購入を敬遠する要素のひとつでもある。今回の場合はどうだろうか。

「こちらの写真は、マウントアダプターにAF-S NIKKOR 200-500mm f/5.6E ED VRを装着して撮影した写真です。AF-Cで新幹線を追い、連写で撮影しました。アップして見てもばっちりピントが合っています。電車の車体番号がZ 7だと最高だったんですが、Z2なのが惜しいですね(笑)。その番号が見えるくらいにピントが合っていますし、連写性能も大満足です。この写真、私はシャッターボタンを押しているだけでした」

他にも広角レンズで高速シャッターを切った写真や、望遠レンズの圧縮効果を利用して海岸沿いの岩と列車を組み合わせた写真など、既存のレンズ性能を存分に生かした作品の数々が表示され、アダプターに対する不安は一掃されたように思う。Zマウントレンズのラインナップはまだ少ないこともあり、既存のFマウントレンズが使えるのは非常にありがたい。

最後に夕日と合わせた鉄道風景写真を表示して、助川さんのモットーである「何を撮るかではなく、どう撮るかが大事」と締めてこの日の公演は終了。Z 7とZマウントレンズの性能はもちろん、既存のFマウントレンズとの相性の良さも確認でき、充実の内容となった。

中村僚

編集者・ライター。編集プロダクション勤務後、2017年に独立。在職時代にはじめてカメラ書籍を担当し、以来写真にのめり込む。『フォトコンライフ』元編集長、東京カメラ部写真集『人生を変えた1枚。人生を変える1枚。』などを担当。