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【フォトキナ】リコー担当者に聞く「GR III」一問一答

5年の技術進化を反映 手ブレ補正+ゴミ取り搭載 操作性も新しく

GR III

リコーイメージングは、フォトキナ2018に「RICOH GR III」を参考出品。来春の発売を予告している。その会場で、ご存じ“ミスターGR”こと野口智弘氏に話を聞いた。

歴代GRシリーズを手がけてきた、リコーの野口智弘氏。

発売予定時期の半年前というタイミングで、発売時さながらの詳細なスペックが明らかにされたことには驚きがあった。しかし、これには大いなる覚悟があったようだ。少ない事前情報で大きな期待を持たせて、正式発表時に「想像と違った」とガッカリされてしまうより、伝えられることは早く伝えたほうが「自分はGR IIIを待つべきなのか、それともGR IIのほうが合っているのか」などをユーザーに判断してもらえて良いだろうとの考え。

価格は「1,000ユーロ以下」にターゲットを設定している。フォトキナ時点で1ユーロ130円を超えているため判断に迷うが、発売ギリギリまで検討するとのこと。また、ストロボ搭載など機能が異なり、価格差も出るとみられる「GR II」も併売していくという。

GR III(左)とGR II(右)。本体の横幅は、1/1.7型センサー時代のGR DIGITALを思い出すサイズ感。
ストロボを省略。ホットシューが黒く塗られ、シューカバーも従来と異なる。

「GR III」担当者インタビュー

——まず、GR IIIでやりたかったことは何ですか?

野口:GR IIがマイナーチェンジだったので、基本性能という点では初代APS-Cの「GR」から5年以上の技術の進化があります。そこで基本性能を画質も含めてしっかりと高め、新世代のものを作らねばと考えました。

それ以外には、デジタルのGRシリーズは長く改良を重ねて様々な機能も搭載してきましたけど、基本的に“建て増し”でした。本来の撮影に集中できるようにシンプルな操作性を目指していたのに、少しずつ多機能になってきていたんです。なので、必要な機能は継続しつつ、新機能もありますが、基本的には1から作り直しました。

——操作性は変わっていますか?

野口:見直しがあります。わかりやすいのはタッチパネルの初搭載です。タッチAFやタッチシャッターが搭載されます。全ての機能とは言いませんが、ある程度のことはタッチ操作でも可能にするつもりです。

逆に、タッチでなければ操作できないこともないようにしていて、タッチ操作をオフにすればハードキーで全て操作できるようにも考えています。「タッチパネルならでは!」というほどの革新的な機能ではないと思いますけど、スマートフォンや他社カメラがタッチ操作のUIでは先行しているため、それらに慣れた方々を無視はできません。

——各社デジタルカメラのメニューが増えすぎて、限界に来ていると感じてます。GR IIIはどうですか?

今回、電源投入時の画面は見せてもらえなかった。
GR II(下)との比較。レバー押し込みによるADJ.メニューは踏襲されるそうだが、親指位置の上下キーはなくなった。露出補正はADJ.レバーがデフォルトになるようだ。方向キー周囲はホイールになった。

野口:スマートフォンが普及した時代に合わせたところもありますが、メニュー画面の階層なども一旦更地にして1から作り直しました。なのでGRを使い慣れた人にとっては、基本的なところは変わりませんが、最初は少し新鮮に感じるかもしれません。階層自体は減りませんが、並べ方や階層の作り方、文字の見やすさなどに改良があります。この思想はGR IIIを第一弾として、PENTAXも含めたリコーイメージングの他機種にも今後反映されていきます。

デジタルカメラの良さでもあり悪いところでもあるのは、一生使わないような機能が入っていることです。各種機能について「迷ったら搭載しておく」というと聞こえはよいですが、作り手のやりたいことや提案を放棄している部分とも言えるかもしれません。

GRは「こういう使い方をしてほしい」と明確に発信して、それに併せて機能を作っていくべきものと自分達でも考えました。

モードダイヤルはごくシンプル。オートモードも省略し、緑のアイコンがなくなったのは美しい。ストラップ取り付け部も従来通りの3点。
動画モードは側面のボタンに割り当てた。モードダイヤルで選んだ露出モードに対して動画撮影をオンにするという操作。画像再生時は通信機能を起動するボタンになる。

レンズ、センサー、手ブレ補正「SR」について

——レンズの構成枚数が1枚減っています。どんなメリットがありますか?

野口:PENTAX一眼レフカメラのセンサーシフト式機構「SR」のメカが大きく、GRにどう入れるかは課題でした。従来のレンズでは厚みが増してしまうため、GRらしいボディサイズのためにレンズを新規に設計しました。光学系の構成枚数が1枚減っています。これによりレンズユニットが軽くなり、AF駆動の速さにもメリットがあります。

画質最優先の設計に加え、マクロモードも新搭載します。GRがAPS-Cセンサーになったとき、最短撮影距離がレンズ前10cmで、それまでの1cmと比べて寄れないと声があったため、GR IIIではいわゆる“スーパーマクロモード”的に6〜12cmの範囲で撮影できるモードを搭載します。

レンズ前6cmという最短撮影距離は本体サイズとのバランスで決まったところもありますが、計算上はGRおよびGR IIにマクロコンバージョンレンズ「GM-1」を付けたのと大体同じ距離です。GR IIIではそこまでカメラ単体で寄れるようになるイメージです。

——コンパクトカメラにセンサーシフト式の手ブレ補正を入れるのは大変では? PENTAXカメラのように、さまざまな飛び道具も搭載しますか?

野口:飛び道具は考えていませんが、これによってセンサーのゴミ取りが可能になるのが大きいです。GRには、センサーにゴミが入って取れなくなるという声がありました。

SR関連では、ローパスセレクターを搭載します。スナップカメラでどれほど使っていただけるかはわかりませんが、レンズの解像が良いのでモアレが出やすくなる可能性も考えられたため搭載を決めました。

——像面位相差AFに対応ということで、AFは高速化されますか? GRはこれまでもパッシブAFなど工夫がありました。

野口:効果があるものになるようチューンしています。速度そのものより、コントラストAFにありがちな前後への迷いが減ります。

——APS-C世代になってカメラ本体の起動が高速化しましたが、GR IIIではどうですか?

野口:もちろん、小気味よく撮れるように起動や終了の速度にこだわっています。

機能について

——ストロボがなくなりました。

野口:GR IIIでも正直なところ「無理をすれば入るかな」という感触ではありますが、新センサーとエンジンで暗所にとても強くなるところや、手ブレ補正が効くこともあり「暗いからストロボを使う」というシーンは減るだろうと考えました。そこで、ストロボを使う人自体も少ないので、全体のサイズを取ることにしました。その代わり、PENTAXのP-TTL調光に対応します。

——GRのエフェクト類には定評があります。新しく変わりますか?

野口:フィルター系は、どちらかというと種類自体は整理していく方向で考えました。その代わり、ひとつひとつのエフェクトでパラメーターの数を増やし、より詳細に調節できるように検討しています。数は減っても、ベースの状態から調節してお気に入りを登録できます。

——現状では無線LANのみ搭載とありますが、スマートフォンと常時接続するような仕組みはないのでしょうか。

野口:常時接続や、指定した画像をプッシュ転送できる仕組みも検討しています。それと、スマホアプリを大きく刷新しますので、スマートフォンへの画像転送はやりやすくなるでしょう。

——レンズ周囲にアダプターピンがあります。ワイコンやテレコンが出るのでしょうか?

野口:検討はしています。

——バッテリーは従来と共通ですか? 単4電池も使えますか?

野口:新規のもので、従来との互換性はありません。使えるのは専用充電池のみです。

——USB充電は可能ですか?。

野口:はい。Type-C端子からUSB充電できます。

——「機能拡張ファームウェア」は今回もやりますか?

野口:もちろん検討しています。

——GRファンに一言お願いします

野口:GR史上で初めて、レンズ、センサー、エンジンを全て新しくして、画質も操作性も含めて最高のものになるように取り組んでいます。期待していてください。

本誌:鈴木誠