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写真とカメラの知識レベルを測定する「フォトマスター検定」とは

〜3級から1級までの例題も掲載

フォトマスター検定のロゴ。日本国旗とカラーネガフィルムをイメージしたという

 日頃、写真を撮るにあたっては、必要に応じてカメラやレンズの仕組みや、撮影技術について学ぶことがある。とはいえ、「写真はなぜ写るのか」、「カメラはどのようなメカニズムで画像を記録しているのか」といった原理を体系立てて学ぶ機会はあまりない。また、撮影者はそれらの知識を実践することで経験として身につけていくが、自分がどのレベルにいるのかははっきりわからないものだ。

 そこで、写真とカメラに関する知識レベルの指標として、「フォトマスター検定」を活用してみるという手がある。

 フォトマスター検定は、写真とカメラの実用知識検定。試験は年1回で、2010年で8回目を迎える。カメラ、レンズ、周辺機器、撮影技法、マナーなどに関する実用的な知識の修得・確認とスキルの向上を目的としている。個人受験者の受験動機としては「偏った知識しかなかったので、この機会に万遍なく知識を身につけたい」、「自分の知識がどの程度信用に足るものなのか試したい」、「新しい知識の修得と、古い知識の整理に役立てたい」といった例が見られる。最近では企業研修や学校教育の一環として、団体受験も増えてきているという。

 階級は、レベルに応じて3級、2級、準1級、1級、EXからなる。EX以外の階級についてはどの級からも受験できるほか、隣接する階級であれば、同じ試験日に2階級受験することができる(EXは1級取得者のみ対象)。

 試験問題の構成は、7割の共通問題+3割の選択問題(フィルムカメラ、デジタルカメラ、フォトレタッチ)。選択問題について、第6回まではデジタルカメラとフィルムカメラの問題が半々の割合で出題された「複合」があったが廃止され、替わりにフォトレタッチ分野が追加された。各級とも7割前後の正答率で合格となる。

 今回はフォトマスター検定について、財団法人国際文化カレッジ フォトマスター検定事務局長の宮原正和氏に、検定設立の経緯や現状について、詳しくお話を伺う機会を得た。

財団法人国際文化カレッジ フォトマスター検定事務局長の宮原正和氏 略称は「フォト検」

「免許」ではなく「指標」

――設立の経緯についてお聞かせください。

 まず、国際文化カレッジでは、30年ほど前から写真の通信教育を実施していました。今は「写真作品創作塾」という名前の講座に切り替わっていますが、内容としては撮影技法の修得を主にした講座です。

 ただ、講座を修了して修了証書をもらったとしても、写真が上手に撮れることの証明にはなりません。勉強した結果をきちんと評価するにはどうしたらいいのかを考えたとき、一般ユーザーが写真を撮る技術や写真に関する知識を評価する基準がこれまで何もありませんでした。そこで、写真教育の一端を担ってきた国際文化カレッジとして、協賛メーカーやカメラ・写真雑誌からの協力を得て、検定を設立するという運びになりました。

 受験者の想定知識レベルとして、入門クラスの3級は中学校や高等学校の写真クラブやDPEの窓口担当者程度、難度の高い1級は他人に指導できるレベル、具体的には写真歴20〜30年、メーカーであれば技術系の管理者レベル相当と設定しました。

――フォトマスター検定を取得するメリットは何でしょうか。

 漫然と撮っているだけでは写真は上手になりません。知識を使って感性をどう引き出すかという考え方も必要で、フォトマスター検定が知識を身につけるひとつの機会になればと考えています。一人一人の受験者が自発的に勉強するにあたり、一定のレベルを線引きしたことで、次のステップが見えてきます。それはモチベーションを保つための目標にもなります。

 フォトマスター検定はプロになるための資格でもないし、写真を撮るための免許でもありません。写真が上達するための勉強をしていくうえでの尺度になる、というところが検定の目的であり、役割でもあります。フォトマスター検定で身につけていただけるのは、“作品力”を安定して支えるための基礎知識と応用知識を身につけていただくレベルまでですね。優れた作品が生まれるためには、さらにシャッターチャンスと撮影条件に恵まれる必要がありますから。イメージ的には、土台のしっかりした頭の平らなピラミッドというところでしょうか。

 最初の頃は、「主要メーカーが協賛についているのだし、フォトマスターカードを持っていると、お店でカメラを買う時に割引があるの?」というお問い合わせを時々いただいていましたが、残念ながらそのような特典はありません。

 お寄せいただいている声としては、下位級を受験した方から「受験のための知識を実践したことで上達に繋がる実感が財産になった」というご感想をいただいています。また、上位級を受験した方からは「自分としては自信があったが、問題を解いてみると知らなかったり、誤って覚えていたりしたことがあったので、知識を整理・確認できて役に立った」という声もあります。それまで何かの受け売りで言っていたことが、自分の意見として言えるようになったということですね。

 これまで受験者がばらばらに身につけてきた知識を、受験勉強の中で体系づけて整理できるという効果は当初予想していなかったものですが、それは役割として非常に大きくなってきているように感じます。

――第7回から選択分野にフォトレタッチ分野を用意したのはなぜでしょうか。

 国際文化カレッジでは毎年「総合写真展」を開催しているのですが、フォトレタッチソフトを駆使した応募作品も少なくありません。ただ、その中には不適切な補正効果のかけ方をしている作品があるのも事実です。デジタルカメラの扱いに慣れたら、作品作りの段階でレタッチ技術も必要になってくると思いますので、検定を通して、フォトレタッチに関する技術学習の確認をしていただけたらと思い、追加した次第です。

 第6回まであった「複合」はデジタル半分、フィルム半分で回答する分野でしたが、フォトレタッチ分野を追加したことで、「デジタル+フォトレタッチ」、「フィルム+フォトレタッチ」といった具合に、複合分野だけで複数種類の組み合わせができてしまうこともあって廃止しました。

想定レベルと設問例

――各級のレベルについてご教示ください。

●3級

 製品のパンフレットや取扱説明書に書いてある中心的な内容が理解できる。ピントが合っている、露出が合っている写真が意図的に撮れるというレベル。当初の設定レベルは中学校や高等学校の写真クラブやDPE店の接客業務レベル。

・例題(第7回共通問題)

 次の文章を読んで、正しい記述を1〜3の中から選べ。

 「多くのAF一眼レフカメラの基本的な特徴について、最も適切に説明しているものを次の中から選べ」

1. ペンタプリズムあるいはペンタミラーを用いて、ファインダーで見た像と同じかほぼ同じ像を写し込めることと、撮影レンズを通ってきた被写体からの光を使ってAF機構やAE(自動露出)制御機構を作動させていることである。

2. シャッターレリーズボタンを押し続けることによって連続撮影が可能なことと、望遠レンズよりも広角レンズを装着した場合のほうが、ファインダーで見る像と実際に写し込む像のズレが少ないことである。

3. 全く光が無い場所でもAF機構を正しく作動させられることと、同じように全く光が無い場所でもAE(自動露出)制御機構を正しく作動させられることである。

・回答:1(AF一眼レフカメラの特徴を理解しているかどうかを問う問題。正答率は約80%)

●2級

 基本的な知識をベースとして、一般的なレベルで写真を楽しむことができる。たとえば「被写界深度」という言葉の意味がわかるだけでなく、どのように表現に活かせるのかがわかるレベル。

・例題(第6回共通問題)

 次の文章を読んで、( )に入る正しい言葉の組合せを1〜3の中から選べ。

 「被写界深度は、許容ボケを一定として他の撮影条件を変えなければ、撮影距離がレンズの最短撮影距離に近いほど( ア )、レンズの焦点距離が短いほど( イ )。さらに絞りを絞るほど( ウ )」

1. ア:浅くなり、イ:深くなる、ウ:深くなる
2. ア:浅くなり、イ:浅くなる、ウ:深くなる
3. ア:深くなり、イ:浅くなる、ウ:浅くなる

・回答:1(被写界深度は、撮影距離、レンズの焦点距離、絞り値の3つによって変わることが理解できているかどうかを問う問題。正答率は約60%)

●準1級

 写真とカメラに関する高度な知識がある。一例としては、撮像素子の受光の仕組み、レンジファインダーカメラの仕組み、シャッター速度と絞りの関係、全周魚眼レンズと対角魚眼レンズの違い、PLフィルターの原理、日中シンクロにおける調光方法、レフ板の使い分け方など。

・例題(第6回共通問題)

 次の文章を読んで、正しい記述を1〜3の中から選べ。

 「偏光フィルター(PLフィルター)をレンズに装着して撮影すると、不要な偏光成分を減じて青空をより青く再現できたり植物の葉の表面をより濃い緑で再現できたりする。しかしながら、撮影条件によっては、効果がないか非常に小さい場合もあるとされている。それはどのような場合か、最も適切に説明しているものを次の中から選べ」

1. 反射面が鏡面や金属面である場合や反射面とレンズの光軸の角度が30°より小さい場合。
2. 逆光状態での水面の反射や弱い光の反射の場合。
3. 高い彩度の有彩色面での反射。

・回答:1(偏光フィルターの使い方や効果を正しく理解しているかを問う問題。正答率は約70%)

●1級

 他人の指導を前提としたレベル。写真とカメラに関して、正しく科学的に解説できる。一例としては、撮像素子の構造、撮像素子の高画素化と高密度化による画質への影響、高感度ノイズと長秒ノイズの違い、クイックリターンミラーの特徴、ストロボのTTL調光と外光式調光の違い、焦点距離・口径・F値の計算など。

・例題(第3回共通問題)

 次の文章を読んで、正しい記述を1〜3の中から選べ。

 「GN10(ISO100・m)のストロボ2個とGN14(ISO100・m)のストロボ1個を、カメラ位置に最も近いところに集めて同じ方向に発光するようにしたときのおおよその合成GNはどのくらいか、次の中から選べ。」

1. 約GN16(ISO100・m)
2. 約GN20(ISO100・m)
3. 約GN24(ISO100・m)

・回答:2(複数のストロボを使って撮影する場合の合成GNを理解できているかどうかを問う問題。正答率約45%。合成GNの計算は、当初は理解していない人が多かったが、昨今では80%以上となってきた)

――フォトマスターEXについてもお聞かせください。

 フォトマスターEXは、1級の知識をベースとして、写真・カメラの指導者となりうる人材であることを認定するものです。試験内容は、作品審査、経歴審査、小論文です。極端な話、1級までは写真を撮っていなくても取得できますが、他人を指導するからには、きちんと写真が撮れなければなりません。

 他人を指導するにあたっては、自分の考えを正しいロジックで最後まで論じることができるかが重要です。小論文では、与えられたテーマに対して、筋道を立てて、きちんと説明できるかを審査します。

 作品審査については、フォトマスターカードに一つの得意ジャンルを表記する場合は、そのジャンルに関する四切サイズ(ホームプリントの場合は、A4サイズでも可)の写真を5点、複数ジャンルに精通することを示す「総合」を表記する場合は、3ジャンル各5点、計15点を提出していただきます。

 受験者の技術や知識、機材を駆使して、意図通りの写真が撮影できているかを見るので、たとえば風景であれば、山、海、都市など、様々なシチュエーションがあった方が評価しやすい。同じ風景を5枚並べられても評価は困難です。

 複数ジャンルを審査・評価するときは、風景、人物、接写といった風に、全く異なるジャンルで、それぞれに応じた撮り方ができている必要があります。こちらも、ポートレート、ヌード、人物といったように、同系統のジャンルの組み合わせでは評価の対象外となります。

 経歴審査は、入賞経歴、発表経歴、指導経歴、その他の写真活動を審査するものです。それぞれ証明となるものも提出していただきます。たとえば入賞であれば、その書状のコピー、発表経歴であればパンフレットや会場写真、指導であれば、その主催者や生徒さんに証明書を書いていただく形になります。できれば「発表」と「指導」など複数のセクションでの経歴をお持ちで、合計3つ程度あると評価しやすいです。

 賞や発表の場といっても、全国規模のものもあれば、身内レベルのものまで様々なので、それぞれ数値化して審査しています。たとえば町の写真展よりは市の写真展、グループ展よりは個展の方が高配点、というイメージです。

 「その他」は、証明書を出すのが難しい場合です。たとえば長年カメラ店の店主を務めてきた方であれば、顧客への指導などで長年の実績といえるものがありますが、その証明など出しようがありません。過去の例では、学術的に写真の研究をされていた方がいらっしゃいました。

女性の割合が増加、社員教育にも利用

――受験者の年齢・性別の傾向についてお聞かせください。

 通信講座の受講者は比較的中高年の方が多かったのですが、第1回の年代構成を見てみると、それほど顕著な違いはありませんでした。これは受験階級についても同様で、上の級になると年齢層が特別高くなるということもなく、すべての級でほぼ同様の年代構成になっています。ただ、回を追うごとに20〜30代の受験者数が増加しており、第7回時点での平均年齢は38.3歳。初回は43.6歳だったので、平均年齢が5歳ほど下がってきています。

受験者数推移
受験年代推移

 性別については、女性の割合が増えてきています。初回は15.1%だったのが、第7回では21.2%にまで伸長しました。各級の男女の傾向としては、高い級ほど男性の受験者数が多く、下位級は女性の割合が高い。これは企業による団体受験の増加も影響していると考えられます。また、女性の受験者は下位の級から確実に取得していく傾向があります。

性別割合推移

――受験者の属性についてお聞かせください。

 企業や学校による団体受験と一般受験の割合は半々です。団体受験の内訳は、メーカーに次いで販売店が多く、次いで学校、業務委託、官庁と続きます。メーカーは主にカメラメーカーで、販売店はカメラ量販店やプロラボです。社員教育の効果を確認する目的で検定を利用しているようです。販売店など一部企業では、フォトマスター検定の取得を人事評価に組みこんでいると聞きます。

 一方、学校は写真専門学校やデザイン学校の授業の一環として受験しているケースが見られます。デザイン学校の例では写真撮影後にフォトレタッチの授業もあるので、選択問題にフォトレタッチ分野を用意した背景の一つには、そういう人たちが受験しやすいようにという配慮もあります。

受験者の属性推移

――選択問題の選択状況についてお聞かせください。

 選択されている割合が最も多いのはデジタルカメラ分野で、回を追うごとに増加しています。ただ、フィルムカメラ分野を選択する受験者も毎回一定数いらっしゃいます。フォトレタッチについては今年から問題集も出るので、得意な方は対策を立てて受験されるのではないでしょうか。

全級選択問題の選択推移

――合格率についてお聞かせください。

 理想としては、1級が35%前後、準1級が50%前後、2級が75%前後、3級が85%前後なのですが、1級はもう少し低くてもいいかもしれない。現状はそれよりも少し高い水準で推移しています。難しいのは、問題レベルのコントロールですね。企業受験で最も多いのは2級なのですが、社命なのでよく学習されているのか、ここ数年は、ともすれば2級が3級の合格率を追い抜きそうになっている。とはいえ、勝手に問題を難しくするわけにはいかないのが悩みどころです。

合格率推移

――設問の作成者についてお聞かせください。

 詳しくは申し上げられませんが、社団法人日本写真学会に監修協力をいただき、最終的にはフォトマスター検定委員会が設問の決定をしています。

――再受験率についてお聞かせください。

 再受験には2種類あって、1つは不合格だった級を再度受験する場合と、特定の級に合格した後、別の級を受験する場合です。両者を区別して集計しているわけではないのですが、下位級合格後に上位級を目指す流れが見られます。また、上位級ほど再受験率が高い傾向があります。

繰り返し受験割合推移

ツールとして活用してほしい

――今後の技術革新に伴い、現在の知識がいずれ役に立たなくなってしまう可能性があります。

 現在は一度検定を取得したら一生有効、というシステムですので、その問題は当初から課題になっていました。取得年月日はフォトマスターカードに記載しているので古いかどうかは見ればすぐに分かります。TOEICのように証明書に有効期限を設けるというのも一つの方法ではありますが、急に制度を変えるわけにもいきません。

 確かに、一度取得した受験者から、「もう一度知識を確認したいので再度同じ級を受験したい」という問い合わせを受けることはあります。現在の我々のシステムですと、一度合格した級を同一人物が再度取得することはできないですし、将来的に、新しい知識に対応していく必要性は認識しています。そのあたりについては、システム的な面も含めて検討中です。

――今後の検定の方向性についてお聞かせください。

 検定試験の内容については、第7回で新たにフォトレタッチ分野について取り入れたので、しばらく大きな変更はないと思います。

 フォトマスター検定は免許ではなく、カメラと写真のことを勉強したり、自分の知識を確認したりする尺度としてのツールです。すでに一部のメーカーや量販店では社員教育の一環としてもご利用いただいていますが、それ以外にも、たとえば写真教室などで撮影技術を学びつつ、基礎知識を身につけるために検定をご利用いただくというケースが考えられます。今後は、フォトマスター検定をもっとツールとしてご活用いただきたいと思っています。



本誌:関根慎一

2010/6/29 00:00