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Adobe Camera RAWに「スーパー解像度」機能が追加

RAWデータでさっそく効果を検証

アドビは3月10日、M1搭載Macにネイティブ対応したPhotoshopの最新バージョンを公開した。これにあわせてAdobe Camera RAWも更新(バージョン13.2)し、新たに「スーパー解像度」機能を盛り込んだ。

見かけの解像度を向上させる

スーパー解像度の仕組みに関して、同社は“見かけの解像度を上げることで写真の品質を向上させる処理”を行っていると説明している。

左が単純にサイズを拡大した場合。右がスーパー解像度の適用例。Adobe Blogの機能解説より

画像データの解像度はピクセル寸法によって変わってくる。Photoshopでは画像データのアップサンプリングでバイキュービック法などのピクセル補完方法を用いているが、それでも元画像からピクセルサイズを大きくする処理では細部のディティール処理などにみられる画質低下は免れることができなかった。これに関して、同社は今回プレラーニングを施した機械学習モデルを組み入れることで、ディティールを保持したままでの画像拡大に成功したという。

学習にあたっては、リサイズ後の細部情報に欠損が生じやすいテクスチャーなど、ディティールの細かい画像サンプルを重点的に用意してトレーニングを進めていったという。

RAWデータへの適用でディティールの強化も可能

スーパー解像度機能では、元の写真の幅と高さを2倍にする処理がおこなわれる。そのため、生成される総ピクセル数は元画像の4倍相当になるという。生成されるデータ形式はDNG。一例として16MPの画像に同機能を適用した場合、その画像は64MP相当になるという。

対応するファイルフォーマットはRAW形式のほか、JPEG、PNG、TIFFにも対応している。ただし、適用可能な画像サイズは、長辺6万5,000ピクセルまで。このサイズに近いファイルで同機能を適用しようとすると、演算結果が大きくなりすぎるため、エラーメッセージが表示されるという。同社では、今後この制限サイズを拡大する方法についても検討を進めていく考え。

同技術の開発では、ベイヤー配列のセンサーと富士フイルムのX-Trans式センサー双方で機械学習を進めていったとしており、いずれのセンサーで撮影された画像であってもRAWデータに本機能を適用することで、ディティールを強化できる効果も得られるという。

このほか、本機能の使い所について同社は、トリミング等でピクセルサイズが小さくなってしまった画像を適正サイズ以上の大きさでプリントしたい場合や、低い画素数のカメラで撮影した古いデータなどで活用できると説明している。

操作方法

手元のLUMIX S5(2,400万画素)で撮影したRAWデータにスーパー解像度機能を適用してみた。まず、これまで同様、RAWデータをPhotoshopにもっていき、Camera RAWを起動する。表示された画像上で右クリックメニューから、「強化...」を選択するだけで適用操作が可能になる。

元となったRAW画像のデータ量は36MBだったが、適用後に生成されたDNGデータは355MBとなった。今回のケースではデータ量は約10倍になったことになる。ピクセルサイズは、元データのサイズが6,000×4,000ピクセル。適用後の画像では2倍の1万2,000×8,000ピクセルとなり、公称どおりの状態になった。

適用後と前をそれぞれ比較してみたが、コンクリートの孔などのディティールがシャープになっていることが見てとれる。大きな出力サイズで、より精細感を意識したい場合などで有効な機能といえそうだ。

左が適用後の画像で右は元画像。適用後の画像は2倍に拡大されるため、50%に縮小表示して拡大部分の大きさを揃えた
上の画面写真をさらに拡大

本誌:宮澤孝周