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セコニック 「デジタルマスター L-758D」

デジタル一眼レフの再現幅を記憶できる単体露出計

 2006年の正月、セコニックの関係者と会ったとき「露出計の次の課題はデジタル対応です」というコメントを聞いた。今、多くのカメラに精度の高い露出計が搭載されている中、セコニックの露出計のように、露出のみを測る単体露出計のあり方を真剣に考えているという話だった。

 それから半年以上が過ぎ、Photokinaでデジタル対応の露出計である「デジタルマスター L-758D」(73,500円)が発表された。外観からは同社の従来製品「デュアルマスター」と類似の製品であることがわかるが、ユーザー自身で持っているデジタルカメラのデータをUSB経由でPCから取り込むことができるという。その場の解説だけでは、なかなか理解が難しい製品だけに、実際にデータを取り込む作業を行なってみることにした。

 まず、製品の概略を確認してみることにしよう。露出計には、被写体から反射した光を測る「反射光式」と、被写体の位置で被写体に当たる光を測る「入射光式」がある。

 カメラに搭載されている反射光式露出計は、様々なアルゴリズムの開発で精度が高くなっているものの、被写体の反射率を18%のグレーと推定して露出値を計算するのが一般的だ。そのため、被写体の反射率によっては、自分の狙い通りの表現をするために露出補正が必要となる。それに対し、L-758Dなどの入射光式露出計は被写体に当たる光そのものを計測するため、被写体の反射率に関わらず正確な露出値を得ることができる。

 反射光式露出計は、カメラに搭載されている露出計と同じく、被写体に当たった光を測定するものだ。L-758D搭載の反射光式露出計は、受光角が1度と狭いスポット露出計のため、自分の狙った場所の露出を的確に測定することができる。カメラに内蔵の露出計でも、スポット測光可能な機種も有るが、受光角は、交換レンズの画角により変化するため、いつでも同じ範囲での測定とはならない。そのため、持っているカメラにスポット測光が入っていても、これはこれで重宝しそうだ。

 さらにストロボ光を測光することもできる。L-758Dのシンクロターミナルにストロボのコードを取り付け、測定ボタンを押すことでストロボ光を発光、露出値を求めることができる。あまり一般的ではないかもしれないが、スタジオ用の大型ストロボを使ってライティングするときには必要な機能だ。

 定常光・ストロボ光、入射光・反射光とあらゆる光を測定でき、絞り優先で「シャッタースピードを変化」させての適正露出値の表示、逆にシャッター優先で「絞りを変化」させるような表示もできる。非常に多機能な露出計である。

 また、生活防水(JIS保護等級4級)で作られており、雨が降る中でも水圧がかかるような濡れ方をしなければ大丈夫で、安心感が高い造りである。


入射光式での測定は、光球を上げての測定の他、リングを回して光球を下げることで平板での測定もでき、受光部を交換しなくてもいいように考えられている
受光部は被写体の位置にあわせやすいように、向きを回転できる。親指で押しているのが測定ボタンである
反射光式で測るときの対物レンズ下側に、メモリーボタンとUSB端子がある。生活防水のため、かなりしっかりしたカバーがついている

接眼枠の周囲にあるのが入射光式と反射光式を切り替えるためのダイヤル
同梱のデータ転送ソフトとUSBケーブル。これが今までの露出計と大きく違うところだ

 L-758Dの最大の特徴は、ユーザーが使っているデジタルカメラの撮影データを反映させて、露出の決定ができるというところ。ただし、正確にユーザーのデジタルカメラの撮影データを反映させるには、カメラそのもののロットによるばらつきを考慮し、ユーザー自身のデジタルカメラからデータをとらなければならない。

 そこで同社では、データをとるための「露出プロファイルターゲット」を別売しており、データの測定、データ転送ソフトへの登録、転送を行なう方法をデータ転送ソフトの中にあるファイルで解説している。そこで、手順に従ってデータ作成をしてみた。

 私の普段使っている富士フイルム「FinePix S2 Pro」とトキナー「28-80mm F2.8」でプロファイルを作る場合、開放F値から3段絞ったF8で露出プロファイルターゲットを撮影することになる。開放F値が暗いレンズは、データ用の撮影をするときの絞りがより小絞りとなるが、データをとるには、実際に撮影に使うレンズを使う必要がある。

 プラスマイナスそれぞれ7EV分を撮影するため、1/30秒にライティングできる条件が必要となる。ところが、均一にライティングするのはなかなか難しいので、今回は屋外の日陰で撮影を行なった。

 まず、露出プロファイルターゲットの反対側の面(全体が18%グレー)で、露出が均一かどうか、L-758Dの反射光露出計を使って調べる。そして、S2 Proのカスタムホワイトバランスで、ホワイトバランスを取得し、カスタムホワイトバランス設定で撮影を進める。


自分のカメラでL-758Dに転送するためのデータを作るには、別売の露出プロファイルターゲットを使う 日陰で均一な露出になる場所で、露出プロファイルターゲットを撮影する

1/30秒で適正露出ということは、+7EVで4秒、-7EVで1/4,000秒での撮影となる
撮影した画像をPhotoshop Elementsで開き、スポイトツールでG(グリーン)の値が118となるところを探す

 撮影したデータを画像処理ソフトで開き、レベル値を調べる。今回は私のPCに入っているPhotoshop Elementsで調べた。適正露出値は、256色の中間となる118。再現領域は、+をレベル値35、-をレベル値230と考える。適正露出値よりも3段オーバー、3段アンダーの画像から探し始め、許容範囲(白飛び、黒ツブレしない範囲)をレベル値20、レベル値245から確認し、そのときの露出値とグレーのパッチをセコニックのデータ転送ソフトに入力していく。

 私のS2 Proは、適正露出値と画像のレベル値である118との間に-0.5EVの違いがあることが判明。この値をUSBで接続したL-758Dに転送する。


USBでL-758DとPCを接続すると、液晶パネルに「USB」のマークが出てくる
データ転送を始める。USBで接続して転送のアイコンをクリックするだけと簡単だ

 データを転送したL-758Dで測定した露出を基準に撮影してみた。今回は反射光式露出計で計測した値をもとに設定したため、L-758Dに転送したデータも入射光式露出計の定常光に対応する。データ取りを反射光式やストロボ光で行なうことで、それぞれの値を露出計に記憶させることもできる。


  • 作例のリンク先のファイルは、JPEGで撮影した画像をコピーおよびリネームしたものです。

  • 作例下の撮影データは、記録解像度(ピクセル)/露出時間/絞り値/露出補正値/ISO感度/ホワイトバランス/35mm判換算の焦点距離を表します。



頬をスポット測光して撮影。後から、Photoshop Elementsで確認すると、狙った場所のレベル値が118になっていることがわかった
4,256×2,848 / 1/8秒 / F4.8 / 0EV / ISO400 / WB:オート / 74mm
カメラの絞り優先AEで撮影。レベル値118は影の部分である
4,256×2,848 / 1/5秒 / F4 / 0EV / ISO400 / WB:オート / 74mm

 確認後、レフ板やストロボなどの補助光源で暗い場所の露出を調整することもできる。L-758Dを使い、あらかじめセットすることで、カメラの露出計は必ずしもレベル値と連動していないことがわかった。黒ツブレ、白飛びをあらかじめ確認しながら撮影するならL-758Dは大変便利なツールだ。

 露出プロファイルターゲットの撮影と、データの作成はやや手間がかかるが、やってみると目からウロコが落ちる。デジタル一眼レフで露出を極めたいなら是非使ってみてほしい。

 なおセコニックは、主要デジタル一眼のデータを同社で測定し、同社サイトで公開する予定だ。個体差に対応していないため厳密ではないものの、測定が面倒という向きは試してみる価値があるだろう。



URL
  セコニック
  http://www.sekonic.co.jp/
  製品情報
  http://www.sekonic.co.jp/news/news060925.pdf

関連記事
セコニック、プロファイル機能を備えたデジカメ対応露出計(2006/09/19)


( 木村 英夫 )
2006/12/19 00:34
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