特別企画
「SIGMA 18-35mm F1.8 DC HSM」リレーレビュー その1(ポートレート編)
画期的な全域F1.8ズーム! SD1 Merrillと組み合わせてみる
Reported by 礒村浩一(2013/8/23 12:07)
数多いデジタルカメラ用交換レンズのなかで、一番使用頻度が高いレンズはやはり、標準域の焦点距離をカバーする標準ズームレンズだろう。扱いやすいレンズ焦点域で、さまざまな被写体に対応することができるのため、日常的なスナップから風景撮影、そして人物撮影とオールマイティーに活用することができるからだ。それゆえに多くのメーカーのデジタルカメラには、ボディと標準ズームレンズをセットにして販売しているレンズキットが用意されている。
ただ、これらレンズキットに用意されているレンズは、コストパフォーマンスとコンパクトなサイズを優先させているため、画質もほどほどで、レンズの開放絞り値もあまり明るくないものを良く見かける(もちろん高価な標準ズームレンズのなかにはレンズの素材や設計にこだわっているものもある)。開放絞り値も焦点距離によって変化するし、明るくても広角端でF2.8程度のものが一般的だ。
ところがこの常識をいっきに吹き飛ばしてしまう標準ズームレンズが登場した。シグマから発売されたAPS-C用標準ズームレンズ「SIGMA 18-35mm F1.8 DC HSM」がそれだ。
※詳しいスペックなどを記載した記事はこちらになります。
明るさと画質を両立
このレンズは全焦点域において開放絞り値がF1.8となる、ズームレンズとしては驚くべき明るさのレンズだ。これまでにもF2通しのズームレンズは存在したが、F1.8となると私の知る限りでは世界初の製品である。
ズームレンズの特性として、単焦点レンズと比べるとどうしても開放絞り値は暗めになってしまう傾向がある。それ故にこれまでは、明るい絞り値による浅い被写界深度撮影などを行なう際には、ズームレンズではなく単焦点レンズを使用する必要があった。しかし全域でF1.8となった「18-35mm F1.8 DC HSM」ならば、数本分の明るい単焦点レンズの役割をこれ1本で賄うことができるわけだ。
明るい開放絞り値は浅い被写界深度撮影だけでなく、より多くの光を取り込むことにも有利となる。これまでのズームレンズと比べると、1〜2段分も光を多く取り込むことができるので、あまり明るくない場所での撮影でもシャッタースピードを極力下げることなく撮影することができる。これは室内での人物撮影においても非常に効果的だ。人物ブレと手ブレのリスクを両方同時に少なくすることができるからだ。
魅力は明るさだけではない。同社の展開する高品位レンズシリーズ「Artライン」に属していることからもわかる通り、全焦点域において非常に高品位な描写を実現している。解像力、コントラストともに高くピントを合わせた箇所は驚くほどにクリアに描写する。それでいてアウトフォーカス部にかけては滑らかなぼけとなっていき、その相乗効果によって被写体の立体感を自然かつ印象的に捉えることができるのだ。
このレンズの描写はポートレート撮影時にはとても有利なものとなる。目元などくっきりと見せたい部分は容赦なくくっきりと、そしてそこから自然な描写でぼけていく柔肌を、手に触れる弾力を感じるがごとく滑らかに表現してくれるからだ。これまでにも解像力をあえて控えることで柔らかな描写としたレンズは存在していたが、いちどこの描写力を体験してしまうと、そのようなレンズはただのぼやけたレンズとしか思えなくなってしまう。
より現実的な存在感と理想的な夢想感をいちどに両立してしまう、18-35mm F1.8 DC HSMは、これまでにない驚くべきズームレンズだといえる。
※いずれもSIGMA Photo Pro 5.5.2で現像しました。
撮影を終えて
今回の作品の多くは、このページの公開日(8月23日)に発売されたシグママウントの18-35mm F1.8 DC HSMをSD1 Merrillに装着して撮影した。ローパスフィルターを搭載しないSD1 Merrillならではの高い解像感と、レンズの持つクリアな描写は、まさにリアルな現実を我々に魅せてくれる。
また、しっかりとした造りの鏡筒および金属マウントを採用することで、内包する実力をイメージとして使う者にアピールする高級感のあるデザインとなっている。ずしりとくる810gの質量も、撮影時の安定感に貢献すると同時に安心感にも繋がる。
もちろん女性の撮影においては肌の質感描写には十分な配慮を必要とするが、このレンズおいて不必要なカリカリ感はない。光の当て方などに気を遣うことができれば、これまでにない立体的で魅力的なポートレート作品を産み出すことができるはずだ。
使いこなすことさえできれば確実に作品がワンランクアップするはず、そう感じさせる1本だ。
制作協力:シグマ
衣装/インテリア協力:チャイハネDEPO木更津店
撮影協力:三船商会 美磋インターナショナル
モデル:夏弥