「Embedded Technology 2010」で見かけたデジカメ関連技術


 組込みシステム技術の展示会「Embedded Technology 2010」が、1日から3日にかけてパフシフィコ横浜で開催された。本誌ではデジタルカメラ関連の展示についてレポートする。

 Embedded Technology 2010は、組込み技術の最先端テクノロジーとソリューションを一堂に集め、組込みシステム開発に関わる技術者や開発者に向け情報発信を行なう趣旨のイベント。旧名称での開催も数えると、今年で23回目という。主催は社団法人組込みシステム技術協会(JASA)。

小鳥も認識できる顔認識モジュールを出展したパナソニック

 パナソニックシステムネットワークスは、ペットの顔認識機能を追加した顔認識ミドルウェア「FaceU」を出展。1日からライセンスを開始している。既存の顔認識ミドルウェアにペットとして人気が高いという犬、猫、小鳥の顔の認識機能を追加したもので、小鳥の認識に対応する顔認識モジュールは初としている。

FaceUのデモ
小鳥を認識しているところ。複数のペットの認識も可能人物の認識は顔パーツの検知も行なう。写真はすべての検知ポイントを表示したところ

 説明員によると、犬、猫、小鳥において検出の技術的難易度には差がなく、ユーザーのニーズに応じて開発を行なった結果、まず犬や猫のペット認識が登場したという。なお、同一種族のペットは区別できないそうだ。

 また、新機能のマルチアングル対応は、ペットの場合は人間のように頭が上にくる構図ばかりと限らないため、顔が回転していても判別できるようにしたというもの。左右それぞれ135度に回転しても、カメラの位置を回転させずに認識できるという。

FaceUの概要

モバイル向け美肌処理技術を出展したNEC

 従来の顔認識技術より肌色を美しく表現するという画像処理技術を参考出展。これまでの補正技術で起こっていた「コントラスト低下」や「質感の欠如」といった不満点に対し、肌の色情報を3つの成分に分解して、より自然な美肌効果を実現するというもの。

従来技術との比較イメージ補正処理の概要

 画像から肌の色情報を取得し、「表面反射」(艶)、「陰影」(立体感)、「拡散反射」(本来の肌の色)の3つの成分に分解。艶と立体感の質感制御を行ない、本来の肌の色に基づいて肌色補正を行なったのち、合成出力する。応用例として、ある人物の画像から得た色情報に基づき、それに近い肌色に補正することもできるという。

 同社では3D技術を用いてより高精度に同様の補正を行なう技術も開発しているが、カメラ付き携帯電話などのデバイスでも高速に補正処理を行なえるよう、表面反射と拡散反射の空間周波数の違いを利用して、より肌の色成分を分解して利用する同方式を開発した。

ユビキタスは空間検索機能を加えたSQLデータベースを展示

 11月24日に発売した組込みデータベースソフトウェア製品「Ubiquitous DeviceSQL Release 5.0」を出展。デジタルカメラへの搭載例などを展示していた。オリンパスの画像検索機能「フォトサーフィン」(ブースにはμTOUGH-3000を展示)や、パナソニックのGPS搭載コンパクトデジタルカメラ「LUMIX DMC-TZ10」に採用。DMC-TZ10ではGPSの位置情報によって撮影画像に紐づけるランドマーク名の検索に利用しているという。

採用例のデジカメを展示

 デジタルカメラに向く機能としては、指定した座標に一致する点の検索や、中心点から半径圏内の座標検索など。カーナビやPND向けの用途として「この道路沿いにあるガソリンスタンドは?」といった検索も可能という。カメラの開発におけるメリットとして、構成が変わってもデータベースを流用できる点などを挙げていた。

空間検索機能の概要。座標を利用した5通りの検索が可能全文検索機能では、表記ゆれの統一や文字列のマッピング機能なども利用できる

スマートフォン向け画像処理プラットフォームを展示したシキノハイテック

 同社が取り扱うスウェーデンのScalado社が開発したイメージングソリューションを展示。すでに携帯電話などで採用例があるという。ブースではAndroid端末やiOS端末で技術デモを行なっていた。

Andoroid端末におけるフォトアルバム機能のデモアルバム画面は無段階に拡大できる。読み込みの待ちはない

 フォトアルバム機能のデモでは、サムネイルのように大量の画像を並べて表示し、無段階に拡大したりフリック操作でスクロールを行なうことができた。撮影時間順や、画像の色に応じたソートも可能。ソート時は画像サムネイルが立体的にちらばって整列する。スマートフォンの画面内で処理落ちなく動作していた。

ソート時の3D動作。1,000枚以上のサムネイルがコマ落ちなく動作するアップルのiPadではさらに大量の画像を扱っていた。こちらも処理の重さは感じない

 ほかにも、Motion JPEGでライブビューを行なうことでシャッターのタイムラグをなくす技術や、フレームレートを維持したままエフェクトのかかったライブビュー画面で撮影するデモなどを行なっていた。

エフェクトをかけた状態のライブビュー画面。スマートフォンのカメラ機能として違和感のないフレームレートを維持する


(本誌:鈴木誠)

2010/12/3 19:00