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富士フイルム、業務用プロジェクター市場に参入

スクリーンまで75cmから100インチを投写

富士フイルムがプロジェクター市場に新規参入する。1号機となる「FP-Z5000」を4月に発売する。価格はオープンだが、100万円未満を想定。カラーはブラックとホワイトで、ホワイトは2019年夏の発売となっている。

主に業務用を想定した1チップDLP(0.65型、フルHD)方式のプロジェクター。屈曲光学系を用いた世界初という2軸回転機構レンズを搭載し、設置の自由度を高めているのが特徴。これまでプロジェクターの設置が難しかったケースでの利用を見込む。フォトキナ2018で開発発表していた製品。

レンズが可動するため本体を移動させずに上下、前後、左右の6方向への投写が可能。また超短焦点投写が可能となっており、スクリーンまで75cmの距離で100インチの投写を可能とする。

5,000lmクラスとしては最大というレンズシフト機能も備える。上下82%、左右35%に投写位置をずらすことができるため、スクリーンの正面から外れた位置からの投写にも対応。人がスクリーンに近づいても影ができにくいといったメリットもある。

横置きが難しい場所では立てて設置することも可能。従来よりもフットプリントを小さくできる。

可動レンズを採用しながらも画面の隅まで高い画質を維持するために、同社の放送用レンズなどで培われた技術を投入して製品化した。独自開発したレンズシミュレーションソフトによる光学設計や、職人が1台1台行うという光軸調整工程を経ることで高解像力を実現したとしている。投写レンズは20枚以上で、1枚目には87mmと大きな非球面レンズを採用している。同社ではレンズの量産技術も強みになっていると訴求した。

レンズ部分の試作品。

前玉に非球面レンズを採用した。

レンズ部分のカットモデル。

インターフェースはHDMIが3、RJ-45が1、DC5V出力ができるUSB TypeA端子も備える。外形寸法は470×375×108mm(レンズ収納時)、重量は約12kg。リモコンも付属する。他社製品に比べて収納がコンパクトになるとしている。

プロジェクター市場のゲームチェンジャーになる

都内で行われた発表会で登壇した富士フイルム代表取締役社長COOの助野健児氏は、「創立85周年を記念し、満を持して発売する製品。市場を広げる画期的なプロジェクターであり、世界市場にゲームチェンジを仕掛ける」と挨拶した。

富士フイルム代表取締役社長COOの助野健児氏(右)、同社光学・電子映像事業部 事業部長の飯田年久氏(左)。

富士フイルム光学・電子映像事業部 事業部長の飯田年久氏によると、プロジェクター市場は設置済み機種のリプレース需要が多く横ばい。成長市場というわけではないという。同社では新規の設置を妨げているのは設置スペースにあると分析。一例として、これまでプロジェクターが設置できずフラットパネルディスプレイを設置していたようなケースで、大画面が実現できるプロジェクターへの置き換えなども見込んでいる。

「シェア目標は非公開だが、事業として早期に100億円規模にする。市場の要望を聞きながら数機種にラインナップを増やす。4KやHDRなどの要望も聞いているので高輝度タイプも含めて検討していきたい」(飯田氏)。

同社が新たに考えている利用シーンとしては、ギャラリーや回廊、ホテルなどフロントのカウンター、大型商業施設、天井も含むフロアや通路、屋外を含むイベント会場などだ。

発表会の会場には想定される利用シーンが再現されていた。ギャラリーを想定した展示では壁面の近くで、かつセンターから外れた位置から投写(90インチ)。人がかなり近づいても影ができない。このように縦位置の投写も対応している。なお今後、同社が運営するギャラリーへの設置も予定しているとのこと。

フロントのカウンターを想定した展示では、カウンターの中から投写していた。外部に設置しないのでインテリアや人への圧迫感に配慮できるほか、スタッフがカウンターの内側にいても影ができにくいメリットがある。プロジェクターなので、フラットパネルディスプレイでは難しい曲面への投写が可能。

床と天井に投写した展示。従来品のように本体を縦にせずとも上方、下方に投写できるため、プロジェクターが目立ちにくい。天井がさほど高くなくても1台で広い面積に投写でき、これまでのように複数台を使用したりそのためのブレンディング処理などが不要なのもメリットだ。

ホームシアターを想定した展示もあった。3台のプロジェクターで幅10mのワイドスクリーンを実現している。床置きのまま投写できる。

また屋外での大画面投写では、これまでのようなプロジェクターを設置する櫓を数十m離れた位置に作る必要が無い。スクリーン近くの地面の高さから投写できるため、その分観客が増やせるほか施工費用も減らせるという。

武石修

1981年生まれ。2006年からインプレスのニュースサイト「デジカメ Watch」の編集者として、カメラ・写真業界の取材や機材レビューの執筆などを行う。2018年からフリー。