特別企画

今年の冬こそ星空写真に挑戦!

意外と簡単?OM-Dで星の軌跡を撮ってみよう

「静寂の森・北天の日周運動」
マニュアル60秒で連写した60コマを、比較明合成専用ソフトで仕上げた。これはRAWで撮影し、現像で仕上げたJPEGから合成している。色味を控えめにして、深夜の森の静寂感を表現してみた。
OLYMPUS OM-D E-M5/ZUIKO DIGITAL ED 7-14mm F4.0/ISO3200/F4.0/60秒露光×60コマ比較明合成/7mm/ソフトフィルター使用

冬は空気も澄んで、キラキラと輝く星が最もきれいに見える季節。冬の星空を代表するオリオン座や、冬の大三角を作る1等星のように明るい星が多くてゴージャスなところも、他の季節に無い魅力だ。太平洋側の地域では晴天率も高く、都会でも意外とたくさんの星を見ることが出来て、うれしくなってしまう人も多いことだろう。

そのような冬の星は、カメラの被写体としてもじつに魅力的なもの。夜空に輝く星の光や、日周運動で描かれる星の光跡を撮ってみたいと思っている方も多いことだろう。このような写真は、ミラーレスカメラやエントリークラスの一眼レフカメラでも、じゅうぶんに撮ることができる。

ここでは初めての方でも確実に星を撮ることができるように、星空撮影の基本をまとめてみた。この冬は、美しい星空の撮影に挑戦してみよう。

まずは、星の動きを再確認

皆さんご存知のように、星は太陽や月と同じように東から昇って西に沈む。地球が自転しているので、地上に暮らす我々にはそのように見えるわけだ。

地球は約24時間で1回転するので、角度にすると1日に360度、12時間で180度、1時間で15度という速さで星が西に進むように見える。北の空だと、北極星近くの天の北極を中心に反時計回りに約24時間で1回転することになる。

この日周運動の様子を長時間かけて撮影すると、オリオン座のような天球の赤道付近の星は真東から昇ってから真西に沈むまで直線の軌跡を描き、北天の星は天の北極を中心としたおなじみの同心円模様になる。南の低い空の星は、円の中心が地平線の下にあるゆるやかなアーチ型だ。

この星の日周運動は意外と速い。オリオン座のような天の赤道あたりの星がいちばん動きが速く、広角レンズでもわずか10秒程度の露光時間でもわずかに星の像が流れ始めるほど。肉眼で見るような雰囲気の星空写真にしたいと思うなら、できるだけ高感度にして、どんなに長くても30秒〜1分程度の露光時間にとどめておきたいところだ。

星空写真でポイントとなる北極星を見つけられるようになっておこう。

東西南北の30分間の星の動き

北の星は、北極星付近を中心に半時計回り。
OLYMPUS OM-D E-M10/M.ZUIKO DIGITAL ED 14-42mm F3.5-5.6 EZ/ISO1600/F3.5/60秒設定でライブコンポジット30分間/14mm/WB:オート(電球色残しOFF・A-7・G-5)/コントラスト標準

東の星は、斜め右上に平行に昇る。
OLYMPUS OM-D E-M10/M.ZUIKO DIGITAL ED 14-42mm F3.5-5.6 EZISO640/F3.5/60秒設定でライブコンポジット30分間/14mm/WB:オート(電球色残しOFF・A-7・G-4)/コントラスト標準

南の星は、東から西へ向かって緩やかなアーチを描く。
OLYMPUS OM-D E-M10/M.ZUIKO DIGITAL ED 14-42mm F3.5-5.6 EZ/ISO1600/F3.5/60秒設定でライブコンポジット30分間/14mm/WB:オート(電球色残しOFF・A-7・G-3)/コントラスト標準

西の星は、斜め右下に平行に沈んでいく。
OLYMPUS OM-D E-M10/M.ZUIKO DIGITAL ED 14-42mm F3.5-5.6 EZ/ISO1000/F3.5/60秒設定でライブコンポジット30分間/14mm/WB:オート(電球色残しOFF・A-7・G-3)/コントラスト標準

※4枚とも同じ場所で撮影したが、方向によって街明かりの影響が違うため、東と西の画像は感度を低くしている。

北極星の探し方

カシオペア座から探す方法
天の川の中にあるW字形のカシオペア座から北極星を見つけるには、Wの両端の辺を山側に伸ばした線の交点から真ん中の星の方向に線をまっすぐ延ばして5倍のところ……とよく言われているが、カシオペア座の形と北極星の位置のバランスを覚えておけば、他に明るい星が無いのですぐに見つけられる。
OLYMPUS OM-D E-M10/M.ZUIKO DIGITAL ED 14-42mm F3.5-5.6 EZ/ISO3200/F3.8/60秒/17mm/WB:マニュアル(3500K)/コントラスト+2

北斗七星から探す方法
ひしゃくの形をした北斗七星の口の先の星を結んだ線を5倍伸ばしたとことが北極星。やはり北斗七星の形と位置のバランスを覚えておくといい。北極星は北斗七星とカシオペア座のほぼ中間にある。ちなみに北極星のあるこぐま座も、7つの星を結んで「小北斗」と呼ばれている。
OLYMPUS OM-D E-M10/M.ZUIKO DIGITAL ED 14-42mm F3.5-5.6 EZ/ISO3200/F3.8/60秒/17mm/WB:マニュアル(3500K)/コントラスト+2

星を撮るには何が必要?

星空撮影をひと言で言えば、暗めの夜景を撮るようなもの。ちょっと光が少ないので、カメラのオートフォーカスや自動露出が使えない。そこでマニュアルフォーカス・マニュアル露出のできるカメラが必要になるが、これはエントリークラスのミラーレスカメラや一眼レフでも大丈夫だ。マニュアル操作の方法を覚え、カメラのキットレンズでまずは挑戦してみよう。

星空撮影では露出時間がどうしても長くなるので、まずはカメラをしっかりと固定できる三脚が必要だ。それと、シャッターを切るときのカメラブレを防ぐためのリモコン。とりあえずこれだけあれば、星の撮影をすぐに始めることができる。

あとは、人間用の十分な防寒装備だ。つま先が冷えるとつらいので、スノーブーツなどで足元を重点的に固めよう。夜間活動時の防寒のためにカイロを使用する際は、両脇や脚の付け根あたりを温めると効果的なようだ。

星空撮影で必要な機材一式だ。カメラ、レンズ、三脚、リモコン、それにヘッドランプ。特別なものは何も要らない。
低温下で長時間露出をするため、バッテリーの消耗も想像以上に早い。いくつか予備バッテリーがあると心強い。カメラを操作する手元の明りには、暗さに慣れた眼を刺激しないように赤い光に減光したヘッドランプを使おう。

「オリオンを撮る」
三脚は重くてガッチリしたものが欲しい。星の撮影の長時間露出では、少々の風でも揺れないようにカメラをしっかり固定する必要があるからだ。三脚はあまり伸ばさずに使うのがポイント。構図を決める雲台は、ボール式の自由雲台が使いやすいだろう。
OLYMPUS OM-D E-M10/M.ZUIKO DIGITAL ED 14-42mm F3.5-5.6 EZ/ISO1600/F3.5/60秒/14mm/WB:オート(電球色残しOFF・A-7・G-3)/コントラスト+1

カメラの設定は?

星空撮影では、カメラの「露出モード」はシャッター速度も絞りも感度もぜんぶ手動で決めるマニュアルで。撮影現場でまごつかないように取扱説明書で確認して、それぞれの操作方法をマスターしておこう。

「画質」の設定は、本来なら星空撮影ではPCでの現像時に幅広く調整が可能なRAWで記録しておきたいところだが、JPEG記録でもセッティング次第でいい感じに仕上げることができる。

ということで、今回は、初めての撮影でも難しくないJPEG撮影で挑戦することにする。後で色味などの調整をする可能性も考えて、JPEG圧縮率の最も低い(データの大きい)設定にしておこう。この記事の作例写真はすべてカメラ生成のJPEG画像だ。撮影の設定を詳しく記しておくので参考にして欲しい。

「ホワイトバランス」はオートでもいいが、空気の状態や地上の明りの影響などで、赤っぽい空になってしまうことが多い。そこで手動で色温度を低めの4000K前後に設定しておくと、いい感じに夜空の雰囲気のある青っぽい空の色にすることができる。機種によってはオートホワイトバランスで赤〜青の微調整ができるものもあるので、その方法で青味の方向に調節しておいてもいい。

星空がメインの撮影では「シャープネス」を最低(効かせない)にしておこう。高感度撮影でのノイズが目立たなくなり、星の描写も自然な感じにできるからだ。星空は明暗がはっきりしないので、「コントラスト」設定は高めにしておく方がいい結果になることが多い。ただ、町灯りや月明かりの影響がある場合は、標準的な設定の方がいいこともあるので、撮影結果を確認しながら調整しよう。

星の撮影ではかなりの高感度を使用するので、高感度ノイズのザラツキが気になるかもしれないが、「高感度ノイズフィルター」は抑えめの方が暗くて細かい星の描写が良くなることが多い。また、基本的に「長秒時ノイズリダクション」は使用したい(露出時間と同じだけのノイズ処理時間が必要になる)が、低気温で長秒露光によるノイズはかなり少なくなるので、1〜2分程度の露出時間なら使わなくても大丈夫な場合もある。これも結果を見ながら状況に応じて判断しよう。

カメラの液晶モニターや電子ビューファインダー(EVF)の明るさは、画像確認に差し支えのない範囲で、できるだけ暗くしておきたい。まぶしくて目がくらんでしまい、被写体である星空が見えにくくなってしまうこともあるからだ。

「西空の秋の天の川」
ホワイトバランスをマニュアルで3200Kにセット、クールな感じの青い夜空にしてみた。コントラストを高く設定することで、刷毛ではいたような秋の天の川の表情をとらえることができた。画面左上にはアンドロメダ銀河が見えている。
OLYMPUS OM-D E-M10/M.ZUIKO DIGITAL ED 14-42mm F3.5-5.6 EZ/ISO3200/F3.5/60秒/14mm/WB:マニュアル(3200K)/コントラスト+2

「昇ってきたオリオンと冬の大三角」
冬の星空の定番、オリオン座と冬の大三角だ。明るい星が多くてゴージャスな星空である。ホワイトバランスはオートだが、人工光の影響で赤みがかるのを防ぐためにアンバーを-7に調整した。
OLYMPUS OM-D E-M10/M.ZUIKO DIGITAL ED 14-42mm F3.5-5.6 EZ/ISO1600/F3.5/50秒/14mm/WB:オート(電球色残しOFF・A-7・G-3)/コントラスト+1

「東の地平線から顔を出したしし座頭部と木星」
しし座の「?」を裏返したような星の並びは、西洋で草刈りに使われる鎌の形に似ているので「ししの大鎌」と呼ばれている。ホワイトバランスを「電球」にすることで、さらに青味の強い夜空に演出してみた。
OLYMPUS OM-D E-M10/M.ZUIKO DIGITAL ED 14-42mm F3.5-5.6 EZ/ISO3200/F4.6(開放)/60秒/25mm/WB:電球(3000K)/コントラスト標準

下の画像は、カメラの設定が一覧できるOM-D E-M10の「スーパーコンパネ(コントロールパネル)」画面だ。

上段の「A-7」「G-2」は、ホワイトバランスオート時のカラーバランス調整で「アンバー・マイナス7」「グリーン・マイナス2」の意味だ。「S-2」は「シャープネス・マイナス2(効かせない設定)」で、「C+2」は「コントラスト・プラス2(最高)」のセッティング。

中段「MF」は、もちろんマニュアルフォーカス。

下段長方形はドライブモードの一コマ撮りで、併記されているダイヤマークは「低振動モード」を意味している。低振動モードは、シャッター振動の影響を低減するためにシャッターボタンを押してから時間をおいてシャッターを開くモード。数秒程度に設定しておけば、ケーブルリモコンのコントローラーを手から離す時の動きによるブレも回避できる。

下段の「S-IS OFF」は手ブレ補正のOFF。三脚使用時は手ブレ補正が誤作動する場合もあり、OFFにしておくのが基本だ。

OM-D E-M10では、メニューで「LV(ライブビュー)ブースト」をONにしておくと、BULB/TIME/ライブコンポジット撮影のときにライブビューがスローシャッターになり、モニターで星空がよく見えるようになる。

「BULB/TIMEリミッター」は、バルブやタイム撮影時に、設定された時間でカメラが自動的にシャッターを閉じてくれるしくみ。

露出時間を計るために時計とにらめっこする必要がなく、ゆっくり星空を楽しむことが出来てうれしい。

暗い場所ではモニターが眩しくて邪魔なばかりか、画像の明るさを見誤るので、できるだけモニターを暗くしておこう。

機種によっては「暗所モード」の表示が選べるものもある。E-M10では、シャッター速度をバルブやタイムに設定すると自動的に減光するようにメニューで設定できる。

ピントを合わせる

星の撮影で難しいと思われているのがピント合わせだ。星空にはオートフォーカス(AF)がうまく働かないので、ピント合わせも手動で焦点調節をする「マニュアルフォーカス」を使用する。

今のカメラはほとんどがAFなので、MFで合わせるというだけで難しく思えてしまうのかもしれない。でも実際にやってみると、それほど難しくないことがわかるはず。普段あまり使わないかもしれないので、拡大ピント合わせの操作方法もしっかりと取扱説明書をよく読んで確認しておこう。

星はもちろん無限遠の被写体なのだが、今のAFレンズにはMFレンズと違って無限位置のストップが無い。だから、必ず星の像を確認してピントを合わせる必要がある。

星はピントが外れるとすぐにピンぼけの肥大した星像になってしまう。近くにある普通の被写体のようにピント位置が前後にずれるのとは違って、ピンぼけがとても目立ってしまうのだ。だからできるだけキッチリとピント合わせをしたい。それにはライブビューの拡大MFで実際の星像をじかに見るのが最も確実正確な方法だ。

ライブビューで背面モニターに映し出されたオリオン座と冬の大三角だ。使用しているレンズはM.ZUIKO DIGITAL ED 14-42mm F3.5-5.6 EZで、LVブーストはON。このときの焦点距離は17mmだ。
手動で拡大枠カーソルを移動し、明るい星に合わせる。ここではいちばん明るいシリウスに合わせてみた。レンズによっては暗めの星の方がピント合わせしやすいこともある。
拡大率は最大にしよう。まだピントが合っていないので、星の像は丸く大きくボケた円盤像に見える。
ゆっくりピントリングを操作して、星の像がいちばん小さくなった位置がピントの合った場所だ。

まずはレンズのピントリングを操作して無限遠の方にピントを送っておこう。そして明るい星の方向にカメラを向ければ、モニターにいくつかの星像が見えるはず。星が見つかったら最大に拡大して、その像が小さくなるにようにピントリングを調節しよう。星像が最も小さくシャープになったところがジャスピンだ。

ピントが合ったら、カメラの操作でうっかり触ってずらしてしまわないように、テープなどでピントリングを固定しておくといい。星がよく見えないときは、レンズをまっすぐいちばん明るい星に向けて画面中央付近を拡大すれば見つけられるはず。

星でのピント合わせがどうしても難しいときは、できるだけ遠く(少なくとも100m以上の距離は欲しい)にある外灯などを使ってもOKだ。

ピント合わせは画角を決めてから行なうこと。ズームレンズで焦点距離を変えた場合は、その都度ピント合わせをすることが必要だ。また、温度変化でレンズ鏡胴が膨張・収縮してピントの位置が変わってしまうことがよくある。長時間撮影を続けるときは、ときどきピントの確認をしよう。

「はくちょう座からカシオペア座に流れる天の川」
星景撮影で前景に物を入れる場合、ピントをどうするか迷うことがある。絞り込まずに撮ることが多いので、両方シャープに撮るのが難しい場合があるからだ。基本的にメインになる方にピントを合わせればいいが、木の枝先などはいずれにしろ風でブレてしまうことも多いので、そのような場合は迷わず星にピントを合わせよう。
比較的被写界深度の深いAPS-Cやマイクロフォーサーズカメラでは、絞り開放でも両方シャープに撮ることができる場合が多い。
OLYMPUS OM-D E-M10/M.ZUIKO DIGITAL ED 14-42mm F3.5-5.6 EZ/ISO3200/F3.5/60秒/14mm/WB:オート(電球色残しOFF・A-7・G-3)/コントラスト+2

露出を決める

星空の明るさは、カメラの測光範囲外。とうぜん自動露出(AE)で撮影することができないので、マニュアル露出(ME)モードで、自分で「感度(ISO)・絞り(F)・露光時間」を決めなければならない。星は暗いので、少しでもカメラにたくさん光を撮り込めるように、レンズの「絞り」はF数のいちばん小さい絞り開放で撮影しよう。キットレンズだと、広角端でF3.5くらいのものが多い。

露出は空の条件によって大幅に変わるが、山や海などの市街地から遠く人工光の影響の少ない撮影地では、ISO1600・F3.5で30〜60秒くらいから試してみよう。これくらいの露光時間だと星もあまり伸びること無く、ほぼ肉眼で見たような雰囲気の星空に撮れる。画面は星でいっぱいになり、もしも天の川が見えていれば、それもしっかり写るはずだ。

市街地の明るい夜空だと、ISO1600・F3.5で5〜10秒というところだろうか。街の明りに埋もれてしまって、残念ながら星はあまり写らないとだろうけれど、それでも星座を形作る明るい星がいくつも写っているだろう。

いずれにしろ星空撮影では、試し撮りをしてそのときの空の明るさに対する適正露出を決める必要がある。つまり、試し撮りで露出計の代わりをしようというわけだ。

撮影した画像の露出が良かったかどうかは、必ず「ヒストグラム」で確認しよう。暗い中での撮影だとモニターが非常に明るく見えるので、表示された画像が実際よりもずっと明るく感じられてしまうからだ。暗い中でOKだと思っても、家に帰ってPCで開いて見ると、大幅な露出不足で真っ暗な写真ということにもなりかねない。

ヒストグラムとは、画像内の明るさ分布を棒グラフで表したものだ。再生時にすぐに確認できるようにあらかじめ設定しておこう。

一般的な写真では、グラフ左端の暗いところから右端の明るいところまで山が幅広く偏り無く分布していれば適正露出なのだが、星空写真では、それだと明るすぎて夜空の感じがしなくなってしまう。かといって真っ暗な画像では星空の美しさが十分に表現できないので、グラフの山のピークがセンターより左寄りの1/3から1/4あたりにくるように露出を調整するといいだろう。

ピークが左に寄りすぎて画面が暗いときは、感度を上げる(ISOを大きい数字にする)か、露光時間をのばすようにする。逆に山が右に寄りすぎて画面が明るすぎる場合は、感度を下げるか、露光時間を切り詰めてみよう。

カメラの露出は、ISOの数字を2倍にして露光時間を1/2にすると、撮影された画像が同じ明るさになるという関係になっている。これが理解出来ていれば、カメラの最高感度にして試し撮りの露光時間を短縮することができるようになる。

たとえば、ISO25600で試し撮りをして2秒が適正露光だった場合、感度が1/16になるISO1600で16倍の露光時間になる32秒(カメラの表示は30秒)でOKというぐあいだ。高感度だとどうしてもノイズで画像が荒れてしまうが、どこまで感度を下げるかは、露光時間をどれくらい延ばせるかで決まる。

ちなみに絞りのF数は、数字が1/2で明るさ(光量)が4倍になる。ISOとF数と露光時間の関係が理解できれば、星空撮影だけでなく、あらゆる撮影でいっそう撮影の自由がきくようになるので、ぜひ覚えて計算できるようになっておこう。

「沈み行く夏の大三角」
光害の少ないところで撮影。
天の川が見えるような条件のよい空での撮影だ。
OLYMPUS OM-D E-M10/M.ZUIKO DIGITAL ED 14-42mm F3.5-5.6 EZ/ISO3200/F3.5/40秒/14mm/WB:オート(電球色残しOFF・A-7・G-3)/コントラスト+2
上の写真のヒストグラム。オリンパスの画像ソフト「OLYMPUS Viewer 3」をキャプチャしたもの。左端の尖ったピークは木立のシルエット、幅広い大きな山が夜空に当たる部分だ。この夜空部分がヒストグラムの左寄り1/3から1/4あたりになるように露出を調整しよう。

「高層ビルとシリウス」
都市部で撮影した星空。
ISO1600・F4.0だと、東京の明るい空ではわずか2秒で適正露出だ。これ以上露出すると、水面の反射が露出オーバーになってしまうギリギリのところ。それでも星がたくさんも写っていることがわかる。
OLYMPUS OM-D E-M10/M.ZUIKO DIGITAL ED 14-42mm F3.5-5.6 EZ/ISO1600/F4.0/2秒/14mm/WB:オート(電球色残しOFF・A-7)/コントラスト標準
この画像のヒストグラムを見ると、低いレベルで明るい方までずっと伸びている。これはビルの明りや水面に反射した光のデータだ。
2秒の画像と同じ露光量になるように、感度と絞りを変えて8分(480秒)露出をしてみた。8分露出だと、小さな星は空の明るさに埋もれてしまうことがわかる。また、光源の周りに明るいリングと光芒が強く出ているのが見える。星の撮影では絞り込まないのでほとんど関係無いが、これが「小絞りボケ」の正体だ。
OLYMPUS OM-D E-M10/M.ZUIKO DIGITAL ED 14-42mm F3.5-5.6 EZ/ISO200/F22/8分/14mm/WB:オート(電球色残しOFF・A-7)/コントラスト標準
露出条件はまったく違うが画像の明るさは同じなので、ヒストグラムでは2秒も8分もほとんど同じような山の形になっている。

オリンパスなら「ライブBLUB・ライブTIME」が便利!

オリンパスのOM-DやPENシリーズには、「ライブBLUB・ライブTIME」という機能が搭載されている。長時間露出のときに、露光量に応じて画像が明るくなっていくようすを背面モニターでリアルタイムで確認しながら撮影できるという、オリンパス独自のたいへん便利な機能だ。

これを利用すれば試し撮りをする必要がなく、カメラの自動露出が働かない星空撮影でも、誰でもとても簡単に適正露出の写真を撮ることができる。まるで星空撮影のために作られたようなすばらしいしくみである。

「ライブTIME」で撮影しているときの背面モニター。ヒストグラムも表示されるので、露光終了時の判断が確実にできる。画像の更新回数と総露光時間も表示される。

「ライブBULB」ではシャッターボタンを押している間じゅうシャッターが開いたままになり、「ライブTIME」だと最初のシャッターボタンでシャッター開、2度目のボタンでシャッター閉という動作になる。

BULBとTAIMEは好みで使い分ければいいが、分単位の露光時間となる星空撮影では、シャッターボタンのロックが必要ない「ライブTIME」が使いやすいだろう。

「ライブBULB/ライブTIME」の設定は、メニューEの「露出/測光/ISO」の中にある。そのときの空の明るさに応じて感度と画像更新時間を設定しよう。

この機能で使用できるISO感度は1600まで。設定感度によってモニターの画像更新可能回数が異なる。ISO1600だと9回の画像更新となり、画像更新1回あたり1秒から60秒までの設定ができる。

空の明るさに応じてあらかじめカスタムメニューで設定しておく必要があるが、天の川の見えるような空の暗いところではISO1600で更新秒時を8秒から15秒くらいに設定しておくのがおすすめだ。街明かりのあるところや月明かりのある空の場合は、ISO400くらいの感度で1〜2秒の設定が使いやすいだろう。

このとき、カスタムメニューの「表示」にある「LV(ライブビュー)ブースト」を「ON」にしておくと、BULBやTIME撮影時にライブビューのシャッター速度が遅くなり、暗い星までとてもよく見えるようになるので構図合わせがだんぜん楽になる。

同時にカスタムメニューの「露出/測光/ISO」項目の「BULB/TIME輝度設定」を「-5」から「-7」程度にしておくと、星空撮影でいちいちモニター輝度調節をしなくて済むので、たいへん便利だ。

このようなカスタムメニューは、ホワイトバランスやシャープネス、コントラストなどの設定も含め、星空撮影独自のお気に入り設定を「マイセット」に登録しておくといい。普段の撮影から星空撮影を始めるときに登録を呼び出すだけで即座に設定変更ができるので便利だ。

ライブBLUB・ライブTIMEで撮影中は、撮影されているリアルタイム画像と同時に、経過時間とヒストグラム、画像更新回数が表示される。

この機能は長時間露出で便利なだけでなく、刻々と空の明るさが変わって試し撮りをする余裕の無い日暮れや明け方の撮影にも最適なので、ぜひ使ってみてもらいたい。

日周運動の光跡を撮ってみよう

星空写真というと、星の巡りが光跡となって美しい日周運動の写真を撮ってみたいという方も多いことだろう。はじめに30秒くらいならほぼ点に近く星空を写し止めることができると書いたが、光跡を撮る場合は、その逆に露光時間を長くすればいいわけだ。

光跡の美しさを考えると、最低でも10分くらいは露出時間をかけたいところだ。それには感度を下げて(ISOの数字を小さくして)絞りを絞り込んで(F数を大きくして)適正露光時間を伸ばせるように設定をする。

たとえばISO1600、F2.8、30秒で星空が適正露出のときに長く伸びた光跡を撮りたい場合は、感度を1/16のISO100にすれば、同じF2.8で30秒を16倍した8分(30秒×16=480秒)の露光が適正露出となる。ISO400・F5.6・8分、ISO200、F5.6・16分、ISO100・F5.6・32分でも同じ露光量になる計算だ。

長時間露出で星の光跡を撮る場合は、空の暗さ(街明かり・月明かりの影響が無いこと)が重要だ。空が十分に暗い好条件のところでは、星の色や滑らかさが美しい光跡の写真を撮ることができる。

しかし、デジタルカメラはノイズの問題で長時間露光が元来不得手なところ。そのために長時間露出に時間制限のある機種がほとんどだ。また、露光時間と同じだけの長秒時ノイズリダクション処理の時間がかかってしまい、撮影の待ち時間が非常に長くなってしまうという問題がある。その間は星空をゆっくり眺めて楽しめばいいところだが、ノイズ問題を回避するために、今では「比較明合成」という手法が一般的になってきた。比較明合成の場合は露光時間が短いので、長秒時ノイズの量が少なくて済むのだ。

星空撮影での「比較明合成」は、インターバルタイマーやカメラの連写機能などを利用し、数秒から1〜2分程度の露光時間で連続撮影した複数の画像の「明るい部分を優先して重ね合わせる」という合成方法だ。

カメラを固定して連続撮影すると、日周運動で移動する星の像を残して合成することになるので、地上や空の明るさはそのままに星の光跡だけを伸ばすことができる。街明かりや月明かりで夜空が明るく星がよく見えないという状況でも日周運動の光跡をクッキリと撮ることができるので、都会の空でも星の光跡写真を楽しむことが可能だ。

比較明合成用ソフトは天体撮影の専門ソフトの他、人気のあるフリーウェアがいくつか公開されているので探してみて欲しい。

また、比較明合成機能を内蔵しているカメラもある。後合成の手間がかからず撮影現場で出来映えが確認できるので、星空撮影のために新機種導入を考えているのなら、そのような機種を候補に検討するといいだろう。この機能が搭載されていることで、星空撮影がいっそう楽しくなること間違いない。

「長時間露光と比較明合成の比較」
天の川が楽に見えるような条件のいい空で同時に撮影した「長時間露出」と「比較明合成」の画像を並べてみた。画面左が長時間露出(30分)、右が比較明合成(60秒設定でライブコンポジット、30分間)。
比較明合成はE-M10のライブコンポジット機能によるものだ。条件のよい空では、長時間露出の方が光跡が滑らかで自然な印象。比較明合成では星の光跡が強いためコントラストは標準にしている。比較明合成は高感度で撮影できるので流星もクッキリと写る。

都市部の明るい空で美しく星の光跡が撮れるのは、比較明合成ならでは。左が長時間露光(8分)、右が比較明合成(2秒設定でライブコンポジット8分間)。
飛行機の光跡や水面の光の反射にも注目して欲しい。少しでも光ったところを残して合成するため、長時間露出では消えてしまうところがハッキリと残っている。一方で、長時間露出の水面の反射は非常に滑らかになることがわかる。

日周運動の光跡の撮影では、長時間カメラを放置することになるので、露や霜の対策をしておくと安心だ。露光中はニクロム線を利用したレンズヒーターやカイロなどでレンズを温めれば、レンズが曇ってしまうことを防げる。
天体撮影用のレンズヒーターが天体望遠鏡専門店やWebショップなどで販売されているので、問い合わせてみよう。

オリンパス機に搭載されている「ライブコンポジット」が楽しい!

オリンパスのOM-D E-M1、E-M10、PEN Lite E-PL7には「ライブコンポジット」と名付けられた“カメラ内比較明合成機能”が搭載されている。

「ライブ」という名のとおり、リアルタイムのライブビューで星の光跡の写りぐあいを確認しながら撮影できる機能だ。撮影しながら少しずつ光の筋が伸びていく様子がそのまま見えるのはとても楽しく、クセになってしまいそうな面白さがある。

オリンパスのライブコンポジットでは、星の光跡が伸びる様子をリアルタイムで見ながら撮影ができる。これは月明かりで照らされた白樺林に昇る星々を7mmのレンズで撮影しているところ。ヒストグラム、設定秒数と撮影コマ数、経過時間がモニターに表示される。

ライブコンポジットが可能な連続時間は最長3時間。1回あたりの露光時間は1/2秒から60秒までだ。比較明合成では、感度が高いほど暗い星まで光跡を残すことができるようになる。

ライブコンポジット撮影で設定可能な感度はISO1600まで。希望する感度で試し撮りをして、空の明るさに応じた1コマの露光時間を決定しメニューから設定する。

マニュアルモードでシャッターダイヤルを低速側に回すと、……40"、50"、60"(秒)に続き、BULB(ライブBULBが設定されているときは「LIVEBULB」)、LIVETIME(ライブTIMEが設定されていないときは「TIME」)、そしてLIVECOMP(ライブコンポジット)が表示される。

LIVECOMPに設定すると「シャッターボタンを押すと、ノイズリダクション用の画像を取得します。」とのメッセージが現れ、ここで1回シャッターボタンを押して1コマ分の長秒時ノイズリダクションのデータを取る。その後「コンポジット撮影の準備ができました。」のメッセージが表示され、もう一度シャッターボタンを押してコンポジット撮影の開始だ。コンポジット撮影中は撮影回数、経過時間、ヒストグラムが撮影中の画像と同時に表示されるので、安心確実だ。

ちょうどいいところまで星の光跡が伸びたところでシャッターボタンを押し、撮影が終了。はじめに取得したノイズのデータで長秒時ノイズリダクションを行ってから画像が記録される。

記録モードはJPEGもRAWも選択できる。JPEG+RAWの同時記録も可能で、比較明合成後の完成画像が1コマ出来上がるというしくみだ。

山でも市街地でも、まずはISO1600で始めてみるのがいいだろう。これで星の光跡が強すぎると感じたら、感度を下げて1コマあたりの設定露光時間を長くしてみよう。

オリンパスのライブコンポジット撮影は、電子シャッターで行なわれメカシャッターが駆動しない。数100コマから時には数千コマもの連続撮影になることもある比較明合成で、シャッター寿命の心配がまったく無いのはうれしいところだ。

また、普通の連続撮影と違ってほとんどゼロに近い撮影間隔になるので、移動の速い人工衛星や飛行機の光跡も破線にならず滑らかな線として撮ることができる。もしも撮影中にバッテリーが消耗しても、その時点までの画像が記録されるので安心だ。

「昇ってきたオリオン座」(試し撮り)
OLYMPUS OM-D E-M10/M.ZUIKO DIGITAL ED 14-42mm F3.5-5.6 EZ/ISO1600/F3.5/10秒/14mm/WB:オート(電球色残しOFF・A-7・G-2)/コントラスト標準

「昇るオリオン座の光跡」(ライブコンポジット)
OLYMPUS OM-D E-M10/M.ZUIKO DIGITAL ED 14-42mm F3.5-5.6 EZ/ISO1600/F3.5/10秒設定でライブコンポジット1時間/14mm/WB:オート(電球色残しOFF・A-7・G-2)/コントラスト標準

試し撮りの結果、ISO1600・F3.5で10秒露光が適正なことがわかったので、10秒の設定でライブコンポジット撮影を行った。真東から昇ってくるオリオン座の光跡である。星の色が意外とカラフルなことがわかるだろう。オリオン座三ツ星の右下のピンク色はオリオン大星雲だ。

ライブコンポジット撮影の一コマの秒数設定はメニューから行なう。設定可能な秒数は1/2秒から60秒まで。シャッターダイヤルでLIVECOMPにしてあると、MENUボタンの一押しで秒数の設定画面が呼び出されて便利だ。

まとめ:冬の夜空は流れ星を撮影する大チャンス!

ここまで星空撮影の基本的なことを説明してきたが、いかがだろうか。文章で読むと難しそうな気もするかもしれないが、実際に撮影してみると、それほど難しいことでもないことがわかるだろう。マニュアル撮影とはいえ、手動で設定しなければならないのは感度、絞り、露光時間、ピントの4つのみ。あとは三脚に据えてブレないようにシャッターを切るだけだ。

すべて自分で決めることだから、星の撮影でうまく撮れたときの喜びはひとしおだ。もしもうまく行かなかったら、何をどうしたら改善するのか考えることもまた楽しい。このように、カメラを操って写真を撮るということの面白さがダイレクトに感じられるところも、星空撮影の楽しさのひとつだ。

これから12月14日の夜には「ふたご座流星群」、年明けの1月4日には「しぶんぎ座流星群」のピークを迎える。いずれも年間の三大流星群に数えられる活発な活動をする流星群で、流れ星撮影の格好のチャンスだ。2015年のしぶんぎ座流星群は月明かりの影響があるが、デジタルカメラならそれほどの障害にはならない。流星の撮影を楽しむことは十分に可能だ。

澄んだ夜空にたくさんの宝石が輝いているこの季節、寒さを理由に家の中にいるのはもったいない。ぜひ冬の星空の撮影を多くの人に楽しんでもらいたいと思う。それと同時に、自分の眼で本当の星の光を感じることも。双眼鏡があればカメラと一緒に撮影に持っていくといいだろう。カメラでも自分の眼でも、夜空の宝石の輝きを楽しみつくそう。

「富士山に降るふたご座流星群」
OLYMPUS E-5/ZUIKO DIGITAL ED 14-35mm F2.0 SWD/ISO1600/F2.0/40秒/14mm/ソフトフィルター使用/6コマ合成

「GANREF」でも飯島さんの作品が公開中です!

飯島さんのGANREFアルバム「OM-Dで星景撮影」をご覧ください。今回のテーマにちなんだ作品が公開されています。

制作協力:オリンパスイメージング株式会社

飯島裕

1958年埼玉県生まれ。1969年のアポロ11号月面着陸の際、はじめて天体望遠鏡で月を見て天文の面白さにはまったアポロ世代。大学卒業後、広告制作会社のカメラマンに。1986年からフリーの写真家として独立。現在はおもに広告、雑誌、書籍などの写真を撮影。科学関係雑誌や天文情報誌などには執筆も行ない、国立天文台の広報関係の撮影も担当している。科学的な天体写真をベースに表現性も付加した、いわゆる星景写真に早くから取り組む。