デジタルカメラマガジン

シャッター速度は高速と低速、表現の違いを知ることが大切

7月号の特集「シャッタースピード完全攻略」を紹介

写真:萩原俊哉(以下同)

デジタルカメラマガジン7月号の特集は「SS(シャッタースピード)完全攻略」。被写体の静と動をコントロールできるシャッター速度は、露出の決定だけでなく、写真表現に欠かすことのできない重要なピースだ。被写界深度あるいはボケをコントロールするF値に比べて選択肢の幅も広く、その分、表現の幅も大きい。経験がものを言うシャッター速度決定のプロセスを、プロ写真家の設定値を見ながらとことん解説するのが今回の企画趣旨だ。

どのようなシーンで、どんなシャッター速度を選べば良いかのそのヒントと解説がずらりと並ぶが、まずは同じロケーションで高速シャッターによる表現と、低速シャッターによる表現、その両者に挑戦してみることがシャッター速度を攻略するための近道となる。

今回はデジカメ Watch特別版として、本特集から一部を公開してみたい。

長野県の八千穂高原にある落差12mの八岳の滝、四季折々の表情が楽しめ、いまからの季節は新緑と爽やかな青空を重ねて撮影することできる場所だ。午前中の早めの時間に訪れれば、滝と虹を絡めて撮影するチャンスもある。風景写真家・萩原俊哉さんによる高速シャッターと低速シャッターで異なる表現を実感してもらい、それをヒントに実際の現場でチャレンジしてみてはいかがだろうか?(デジタルカメラマガジン編集部)

轟音を立てて飛び出す荘厳な滝……【シャッター速度1/1,000秒】

ニコン D850 / AF-S NIKKOR 70-200mm f/2.8E FL ED VR / 70mm / マニュアル露出(F11、1/1,000秒) / ISO 500/ WB:オート

しぶきの上がる滝の迫力を引き出すためには水流をピタリと静止させることが必要。その目安は1/1,000秒以上のシャッター速度だ。

高速シャッターを選ぶためにはISO感度を上げることが必要だが、光線状態によっては超高感度域になるので注意する。このときはF11まで絞り、しぶきをはっきり捉えて水流のスピードを強調したかった。そこでISO感度はオートで調整したが、ISO500にとどめることができた。

高速シャッターを維持したまま、F値、ISO感度を表現に応じて設定することが重要だ。(萩原俊哉)

1/1,000秒で豊かな水量を表現
被写体ブレが起こるのを防ぎ、水流を静止させて躍動感を得るには少なくとも1/1,000秒以上が必要になる。
水流をデザイン的な印象で写す
風景的な表現で高速なシャッター速度を選ぶと、しぶきが風景の中に埋もれてしまい印象が悪い。こういうときはスロー表現の方が適する。

絹糸のベールが注ぎ込む滝つぼ……【シャッター速度4秒】

ニコン D850/ AF-S NIKKOR 70-200mm f/2.8E FL ED VR / 70mm / マニュアル露出(F11、4秒) / ISO 100 / WB:4,000K / NDフィルター使用

滝つぼにある光沢感のある岩肌に流れ落ちる水を、幽玄に表現したいと考えた。そうした雰囲気を得るには秒単位のスローシャッターが必要であるが、4秒を超えるとラインがほとんど残らず、綿雲のように幻想的なイメージとなる。

そこで適切なシャッター速度を確保するために可変式のNDフィルターを使用。周囲の環境は除き、滝つぼと岩肌だけを70mmで切り取って現実感をあえて減退させている。

最後にホワイトバランスを4,000Kにして青みを加えることで、雰囲気を高め完成させた。(萩原俊哉)

NDフィルターで長秒を確保する
NDフィルターはレンズに入る光の量を減らすためのもの。濃度が濃いほど減光効果が高くスローシャッターを選びやすくなる。
色温度で幽玄な印象をプラス
NDフィルターはレンズに入る光の量を減らすためのもの。濃度が濃いほど減光効果が高くスローシャッターを選びやすくなる。

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なお、デジタルカメラマガジン7月号では、今回紹介したテクニックのほかにも、写真家34名によるシャッター速度を駆使した、さまざまな撮影テクニックが解説されている。風景、夜景、ポートレート、飛行機、鉄道、スナップと撮影ジャンルも盛りだくさん。ぜひとも誌面をチェックしてほしい。(デジタルカメラマガジン編集部)