写真家が教える とっておきの「桜」撮影スポット

第4回:新潟県・福島県・山形県・宮城県・秋田県・岩手県・青森県・北海道の桜

福島潟/三春滝桜/西行戻しの松公園/角館の枝垂れ桜/為内の一本桜/弘前公園の桜/五稜郭

撮影:館野二朗(2021年4月19日撮影)
EOS R5/RF24-105mm F4 L IS USM/70mm/マニュアル露出(1/200秒・F8)/ISO 320

今年も桜前線が日本を北上します。今から撮影を楽しみにしている読者もいらっしゃるのではないでしょうか。

この短期集中連載では、桜の季節になると全国を旅して撮影する写真家・館野二朗さんに、おすすめの撮影ポイントを紹介していただきます。皆様の参考になりましたら幸いです。(編集部)

福島潟(新潟県新潟市)

いわゆる桜の名所ではないが、桜が咲いている頃、ちょうど周辺の菜の花も満開を迎えるスポット。朝日や湖面に映る五頭連峰と撮影できることから、カメラマンからの支持も厚い。アングルを変えることで遠くに桜も望む構図になるので、菜の花と絡めての撮影に挑戦して欲しい。

この時期の撮影は早朝がオススメ。湖面から靄が立ち上り、幻想的な風景を撮影できる。


靄越しに朝日が昇り、柔らかい光が菜の花に届いた。透過された花が美しく、その瞬間にシャッターを切った
撮影:館野二朗(2019年4月17日撮影)
EOS 5D Mark IV/EF16-35mm F4L IS USM/30mm/マニュアル露出(1/8秒・F14)/ISO 100/WB: 4800K
残雪の山並みを背景に、菜の花と湖潟の靄、そして奥には桜並木と、春らしいコントラストを表現した
撮影:館野二朗(2019年4月17日撮影)
EOS 5D Mark IV/EF70-200mm F2.8L IS II USM/160mm/マニュアル露出(1.6秒・F14)/ISO 100/WB: 4800K

三春滝桜(福島県田村郡)

三春滝桜は日本で最も知られた一本桜だろう。樹齢も1,000年を超えると言われ、圧倒的な大きさで存在感がある。ピークの時には、まさに滝のごとく花が枝垂れ、息を呑むほどの美しさだ。毎年桜を撮影している人なら、一度は撮っておきたい桜だろう。

三春町には他にも大きな桜の木が点在しているので、桜撮影にはもってこいの場所だ。


堂々とした風格の滝桜は、構図を作るときに画角の真ん中に置きたくなる。面白い形の雲と菜の花が桜を引き立てた
撮影:館野二朗(2021年4月6日撮影)
EOS R5/RF24-105mm F4 L IS USM/40mm/マニュアル露出(1/40秒・F11)/ISO 100/WB: 4800K
滝桜はライトアップもされるが、この写真はライトアップが終了してから、近くの街灯の灯りで撮影している。
撮影:館野二朗(2021年4月5日撮影)
EOS R5/RF24-105mm F4 L IS USM/21mm/マニュアル露出(15秒・F2.8)/ISO 2000/WB: 4000K@@

馬渡川の桜並木(山形県鶴岡市)

ここ馬渡川は川の両岸に桜があり、さらに広場には枝垂れ桜が多く、またすぐ隣の赤川沿いにも約2kmに及ぶ桜並木がある。晴れた日には月山と鳥海山も見ることができる。

広々とした田園地帯にあるのでアングルの自由度も高く、バリエーション豊かに撮れるので、広角から望遠までのレンズを用意するといいだろう。


朝日を受けた赤い桜は、川に反射し流れまでも桜色に染めてくれた。草の緑とのコントラストも美しい
撮影:館野二朗(2019年4月22日撮影)
EOS 5D Mark IV/EF70-200mm F2.8L IS II USM/102mm/マニュアル露出(1/8秒・F11)/ISO 100/WB: 4800K
延々と続くかのように見える赤川土手の桜並木。道が少しカーブしている場所を望遠レンズで撮影すると奥行きが出る
撮影:館野二朗(2022年4月20日撮影)
EOS R5/RF24-105mm F4 L IS USM/87mm/マニュアル露出(1/25秒・F11)/ISO 200/WB: 4800K

西行戻しの松公園(宮城県宮城郡)

西行戻しの松公園は、日本三景の一つに数えられる松島を望む絶景スポットとして知られている。園内にある白衣観音展望台から、桜越しに松島湾に浮かぶ島々を一望できるので、人気が高く多くの人が訪れる。

その他にも桜を絡めて松島湾を撮影できるスポットはあるので、園内を歩いて探してもらいたい。


白衣観音展望台から朝日を狙った。普通に撮影すると桜との露出が合わないので、ハーフNDフィルターがあると便利だ
撮影:館野二朗(2019年4月20日撮影)
EOS 5D Mark IV/EF24-70mm f/2.8L II USM/38mm/マニュアル露出(1/30秒・F11)/ISO 200/WB: 4800K
よく晴れ渡った日の撮影。遠くの島まで見えて海の色もよく、春らしい爽やかな印象の写真が撮れた
撮影:館野二朗(2019年4月20日撮影)
EOS 5D Mark IV/EF24-70mm f/2.8L II USM/24mm/マニュアル露出(1/60秒・F11)/ISO 100/WB: 4900K

角館の枝垂れ桜(秋田県仙北市)

角館は伝統的な武家屋敷が建ち並び、屋敷に植えられた枝垂れ桜が有名で天然記念物にも指定されている。武家屋敷の黒壁と枝垂れ桜のコントラストは他にはない美しさだ。桜シーズンには沢山の観光客が訪れるので、早朝からの撮影が良いだろう。

近くには桧木内川の桜並木もあり、こちらも人気の撮影スポットでもある。


ここは定番スポットだが、この時は手前に水溜りがあったので、ローアングルに構え映り込みを撮影した
撮影:館野二朗(2021年4月19日撮影)
EOS R5/RF24-105mm F4 L IS USM/35mm/マニュアル露出(1/60秒・F4)/ISO 320/WB: 4800K
樺細工伝承館前は一番人気のスポット。この時は雨が降っていたので、しっとりとした桜を撮ることができた
撮影:館野二朗(2022年4月20日撮影)
EOS 5D Mark IV/EF70-200mm F2.8L IS II USM/85mm/マニュアル露出(0.8秒・F8)/ISO 800/WB: 4800K

為内の一本桜(岩手県八幡平市野駄)

4月の後半、本州のほとんどの桜が終わった頃に見頃を迎える為内の一本桜。

小高い丘の上に立つ桜は、下から広角レンズで見上げて撮影するもよし、離れて望遠レンズで撮影するのもよい。離れた場合には、岩手山を背景に撮影ができる。

このすぐ近くにも、岩手山と桜が撮れる場所があるので、そちらにも足を運んでもらいたい。


夕方、少し離れた場所から岩手山を背景に望遠レンズで狙った。圧縮効果も効いて山を大きく引き寄せることができた
撮影:館野二朗(2021年4月26日撮影)
EOS R5/RF70-200mm F4 L IS USM/200mm/マニュアル露出(1/15秒・F11)/ISO 100/WB: 4800K
為内の一本桜から徒歩15分程にある松尾総合運動公園。ここも沢山の桜があり、岩手山と合わせて撮影できる
撮影:館野二朗(2021年4月27日撮影)
EOS R5/RF70-200mm F4 L IS USM/200mm/マニュアル露出(1/40秒・F11)/ISO 200/WB: 4800K

弘前公園の桜(青森県弘前市)

桜の名所で最も有名なのは、ここ弘前城ではないだろうか。個人的にも大好きな場所で毎年訪れている。そして、ここまで来ると桜の旅も終盤になる。

弘前の桜は桜守の方々の努力で、沢山の花を付ける力強い木が多いのが特徴だ。散り際も素晴らしく、風が吹けば一気に散って、花びらが堀を埋め尽くす花筏となって楽しませてくれる。


お濠はまだ花筏の状態にはなっていない。しかし、夕暮れの残った光がキラキラと印象的だったので、アンダー気味に撮影した
撮影:館野二朗(2021年4月22日撮影)
EOS R5/RF70-200mm F4 L IS USM/141mm/マニュアル露出(1/160秒・F8)/ISO 400/WB: 4800K
花筏となった西濠をライトアップで狙った。弘前公園は昼間もいいが、ライトアップされ幻想的な桜も魅力的だ
撮影:館野二朗(2022年4月23日撮影)
EOS R5/RF24-105mm F4 L IS USM/105mm/マニュアル露出(3.2秒・F6.3)/ISO 2500/WB: 4800K

五稜郭(北海道函館市)

戊辰戦争終焉の地で知られる五稜郭は、日本初の西洋式のお城。その形は特徴的で5つの稜堡と呼ばれる突起が美しい星形を形作っている。

春には園内に1,500本以上ある桜が咲き、星形が淡いピンク色に包まれる。その全体像を見るには、隣にある五稜郭タワーがオススメ。星形を全部入れて撮影するなら14mm程度の超広角レンズが必要だ。


五稜郭タワーからの撮影はガラス越しなので、ガラスに背景が反射しないように黒レフや布などがあると便利
撮影:館野二朗(2015年4月26日撮影)
EOS 5D Mark III/SIGMA 14mm F1.8 DG HSM/14mm/マニュアル露出(1/60秒・F13)/ISO 100/WB: 4500K
霧が立ち込めた早朝、稜堡の先端に咲く桜を狙った。シンメトリー構図にすることで幻想的な雰囲気になった
撮影:館野二朗(2022年4月26日撮影)
EOS 5D Mark III/EF24-70mm f/2.8L II USM/50mm/マニュアル露出(1.6秒・F13)/ISO 100/WB: 4900

(おまけ)今年の桜

現在桜を撮りつつ移動中の館野さんから届いた作品です。

撮影地:丸岡城(福井県坂井市)撮影:館野二朗(2023年3月31日撮影)
EOS 5R/RF24-105mm F4 L IS USM/24mm/マニュアル露出(1/100秒・F11)/ISO 200
撮影地:一乗谷朝倉氏遺跡(福井県福井市)撮影:館野二朗(2023年3月31日撮影)
EOS 5R/RF24-105mm F4 L IS USM/90mm/マニュアル露出(1/15秒・F14)/ISO 100
撮影地:金沢城石川門(石川県金沢市)撮影:館野二朗(2023年3月31日撮影)
EOS 5R/RF24-105mm F4 L IS USM/80mm/マニュアル露出(1/100秒・F11)/ISO 250
館野二朗

若い頃からバックパッカーの旅やフライフィッシングを通して自然と向き合う。手つかずの自然美にインスピレーションを受け、2000年頃から本格的に撮影活動を開始。以降現在まで全国を行脚し、独創的な視点で撮影をおこなっている。