イベントレポート

JPS技術研究会「ドローンの世界(初級編)」に参加してみた

写真家目線で語られる運用方法 法規制についても紹介

日本写真家協会(JPS)といえば、重鎮から新進気鋭の若手までの写真家が加入する、職業写真家の国内最大組織だ。正会員は約1,600名。創立は1950年からと歴史は古く、名取洋之助賞の選考や、写真著作権の普及施策、一般向けのフォトフォーラムなどのイベント実施でも知られている。

どちらかというとお堅いイメージのJPSだが、そんなJPSが「ドローンの説明会を行う」と聞いたので参加してみた。

技術研究会「ドローンの世界(初級編)」は、3月25日(土)に開催。会員に加え、非会員の参加も可能というオープンなイベントだ。ドローン撮影の機材選び、撮影経験談、ライセンス取得から基本的な法律ルールについて、初心者にもわかりやすく語るという講座であり、講師は写真家の茂手木秀行さんと、ドローン空撮経験が豊富なairvisionの横濱和彦さんが務めた。

集まった写真家の年齢層は幅広い。筆者の知る写真家も何名かが受講していたり、見知った女性写真家数名からも声をかけられた。意外にも多士済々といった印象。

受講者が写真家なら、講師の茂手木さんも写真家。茂手木秀行さんの説明は、写真家にとって興味を覚えるものだったのだではないだろうか。

前半の講師を務めた茂手木秀行さん。

例えば茂手木さんは、ドローンを「ドリー」「エレベーター」であると喝破。ドローンのできる基礎的な動きを、ドリー=直進、エレベーター=上昇であり、空中ではあるものの、3次元移動はカメラマンにとって決して馴染みのないカメラワークではないと説明。

また、DJIの3モデル(Mavic Pro、Phantom 4 Pro、Inspire 2)について、搭載サイズセンサーサイズ(1/2.3型、1型、4/3型)やファイル記録形式をもとに用途を解説した。この辺りも、来場した写真家にとってわかりやすい説明だったに違いない。

講座の終了後、茂手木さんによるデモフライトが行われ、大いに盛り上がった。

ドローンを取り巻く法規制

airvisionの横濱和彦さんからは、ドローンを取り巻く規制と、それに沿ったワークフローについて解説があった。arivisionは2012年にマルチコプター1号機を導入、2014年よりCM撮影事業を開始、NHK大河ドラマ「真田丸」のタイトルバック映像の撮影などを担当している。

講座では多岐にわたる法律と、その現状について解説があった。通常の静止画撮影と同様、空撮の仕事とは関係各所への申請が重要であり、さらに通常の撮影にない航空法などにも配慮する必要がある。

中でも国土交通省に申請する航空法では、操縦者自らが申請し、その操縦者の知識や経験を証明するものを要する。飛行ログの提出などで対処できるが、この講座では最近発足した無人航空機操縦技能証明書「JUIDA」も証明書類として使用可能と説明していた。

現在、国土交通省が認めた民間の教育機関が立ち上がっており、そこで教育を受けることで審査を簡略化できるなどの措置が取られている。JUIDAもそうした教育機関で取得できる。

最後に、講座で教えてもらった主な法律を挙げてみる。

航空法(国土交通省)

人口集中地区の上空、空港などの周辺、150m以上の高さの空域を飛行禁止区域とする。2017年1月からは高速道路(自動車専用道路)、鉄道付近も対象に。

夜間、目視外、人・人工物・乗り物などから30m未満、イベント上空、危険物輸送、物件投下についても制限がある。

無人航空機等飛行禁止法(警察庁)

国の重要施設とその周辺300mの範囲を飛行禁止とするもの。国会議事堂、皇居、首相官邸、最高裁判所など。海外から要人が来日した際のみ規制される場所もある。

電波法(総務省)

使用する電波の周波数と出力を規制。

道路交通法(警察署)

道路の占有に関する届け出。

民法(所有者、管理者)

地権者の上空権が関わってくる。

迷惑防止条例(個人、法人)

プライバシーの侵害や個人情報保護の観点から。

産廃法(文部科学省、宮内省)

海や山などにドローンが墜落すると、不法投棄に当たる。回収が難しい場合は、ただちに所轄に届けること。

港湾、河川法(国土交通省、港湾局など)

河川敷など公共地域。国交省と港湾局で対応が異なる。

本誌:折本幸治