イベントレポート

写真集「DEEP ALASKA」刊行記念 松本紀生トークライブレポート

雪の中数カ月をかまくらで過ごす…あまりにもストイックな撮影環境が明らかに

写真集「DEEP ALASKA」を刊行した松本紀生さん。

アラスカの自然を独自の視点で切り取った写真で知られる松本紀生さん。その松本紀生さんのトークライブが12月9日に行われた。

このイベントは、当社インプレスが12月8日に刊行した松本さんの写真集「DEEP ALASKA」の発売を記念したもの。告知および募集を当サイトで行ったところ、70名の募集枠が数日で埋まり、松本紀生さんの人気の高さを改めて認識した。

松本紀生さんといえば、アラスカの大自然が魅せる美しい風景と、そこに暮らす動物たち。夏・冬を長期間現地で過ごすという、ストイックなまでの撮影スタイルだ。テレビ番組「情熱大陸」「クレイジージャーニー」でも取り上げられたこともあり、近年ファンの多い写真家のひとりだ。

撮影:松本紀生

トークライブの当日、さっそく多くの来場者が集った。中には小学生くらいのお子さんを連れた家族も。お子さんが松本さんのファンだそうで、きっかけはやはりテレビだったとのこと。会場までご一緒したが、実際の松本さんに会えるとあって興奮を隠せない様子だった。

ひとりで数カ月、電気のない環境で過ごす

トークライブに登場した松本さんは、まず自己紹介から入った。アラスカの大自然で撮影しているためか、髭面の大男と思われがちだという松本さん。実際にはスリムで都会的な人物である。

子どもの頃の松本さん。

いよいよアラスカでの撮影について説明が始まった。動画を交えながらの解説が多く、松本さんと一緒にアラスカにいるような臨場感を覚える。

現地へは小型飛行機で。さすがアラスカ、スケールが違う。

春はカリブーの群れなどを追う松本さん。テント周りには花が咲き誇るなど美しい季節だが、油断すると巨大な蚊の大群に襲われるそうだ。

クマも松本さんの作品では重要な被写体。専門のガイドが横にいるとはいえ、こんな目の前で撮影することもあるとか。

撮影:松本紀生

テントでの食事風景。パスタを茹で、ヒガシマルのラーメンスープを入れる。食にはこだわりがないという松本さん。

クジラを撮るときはボートで近づく。こんなにすぐそばで不安にならないのだろうか。あまりにも近づきそうなときは、ボートのヘリを叩いて存在を知らせるとのこと。

撮影:松本紀生

そして冬。オーロラを撮るため、自作のかまくらに数カ月こもる。電気もガスもない中、日本から持ってきた本を読破してしまったあとは、ひたすらオーロラが出ることを願ってすごすという。思った通り撮れる年もあれば、撮れない年もあるそうだ。

撮影:松本紀生

1点の作品には様々な背景があり、撮るまでに長い時間がかかっていることがわかった。そして、美しいだけでないアラスカの世界を垣間見たことで、来場者もより作品への理解が深まったのではないだろうか。

マイナス40度でも動いたニコン製品

松本さんの講演のあとは、デジタルカメラマガジン編集長の弊社福島晃との対談となった。対談は、来場者より事前にもらった松本さんへの質問に答える形で進む。

興味深かったのは、機材の進化に合わせて撮影内容も高度になっていったこと。特にニコンD5の高感度画質がオーロラの撮影に実力を発揮したという。イベント当日、D5で記録したオーロラの動画も上映されたが、うねうねと動くオーロラの美しさに感動した。

今回出版された写真集は2014年以降の近作で構成され、全作品ともニコンの機材で撮影されているそうだ。松本さんがニコンによせる期待はことのほか高く、耐低温0度での動作を保証するD5だが、松本さんによるとマイナス40度でも問題なく動いているという。

トークライブ終了後は、松本さんのサイン会へ。松本さんとの記念撮影も遅くまで続いていた。

松本紀生写真集 DEEP ALASKA

地球にはこんなにも美しい場所があった

23年間、アラスカに通い続けて撮影した美しき自然風景と野生動物たち

オーロラ、ザトウクジラ、アラスカヒグマ、オオカミ、カリブー

アラスカで生きる動物たちの息づかいまでも聞こえてくる。

(内容紹介より)

発売日:2017年12月8日
価格:2,700円(税込)
判型:A4横型

本誌:折本幸治