インタビュー

プログレードデジタル創業者兼CEOのウェス・ブリュワーさんに、“快進撃”の理由をラリージャパン(WRC)で聞いた

撮影:高橋学

一眼レフからミラーレスの時代へと変わったことで、高速AF(被写体認識)と高速連写が飛躍的に進化を遂げた。秒間で20コマ、30コマ、40コマが当たり前となったことで、いま注目を集めているのが記録メディアのスペック。プロの写真家にも選ばれるブランドとして、いまもっとも脚光を浴びているのがプログレードデジタル。

その快進撃の理由をラリージャパンのために来日した創業者兼CEOのウェス・ブリュワーさんに聞いた。

プログレードデジタル創業者兼CEO ウェス・ブリュワー
サンフランシスコ大学で経済学の学士号を取得、ペッパーダイン大学でMBAを取得。プログレードデジタルの創業者兼最高経営責任者。リムーバブルストレージとデジタルイメージング業界で30年以上、経営幹部として企業戦略、製品開発、市場開発に携わる。プログレードデジタル設立前はレキサーの経営責任者および副社長兼ゼネラルマネージャーを務め、レキサーブランドのすべてのメモリー製品のマーケティング、製品管理、エンジニアリング、品質、製造、サプライチェーン、および需要計画を担当。サンディスクでは副社長を務め、数十億ドルの小売事業を築く重要な役割を果たした。

WRCパートナーになった理由

高橋学(以下、高橋) :まずは風景だったり、ファッションだったり、スナップだったり、いろいろなジャンルの写真がある中で、プログレードデジタルとしてモータースポーツの世界を支えてくれていることに感謝いたします。

ウェスさんはとてもバイクと車が好きで、とくに日本車のコレクションも豊富ということですが、プログレードデジタルがWRCのパートナーとなっている理由は、ラリーという過酷なフィールドが、カードメディアのタフネス性のアピールにつながるというという理由から生まれたものなのでしょうか?

WRC2カテゴリのフロントにはPROGRADE DIGITALのロゴステッカーがある
撮影:高橋学

ウェス・ブリュワー(以下ウェス) :私がサンディスクに在籍していた時代、MotoGPでサポートをしていたドゥカティ・マルボロのケーシー・ストーナーが優勝したことがありました。その時に分かったことはハイスピードのカメラとメモリーカードの性能がモータースポーツの撮影にどれだけ重要であるかということです。

レキサーに移籍してからはWRCをサポートしていますが、実はラリーカーには4台の車載カメラがあって、連続して動画を記録しています。ご存じのようにラリーカーは激しく揺れて、雨にぬれることもあれば、砂埃も舞う。ときには横転して炎上することだってある。ものすごく過酷な環境の中で記録を続けなくてはならない。

我々のメモリーカードがWRCの過酷な環境の中で、常にパフォーマンスを発揮することを証明されることが、このメディアのブランド戦略とマッチしていると思い、WRCをスポンサードしています。単純に私がバイクと車が好きなので、それも理由の1つかもしれないけれどね(笑)

WRCカーには前方とドライバーなど定められた位置のほか、アクセルやブレーキワークが見える位置など各チームが決めた場所に車載カメラが搭載される。現在、WRCおよびWRC2ともにプログレードデジタルのCFastが使われている

速度と信頼性を兼ね備えたたカードメディア

高橋 :私も最近、EOS R3をメインカメラとして導入をしたのですが、これまでのレフレックスでは考えられないぐらいにAFと連写性能が進化をしています。そこでその性能に相応しいメディアとしてプログレードデジタルのCFexpressを選びました。初めて導入するタイプのメディアだったので他社製品と比較するほどの情報は持ち合わせていませんでしたが、すでにF1など他のモータースポーツで導入済みの先輩がいましたし、過酷なラリーをサポートするブランドであることを考えればモータースポーツの撮影に携わる僕にとっては一択でした。今回僕が着用しているフォトグラファーズタバードにもブランドロゴが大きく入っていますね。

プレスルームで作業する高橋学さん。着ているフォトグラファーズタバードにプログレードデジタルのクレジットが記載されている

ウェス :カメラが進化することにおいてCFexpressはとても重要なキーデバイスだったと思います。たくさん撮ったものを、素早く記録する。そうすることで、また次のシューティングが行える。ストレスのない撮影環境は極めてハイレベルに来たと思います。

高橋 :現代のカメラにとって速度はとても重要な要素です。でも僕はそれ以上に重視しているのが信頼性です。素晴らしい写真を撮ることはもちろん大切ですが、それ以前に確実に記録して、きちんと納品する事は絶対条件ですので安心感はとても大切なものなのです。プロとしては当たり前のことではありますが、水を被ったり埃まみれになったりする現場で撮影しているだけにその想いは余計に強くなっているのかもしれません。

DAY3/SS13(岡崎)では砂埃が舞う中を疾走。EOS R3の秒間30コマで連写をした
撮影:高橋学

高橋 :プログレードデジタルにはCOBALT(コバルト)とGOLD(ゴールド)の2ブランドがありますが、まずはこの差がどこにあるのかを教えてもらえませんか?

ウェス: まずはSDでもCFexpressでもそれぞれに規格があって、その規格をしっかりと守って作ることが大切です。

その上でCOBALTはSLC(シングルレベルセル:1セルに1ビット)というかなり贅沢な仕様になっています。ここでの最大のメリットは高速転送が得られることと、低消費電力であること、そして熱対策です。

とくに動画撮影時はメディアにとっては負荷が大きいため、COBALTの650GBや325GBがカメラメーカーから推奨されているのはSLCによる恩恵がとても大きいと思います。高価になってしまうというデメリットもありますが、そこは高橋さんが言ってくれたように信頼性を重視したスペックに仕上げています。

対してGOLDはTLC(トリプルレベルセル:1セルに3ビット)を採用することで、安価に快適性を楽しんでもらえるとものとして考えています。

撮影:高橋学

COBALT(コバルト)という名の由来

高橋 :COBALTという名称はあまりなじみがないもので、独特な表現だと思ったのですが、これはウェスさんが命名したものなのでしょうか?

ウェス: そうです。エントリー製品に既にGOLDと命名していたので、他の貴重な金属名を探し、COBALTに思い当たりました。PLATINUMという名称はすでに他社で使われていましたからね(笑)

高橋 :デジカメ Watchの以前の記事にもそのように記載されていましたが、これはウェスさんが前職のときに自らが命名したものですよね。

ウェス: はい。でも、COBALTという聞き慣れない言葉だからこそ、このメディアならではのオリジナリティや価値が生まれたと思っています。いまでは、COBALTと聞くと、弊社のメモリーカードを思い浮かべてくれる人が増えてきました。デジタルカメラや写真が好きな人たちだけかもしれませんが(笑)。

撮影:高橋学

高橋 :ウェスさんはバイクや車が好きだというのはもう業界では知られている事実ですが、ご自身でカメラを撮影することはありますか?

ウェス: もちろんです。でも最近はどちらかというとアクションカメラを使ってムービーを撮ることが多いですね。

高橋 :現在、プログレードデジタルの商品ラインナップにはCFexpress、SDカード、microSDカード、そしてカードリーダーです。今後の商品展開として何か考えているものがあれば教えてください。

ウェス: リムーバブルSSDで、プロフェッショナルのワークフローをサポートしていきたいとは考えています。ただし、USB4やPCIe 4.0や5.0といった規格をしっかりと見極める必要があると思っています。

CFexpressはタイプBだけでなく、タイプAを採用するカメラもありますので、ここに魅力的な商品を出すことも考えてみたいです。TLCを採用すればV90のSDカードよりも安価で速いメディアができる可能性がありますからね。このあたりは今後、登場するカメラとユーザーニーズを考えながら対応していきたいと思っています。

撮影:高橋学

高性能かつ現場で使いやすいカードリーダー

高橋 :記録メディアもそうですが、それと同じぐらいにカードリーダーにも魅力的な商品があることが私はとてもありがたいと思っています。とくにEOS R3を使う身としてはCFexpressとSDのダブルスロットなので、両方が同時に使えるカードリーダーが重宝しています。裏面がマグネットになっていて、しっかりとホールディングできる点も助かっています。例えば鈴鹿サーキットなどはプレスルームのデスクがスチール製なのできちんとデスクに固定でき非常に使いやすいですよ。

メディアから高速で読み出せるカードリーダーはプレスセンターでも大活躍した

ウェス: ありがとうございます。メディアをパソコンに取り込む時間もカメラマンにとってストレスがあってはならないと考えています。Thunderbolt 3/4専用モデルや、高橋さんが言ってくれたCFexpress Type B&SDなど、いくつかのモデルを用意しています。

同じようにRefresh Proというソフトも用意しました。メディアを完全消去(ディープフォーマット)することで工場出荷時と同じようにリフレッシュできるソフトウェアです。

※Refresh Pro(年間9.99USドル)はメモリーカードの寿命を測定する(ヘルス)と、メモリーカード内の残存データを完全に消去するディープフォーマットで工場出荷時にリフレッシュできる機能がある。

高橋 :日本での販売チャンネルをAmazonに限定しているにも関わらず、ハイアマチュアに選ばれている最大の理由、 このあたりはウェスさんから見てどう感じていますか。

ウェス: 1つはプロマーケットにターゲットを絞ったことだと思います。低価格戦略ではなく、写真を仕事にするプロフェッショナルと、写真を趣味とするハイアマチュアの人にしっかりとターゲットを絞り込んだ結果だと思っています。とくに日本の人たちは、良いものであれば、しっかりと対価を払ってでもそちらを選んでくれる人が多いです。プログレードデジタルとしても日本のマーケットはとても重要なものになっています。

高橋 :プログレードという名称が、このブランドの方向性をそのまま示していますよね。

ウェス: いい名前を付けたでしょ!(笑)

日本人ドライバーの勝田貴元さんも表彰台(3位)を獲得した
撮影:高橋学

高橋学がプログレードデジタルを選ぶ理由

インタビュアーの高橋学さん

ラリーはモータースポーツの中でも過酷なジャンルに入る。砂埃や砂利、山道や公道、雪原など気温や湿度もさまざまな場所を走る。しかも基本的には1回しか走行をしないため、カメラマンとしては失敗が許されない。だからこそ、写真を確実に記録するために使用するカードメディアに求めるのは信頼性と高速性だ。私がプログレードデジタルのCOBALTを選んだ最大の理由はこれだ。

CFexpress Type B COBALT 1700R 325GB

COBALTはSLCという技術を使うことで高速性だけでなく、発熱性にも優れている。EOS R3の30コマ/秒で高速連写をしてもCOBALTはほんのり温かくなる程度で、高熱によってカメラが止まった経験は一度もない。その信頼性があるからこそ、ラリーの現場であっても連写をためらうことなく、シャッターボタンを押し続けることができる。

さらに撮影後にカードからの読み出し速度が快適であることも重要だ。プログレードデジタルにはタイプ別にいくつかのカードリーダーがラインアップされており、これを使うことで圧倒的な速さでパソコンに写真をコピーすることができる。

今回のラリージャパンでは早朝7時からレースが始まる。現地に行くためには朝5時には起きて、夕方までコースを移動しながら撮影する。ホテルに戻り写真を整理して寝るのは深夜になる。1日の睡眠時間は1分でも長くしたいとカメラマンであれば誰もが思っている。高速のカードリーダーのおかげで5分、いや1秒削れるだけでもありがたい。

現在、私が愛用しているカードリーダーはCFexpress Type BとSDカードのタブルスロットモデルだ。

USB3.2 Gen2対応 (CFexpress B/SD) ダブルスロット カードリーダー

EOS R3はこの2つのメディアを利用しているため、この1つで2つのメディアに対応しているのは、とても助かる。私にとって4日に渡る過酷なレースを確実に撮影するために、プログレードデジタルのメディアとカードリーダーは欠かせない存在となっている。

制作協力:プログレードデジタル

高橋 学

1966年 北海道生まれ。下積み時代は毎日毎日スタジオにこもり商品撮影のカメラアシスタントとして過ごすも、独立後はなぜか太陽の下で軽自動車からレーシングカーまでさまざまな自動車の撮影三昧。下町の裏路地からサーキット、はたまたジャングルまでいろいろなシーンで活躍する自動車の魅力的な姿を沢山の皆様にお届けできればうれしいです。 日本レース写真家協会(JRPA)会員