イベントレポート

リコーGR再始動の第一歩「GR meet」が開催

ファン100人とメーカー担当者が確かめ合った"GR愛"

会場入口の記念撮影スポット。

リコーイメージングが4月21日に開催したファンイベント「GR meet」の模様をお届けする。同イベントはリコーGRシリーズのファンに向け、抽選で100名が招待された。会場は東京・神宮前のVACANT。

リコーGRシリーズは、28mmの広角単焦点レンズを基本に採用しつづけてきたコンパクトカメラで、銀塩時代から"高級コンパクト"と呼ばれるカテゴリーを代表する存在。1996年の「GR1」に始まり、2005年からは「GR DIGITAL」としてデジタルカメラでGRシリーズを展開してきた。現行機種は2015年7月に発売されたAPS-Cセンサー搭載機の「GR II」だ。

GR DIGITALシリーズは、コンパクトデジタルカメラとしては異例の長さと言える2年サイクルの新機種投入を10年間にわたって頑なに守り続けた。旧機種にも可能な範囲で新機能を提供する「機能拡張ファームウェア」の配信や、インパクトあるデザインの限定モデルを投入するなど、同じ機種を使い続けていても「どうして新機種に買い換えないんですか?」と言われない希有なデジタルカメラだ。

GRシリーズに敬意を表して、ハンマートーン加工のような質感が美しい「GR Limited Edition」(筆者私物)を提げて取材してきた。この塗装はもう再現できないらしい。

しかしここ3年間のGRシリーズは、率直に言って元気が感じられなかった。GR IIは筆者を含むGRファンがカウンターカルチャー的に心酔していたであろう「不必要な新機種投入はしない」というポリシーには若干物足りなさを感じるレベルで、約10年続いた「GR BLOG」もGR IIの発売と同時期に終了。なんだか、一時代が終わったような寂しさを感じていた。

という具合に、イベントレポートながらこれほど前置きが長くなってしまうような、不思議なカメラなのだ。その後のミラーレスカメラ人気や手頃なフィルムカメラブームにより新たなカメラ人口も増えたと思うので、その"GR全盛期"(とあえて呼ぶ)をご存じない方にも向けて、改めて述べさせてもらった。

ファン100名とメーカー担当者の濃密空間

100人という規模は狭き門だ。筆者の周囲でも抽選に外れたというGRファンが少なくなかったが、これは運営側の”GRらしさ"のある規模でやりたかったというのが理由。集まった約100人のファンは、多くが「GRはこれからどうなるのか?」という、期待とも不安ともつかない心持ちで会場を訪れたことだろう。

リコーの野口智弘さんが挨拶。

イベントの最初には、ファンから"ミスターGR"と呼ばれるリコーの野口智弘さんが挨拶。「今回はGR再始動の第一歩となる最初のイベント。今日を皮切りに、いろいろ展開していきたい」と述べた。続いて登壇した田中長徳さんのオープニングトークでも「今年は素晴らしいものが出るみたいですけど」と語られるなど、"新しいGR"への期待が高まる。来場者それぞれが自らのGRに対する気持ちを再確認したことだろう。

結果として、新しいGRがここで発表されるようなサプライズはなかった。しかし、ここには100人のGRファンがいて、メーカー担当者とお互いの顔が見えている。直接、会話ができる。これにはFacebookやInstagramで何万いいね!がどうの、といった規模感とは全く別の重みがあり、リコーイメージングにおける今後のGRシリーズに対する熱の入りように大きく影響することは間違いない。

中藤毅彦さん。GRは"カメラに撮らされてしまう"ほどに良くできており、ゆえに撮影者の実力が問われると語る。「ハイコントラストモノクロでコントラストとシャープネスを最大、周辺減光を弱」にすると、"自分の文体"になるという。
GRの現状を"5年間ヒットがないポップミュージシャン"と喩えた内田ユキオさん。GRという存在を「ナイフ1本で何でも料理できる感じ」「手ぶらより身軽になる」と表現。 随一のクオリティというエフェクト機能について魅力を語った。
金村修さんは、GRで撮影した動画と写真を織り交ぜた作品を披露。実験映画を撮影していた経験から「16mmフィルムぐらいの画質がある」とコメント。内蔵マイクの音質が意外と良いらしい。

同日午前には安達ロベルトさん、こばやしかをるさんによるGR撮影ワークショップが行われた。こばやしかをるさんは自身で写真ワークショップを主宰するほか、リコーイメージングフォトスクールの講師も務めている。音楽家でもある安達ロベルトさんは、投影した写真の印象に基づいたワンフレーズをシンセサイザーで演奏し、講評のコメントに代えるという斬新なステージだった。登壇者それぞれでGRの使い方やホメどころが多様なところにも、"28mmレンズのコンパクトカメラ"という潔さの中にある、懐の深さを感じさせられた。

イベントの締めくくりに行われた、登壇者のフォトセッション。左から内田ユキオさん、中藤毅彦さん、金村修さん、田中長徳さん、安達ロベルトさん、こばやしかをるさん。

トークイベントの終了後は会場を転換し、来場者、登壇者、メーカー担当者による交流会となった。憧れの写真家との記念撮影、メーカー担当者との意見交換、同じカメラを愛するファン同士が出会う場となっていた。

左から、田中長徳さんと中藤毅彦さんのGR(2013年モデル)。中藤さんは右手親指にネックストラップを巻きつけて持ち、田中長徳さんは"ストラップレス・アナーキスト"を貫く。
安達ロベルトさんの「GR DIGITAL 一周年記念モデル」。イラストレーター寺田克也さんによるオリジナルデザインが特徴。
筆者のカメラに「お揃いですね!」と声を掛けてくれた来場者のカメラ。GR Limited Editionに、10周年イベントの記念リングがアクセント。

4月25日には新サイト「GR official」も立ち上がり、いよいよ新モデルの登場が現実味を帯びてきたGR。ご無沙汰のGRファンも、あの掌の感覚を思い出しながらその時を待ちたい。

集まったGRを並べて記念撮影。すべて同じGRでありながら違った顔つきで、取り違えも起こらない。自分の愛機も並べたいが、まずこの様子を愛機で撮りたいというジレンマ。iPhoneで撮影。
交流会の終了間際、田中長徳さんが自ら"GRマン"になる大サービス。

本誌:鈴木誠