交換レンズ実写ギャラリー
SIGMA 18-35mm F1.8 DC HSM
Reported by 礒村浩一(2013/7/4 00:00)
唐突ではあるが自分は単焦点レンズが好きだ。ズームレンズのように自在に焦点距離を変更させる便利さはないが、限られた画角で切り取る構図は撮影者の被写体へと向かう意思と覚悟を如実に現す。また限定した焦点距離の為の設計とすることができるので高画質なレンズも多く、ズームレンズに比べて大口径化も比較的容易であることから明るいレンズによる浅い被写界深度を活かした柔らかなボケ描写も得意とする。
そういった点から高品位な画像を望むにはズームレンズよりは単焦点レンズを使用した方が良いという認識が一般的であった。しかしここ最近では光学技術の発展により、単焦点レンズの画質にも肉薄する性能を備えたズームレンズも登場するようになってきている。今回紹介する「SIGMA 18-35mm F1.8 DC HSM」もそのひとつといってよいだろう。シグマが進める高品位プロダクトシリーズ「Artライン」初のズームレンズであると同時に、デジタル一眼レフカメラ専用ズームレンズとしては世界初となるズームの全焦点域にて開放絞り値F1.8を実現した驚きのレンズだ。
本レンズはAPS-C機専用の交換レンズであり、35mm判換算でおよそ27mm相当から52.5mmm相当となる。レンズ構成は12群17枚、グラスモールド非球面レンズおよび特殊低分散(SLD)ガラスを複数枚採用することで諸収差を最小限に抑えたという。実際に撮影した画像も非常にクリアだ。おなじくシグマのArtラインに属するレンズには解像感が非常に高い「35mm F1.4 DG HSM」と、解像感と緩さが混在する「30mm F1.4 DC HSM」という個性の強いレンズが存在するが、18-35mm F1.8 DC HSMは、よい意味でこれら2本の中間に位置するように感じる。カリカリの解像感という描写ではないが、ピントの合った箇所はクリアでシャープネスも高い。特にF1.8の開放絞りで撮影した際にはピンポイントで合ったピント位置における描写の良さが際立つので、ボケを活かした立体的な情景を描き出すにはうってつけなレンズだ。
このレンズの最大の特徴は、ズームレンズでありながらも全焦点域を通して開放絞り値がF1.8というこれまでにない明るさを得たことだ。それは光量の少ないシーンにおいておおきく威力を発揮する。一般的な大口径ズームレンズが採用している開放絞りF2.8に比べ1段強もの明るさを持つことで、必要以上にISO感度を上げることなく、もしくはシャッター速度を低下させずに撮影出来ることの意味は大変大きい。
約2倍のズーム比は最近の高倍率ズームと比べると低く、もう少しワイド側テレ側ともに広がりが欲しいところではあるが、F1.8という明るさの恩恵を考えれば十分以上に納得出来る。また浅い被写界深度が強い武器になるレンズだけにAFの精度も気になるところだが、このレンズはシグマのAF調整ユニット「USB DOCK」にも対応しているのでユーザー自身でAFのチューニングを施すことも可能だ。
今回撮影に使用した機体はベータ機であったため製品版とは細かい点で異なる可能性もある。またAF精度に関しても試作機の段階ではまだ完全には詰め切れていないことが多いのだが、撮影前に「USB DOCK」を使用してAF調整を施したおかげか大きなズレを感じる事はなかった。この点からもユーザー自らがAFを調整できることは非常に有意義だと言える。
このように18-35mm F1.8 DC HSMは、ズーム全域F1.8通しという強い武器と個性を与えられた“トンガった”存在であると同時に、実戦においても十分に即戦力となる標準ズームとしての“スタンダード”を兼ね備えた現実的な標準ズームレンズであると言えるだろう。
(モデル:相川紗苗)
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- 縦位置で撮影した写真のみ、無劣化での回転処理を施しています。
- 撮影に使用した「18-35mm F1.8 DC HSM」はベータ機です。