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富士フイルム、“レンズ交換式Xシリーズの決定版”「X-T1」を披露

本体・アクセサリーなど実機写真を掲載

 富士フイルムは20日、同日発表したデジタルカメラ「Xシリーズ」の新製品発表会を開催した。「FUJIFILM X-T1」は1月20日に創立80周年を迎えた同社の記念モデルに位置づける。

 各機種の詳細は記事末の関連記事を参照頂きたい。

「X-T1はレンズ交換式の決定版」(中嶋氏)

 発表会では最初に、富士フイルム株式会社 代表取締役社長・COOの中嶋成博氏が登壇した。

富士フイルム株式会社 代表取締役社長・COOの中嶋成博氏
創立80周年を迎え、新たなコーポレートスローガン「Value from Innovation」を掲げた

 同社は創立80周年を記念して新たなコーポレートスローガン「Value from Innovation」を掲げた。6つのコア事業領域のひとつがデジタルイメージングで、撮る・残す・飾る・送るのイメージングにおけるバリューチェーンすべてを供給できるオンリーワンカンパニーを標榜する。

 特に入り口の部分になる「撮る」には強い思い入れがあるとし、1934年の創業から10年後の1944年にはレンズ開発・生産をはじめ、1948年にカメラ製造を開始。1954年に大口径レンズフジノンスピードレンズ、1974年には光学ファインダーを進化させたSTシリーズ、1988年には世界初というデジタルカメラなどを開発。カメラとレンズにおいても70年以上の実績があるとした。

 現在の市場動向について「カメラ業界は大きな転換点」と分析。コンパクトデジタルカメラが縮小する中でミラーレスが伸長しているとする。また、新製品「X-T1」は画質と機動性を両立させたレンズ交換式の決定版と自信を見せた。

FUJIFILM X-T1。18-55mmレンズを装着
X-T1の「T」は、画質・性能への信頼(Trust)、耐久性(Toughness)のTからきているという

X-T1の「T」は信頼性(Trust)に由来

 続いて富士フイルム株式会社 取締役 執行役員 光学・電子映像事業部長の田中弘志氏が登壇。新機種FUJIFILM X-T1について細かく紹介した。

富士フイルム株式会社 取締役 執行役員 光学・電子映像事業部長の田中弘志氏

 同モデルはXシリーズの機動性・操作性を大きく進化させたとし、画質面では「キレのある描写」「ボケ味」「なめらかな階調」「色再現」「高感度」を特徴とする。中でも高感度はフィルム時代から感度にこだわってきた同社として強みを認識しており、独自センサーと信号処理でディテールや階調を残しながら実現していると説明した。

FUJIFILM X-T1
X-T1の型番は信頼性(Trust)に由来
デジタルカメラで世界最大倍率というEVFを採用

 また、「絶対の信頼性」として、操作性・ファインダー・レスポンス・耐久性をアピール。EVFはデジタルカメラで世界最大のファインダー倍率を謳う0.77倍のもので、タイムラグは0.005秒。世界最短の表示タイムラグとしている。

ダイヤル式操作。電源投入前に設定確認できる点をメリットとする。
フルマグネシウムボディを採用。80点のシーリングで防塵防滴を実現。耐低温-10度も謳う
X-T1のカードスロットは側面。高速転送規格のUHS-IIに対応する(カードの接点が2列に増えている)。RAW+JPEGで8コマ/秒の連写を行なっても、連写速度が落ちるまで20コマ以上撮れた。全画像の書き込みが終わる前から、ある程度の枚数を遡ってプレビューできる
通常撮影時、「縦横自動表示バー切り換え」でカメラの縦横に応じてEVF内の表示が回転する
(参考)デュアル表示時のEVF内を撮影。右のスプリットイメージでピントを合わせ、左の画面でフレーミングする。歪みは撮影に用いたスマホカメラによるもの

 発表会場で担当者に聞いたところによると、従来はセンサーから読み出した信号が画面の上から下まで1画面分溜まるのを待ってライブビューの表示を更新していたが、X-T1では画面内のエリアごとに細かく表示を更新。その読み出しと表示のタイミングを同期させることで、画面内のどこかが常に0.005秒のラグで表示されるようになったという。

 原理的に同じフレーム内で異なるタイミングで読み出された画像が表示されていることになるが、実際にEVFを覗いてカメラを振ってみても、像の揺れなどは感じられなかった。X-T1における0.005秒のラグは、現状のCMOSセンサーとEVFパネルの性能を上限まで引き出した結果だという。

これらがペンタ部に詰まっている。EVFの光学系は3枚のEDガラスを採用。周辺像の流れに配慮した
利用している高屈折の硝材には色付きがあるため、液晶モニターの表示とは別に、色付きを踏まえた色味にEVFをチューニングしているという

 田中氏は続けて、2014年に7本のXマウントレンズを投入すると発表。18-135mm、16-55mm F2.8、50-140mm F2.8の3本は防塵防滴の「WR」レンズとし、加えて超望遠ズームレンズと大口径広角レンズもロードマップで予告している。

レンズのロードマップ
ロードマップ上の新たなレンズ
3本のWRレンズ。X-T1のボディはズームレンズと組み合わせやすいという
XF 16-55mm F2.8 R LM OIS WR(モックアップ)
XF 18-135mm F3.5-5.6 R LM OIS WR(モックアップ)
XF 50-140mm F2.8 R OIS WR(モックアップ)
X-T1用のアクセサリーもラインナップ
ハンドグリップ「MHG-XT」の装着例
発売済みのXシリーズ用クリップオンストロボとバッテリーグリップの装着例
ストロボ「EF-X8」とバッテリーグリップ「VG-XT1」を装着。レンズはXF 56mm F1.2 R
Fnボタンのカスタマイズ画面
背面操作部。ドライブや測光モードダイヤルは上面ダイヤルの根元部分に配置。液晶モニターはチルト式

X-Pro1とは撮影シーンでの使い分けを想定

 X-T1の販売施策について、富士フイルム株式会社 光学・電子映像事業部 営業統括部マネージャーの飯田年久氏が説明した。

富士フイルム株式会社 光学・電子映像事業部 営業統括部マネージャーの飯田年久氏

 X-T1の発売記念キャンペーンは、2月15日から3月3日までの購入が対象。まだ店頭での販売も多くないというUHS-IIカードか、Mマウントアダプターを選べる。

 また、1月28日からフジフイルムスクエア1Fの特設コーナーでタッチ&トライが可能。新製品イベントについても改めて告知した。既に東京で1,000名、大阪で400名を超える申し込みがあるそうで、「回を増やすことも考えていきたい」としていた。

X-T1の発売記念キャンペーン
同日からX-T1のタッチ&トライを実施
5都市で行なう新製品イベント

 質疑応答での飯田氏の回答によると、一眼レフ風スタイルのX-T1とレンジファインダー風スタイルの「X-Pro1」では、撮影シーンや使用レンズによる使い分けを想定。2014年にリリース予定のズームレンズには、X-T1のほうがマッチするだろうとしていた。X-Pro1は、レンジファインダー風のスタイルを活かして被写体とのアイコンタクトをしながらの撮影も可能と説明した。また、X-T1は一眼レフ風スタイルにより特に海外での販売が見込めるとした。

 画質面については、開発センター長の西村氏が「X-Trans II CMOSとEXRプロセッサーIIで従来から変わっていないが、絵作りに進化を盛り込んだ」と説明。S/N向上で最高感度を従来のISO25600までからISO51200まで設定可能とした。加えてホワイトバランスブラケットを導入し、ホワイトバランスを振った3枚を記録できるという。

 フルサイズ機については、現状APS-Cがベストと考えているが、引き続き「可能性は研究している」という。

ハービー・山口氏が出演のテレビCMを放映

 続いて、X-T1のテレビCMに出演するハービー・山口氏が登壇。同氏はXシリーズ初代のX100から使用し、作品作りを行なっており、現在はX-Pro1をメインに使用。“Xシリーズをもっともよく知る写真家”と紹介され、印象を語った。

ハービー・山口氏。X-T1を手に
X-T1のテレビCMを放映。出演は安珠氏、HABU氏、ハービー・山口氏という顔ぶれ

 10日間使ったところ、シャッター音は静かで、ささやくシャッターがモチベーションを上げてくれると印象を述べた。ダイヤルはタッチがやさしく高級感があり、「富士フイルムのこだわりと蓄積を感じる」とコメント。色、階調、高感度ノイズを評価した。

 また、ハービー氏は1月13日まで東京都国立近代美術館で写真展を行なっていたジョセフ・クーデルカ氏と親交があり、数年前の機種とX-T1で撮影時のタイムラグを比較し、クーデルカ氏も「これならいい」と感想を述べたという。

X-T1での作品を紹介した
テレビCMの内容は、ハービー氏が中目黒のカフェや美容室で撮影を行なっている様子だという。会場ではメイキング映像が上映された
会場にはスマホ画像をチェキのインスタントフィルムにプリントできる「instax SHARE SP-1」の姿も。ファームアップでXシリーズ機から直接プリントできるようにする計画があるという。
会場では4Kディスプレイでの展示もあった。
同日発表の製品ではないが、Xシリーズコンパクト「XQ1」の水中ハウジングが初お目見えした
ファインダーへのこだわりの歴史をアピール。瞬間測光可能なSPD素子の初採用により、暗所でもファインダー内の指針が素早く動くようにした一眼レフ「フジカST701」(1970年)、メーター指針に代わる赤色LED素子を初採用した「フジカST801」(1972年)を展示
ライカIIIfと3.5cm F2・5cm F1.2のフジノンレンズ(ライカスクリューマウント)を展示。会場では明るいXFレンズ3本を「新フジノンスピードトリオ」と銘打っていた。同社は1954年〜1956年にかけて広角・標準・望遠の大口径レンズを発売。その当時に大口径レンズをラインナップとして用意していたのがアピールポイントだという。
大きなサイズでの作例展示があった

(本誌:鈴木誠)