むらいさちの、旅フォトエッセイ さち☆たび

vol.7 静岡県|世界に誇る海中絶景に出会う旅

最も長生きした人間とは、最も年を経た人間のことではない。最も人生を楽しんだ人間のことである。

ルソー(哲学者)

改めて、さち☆たび のルールを紹介しましょう。

1)旅の資金は4万円、あとは国内海外どこに行ってもよし。余ったお金は貯蓄(編集部にて)。1年後、連載が続いており、貯蓄がたまっていたら特別編としてハワイ旅行をする!(笑)

2)カメラや技術の話はしない(写真でゆっくり楽しんでね♪)。

3)人の好意には甘える(笑)、差し入れ・現地案内大歓迎です♪(むらいさちのFacebookページなどでリアルな旅の様子をリポートします。作品はここにてお見せします)

以上3つ。

まあ、B型おとめ座の むらいさち なので、マイペースにゆるっと進めさせていただきます。

旅先では感じた気持ちを、カメラを通じて表現していければと思います。

運と出会いが全てのハンマーヘッドシャークと出会う

皆さんこんにちは! 写真家のむらいさちです。

今回は、静岡県の伊豆半島最南端の沖にある、神子元島に行ってきました!

さち☆たびを初めてから、陸上の撮影ばかりなので、僕のことを陸のカメラマンだと思っている方も多いと思いますが、実は昔はダイビングインストラクターをやっており、今では水中写真家でもあるのです。というか、水中写真が実は本業?だったりします。

今までは、行ったことのない場所に行きたいと思い、海は封印してきましたが、この猛暑……。海に行きたいと同時に、皆さんにどうしても見せたい海がありましたので、今回はその海を皆さんにご紹介したいと思います。

タイトルにもありますが、世界に誇る海中絶景が、伊豆で見られてしまうんです。

それはトンカチ頭が印象的な、ハンマーヘッドシャークです、日本名だとアカシュモクザメと言います。世界でも数カ所でしか見られない、このサメの群れが神子元島で見られるんです。

もちろんそこは自然、必ずなんて言葉はありません。いろいろな条件が全て揃ったときに限って、その姿を現してくれます。

さて、今回はハンマーヘッドシャークに出会えたのでしょうか?

*以下「ハンマーヘッドシャーク」は、愛称の「ハンマー」と省略させていただきます。

海へGO!

弓ヶ浜から見える神子元島。ここへは、船で15分ほど。海水浴客で賑わうこのビーチの沖にそんな凄い海があるとはなんだか想像ができない。

では、出航!

今回お世話になったのは、「神子元ハンマーズ」さん。名前にハンマーと入れてるほど、ハンマーにはこだわりを持ったダイビングサービスです(笑)。スキューバダイビングは、基本癒しのスポーツですが、ここ神子元だけは、戦場のような雰囲気を醸し出しています(笑)。皆も気合い満々。ハンマーと出会う気満々です。

お天気も良く、夏の空を見上げながら準備をしていると、あっという間に神子元島に到着!

では、戦闘開始です!(笑)

海に入ると、とにかくその魚影の濃さに驚きます。ここ神子元島は釣りのメッカでもあります。それだけ魚が多いってことですね。

360度魚・魚・魚!タカベやイサキが雨のように上から一斉に泳いできます。外洋ということもあり、潮あたりも良く、伊豆の海とは思えないほど青く澄んでいます。岩の上には、オオセというサメが寝ていました、この子はとても大人しいサメです。

そんな魚たちを見ながらも、気持ちはハンマー一筋(むしろ視界を遮られるのでちょっと邪魔!笑)。なんとも贅沢。

写真のように、岩場に掴まってハンマーの群れが来るのを待ちます。泡が後ろに流れているので、流れの強さが分かりますね。この時はそんなに流れていませんでした。

そして……待つことしばし……。

リンリンリン!

ガイドさんが、ハンマーの登場を知らせる水中専用のベルを鳴らしました!

ついにその姿を現したハンマー! が、ちょっと遠い……。写真にはうっすらしか写りません。目の前にはたくさんいるのに、欲求不満!

それでは、と岩を離れ中層を泳ぎ、ハンマーを探します。

その時、先頭を泳ぐガイドさんが、激しくベルを鳴らしました!!!!

ガイドさんが指さす方に向かってダッシュ!(写真に写っているのは僕です)

この時どんな光景だったのか?

ついに出会えました、ハンマーの群れ!

この群れに出会った瞬間、アドレナリンが出まくり、頭が真っ白になります。

そして、撮影できる距離まで近寄り夢中でシャッターを切ります。

僕の中でここまで頭が真っ白になれる海は、ここだけです。

この時僕はこんな格好で撮影していました。流れが強く、洗濯機の中にいるような感じだったので、岩を掴みながら必死で撮影。

しかし、人間の欲望とはすごくて、あんな群れを見ても「もっとたくさん見たい、もっと大きな群れに出会いたい」そんな欲求が生まれます。

ならば欲望のまま、また海に捜索に行きます。そして、翌日の2本目のダイビングの時、その瞬間は訪れました。

先頭を泳ぐガイドさんが、いつもより数倍激しくベルを鳴らして、まだ見ぬ向こうを指さしています。

これはただことじゃないと、その指さす方に向かい、ひたすらダッシュで進みます。

息が早くなり、心臓もバクバク……。

そして、そこで出会った光景は、一生忘れられないような絶景でした。

もう、言葉はいりません。

この神々しい景色を見ることができて、本当に幸せでした。ハンマーと一緒に泳いだのはきっと数十秒ですが、僕にはその時間が数十分、いや、永遠のように感じました。

ほんとに、「ありがとう」以外の言葉が見つかりません。

さあ、僕らの住む世界に帰りましょう。

ガッツポーズを自撮りしたくなるほど、興奮のダイビングでした。

最後は、一緒にハンマーを見た方たちと一緒に、ハンマーポーズで記念撮影です♪

今回のハンマーヘッドシャークと出会う旅、いかがでしたか?

世界を探しても、大都市(東京)から日帰りで気軽に来れる海で、これだけのハンマーの大群が見られる海はありません。まさに、世界に誇れる海が、皆さんの近くにあるのです。そう思うと、なんだか誇らしいですよね。

最後に、皆さんが気になることを、神子元ハンマーズの代表の有松真さんに、質問してみました。

Q1. なぜ神子元島にサメが集まるの?

A. 正直分かりません(笑)。ハンマーヘッドシャークはまだ研究の進んでいない種で、謎が多いのです。群れているのは主にメスになります。僕は最大300匹くらいの群れをみたことがあります。まさに川のようで、ダイバーは大群のことを、ハンマーリバーと呼びます。

Q2. 危なくないの?

A. アカシュモクザメがダイバーを襲った事例はありません。昼は半睡眠状態で脳が半分寝ているのでおとなしい。むしろダイバーを見かけると逃げていきます。

Q3. 見たい場合は、どうすればよい?

A. ダイビングのライセンスをまず取得してください(弊社でも講習可能です)。そして外洋に面した海なので、最低限自分のことは自分でできるようになってから来たほうが、海を楽しめます。レベルによってチーム分けをするので、少しスキルに不安のある方でも、安心してご参加いただけます。

今回の相棒

OLYMPUS OM-D E-M1、M.ZUIKO DIGITAL ED 9-18mm F4.0-5.6、防水プロテクター PT-EP11

今回のアイス

伊豆わさびソフト

伊豆といえば山葵ですね。バニラソフトに本物の山葵が入っていて、甘いのに山葵の刺激が見事にマッチしていて、絶品です! いろいろなパターンの山葵ソフトがありますので、ぜひお試しを。

今回の経費とハワイ貯金

交通費(高速代):8,240円
ガソリン代:5,000円
食費、その他経費:3,800円
ダイビング&宿泊:0円(神子元ハンマーズさんに協力していただきました!)
合計:17,040円
残金:22,960円(ハワイ貯金へ)

第1回からの積み立て貯金:60,319円

(2015/8/10)
むらいさち
沖縄でのダイビングインストラクターを経て写真の世界へ。広告写真家の助手後、ダイビングやリゾート雑誌を出版している出版社のカメラマンとして、日本を始め世界の海へ訪れる。その後独立。現在は広告や雑誌の撮影を中心に活動。海だけに限らず世界のありとあらゆる場所で「しあわせのとき」をテーマに撮影を続けており、一年の多くを取材先で過ごしている。著書は写真集「きせきのしま」(小学館)、「LinoLIno」「ALOHEART」(LifeDesignBooks)。共著「光と色の写真の教科書」(技術評論社)、「カメラ*好き1&2」(マイコミブック)。トラベルマガジン「LUKETH」参加。今年2月に写真家川野恭子(きょん♪)と共に、フォトライフマガジン「TORIPPLE」を創刊。muraisachi.com