赤城耕一の「アカギカメラ」

第68回:倹約も楽し。小型軽量「EOS R50」におじさん達の熱視線

日本が貧しくなったのか、日本以外の世界の国々が豊かになったのか知りませんが、この数年で日本でのカメラの価格は、一部の機種を除けばずいぶん高くなったような印象を受けます。

人々はスマートフォンを常に携帯しているので、あえて単機能の“カメラ”は不要となり、好事家のために用意されたものという意識が強くなっているのかもしれません。もちろんプロだって使用するカメラの価格が高額になると、仕事の利益が下がる理屈になってしまいます。

筆者も年齢なのか世界の情勢か、商いが細くなったこともあるのですが、これに伴い、フラッグシップ系カメラを購入するのを躊躇し始めました。儲けの薄い仕事なのに無理してフラッグシップを用意し、自分を飾ろうなどととは考えなくなりました。もっともカメラそのものは好きですから、裕福ならフラッグシップからエントリー機まで片っ端から揃えたいのですが、そんなことはできるわけもありません。

で、何が言いたいかと言いますと。倹約です倹約。筆者がこう口にすると、なんと信憑性が薄いのでしょうか。常に「カメラが欲しいよ病」を患っている筆者のために、嬉しいことに、なるべくお安く、かつ、もしかしたらお仕事のサブ機として使えちゃうかもという理屈をでっち上げることのでき、かつ、ちょっと飲みに行くのを少しの間我慢すれば買えるかもしれないカメラが登場しました。これがEOS R50であります。

はい、ついにきましたねRシステムのエントリー機が。EOS R10よりも安いぜー。本機はかつてのEOS Kissシリーズの流れを継ぐものと個人的には解釈しましたが、キヤノンの狙いは違うのかな。

フィルムEOSの最終期から、EOS Mに至るまで、ほとんどのEOS Kissを購入している筆者としては、これは見過ごすことができない機種であります。

しかもですね、このところ友人、知人、同業者までもがEOS R50を買いに走っており、いずれも購入した人の評判が素晴らしくいいのです。それに、なぜかみんな楽しく使っている(ように見える)のです。ただ、謎なのは、おじさんばかりなのであります。可愛い女子のユーザーを筆者が知らないからでしょうか。

その昔は、内蔵ストロボなんかイラネと思っておりましたが、昨今はときおり日中シンクロなんかで使用してみたり。次第に太陽はトップ光になるので使いたくなるわけ。

正直に申し上げましょう。EOS R50の何が気になっていたのか。理由は簡単です。EOS R50にはホワイトなモデルが用意されていたからであります。はい、ホワイトなカメラは筆者の好物でありまして、長いことEOS Kiss X7のホワイトモデルを使用していたこともあり、発表時にすでにハートを射抜かれておりました。

このホワイトな魅力の謎を解き明かすために、筆者も立ち上がりEOS R50をお借りしました。本当は、買いそうになったのですが、今回は我慢しましたよ。

お借りしたEOS R50、すばらしく小さいです。とても嬉しい。間違いなく小型軽量は正義であることを確信しました。

でも素晴らしいのは小さいけど、意外と締まりがいいというか、それなりに凝縮感があることです。固めに握ったおむすびみたいな印象ですね。空気が抜けるスキがない感じです。これEOS Kiss X7を使用していたときは1mmも感じなかったし、今回は少しだけ高級な印象も持ちました。

カメラネームはボディ右上にあります。奥ゆかしくて、いいと思います。何でもかんでもボディ前面にあればいいというものではなく。

ホワイトボディといっても、上と裏カバーはホワイトで中央部は薄いグレーカラーです。いわゆるツートンですが、とても良いバランスです。ただ、無垢な純白ボディがおっさんの手脂に耐えることができず、すぐに汚れたり黄ばんだりしてしまわないか心配になります。いやこれは我慢していただくしかないですね。これが嫌なら迷わずブラックボディにしましょう。重量はホワイトはボディのみで388gだそうです。これも嬉しいです。

スペックの細かいところは、本誌の過去記事とかキヤノンのWebサイトで確認していただくとして、筆者が気にしているのはバッファの容量です。

エントリー機は仕事に使うカメラじゃねえからそんなこと気にするなと言われそうですが、姿とカタチ、そして小型軽量であることが気に入ったのですから、筆者はフラッグシップとかエントリーとかクラス分けすることなく自分に役立つカメラかどうかを判断したいわけです。

うちにいらしてから、一発目の画ですが、なんてことはない被写体だけどすごくヌケの良い印象でした。明暗差ありますが、階調の再現優秀ですね。
EOS R50/RF-S18-45mm F4.5-6.3 IS STM/プログラムAE(24mm・F14・1/640秒)/ISO 400
どこもかしくもモッコウバラが咲いて綺麗なんですけど、至近距離だとまとめづらいですね。EOS R50じゃなきゃ撮影しなかったかも。
EOS R50/RF-S18-45mm F4.5-6.3 IS STM/プログラムAE(18mm・F14・1/800秒)/ISO 400
八重桜ですが、光線状態はさほどよろしくなかったのに、良い感じで階調と色を再現しているので選んでみました。ボケ味も良い感じです。
EOS R50/RF-S18-45mm F4.5-6.3 IS STM/プログラムAE(28mm・F10・1/250秒)/ISO 800

筆者は基本的にはRAW設定でしか撮影しませんので、連写のコマ速度は気にしませんが、ここぞという時に連続で撮影できるコマ数が重要になります。

EOS Kiss X7は続けて撮影するとすぐにお休みをしてしまい、撮影が中断、バッファが開放されるまで、モデルさんと無駄話とかしてごまかしていました。これ無駄な時間です。最近はお仕事はちゃっちゃと終わらせたいですね。年寄りは疲れやすいので。

それでEOS R50ではどうかといえば、「高速」あるいは「高速+」の連続撮影では約7コマ連続でタタタタタタと撮影し、とりあえず一旦止まります。この時に「BUSY」の表示は出ます。ただこれは一拍置くぐらいの感じで、再びコマ速度を落として撮影はタタタっと続行できます。

低速連続設定でも連続して約14コマほどシャッターが切れて、そこからコマ速度を落として撮影を継続できます。

いずれの設定でもシャッターボタンを押しっぱなしだと、途中で一旦休止しますが、少し間を空け、タタタ、タタタとシャッターは動作します。この感覚は三三七拍子をゆっくり打つような感じでしょうか。

これなら合格ですね。筆者は連続撮影してもせいぜいが2コマか3コマ程度ですから問題ありません。コマ速度も低速の連続撮影(最高約3.0コマ/秒)で十分。

すごいのはJPEG設定でシャッターボタンを押し続けると、永遠に撮り続けられるような感覚があります。公式な連続撮影可能枚数はさておき、シャッターを押し続けるのに飽きてしまうほど止まらないとご報告しておきます。メモリーカードいっぱいくらいまで撮れそうな勢いです。次期“EOS R50 Mark II”では、RAWでもずーっと撮れるようにしてください。

お安い単焦点標準レンズでも、DLO効果でレンズの欠点を叩きます。こうなると高い大口径標準レンズとかに物欲が湧かなくなります。ぜひ倹約しましょう。
EOS R50/EF50mm F1.8 STM/絞り優先AE(F2・1/3,200秒)/ISO 400
都市風景です。絞り込んでおりますが、DLOでの補正効果もあってか、ギンギンな描写に驚いております。
EOS R50/EF50mm F1.8 STM/絞り優先AE(F11・1/1,000秒)/ISO 400
至近距離で絞りも開き気味ですが、問題なく良い描写です。一皮剥けたような潜在的な性能を引き出している感があります。
EOS R50/EF50mm F1.8 STM/絞り優先AE(F3.5・1/1,000秒)/ISO 100

それにしても困ったことです。実は買わない理由を見つけ出そうと思って、本連載でEOS R50を取り上げたのですが、テキはすでに難関をクリアしてきました。

ファインダーは小さいのですが、これは全体のサイズからしてやむを得ないのでしょう。でもよくできている印象です。それに表示画像は小さいながらも見え方に大きな違和感が少ないのは良いことです。

可愛いと言いたくなるファインダーアイピース。もちろんアイセンサーついてます。ボディの高さを大きくすればもうちょい大きくできるんでしょうが、EVF表示画像が見やすいので不満なかったですね。

ただ、ボディサイズからみれば、背面モニターを使用してのライブビュー撮影が主になりそうです。バリアングルは人によって好みが分かれますが、昨今は筆者もプライベートでも動画を撮ることが珍しくありませんし、何よりも年寄りは膝が痛いものですから、あまりしゃがんだり座ったりしたくないもので、バリアングル式モニターもありがたく感じるようになりました。

バリアングルは好みが分かれますね。写真撮影ならばチルトの方がいいという人も多いですが、筆者は水平出せるように練習しました。華奢に見えますから、取扱いには注意です。

ボタン類も小さいながらも押下感もまずまず、視認性もいいですが、背面グリグリ(マルチコントローラー)は残念ながらありません。たしかに長焦点レンズで絞りを開いてピンポイントで被写体を狙いたいという場合には困ることもなくはありませんが、EOS R50は被写体の検出機構が上位機並みに優れており、人物(瞳/顔/頭部/胴体)、動物(犬/猫/鳥)、乗り物(車/バイク)を検出します。

あるいは被写体検出を自動にしておいても、頼んでもいないのにフォーカスがこちらの頭の中の考えを読み取るかのごとく、自信を持って自分でフォーカシングポイントをバシっと決めてきます。小馬鹿にされたようでおじいさんには不愉快ですが、精度が高すぎて、ちょっと怖いような時があるほどです。

背面のボタン類ですが、一眼レフのEOS Kissを思い出してしまいました。指が太い人には操作しづらいかな?でも押下感覚はちゃんとしてました。

撮影モードは通常のP、Av、Tv、Mの他に「SCN(スペシャルシーン)」に加え「A+クリエイティブアシスト」もあります。この階層には「クリエイティブアシスト」「クリエイティブブラケット」「アドバンスA+」があります。エントリー機、つまりビギナー向けの機種でもありますから、ここにも注目してみます。

ダイヤル周りもシルバーでありますね。でも文字が視認しづらいということはありません。「A+」や「SCN」といったビギナー用のモードも使いようであります。

「クリエイティブアシスト」は撮影シーンに適した設定が自動で行われるほか、撮影者の好みの設定も可能。「アドバンスA+」は明暗差の大きいシーンや逆光でのポートレート、夜景撮影、マクロ撮影時などの場合はカメラ内で自動合成処理をする頭の良い機能です。

「クリエイティブブラケット」は自動的に明るさや色合いを変えて複数の画像を記録するという、怠惰な人にはぴったりの機能ですね。おそらくこの種の自動モードが手厚いのはビギナーのためもあるのでしょうが、高度に自動化したスマートフォンに対抗するためじゃないですかねえ。そんなに無理しなくてもいいのに。

救いなのは、この種の全自動モードにしては珍しくRAW設定での撮影も可能にしていること。ブラケットの場合は最初のコマがRAW記録されます。撮影後にカメラ内現像をしたり、RAWのデータを使って「PCを駆使し、写真を創り上げるオレ」を演出することも十分に可能になります。

人間は便利さと引き換えに堕ちてゆくと考えている筆者ですから、この種のフルオートやシーン認識などのビギナー向け撮影モードをバカにし、これまでは使わないようにしていたのですが、むしろ“光の狩人”として被写体に集中したい筆者やあなたのようなスナップシューターには向いているかもしれませんね。カメラのやり方が気に食わなければ、あとでPCでのRAW現像時に直してしまえばいいわけです。

EOS R50での撮影は極めて快適でした。小さいのですが、グリップ感もよく、見た目よりも安定したホールディングが可能です。繰り返しになりますが筆者の使い方では、当初申し上げたとおり、ほぼ「待たされる」感がなくサクサク撮れますし、AFも間違いのない動きをします。

今回もコントロールリングアダプターを使用して、うちに眠るEFレンズを発掘して使用しています。このレンズはEF35-70mm F3.5-4.5です。設計はFDレンズ時代の流れを汲むものらしいですが、よく写ります。

例によってEF-EOS Rのコントロールリング付きマウントアダプターを介して筆者の手元にある古いEFレンズも使用してみましたが、これも問題なく動作し、デジタルレンズオプティマイザを反映できるレンズならば、レンズの収差によるマイナス部分もある程度押さえ込むことができました。

登場時は高いスペック、高画質を誇る超広角ズームとして認められていたのですが、今は話題にも上りません。DLOもカバーしておりませんね。でも、これくらい写れば問題なく。歪曲も小さいですね。
EOS R50/EF20-35mm F2.8L/プログラムAE(20mm・F10・1/800秒)/ISO 400
これも背後から自転車が追い抜くことを感じて、反射的にシャッターを押しています。フォーカスもカメラ任せなんですが、絶妙な位置にとって、パンフォーカス効果に貢献しております。
EOS R50/EF20-35mm F2.8L/プログラムAE(20mm・F10・1/1,000秒)/ISO 400

ただし、EOS R50はボディ内に手ブレ補正機構が内蔵されていませんので、ISを持たないEFレンズを使用する場合は手ブレによるミスが最大注意事項となります。

また高速で動くスポーツとか電車などの撮影はしていないので、動体捕捉能力の真の実力はわからないのですが、筆者には十分な万能性を感じました。よほど特殊な撮影をしない限りは大丈夫じゃないかなあ。

初代EOSである650あたりのキットレンズだったのかな? 1987年の登場かと。うちにある一番古いEFレンズかと思います。DLOに補正データないのでどうせダメだろうなと撮影してみたら、良い方に裏切られました。
EOS R50/EF35-70mm F3.5-4.5/プログラムAE(70mm・F7.1・1/640秒)/ISO 100
少し厚ぼったい描写なのは古いレンズの特徴でもありますが、それなりの描写をみせてくれます。画像処理できっちり追い込めば、もっと良くなるでしょう。
EOS R50/EF35-70mm F3.5-4.5/プログラムAE(39mm・F10・1/640秒)/ISO 800
フォーカスがフルオートから外れていたので、珍しくフォーカスが迷ったため、レンズ鏡胴のAF/MFの切り替えスイッチを使用してMFに切り替え、インフに設定して撮影。なかなか線の細い描写です。
EOS R50/EF35-70mm F3.5-4.5/絞り優先AE(35mm・F10・1/1,000秒)/ISO 800

EOS R50で撮影した写真をPCで選んでいると「これで十分じゃん」という声が脳内でリフレインされます。それだけ画質も良いということでありまして、EOS R5ユーザーでもある筆者にも十分に響いたことは確かです。

EOS Kiss X7は荷物を減らしたいロケでは重宝しましたが、うっかり現場で立ち合いの営業の方に見られたりすると「ボクもそのカメラ使っています」とか言われたりすることがありました。続けて「同じカメラを使ってもプロは違う写真撮るよなあ」と嫌味な言葉が飛んできます。つまり撮影よりも周辺の状況で使うシーンを選ぶカメラでした。安っぽかったんですかねえ。フラッグシップを使わない筆者が悪いんだけど。

EOS R50ホワイトの可愛さなら、仕事に連れて行っても逆に現場を和ませる存在になりそうだけど、ダメかしら。同じユーザー同士だと仲良くなれそうだし。

まだRFレンズにはない単焦点40mmです。EOS R50装着時の画角は65mm相当ぐらい。少し長めの標準レンズになりますが、一眼レフ時代よりも描写の印象がいいのはやはりDLOが効いていることと、APS-Cフォーマットですから四隅の画質をカットしているからでしょうか。
EOS R50/EF40mm F2.8 STM/プログラムAE(F11・1/1,000秒)/ISO 400
横断歩道の前で脊髄反射的にシャッターを押しました。EOS R50でなければ撮らないだろうなと思わせる光景なんですよね。不思議です。
EOS R50/EF40mm F2.8 STM/プログラムAE(F11・1/1,000秒)/ISO 400
サードパーティの85mmレンズが出てきたので使用してみました。望遠スナップをただいま練習中でありまして、なかなか使いやすいレンズでした。
EOS R50/タムロンSP 85mm F/1.8 Di VC USD/プログラムAE(F7.1・1/1,000秒)/ISO 400
ハナミズキ。最初期のEF70-200mm F2.8L USMで撮影しています。ものすごく重たくてEOS R50とはバランス悪いですが、頑張って撮影しました。描写力は往時から印象変わらず素晴らしいです。色収差も残らないし。DLO(デジタルレンズオプティマイザ)が効いていることもあるのでしょう。
EOS R50/EF70-200mm F2.8L USM/絞り優先AE(195mm・F3.2・1/3,200秒)/ISO 100

参考にはなりませんが、カメラごときに一切関心を示さないうちの妻にEOS R50を見せたところ、長いことあれこれといじくり回し、いろんなものにレンズを向けて撮影していました。滅多にこういうことはありませんので念のため報告しておきます。

もしかすると仕事現場でEOS R50を使用しても、ウケ狙いでイケるんじゃないかなあと。少し弱い根拠ですが、確信を得た次第であります。やっぱり欲しいぞEOS R50ホワイト。

とあるパワースポットでの光景。私も並んで「写真が上手になりますように」と気を入れてきたのですが。これも、歩きながら、おっ、という感じですばやく撮影したのです。EOS R50はいい奴だなと思いました。
EOS R50/EF50mm F1.8 STM/絞り優先AE(F8・1/640秒)/ISO 100
そうだ、EOS R7と同時に購入した16mmを使うことを忘れておりました。気に入ってます。ただ、カメラ内でのDLOでの収差補正を前提として設計されてないかキミ? ん? 作り上げた優秀な写りです。昨今は結果良ければすべてよしと割り切ってますから文句ありませんです。
EOS R50/RF16mm F2.8 STM/絞り優先AE(F10・1/1,600秒)/ISO 400
赤城耕一

写真家。東京生まれ。エディトリアル、広告撮影では人物撮影がメイン。プライベートでは東京の路地裏を探検撮影中。カメラ雑誌各誌にて、最新デジタルカメラから戦前のライカまでを論評。ハウツー記事も執筆。著書に「定番カメラの名品レンズ」(小学館)、「レンズ至上主義!」(平凡社)など。最新刊は「フィルムカメラ放蕩記」(ホビージャパン)