イベントレポート
【CP+】アドビブースで著名写真家がRAW現像テクニックを解説
大和田良さん、佐藤倫子さん、中西敏貴さん、茂手木秀行さんの4名が登壇
2018年3月4日 07:00
アドビシステムズのブースでは、写真家によるRAW現像ソフト「Lightroom CC」「Lightroom Classic CC」やレタッチソフト「Photoshop CC」の活用方法を指南する主旨のステージを実施している。
登壇する写真家は、中西敏貴さん、茂手木秀行さん、佐藤倫子さん、大和田良さんの4名で、内容はそれぞれ風景、星景、花、スナップの4カテゴリ。内容はRAW現像寄りで、いずれも撮影時に留意すべきポイントと、現像パラメータ操作を行なう際の考え方をレクチャーする内容となっている。初級者〜中級者向け。
また、同ステージでは風景写真家の山村健児さんによるストックフォトのセミナーも実施する。アドビのストックフォトサービス「Adobe Stock」を例に、売れる写真を撮るためのポイントを風景写真家の視点から紹介する主旨だ。
なおステージのタイムテーブルについては、特設サイトを参照されたい。
本記事では、中西敏貴さんのステージ「今日から始める!Lightroom CC“風景写真”で使ってほしいRAW現像ワザ」から、RAW現像テクニックの一部を紹介する。
中西さんのステージは、自身で撮影した作品を大写しにして、それぞれの作品について撮影時の状況や留意点を解説しながら、RAW現像による仕上げのコツを紹介していくスタイル。
「レタッチで色をつくるのは簡単ですが、良い作品をつくるためには、まず撮影条件を整えるのが大前提です。風景写真の場合は、撮影条件が良くなかったのでレタッチでカバーしようということではなく、まず良い条件に出会うことが大切です。この写真では、作業されている方が写真の位置に来るまで5時間くらい待ちました。ちょうど夕日が畑を赤く染めるタイミングで、左側の農家の方もちょうどいい位置で作業されていました。影が長く伸びているのもいいですよね。作品の中で"人の営み"と"自然"が融合しているのは、僕にとって、いいな、と思う瞬間です」
「僕たち風景写真家は、虹を狙って撮ります。虹はプリズム現象なので、"雨のカーテン"の位置、太陽の位置、自分の立ち位置を組み合わせれば、出る位置はある程度読めます。実際に撮影するときは、適切な場所に行って、三脚を立てて、十秒くらいで撮影したらそれで終わりです。なぜなら虹は雨が降っているときに太陽が顔を覗かせたタイミングで現れるものなので、太陽が隠れれば消えます。なのでここで重要なのは、気象条件を狙い撃ちすることなのです。思い通りにならない自然とどうやって対峙し、決定的な瞬間を撮るか。それが僕にとっての風景写真の楽しみの一つです」
中西さんはRAW現像を行なう中で、追い込む範囲を決めて作業していると話す。RAWはパラメータを調整できる範囲が広いためにいくらでもいじれてしまうが、それをせずに、見せるところと見せないところを徹底的に意識することが大事だと考えているという。
「近年のデジタルカメラはカバーできるダイナミックレンジが拡大していますが、自然風景の中にある光を収めるにはまだまだ十分ではありません。風景写真では太陽の中心と日陰の暗部を同時に描くことはできないのです。もちろん全部見せたい作家さんもいらっしゃると思いますが、僕は見せる部分を選んでいます」
夕日が山の稜線にかかった瞬間を写した写真の調整では、全体の明るさを下げることで、夕日の色がより強く出るように調整している。
「昔だったらシャドウ部のディテールは出なかったのですが、今はしっかり写ってくれますね。このままでも十分きれいな風景だと思いますが、僕は下のように仕上げました」
「明るさを落とすことで、画面を横切る赤い帯が出てきます。赤い帯の中に、左に小さく見える塔がぽつんと在る、という構図になります」
RAW現像で作品を仕上げるには、個々の写真について、自分の中で仕上がりのイメージを持っておくことが大切だと話した。
RAW現像の実演では、波打つ川と積もった雪の作品を調整した。外面の下半分に写した雪に対して、上半分の川から上がる飛沫を引き立てるように調整する。
「白レベルを上げると雪のディテールがなくなってしまうし、コントラストを上げると川の暗部がより暗くなってしまうので、ここでは明瞭度を上げ、黒レベルを下げて、シャドーを締めています。パラメータは実際に触ってみないとわからないので、色々試してみてください。RAW現像はやればやるほどうまくなるし、楽しくなります。繰り返しになりますが、大事なのは、自分の中にあるイメージをしっかりと持つことです。イメージが確立していれば、失敗も減ります。RAW現像ソフトは、そのイメージに楽しく近づけるためのツールなのです」