ギター・マガジンが本気で教える こだわりの愛器撮影テクニック
第2回:製品写真のように緻密&メカニカルに撮る
「真正面」からギター本来の姿を捉える【こだわり編】
2017年9月13日 12:16
本連載は、インプレスグループのリットーミュージック新刊「ギター・マガジンが本気で教える こだわりの愛器撮影テクニック」の一部内容を紹介します。なお、Webページ化にあたり一部を編集・再構成しています。(デジカメ Watch編集部)
ギターを真正面から撮るための基礎をご理解いただいたところで、さらに写真のクオリティを上げるためのこだわりポイントを紹介しましょう。フェンダー・ストラトキャスター、ギブソン・レス・ポール、マーティンD-28という定番モデルをサンプルに、それぞれの特徴的なスペックを写真で捉えるための方法を伝授します。なお、基本的な撮影環境とセッティングは、前回の「真正面から撮るための実践的ライティング/基礎編」と同様であることを前提として説明します。
ストラトキャスターのコンターを見せる
Fender Custom Shop(2005)
'69 Stratocaster Closet Classic(Olympic White)
楽器提供:Nico-Nico Guitars
ストラトを製品写真っぽく撮影するにあたっては、ボディ・トップとバックのコンターをしっかり見せることがポイントになります。ギターの仕様を忠実に伝える目的はもちろんですが、コンターの立体的な造形をきちんと出してやれば、真正面からのアングルでものっぺりした印象にならず、写真としての奥行きや空気感も増します。
なお、バック・コンターについては前述の基本ライティングにのっとれば自然と出てきます。削り込まれたコンター部には左サイドからのストロボ光は回りきらないため、その他のバック面より暗く落ちることで形状がしっかり表われるのです。ただし、それではシャドーがやや強いため、右サイドのレフで少し起こしてやるという具合です。
問題はトップ・コンターですが、こちらはコンターとそれ以外の面の写り込みを考えてやる必要があります。ギターを立てて置く場合、ストラトのトップ面の多くはカメラと正対するわけですが、ボディ・エンドに向かって削り込まれたコンターの面だけは斜め下を向きます。そして、ここにはおもに床面が写り込んでくるため、その床面の状態が関わってくるのです。
今回の白い背景紙の場合、黒いストラトは手前まで伸ばした白がそのまま写り込んで、きれいにコンターを表現することができました。ところが、白いストラトではそもそもトップ面も白いため、両者の境目が不明瞭です。というわけで、その対処法を探ってみましょう。
レス・ポールのアーチを表現する
Gibson Custom Shop(2002)
Historic 1960 Les Paul Reissue(Washed Cherry)
楽器提供:Nico-Nico Guitars
レス・ポールやセミ・アコースティック・ギターにおける最大の見せ場とも言えるのが、ボディ・トップのアーチです。ご存じのとおり、ギターのアーチトップは微妙なカーブを描いているため目視でもわかりにくい場合がありますが、写真ではそれを艶やかに表わすことも可能。
本項のライティングにおいては、ストロボとディフューザーの位置によってアーチの強さと大きさを変えることができます。大まかには、ストロボとディフューザーをギターに近づければアーチの出方は強くなり、遠ざければ弱くなります。また、正面気味に持ってくればアーチの幅が広く、左側に移動させていくにつれて狭くなり、ギターのサイドまで行くとアーチはほぼ消える……といった具合です。
ただし、同じ機種であってもアーチ具合が1本1本で微妙に違っていたりするのもギターの魅力であり、ライティングの位置を一概に決め込むことはできません。しかも、アーチをどんな風に見せるかは撮影者の好みにも大きく依存します。正解はひとつではありませんから、自分なりに美しいと感じるアーチの強さ&大きさを探してみてください。
アコースティック・ギターの木目を出す
Martin(2010)
D-28(Natural)
楽器提供:Nico-Nico Guitars
アコースティック・ギターに限りませんが、木目が浮き出たギターはその雰囲気をはっきり写し込みたいもの。基本に忠実にライティングすれば、多くの場合は問題なく木目や質感を表現できるのですが、注意点もあります。
アコギのトップによく見られるナチュラル・カラーのスプルース材などはともかくとして、バックがマホガニーやローズウッドのように濃い茶色のボディ・バックに相対すると、少し明るくしたほうが良さそうだということで、ボディの手前に白いレフ板などを入れてしまったりしがちです。実はこれが失敗のもとで、光が回りすぎて本来の茶色とはほど遠い白ちゃけた色合いになってしまうのです。
フラットなトップ/バックは意外と写り込みが少なく、しかもアコギであれば基本的に金属パーツを光らせる必要もほぼないでしょうから、レフなどは何も当てずにそのまま撮れば良いのです。ただし、塗装によっては写り込みが強いものもなくはないので、その時は白ではなくグレーや黒を正面に置いてやると、白ちゃけさせずに写り込みを解消することができます。
金属パーツの写り込みを制御する
多くのエレキ・ギターにおいてはボディ・トップにブリッジやジャック・プレートなどの金属パーツが配されており、それらを金属らしい質感で表現すると「こだわり度」がグッとアップします。特にレス・ポールを始めとするギブソン系ギターはピックアップ・カバーまで金属のものもありますから、そこをどう見せるかで写真全体の印象も大きく変わってくるのです。
基本的にはギター前方からカメラ手前にかけて金属に写し込むためのレフなどを置く方法が手っ取り早いですが、本書としてはグレーのレフを推奨します。白レフも悪くないですが、ギラリとしたメタル感を出すにはグレーのほうが適していると思います。
どうせならペグにもこだわるべし
あまり見えないようでいて、実は大事なのがペグの見せ方です。特に金属製ペグは写り込みやすいものも多く、形によってその傾向もさまざま。となると前項の金属パーツと同様にグレーなどを入れて制御する?……というのもアリですが、ペグによってはあらゆる方向が写り込んだりして、レフ板ひとつでは対処しきれなかったりもします。しかもペグは6個ありますから、なかなか大変。
では、どうするかというと……あきらめてしまいましょう。というよりも、写り込むのは当然と考えて許容し、そのうえでせめて6個のペグの写り込みをバラバラでなく均一にしてやるという考え方はどうでしょう。
手順はシンプルで、カメラ位置から目視して、基準とするペグと同じような見た目になるよう、6個のペグをひとつずつ微調整するだけ。いわば「前向きな妥協」なのですが、こうしてペグの見栄えが揃っているだけで印象はかなり良くなります。
コントロール部やアームにまで気を配る
緻密&メカニカルな写真を目指すなら、コントロール部やアームの状態にも気を配りたいところ。
まず、ピックアップ・セレクターは製品写真的な落ち着きを出すにはセンター・ポジションがオススメです。リアもライブ感があって良いですが、フロントはナシだと思います(あくまで写真的な見栄えの話。プレイでは大いに活用しましょう)。ツマミが複数ある時は、上面に書かれた文字や目盛りが揃うようにすること。基本線はフルテンかゼロに統一しますが、撮影アングルによってはカメラの視点から見て文字が読みやすい位置に揃えれば良いでしょう。
アームは内向きすぎても外向きすぎてもダメ。ストラトに関してはアーム・バーのグリップ部が弦と平行になるときれいですが、真正面から撮る場合はそれだとバーがボリュームに被ってしまいます。グリップと弦が平行になる位置よりも少々外側で、ボリューム・ノブがしっかり見え、かつセレクターも隠れない位置がベストです。
アームの見せ方
アームが外側(右写真)に向いていても、内側(中央写真)に向きすぎていてもイマイチです。左の写真のようにツマミと重ならず、セレクターも見えるあたりの位置が理想的です。
告知:出版記念イベントを開催
本書の出版を記念して、9月24日(日)に「ギター・マガジン presents ギター撮影セミナー&撮影会」が開催されます。セミナー講師は、本書ほかサンバースト・レスポールの研究書として有名な「ザ・ビューティ・オブ・ザ・バースト」の撮影も手がけた菊地英二さん。撮影会では、クロサワ楽器G-CLUB TOKYOに入荷した1959年製レスポールが被写体になります。
詳細はこちら→エレキ・ギターの最高峰、1959年製ギブソン・レス・ポールが撮れる! 『ギター・マガジン』の"ギター撮影セミナー&撮影会"を9月24日に開催。