デジタルカメラマガジン

「新緑のみずみずしい色を引き出す」レタッチテクニック

2018年5月号特集 人気写真家20人の「3分レタッチ」より抜粋

弊社インプレスから発売中のデジタルカメラマガジン2018年5月号より、簡単だけど本格派「3分レタッチ」の特集を紹介します。

デジタルカメラマガジン編集部によると、最近の写真愛好家はデジタルカメラで撮ったままの"撮って出し"で終わらせず、「撮るの半分・仕上げが半分」といった印象で作品づくりをしている傾向があるとのこと。しかしレタッチテクニックに関しては我流で取り組んでいるという方が多いようで、今回の特集で取り上げることとなりました。

とはいえ、あまり難しくならないように「3分」という時間の制約を設け、その範囲内でも劇的に作品の仕上がりが変わるプロの技を掲載しています。

このページでは、全部で20のレシピが収録されている本特集から、藤原嘉騎さんの風景写真における3分レタッチのテクニックを丸ごと紹介します。

18.新緑のみずみずしい色を引き出す(写真・文:藤原嘉騎)

AFTER

現像せずにこのままでも渋い雰囲気は出ていて良いのだが、今回は透明感ある水の流れに負けない新緑の若々しさや輝きを表現するためにHSLでカラー調整することで、イメージどおりの新緑の色を表現した。

BEFORE

RAW&レタッチプロセス(使用ソフト:Lightroom Classic CC)

・STEP1:白飛びを抑えながら画面を明るくする(基本補正)30秒
・STEP2:かすみを除去して画面にメリハリを出す(基本補正)30秒
・STEP3:色を補正して新緑の緑を引き出す(HSL/カラー)90秒
Total:2分30秒

STEP1:全体を明るく調整しつつ、岩肌と滝の質感を引き出す(30秒)

まずは「基本補正」で画面全体の明るさとコントラストを整える。最初に露光量を少し上げて全体の明るさを調節し、コントラストと明暗に効果のかかる白レベルと黒レベルでさらに細かく調整する。そこから隠れた岩肌の質感を出すためにシャドウを上げ、滝の白飛びを抑えるためにハイライトを下げて、画面各部にディテールが残るように調整する。

STEP2:かすみを除去することで、クリアな滝の風景を演出する(30秒)

「基本補正」のかすみの除去は彩度とコントラストに効果があり、名前のとおりかすみを取ることでクリアな写真に仕上げることができる。しかし、数値の上げ過ぎは禁物で、似た効果のある明瞭度よりも派手になってしまうので、数値は控えめに使用するのがおすすめだ。今回は数値を+30にすることで、明暗とコントラストをはっきりさせてみずみずしさを出した。

STEP3:HSLを使って色を調整して、新緑のみずみずしさを引き出す(90秒)

「HSL」は画像内の色を個別に補正することができるツールで、色相で色合いを、彩度で色の鮮やかさを、輝度で色の明るさを調整できる。緑色を調整するにはイエローとグリーンのパラメーターを動かすことで調整でき、ここでは新緑の若々しさを表現するため色相と彩度で色味をやや強めにし、太陽の光が当たり輝きを増したイメージにするため輝度も少し上げている。やや黄色の明るさが強過ぎたので色相のイエローを下げてイメージどおりの新緑を表現した。

BEFORE
AFTER

1.色相で黄色みを抜き緑を濃く
色相とは簡単にいうと色味の変更だ。例えばグリーンのパラメーターを動かすことで、濃い緑から黄色に変更できる。今回はイエローを-35に、グリーンを+20にすることで、より濃い緑に変更させた。

2.彩度の調整で葉の色を鮮やかに
彩度で色の鮮やかさ(濃さ)を強められる。イエローを+25、グリーンを+80にして葉の色を濃くした。さらにレッドを+15ほど足して葉や岩の間の大地の印象をやや上げる。それにより緑色が美しく映える。

3.輝度の調整で新緑に輝きを加える
色の明るさをコントロールでき、高くするほど白に、低くするほど黒に近づく。新緑の輝きを出すには白味を加える。この緑はイエローとグリーンにまたがっているのでイエローとグリーンを+25にして明るさを足した

KEY POINT:慣れないうちはターゲット補正が便利
8色ある色のどれを補正するか判断に迷うときはターゲット補正機能を使おう。写真上の色を補正したい部分にカーソルを合わせ、上にドラッグすると該当する色がプラスに、下にドラッグするとマイナスに補正される。

そのほかのページも少しチラ見せ

このページで紹介したほかにも、風景、夜景、ポートレート、花火、スナップ、モノクロといったジャンルの人気写真家によるレタッチテクニックを収録しています。定番ソフトであるLightroomやPhotoshopのほかに、Nik Collection、VSCOなども登場。もちろん全て3分キッカリで収まる内容です。ぜひ本書を手にトライしてみてください。

「都市夜景をシネマチックに表現する」上田晃司
「粒状感を強めた都市のモノクローム」中藤毅彦
「ファンタジー映画の1シーンを作る」Iska