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ライカ表参道店で「ライカMプロトタイプ」など展示中。26日(土)に一般公開

ダゲレオタイプレンズや“スペースニコン”も並ぶオークション内覧会

1954年製造という「Leica M3 First Batch Double Corner」。製造番号700001から始まるライカM3のうち、極初期の700043という番号を持つ個体。右手側のトップカバー前側の形状から、日本では“段付き”とも呼ばれる。開始価格は6万ユーロ

ライカカメラジャパン株式会社は、第45回を迎える「ライツ・フォトグラフィカ・オークション」のプレビュー(内覧会)をライカ表参道店で開催する。日時は10月26日(土)の12時00分から15時00分。本稿では25日(金)に行われた報道公開の様子をお伝えする。

ライカ表参道店(東京都渋谷区神宮前5-16-15)

「ライツ・フォトグラフィカ・オークション」は、オーストリアのウィーンを拠点とするオークションハウスが主催する、写真関連用品専門の国際的オークション。11月23日(金)の開催に先駆け、24点のコレクションが来日した。

今回は、ライカの重要なマイルストーンだというM型ライカの誕生70周年を記念し、特にM型を多く集めることに尽力したという。M型の歴史は1954年登場の初号機「ライカM3」に始まり、ドイツ語で距離計(レンジファインダー)を意味するMesssucherからシリーズ名の“M”を、装着レンズの焦点距離に応じて3通りのブライトフレームが表示されることから“3”の名が付いたと言われる。ライカM3は13年の生産期間中に23万台が製造され、現在でもM型の中で最多の生産数を誇るモデルとなっている。

特にレアなM型を集めることに注力したという

今回のハイライトと目されるのは、1948〜1949年に作られたという「Leica M prototype」。開始価格は30万ユーロ。まだ“M”の名前がなかった時代の試作機だそうだ。

今回のハイライトと目される「Leica M prototype」(1948〜49年製造)

一見すると製品版のライカM3に似たシルエットだが、ボディサイズが製品版とは異なり、パーツも全てハンドメイドで互換性がないという。レンズもプロトタイプのエルマーf3.5/3.5cmが備わり、マウントはMと同寸。等倍に近いファインダーを広角レンズに対応させるためのアタッチメント(通称“メガネ”)を取り付けるための溝が、レンズのベース部分に用意されている。しかしメガネそのものは失われており、どんな形状のものかも不明だという。

ファインダーの窓枠や、アクセサリー取り付け部と見られる側面のパーツなど、似ているようで相違点が多い。張り革がいわゆる“シャークスキン”である点も、製品版のライカM3とは異なる
プロトタイプのエルマーf3.5/3.5cm。鏡筒デザインはスクリューマウント用に似ているが、マウントはバヨネット式。ベース部分の円形からはみ出した部分に“メガネ”を取り付けるための溝がある
底蓋を外し、裏蓋を開けたところ。ガラス製の圧板は初期のライカM3に通じるが、開口部が小さかったりと相違点が多い。ところどころに残る加工跡も取材陣の萌えポイントだった
レアなM型ライカのひとつ「Leica M3 black paint Black Dial」(1958年)。マーケティング部門が広報用に使っていたという個体で、フィルムカウンターのディスクが黒いのがポイント。数点しか製造されていないという。開始価格は14万ユーロ
最もレアなM型ライカとされている「Leica M2 grey paint」(1960年)。ドイツ駐留アメリカ空軍向けに20台のみ生産され、現存12台と言われる。開始価格は26万ユーロ

そのほか、スクリューマウントライカの時代からライカM3に至るまでの変遷をうかがい知ることのできるプロトタイプの数々や、巻き上げレバーの試作も並んでいた。

1930年代から1950年代に掛けての変遷が見られるプロトタイプの数々。ボディは「Leica IV to M series Collection of Prototypes」(1936〜1953年)。仕様が異なる10タイプの試作が含まれる。開始価格は15万ユーロ
こちらは「Leica M prototype winding levers」。市販されなかった折りたたみ式の巻上げレバー(手前の3つ)も含まれている。開始価格は5,000ユーロ
「Leica M prototype model」(1948年)。プラスチック製の模型で、市販されたライカM3より寸法が2mm短いという。製品版と異なりフィルムカウンターが上に飛び出ているのがわかる。開始価格は1万5,000ユーロ

特に1936年に試作されたことで知られるライカIV型(後のM型に繋がるプロトタイプ。市販はされず)からライカM3への変遷では、非常に興味深い内部機構を持つものもあった。

10台の試作機より抜粋。注目は距離計部分だ。左は製品版のM型に近い基本構造だが、右は棒状のプリズムを採用している。他社製品を研究していたことが伺える品で、オークションカタログには(similar to the Contax)というストレートな解説文も。横走りシャッターながら“鎧戸”と呼ばれる金属幕をシャッターに採用しているのも驚きのポイント
こちらはライカIV型のアルミシャシー。シャッター速度ダイヤルが高速と低速で一体になっており、直下に低速用のガバナーを収めている。ライカIV型は戦前に作られた試作機であることが知られているが、市販モデルでシャッター速度ダイヤルが一軸になるのはライカM3から

24点の中には、ライカ製品以外のコレクションも並んでいる。

「Nikon F NASA」(1970年代)。“スペースニコン”と呼ばれる宇宙仕様のニコンF。ブラックアノダイズド仕上げ。開始価格は3万ユーロ
「Giroux Daguerreotype Lens 1839」(1839年)。ジルー・ダゲレオタイプカメラ用のレンズで、12本だけ存在が知られているという。開始価格は1万5,000ユーロ

オークションは、オーストリア・ウィーンのホテル・ブリストルで11月23日(現地時間)に行われる。入札はオンライン、現地参加、電話で可能。また、2025年6月に開催するオークションに向けてコレクションを委託する方法もWebサイトで案内している。

ライター。本誌編集記者として14年勤務し独立。趣味はドラム/ギターの演奏とドライブ。日本カメラ財団「日本の歴史的カメラ」審査委員。YouTubeチャンネル「鈴木誠のカメラ自由研究