特別企画
「SIGMA 18-35mm F1.8 DC HSM」リレーレビュー
その3(ライブ編)
ゴーストやフレアにも強い! ステージ撮影で役立つ大口径ズームレンズ
Reported by 大浦タケシ(2013/10/25 12:24)
「SIGMA 18-35mm F1.8 DC HSM」は、ズーム全域で開放値F1.8の明るさを実現したデジタル専用標準ズームレンズである。35mm判換算で27mmから52.5mm相当の画角をカバーする(ニコンデジタル一眼レフの場合)。今回はこのレンズとニコンD7100の組み合わせで、ライブ撮影に臨んだ。
※詳しいスペックなどを記載した記事はこちら
※リレーレビューその1(ポートレート編)はこちら
※リレーレビューその2(赤ちゃん編)はこちら
もっと明るさを…ライブ撮影の悩み
通常ライブは、昼間の屋外などを除き、暗いステージに立つプレイヤーをスポットライトで引き立たせるようなライティングがほとんどだ。そのため光の当たらないところは極端に暗く、しかもリズムや雰囲気に合わせてライトの明るさや色が刻々と変化することが多い。露出の決定は困難を極めるといってよいだろう。
さらにスポットライトはステージを裸眼で見ている分には明るく感じられるが、いざ露出計で計ってみると予想以上に暗く、被写体ブレや手ブレが発生しやすい。しかもヒートアップするとプレイヤーは激しく踊ったり、ジャンプしたりと被写体ブレがより一層生じやすい状態となることもある。とにかく写真の被写体としては、ライブは一筋縄ではいかないのである。
本レンズのように開放F値の明るいズームレンズを、そのようなライブ撮影で使うメリットは当然のことながら多い。
まずそのひとつが、暗い中でもピントの状態を正確に把握することがより容易となることだろう。ライブに限らず暗い場所で撮影した経験のある読者なら分かるかと思うが、開放値の暗いレンズではどこにピントが合っているのか見極めにくい。本レンズのように開放値の明るいレンズなら、ピントの状況が把握しやすく従来以上に正確にプレイヤーにピントを合わることができる。
さらに、明るいレンズだと当然より速いシャッターを切ることも可能となる。前述のとおりプレイヤーは常に動いているためブレて写りやすい。もちろん被写体ブレが生じても、雰囲気あるものであればそれはそれでよいのだが、まずはビシっとプレイヤーの動きを止めて写すことを考えると、明るいレンズであることに越したことはない。しかも、描写を優先したい場合、より低感度での撮影の可能性も高くなる。
そのような本レンズを使ったライブ撮影はとても快適だ。思惑どおりピント位置の確認がしやすく、さらにAF合焦後ピント位置が外れてしまっても超音波モーターHSM(Hyper Sonic Motor)により、シームレスにマニュアルフォーカスに切り換わり微調整も容易。AFも高速で、ストレスをまったく感じない。
絞り値は主にF2からF2.8の間で設定しているが、これはいつもより1段ほど明るい値で、その分速いシャッター速度としている。被写体ブレや手ブレに気にすることなく、プレイヤーの動きに集中して撮影が楽しめる。
スポットライトも怖くない!
明るいばかりがこのレンズの特徴ではない。ライブ撮影では強烈な点光源であるスポットライトが画面におかまいなく入り込むため、フレアやゴーストの発生がさほど珍しいことではないが、本レンズではそれをほぼ完璧に抑え込む。
以前、筆者は別件でシグマの本社にお邪魔し、関係者の方にインタビューしたことがある。そのときうかがった話としては、過去シグマのレンズは逆光に弱いというレッテルが貼られたことがあり、それを払拭するうえでもより強力なコーティングの採用など徹底した内面反射の除去を行なっているということであった。当然本レンズも同社の誇るスーパーマルチレイヤーコートの採用など強力なゴースト、フレア対策が施される。
ライブ写真の場合、スポットライトによって発生するゴーストを活かした撮影を行なうこともよくあるが、いい意味で本レンズではそのような撮影は諦めたほうがよい。
画質も良好。広めの画角も面白い
絞りを開いてもキレのよい描写であることも特筆すべき部分だ。開放から1/3段ほど絞った画像を見てもシャープネスは高く、ユルい感じがまったくしない。さらにコントラストも上々で、メリハリある描写が得られる。今回は試していないが、開放絞りでもほぼ同様の結果となることだろう。
ステージ下で撮影を行なう場合、その画角からプレイヤーのアップよりも、ちょっと引いた状況説明的なカットを得意とするレンズである。
このレンズに加え中望遠域をカバーするレンズがあれば、今回のようなライブハウスでの撮影では不足はないはずだ。本格的なライブ撮影の機会は専門としているプロでないと難しいこともあるが、もしそのような機会に恵まれたならば本レンズの存在を思い出してほしく思える。
・制作協力:株式会社シグマ
・撮影協力:霞町音楽会
・出演アーティスト:VOLOMUSIKS、JariBu Afrobeat Arkestra、OBATALA SEGUNDO、PETROLZ
・Special Thanks:今元秀明