ギター・マガジンが本気で教える こだわりの愛器撮影テクニック

第3回:カッコよくムーディにギターの魅力を引き出す

ボディの「くびれ」と「アーチ」を艶やかに

本連載は、インプレスグループのリットーミュージック新刊「ギター・マガジンが本気で教える こだわりの愛器撮影テクニック」の一部内容を紹介します。なお、Webページ化にあたり一部を編集・再構成しています。(デジカメ Watch編集部)

完成写真:Gibson 1989 Les Paul Custom(Ebony)

Nikon D810 / AF-S NIKKOR 24-70mm f/2.8E ED VR / 55mm / F22 / 1/60秒 / ISO100 / WB:マニュアル

連載の第2回でもレス・ポールのアーチを写し取る方法を説明しましたが、それとは異なるシチュエーションでのアーチの出し方を探ってみます。

前提はレス・ポールを寝かせた状態で、そのシェイプの大きな魅力であるボディの「くびれ」も見せること。つまり「くびれ」と「アーチ」というふたつの要素を同時に表現するわけです。ブラック・ビューティとも称されるレス・ポール・カスタムをサンプルに、白い背景のもとで美しい写真を狙います。

POINT

  • 1:明瞭な写し込みによってアーチトップを艶っぽく表現。
  • 2:ボディ・ラインの「くびれ」を強調する構図設定。
  • 3:シャドーも生かしたローキー調でムードを演出。

STEP1:オーソドックスな構図とライティング

ボディ・シェイプを正確に写すことによって「くびれ」も見せようと考え、まずはシンプル に俯瞰気味で撮ってみました。

ライティングは右斜め上からのソフトボックスによるストレートな光です。製品写真的な意味合いでの「ボディを撮る」という目的は果たしていますが、「くびれ」の表現としては少々ダイナミズムに欠ける気もします。天井などが写り込んだテイルピースの見え方も、もう少し整理したいところです。

STEP2:「くびれ」を強調する斜めアングル

レス・ポールの「くびれ」を強調するには、むしろギターを斜めに傾けてカメラもやや低い位置から狙うことで、あえて形を歪ませたほうが良いでしょう。

ライティングは変えていませんが、こうするだけでも艶が加わり、曲線美が表われてきた印象です。しかも、この角度であれば天井からの嫌な写り込みも拾わないどころか、天井から床にかけて伸ばしておいた白の背景紙がうっすらと6弦側のアーチに写り込み、ボディ・トップの造形も感じられます。

完成:「アーチ」を浮き上がらせるライティング

冒頭に掲載した完成写真では、6弦側アーチの表情をもっと際立たせるために2灯目を加えました。床置きのリフレクター・ライトを壁の背景に向けて照らし、その光を受けた背景紙がアーチをぐっと引き立てる……という手法です。

なお、STEP2よりもソフトボックスの光量を落とし、高さも下げていますが、その理由は2灯の役割を明確にするため。ソフトボックスの光を弱めることで、逆に壁に向けた2灯目の効果を強めているのです。そのうえで、ややローキーの方向に露出を持っていき、格調高い雰囲気に仕上げています。

OTHER CUT:さらにダークなローキー調のバリエーション

完成写真をさらにローキーにしたバリエーションです。完成の段階で装着レンズの最小絞りであるF22に設定していたため、それ以上は絞り込むことはできず、露出を下げるには光量を減らすか感度を落とすかの二択です。ここではISOを100から2/3段下げたISO64に設定して対処しました。

告知:出版記念イベントを開催

本書の出版を記念して、9月24日(日)に「ギター・マガジン presents ギター撮影セミナー&撮影会」が開催されます。セミナー講師は、本書ほかサンバースト・レスポールの研究書として有名な「ザ・ビューティ・オブ・ザ・バースト」の撮影も手がけた菊地英二さん。撮影会では、クロサワ楽器G-CLUB TOKYOに入荷した1959年製レスポールが被写体になります。

詳細はこちら→エレキ・ギターの最高峰、1959年製ギブソン・レス・ポールが撮れる! 『ギター・マガジン』の"ギター撮影セミナー&撮影会"を9月24日に開催。

著者:田坂圭 撮影/監修:菊地英二、星野俊

田坂圭(たさかけい)。1974年生まれ。ギター・マガジン編集部、ベース・マガジン編集部/編集長を経て、2014年に独立。企画プランニング/ディレクションを始め、写真撮影やコピーライティング、音楽&楽器関連の取材・執筆等もさまざま手がけている。愛用カメラはニコンD810/D7200/FM3A。好きなギターはフェンダー・テレ&ローズ指板のストラト。できればエレキも指だけで弾きたいと思いつつも最近サムピックを導入して苦戦中。