山岸伸の「写真のキモチ」

第20回:CP+2022で配信「OM SYSTEM OM-1」の動画メイキング

“俺って、もっといろいろ撮れるんじゃないか?”と思わせた1台

北海道ではジュエリーアイスと人物を絡めた撮影にも挑戦。モデルはとかち観光大使の羽柴なつみさん

長年オリンパスのカメラを愛用している山岸伸さん。さっそく新機種となる「OM SYSTEM OM-1」を手に帯広や銚子で撮影を敢行。高感度画質やAF性能、バッテリーの持ちなどの進化に驚いたそうです。その模様はCP+2022のトークステージで「OM SYSTEMを使う理由 我流」として配信されました。今回はその舞台裏をうかがいました。(聞き手・文:武石修)

【OM SYSTEM OM-1登場!】写真家 山岸伸「OM SYSTEMを使う理由 我流」-CP+2022 OM SYSTEM スペシャルトークステージ-

2年ぶりにばんえい競馬を撮影

ばんえい競馬は、はじめて訪れた時に夜が明ける前から早朝にかけて行われる朝調教を見て「なんだこれは……見たことがない風景だ。ここは日本ではないのか」と一瞬思うくらい衝撃を受け、以来ハマって撮り続けて15年になります。

今回、OMデジタルソリューションズからもばんえい競馬を撮って欲しいという希望があり、帯広市に向かいました。コロナ禍ということで、市にお願いして特別に許可をいただき、副市長が同行するという条件で撮影させてもらいました。

OMデジタルソリューションズのフラッグシップ機「OM SYSTEM OM-1」

コロナの影響で2年間入っていない競馬場は、風景がすっかり変わっていてびっくりしました。中央にあった木が伐採されていたりして、馬の流れが完全に変わっていました。以前は一方向からだったのが、色々な方向から馬が走って来るようになり、光の入り方も変わっていて、なかなか撮影に苦労しました。

というのも、僕は一頭を狙うのではなくて朝調教としての全体像を撮っているからです。「多くの人が住んでいる帯広市の真ん中で行われている競馬」というのが僕の見ているばんえい競馬。だからレースそのものはめったに撮りません。それよりも朝の光景が大好きで、零下の中で朝調教だけを撮っているちょっと変わったカメラマンなんです。

バッテリーの持ちに驚く

今回、心の中では新しいカメラのテストをしてみたいと考えていました。僕はマニュアルも見ないし、電源を入れてすぐ撮りたいというタイプだから、果たしてどう撮れるのか試してみたかったんです。

以前、オリンパス機の感度はISO 800くらいが自分の中で使える上限でした。それがOM SYSTEM OM-1で初めて撮影して液晶モニターで見たら「お、写るじゃないか!」と。ISO 2000~ISO 3000に上げても黒がちゃんと締まっていて、変な色付きもありません。2日間で撮影したのですが、2日目にはもう安心してバンバン撮れました。

暗いうちから始まるばんえい競馬の朝調教

7時をまわると朝日が差し込んできた

これまで長くオリンパスのカメラを使ってきましたが、初めてISO 2000を越えて撮影できたという喜びがありました。それと僕はAFしか使いませんが、この暗がりでもピントが合う。もうびっくりですね。

朝調教は、各日とも約2時間で1,500枚を撮影しました。驚いたのがバッテリーで、特に防寒対策をしなくても半分も減らないんですね。ファインダーは覗かず、液晶モニターだけで撮影してですよ。バッテリーの持ちは素晴らしいと思いました。以前はバッテリーの交換がストレスになっていましたからね。

CP+では、ただ写真を見せながら講演して「-15度でもカメラが動いています」と言ってもなかなか伝わりませんから、動画レポートにして見せたかったのにはそういう理由もありました。

OM SYSTEM OM-1に鳥認識(AI被写体認識AF)はありますが、「馬認識」はありません。馬の顔にAFを合わせるために、AFの機能をその場で全て試したんです。それで、一番ピタッと合ったのが鳥認識でした。すると、200mある競馬場の直線でずっと馬の顔にピントが合う。馬も決して遅いわけではないですが、掴んだら離さない感じでした。鳥認識で馬を撮影できた事に感動しました。

帯広の撮影では鉄道も撮りました。焼き肉を食べに行ったらその近くに線路があって、ちょうど特急が来る時間でした。それなら撮ってみようと、入っていいところまで行って撮影しました。連写したら最初から最後まで37枚全部にピントが合っているんですよ。ああ、凄いなと。なにしろ、僕は鉄道を撮るのは素人ですからね(笑)。

特急とかち。ススキを入れ込んでも車体にピントが合っている

ここまで近くなってもピントは問題無し

風景写真も手持ちでOK

そんなわけで、OM SYSTEM OM-1を手にしてから楽しくてしょうがないんです。もう恐ろしいカメラができたなと。ほかにもいろいろ撮りたくなったわけです。それで、帯広から帰ってきてすぐに銚子に行きました。

夜明け前の海です。この景色が手持ちで撮れるんですね。空のグラデーションも以前のオリンパスならこれほどきれいには出なかったでしょう。

犬吠埼の砂浜。空のグラデーションに注目

ここも凄く寒かったですが、カメラはちゃんと動きました。僕はこんなに風景を撮りたいと思ったことは今までなかったんですが、このカメラは撮ってみようという気にさせてくれます。

そして海でのポートレート撮影。このシルエットですが、黒の描写がしっかりしていますね。これも前だったら無理だったと思います。

ミニスカポリスと犬吠埼。シルエットの中にディテールが見て取れる

こちらは純正ストロボを光らせて撮影したもの

日が落ちてからの電車も手持ち撮影です。AFでちゃんとピントが合っているんですね。こんな風に、普段やらない撮影でも楽に撮れてしまうから驚きです。

1/30秒で銚子電鉄を撮影

こちらは1/10秒。もちろん手持ちだ

とにかく写欲が湧く楽しいカメラ

お伝えしたいのは、「OM SYSTEM OM-1は楽しいぜ」ということなんです。何にでもピントが合います。少なくとも僕が被写体にしたものにはバッチリピントが来る。だから女の子の撮影だって楽勝ですよ。

ミニスカポリスと銚子電鉄

こちらも銚子で撮影したミニスカポリス

このカメラを手にして思うのは、「時間とお金があったらキャンピングカーを買って日本中をまわりたい」ということ。本当に満を持して登場したカメラだと思います。本当はもっと早く出して欲しかった。今までオリンパスを使って思っていたのは、センサーが小さかったりと他社に比べてハンデがあるということ。それが、よくぞここまで写るようになったと感心しています。

やはり、写真をやっていく上で楽しいということが一番。プロでも同じで、仕事で撮りながらも楽しめることがいい作品に繋がります。僕みたいに女の子しか撮らない人にも「俺って、もっといろいろ撮れるんじゃないか?」と思わせてくれるカメラですね。

(やまぎし しん) タレント、アイドル、俳優、女優などのポートレート撮影を中心に活躍。出版された写真集は400冊を超える。ここ10年ほどは、ばんえい競馬、賀茂別雷神社(上賀茂神社)、球体関節人形などにも撮影対象を広げる。企業人、政治家、スポーツ選手などを捉えた『瞬間の顔』シリーズでは、15年をかけて総撮影人数1,000人を達成。また、近年は台湾の龍山寺や台湾賓館などを継続的に撮影している。公益社団法人日本写真家協会会員、公益社団法人日本広告写真家協会会員。