中井精也のエンジョイ鉄道ライフ「ジョイテツ!」
初心者でも楽しく撮れる!「はじめての鉄道お立ち台ガイド」vol.07
津軽線・都電荒川線
2020年11月10日 11:00
鉄道写真の世界にたくさんある「お立ち台」と呼ばれる有名撮影ポイント。条件の良いそんな場所には百戦錬磨の鉄道ファンが多く集まるため、慣れていない方だとちょっと近寄りがたい雰囲気があるかもしれません。この企画では、ふだん鉄道を撮らない初心者でも安心して撮れるオススメの「お立ち台」をご紹介いたします。
「撮影地が広くたくさんの人が集まっても安心して撮れる」「カメラ位置が限定される車両アップではなく風景と鉄道をからめて撮影できる」などなど、鉄道撮影がはじめてでも気楽に撮影できる条件のポイントを選びました。今回も「絶景ポイント」と「ゆる鉄ポイント」に分け、作例をお見せしながら解説いたします。ふだんあまり鉄道は撮らないという人も、ぜひ鉄道写真にチャレンジしてみてくださいね!
絶景編:津軽線 三厩駅(青森県)
三厩駅に停車中のキハ40形気動車。国鉄時代から僕たちの旅の相棒として活躍してきたこの車両も、とうとう引退が間近に迫ってきました。新型であるGV-E400系の導入が2020年12月ごろから始まり、今年度中の置き換えが決定したので、この駅とキハ40を撮れるのは、今年が最後になりそうです。2019年6月に三厩駅は無人化されましたが、列車が到着してから折り返すまでの停車時間が比較的長いため、じっくりと撮影できるのも魅力です。列車の横に掲げられた懐かしい「サボ」も、もうすぐ見納めです。
こちらが雪景色の三厩駅。撮影時はまだ有人駅だったので、駅長さんがカンテラを持って列車を出迎えるシーンが、とても絵になりました。もうどんな人が担当していても、高倉健さんにしか見えません(笑)。注目すべきは背景の森。こんな素晴らしいシチュエーションの駅は、終着駅じゃなくても、なかなかありませんよ。
折り返しを待つ列車のエンジンの音がカラカラと響くプラットホームに、しんしんと降る雪。思わず見とれてしまうような雪国情緒がたまりません。夜の雪は肉眼では見えても、そのまま写真にすることはできません。そこで狙い目は、駅のライトに照らされた雪です。このとき注意したいのは、シャッター速度の選択です。画質の低下を防ごうと低いISO感度にして、三脚を使って長時間露光すると、せっかくのぼたん雪はブレてしまい写りません。ここではISO 6400まで感度を上げて、1/50秒に設定することで、きちんと雪を描写しています。
まるで絵本の挿絵のようなロマンチックな2枚の作品は、ぼたん雪に向けてフラッシュを光らせ、雪だけを写し止めて撮影したもの。小型のクリップオンストロボをカメラに装着し、発光部を空に向けることで、雪にだけ光を当てています。この三厩駅では折り返しの時間が長いため、運転士さんは乗務員休憩室にいて不在ですが、フラッシュを列車に直接当てないように気をつけたいところです。
また列車や地面にフラッシュが当たると、そこが明るく写ってしまい雰囲気がそがれるので、やはり発光部は天に向けて撮影するのがオススメです。発光部が上に向かないタイプのフラッシュを使う場合は、発光部の下部を黒いテープでふさぐか、光らせるときに指などで隠すようにするといいでしょう。横位置もいいですが、まるで宇宙のように雪が写った縦位置も素敵でした。
露出設定は、まずフラッシュを光らせない状態で適正露出にして、フラッシュはTTL制御ではなく、マニュアルで発光させます。雪の大きさや量によっても異なりますが、発光量は1/8から1/64など、かなり弱く発光させれば十分です。あまり強い光を当てると雪だけが目立つ違和感のある写真になりますので、かなり弱く当てるように注意しましょう。また乗務員さんが列車に戻ってきたら、どんなに弱いフラッシュでも、列車に向けて光らせないようにしましょう。
こちらのカットはヘッドライトに照らされた雪を主役にしたもの。雪の大きさや量、風向きによって写り方が変わるので、とにかくたくさん撮影して、雪の写り方が面白いカットを選びました。いろいろな色がミックスしていたので、あえてモノクロにして、ヘッドライトに照らされた雪を目立たせています。そして列車を大胆にアップにして部分的に写すことで、誰が見ても雪が主役に見えるような構図にしています。
1年中絵になるこの駅ですが、僕のオススメはなんと言っても冬。雪が積もるまでキハ40が残ってくれるかは運しだいですが、まさにこれから最高の撮影シーズンを迎えますので、ぜひ訪ねてみてくださいね。
ゆる鉄編:都電荒川線 学習院下〜鬼子母神前(東京都)
ゆる鉄編は、東京に唯一残る路面電車、都電荒川線の貴重な絶景ポイントです。ここは明治通りと目白通りが交差する場所に位置する千登世橋。早稲田から明治通りと並走してきた都電は、この千登世橋で目白通りをくぐり鬼子母神に至るため、橋から都電を見下ろすような形で撮影することができます。
狙い目は明治通り沿いのイチョウ並木で、11月下旬から12月にかけて色づくと、東京のど真ん中とは思えない贅沢な秋の風景と、都電を絡めて撮影できます。横位置で撮影するとイチョウが右上になるため、左側に紅葉の木を入れた構図にしています。逆光のため都電の正面が暗く写りがちなので、階調補正機能を強めにかけて撮影するのがオススメです。
縦位置はとても収まりのいい構図になりますが、僕の感覚ではちょっと電車が大きく写りすぎていて、イチョウの力が弱まっているように感じてしまいます。でも都電とイチョウの両方を撮りたい人には、この構図がいちばんオススメです。
都電をできるだけ小さく、そしてイチョウを望遠で圧縮して撮りたいところですが、都電の架線の間隔はとても短く、電車にかからないようにスッキリと撮るのは不可能です。作例のように、できるだけ間隔の広い場所を見つけて、架線柱と電車の重なりができるだけ煩くない瞬間を切り取るしかありません。
こちらは手前の欄干の蔦を前ボケさせて、早稲田行きの都電を狙ったカット。奥から三ノ輪橋行きの電車も来てくれたので、全体的なバランスが良くなった気がします。とにかくいかに多く秋の彩りを入れて、いかにスッキリと電車を撮るかがポイントになる、なかなか難易度の高いポイントですが、頻繁に都電が来るので構図の練習にはもってこいの場所とも言えます。
一連の写真は2017年に撮影したものですが、毎年訪ねるものの、なかなかイチョウの色づきのいい条件に恵まれません。ちなみにこちらは2008年に撮影したカット。この年はイチョウの色づきも最高で、夕暮れの光を受けて東京の街が金色に輝いていました。よく見ると架線柱が電車にバリバリにかかっていますが、こうして見るとそれほど気にならないから不思議です。今年は全国の紅葉が美しいと評判なので、ここの紅葉もキレイなのでは? と期待しています。渋滞覚悟で紅葉の名所に挑むのもいいですが、大都市の紅葉をゆる〜く撮影するのもオツなものですよ。
中井精也からのお知らせ:2020年12月〜2021年1月の撮影ツアー
鉄道写真家 中井精也と行く、写真撮影ツアーの参加者を募集しています。Go To トラベルキャンペーンの対象となり、現地集合・現地解散型のツアーとなります。
年末から年始にかけて新たに3本の撮影ツアーを計画。どれもGo To キャンペーン対象ツアーとなり、中井精也が皆様と終日同行いたします。天候や日差しを予測しながら、中井精也が自ら皆様をベストな撮影地へエスコート。中井精也へ直接のお話、質問、アドバイスをお願いできるのはこのツアーだけ! ぜひお申込み下さい。
日帰り、大井川鐵道撮影ツアー
開催日:12/3(木)
撮影路線:大井川鐵道 大井川本線・井川線
集合・解散:JR静岡駅 南口
募集締め切り:11月23日(月)
参加目安:鉄道撮影をしながら、乗車や食事も楽しみたい方向け。
旅費:おとな1名税込2万3,000円(Go To 適用)。地域共通クーポン3,000円付き(当日限り有効)
※貸切バス・SL乗車料金などを含みます。
ツアー詳細はこちら(https://ameblo.jp/seiya-nakai/entry-12632923393.html)
大井川鐵道ニュースリリースはこちら(http://oigawa-railway.co.jp/archives/58259)
お申し込みはこちら(https://forms.gle/34FWyi3T3ms39raE7)
2泊3日、山陰本線・一畑電車撮影ツアー
開催日:2020年12月18日〜20日(金曜〜日曜)
撮影路線:山陰本線、一畑電車
集合・解散:出雲空港
価格:おとな税込11万9,000円(Go To 適用)。地域クーポン1万2,000円付き
募集締切:11月27日(金)
参加目安:鉄道撮影をしながら、乗車や食事も楽しみたい方向け。
ツアーチラシはこちら(ツアーチラシPDF)
お申し込みはこちら(https://forms.gle/9ZpCm4v6uK57iDkDA)
※12月14日追記:Go To トラベルの一時停止を受け、一部ツアー情報を削除しました。