イベントレポート

日本カメラ博物館特別展「カメラ故郷に帰る」が開幕

44カ国にカメラを里帰りさせた愛好家 竹内久彌さんのライフワーク

東京・半蔵門の日本カメラ博物館にて、4月4日(火)から特別展「カメラ故郷に帰る 愛好家が巡るカメラ母国紀行」が始まる。本稿では4月3日に行われたプレスプレビューの模様をお伝えする。会期は7月2日(日)まで。

医師でありカメラ愛好家の竹内久彌さんのカメラコレクションとともに、竹内さんが19年をかけて各カメラの製造国44カ国に足を運んで撮影した写真作品を展示している。

オープニングに出席した竹内さんは、これらの撮影をカメラの"里帰り"という感覚で楽しんで始めたといい、19年に渡る撮影行も2017年2月のブラジル撮影をもって最後とするそうだ。2011年のメキシコ撮影ではピラミッドで転落・骨折し、現地で1カ月入院したこともあったという。しかしそうした出来事もふくめ「すべてが楽しかった」と振り返り、こうした視点もカメラの魅力の1コマとして来館者に見てもらえれば、と述べた。

竹内久彌さん
会場に用意されていた「カメラの故郷の分布図」

6月10日(土)13時〜15時には、会場隣のJCIIビルで竹内久彌さんの講演会も開催。展示作品やカメラの解説を旅のエピソードとともに語る趣旨で、定員100名・参加料300円で参加申し込みを受け付けている。

以下に、展示カメラ・作品の一部を紹介する。

特別展ポスターに登場している「レクタフレックス40000」(リヒテンシュタイン公国、1956年)。300台程度の少数製造された希少な1台。
ドイツは東ドイツ、西ドイツ、ドイツ国と3機種を展示。ライカやローライで知られる西ドイツだが、あえてあまり知られていないカメラを選ぶなど、それぞれのセレクトも面白い。
唯一のライカはポルトガル製の「ライカR3エレクトロニック」(エルンスト・ライツ、1976年)。日本のミノルタの技術を導入して、それまでカメラ製造と無縁だった国で作られた象徴的なカメラとされていた。
2016年11月のブラジル連邦共和国は「カプサ」というボックスカメラでコルコバードのキリスト像を撮影。120もしくは620フィルムを使う6×9と6×4.5の兼用。側面パネルで撮影距離と絞りを変えられる。
ブラジル連邦共和国の「カプサ」(D.F.ヴァスコンセルロス、1950年頃)
ラトビア共和国の「ミノックス」(V.E.F.、1938年)。8×11mmフォーマットの超小型精密カメラ。"リガ・ミノックス"とも呼ばれる初の市販モデルで、作品はリガ新市街の救世主生誕大聖堂を写した1枚。これ以降のモデルはドイツ・ウェッツラーのミノックス社で製造される。
世界有数のカメラ製造国だったソビエト連邦の「レニングラード」(GOMZ-ロモ、1956年)。ロモ唯一の高級カメラでスプリング・ドライブ機構を持つが、その機構が壊れやすいことでも有名だという。
台湾の「シヴィカMX-V」(メーカー不明、1980年代半ば)。台湾ではトイカメラが盛んに作られた時期があり、その中でも比較的しっかりつくられたものだという。天気マークに合わせて絞りを操作するだけの固定焦点レンズと見られるが、銘板に「AUTO FIX FOCUS」とあるのが面白い。
日本製カメラは「オリンパス・ペンF」(オリンパス光学工業、1963年)が選ばれていた。世界的に珍しいハーフサイズ一眼レフとして高評価を得たカメラというのが決め手。
大韓民国の「サムスンECX-1S」(サムスン・エアロスペース・インダストリー、1994年)。3点測距AFが有効に働いたという作品とともに展示されていた。独特のデザインはポルシェデザインによるもの。

通常開館日の会場内は撮影禁止だが、展示されているカメラと作品および解説文は図録(会場で販売)に収録されているので活用されたい。

本誌:鈴木誠