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Adobe、iPad版Photoshopを正式リリース

ペンによる精密な操作が魅力 デスクトップ版との連携も

Photoshop iPad版。ホーム画面は現在のデスクトップ版Photoshopと似たUI。

iPad向けのPhotoshopがいよいよ正式公開された。これまでクローズドベータによって提供されていた製品で、今回改めて正式発表になった。特にiPad Proのようなペンデバイスをターゲットにしており、レイヤーを含めたPhotoshopの主要な機能を搭載したほか、ドキュメントクラウドを経由したデスクトップ版との連携機能も搭載している。短時間ながら試用する機会を得たので紹介したい。

Photoshop iPad版は、アドビのクラウドストレージ「クラウドドキュメント」と連携し、ファイルは全てここを経由してやりとりする。アップロードされたPSDファイルは元データとして保存されるが、iPadで処理する場合には「PSDC」ファイルに変換され、ファイル自体をまるごとiPadに転送するのではなく、Lightroomでいうプレビューファイルのような形でやりとりされる。

iPad用にUIをチューニングしたということで、2本指でのスワイプや3本指のタッチなど、タッチ操作を駆使しして効率的に作業ができる。例えば2本指タッチで取り消し、3本指タッチでやり直し、カンバスのズームはピンチ、パンは2本指ドラッグ、といった具合。iPadにキーボードを接続して操作することを想定し、ショートカットキーも用意されている。

画面上にあるタッチボタンにタッチすると、各ツールの機能をショートカットとして素早く利用できる。

こちらはタッチショートカット。

起動するとホーム画面が表示されるのはデスクトップ版Photoshopと同様。画像作成時のワークスペースには、左側にツールパネル、右側に各種パネルが並ぶ。

上部のメニューはなく、基本的にツールは全てパネルから実行する。逆に言えば、パネルにない機能は搭載されていない。これは、タッチ操作を前提としたiPad版だからのようだ。

ツールを長押しでサブ項目が表示される。ブラシを表示したところ。

レイヤーパネルは2本湯便のピンチイン・アウトで拡大縮小できる。

レイヤーパネルを拡大すると、調整などのレイヤー処理も可能。

ツールパネルは、移動、選択、クイック選択、消しゴム、修復ブラシ、テキストといった基本的なツールが用意されている。各ツールは、タッチしたまま長押しするとサブ項目が表示され、機能を選択できるのは、デスクトップ版と同様だ。

右側のパネルはレイヤーパネルが用意され、レイヤーの作成や調整レイヤーなども利用できる。機能としては最小限でもなく、比較的多くのことができる。タッチするだけで被写体を選択して調整をしたり、複製をしたり、さまざまな処理が可能。

海中の写真と亀の写真をレイヤーで読み込み、亀を範囲選択して合成した例。範囲選択の際、細かい部分はペンを使えば調整しやすい。

iPadのカメラを使って撮影した画像を取り込み、合成するという作業もできる。iPadのカメラロールから画像を読み込むことも可能。

ホーム画面からチュートリアルへのアクセスも可能で、利用方法を習得できる。

作業は全てクラウド経由で同期されるので、iPadで編集したものをPCに戻って最終調整する、といったこともできる。クリエイティブクラウド経由であれば、Photoshop以外でも利用することが可能だ。

現時点では、アドビ自身が想定したすべての機能を搭載したわけではなく、「カンバスと回転」「シェイプとパス」「独自のブラシを使用」「カーブを調整」「スマートオブジェクト」といった機能は搭載されていない。今後実装を予定しており、順次機能強化を図っていく考え。

iPad版ということだが、特にiPad ProとApple Pencilとの親和性は高く、細かい作業も行えるペンとの併用することで、より精密な作業が行える。タッチを併用することで、まるで左手でキーボードショートカット、右手でペンタブレットなどによるペン操作をしていたような感覚で作業もできるので、十分実用的だと感じだ。

デスクトップ版Photoshopには、機能としては及ばないが、もともと併用することを想定しているようで、例えば外出先の大まかな作業、最後の修正をiPadで、本格的な処理が必要な場合はデスクトップで、といった使い分けは必要だろう。そういうときも、クリエイティブクラウド経由でデータを同期して、作業を再開できる点も使いやすい。

Lightroomとの相互運用はあまり期待されておらず、デスクトップ版Lightroom ClassicとPhotoshopのように、Lightroomの調整コピーをPhotoshopで編集する、といった機能はない。デスクトップ版でいうBridgeに当たる画像管理ツールもないため、基本的に写真の管理・補正はLightroomで処理するという位置づけだろう。

Photoshop iPad版は、外出先で軽快に作業できる点がメリットだ。ペンを使うことで、精密な作業にも対応できる。今までもペン作業自体はWindowsの2in1 PCでも可能だったが、そうした作業をiPadでもできるようになり、よりPhotoshopでの作業が気軽にできるようになりそうだ。

小山安博

某インターネット媒体の編集者からライターに転身。無節操な興味に従ってデジカメ、ケータイ、音楽プレーヤー、コンピュータセキュリティなどといったジャンルをつまみ食い。軽くて小さいものにむやみに愛情を感じるタイプ。デジカメ、音楽プレーヤー、PC……たいてい何か新しいものを欲しがっている。