【新製品レビュー】ニコンCOOLPIX S9100

〜光学18倍ズームレンズ搭載のスタイリッシュモデル
Reported by 本誌:折本幸治

 今回紹介するCOOLPIX S9100は、COOLPIX Sシリーズ上位モデルのひとつ。光学18倍ズームレンズと裏面照射型CMOSセンサーを組み合わせたスリム高倍率モデルで、COOLPIX Sシリーズで最もズーム倍率が高く、付加機能も多彩だ。

 発売は3月18日。実勢価格は3万9,800円前後。本体色はノーブルブラック、グロリアスレッド、ソフィアゴールド。


広角から超望遠までをカバー

 撮像素子は裏面照射型の1/2.3型CMOSセンサー。有効画素数は1,210万画素。これに光学18倍ズームレンズを組み合わせた製品であり、基本的には2010年10月発売のスリム高倍率モデル「COOLPIX S8100」の諸機能を強化したモデルと考えると早い。撮像素子のスペックも同じ。背面の3型約92万ドットの液晶モニターについても、スペック上は同等だ。基本的にはCOOLPIX S8100の前身である「COOLPIX S8000」(2010年2月発売)から続く、「スリム高倍率系COOLPIX」の流れを汲む製品だ。

 本機ならではのトピックとしては、レンズのズーム比がこれまでの光学10倍から光学18倍に伸びている点だろう。この手のスリム高倍率機としては、他社も含めてトップレベルのズーム比となる。

 また、広角端の画角が焦点距離30mm相当(35mm判換算。以下同)だった従来機と異なり、本機の広角端は25mm相当。広角好きにもアピールできる仕様になった上で、ズーム比が拡大したのは喜ばしい。ちなみに、望遠端は300mm相当から450mm相当に拡張されている。

 その代わり外観はごつくなった。レンズ根元周りの突出がさらに強調されたデザインになり、本体の奥行きが5mm程度長くなっている。また、重量も10g強増えた。押し出しの強い見た目からして、どちらかというと男性が持つことを意識しているのだろう。本体サイズは約104.8×62.0×34.6mm。重量は約214g。上着のポケットなら入る大きさだ。

 試用したノーブルブラックは、手触りがさらっとした触感塗装を施してある。油断していると手から滑り落ちそうになるが、指掛かり用のパーツがあるのと、右手親指を置く背面のスペースが比較的広めなため、ことさら不安を覚えることはなかった。また、触感塗装のため金属外装らしさは薄いものの、実物はけっこう高級感がある。

 上級機だけあって、本体上面にはモードダイヤルも設けられている。撮影モードを頻繁に切り替えるカメラではないと思うが、モードダイヤルには適度なクリック感と重さがあり、操作するのが楽しかった。ロータリーマルチセレクターの操作性も良い。この手の回すタイプのコントローラーを嫌う人は多いが、最近はずいぶん使いやすくなったと思う。

クリック感のしっかりしたモードダイヤルを装備ストロボはポップアップ式。側面のレバーで上げ下げできる

 液晶モニターは3型約92万ドットと高スペック。日中、積もった雪の反射で少々見づらいケースがあったものの、フレーミングできないほどではなかった。

 バッテリーはCOOLPIX Sシリーズでよく用いられるEN-EL12。USB充電に対応しており、出張などでパソコンから充電できるのは便利。スマートフォン用にUSB充電用のバッテリーを持ち歩いている人なら、出先で電池を延命させられるのもポイントだろう。

 撮影可能枚数は約270枚。ボディの大きさからすると少なめに感じるものの、これでもCOOLPIX S8100より約60枚増えている。

記録メディアはSDXCメモリーカードに対応底面にUSB/オーディオビデオ出力を装備
バッテリーは基本的に本体内で充電するタイプ。パソコンなどからのUSB充電に対応するのはうれしい。USB出力付き充電器からの給電も可能だった

手持ち夜景など連写合成機能も豊富

 手ブレ補正は、イメージセンサーシフト式と電子式を併用するハイブリッドタイプ。効果をイメージセンサーシフト式のみに限定することもできる。電子式というと画質への影響が気になるが、今回試した限りでは、電子式による画質低下は認められなかった。常時ハイブリッドで問題ないだろう。いずれにしても手ブレ補正の効果は高く、450mm相当の超望遠撮影も手持ちでこなせる。

イメージセンサーシフト式と電子式を併用するハイブリッドタイプの手ブレ補正機構を採用

 CMOSセンサーということで、連写合成系の機能も備えている。例えば「夜景モード」では、連写で得られた複数枚の画像を合成することで、ブレとノイズを低減。都会の明るいイルミネーションなら、手持ちである程度まで撮影できる。

 また、流行のHDR(ハイダイナミックレンジ)も手持ちで撮影可能だ。「逆光モード」で撮影する際、「HDR」のオン/オフを指定できる。効きの強さを調整できなかったり、若干画角が狭くなる、あるいは処理完了までに20秒強かかるといった制約が見受けられるものの、手持ちでHDRを試せるのはうれしい。

シーンモードの「夜景」と「夜景ポートレート」では、「手持ち撮影」と「三脚」を選べる。手持ち撮影だと連写合成になる流行の「HDR」も。逆光モードから選択可能

 なお再生モードでは、ニコンのデジタルカメラでおなじみのD-ライティングも利用できる。こちらは1枚の画像から暗部を持ち上げた画像を作るもの。暗部を持ち上げるという効果はHDRより弱く、エフェクトの方向性は異なるものの、仕上がりはHDRより自然で好ましい。両者を使い分けるのも手だろう。

 パノラマ合成機能も備えている。「簡単パノラマ」という名称で、カメラを横に振る間に連写で撮影された画像を合成、パノラマ画像に仕上げてくれる機能だ。ソニーでいうところの「スイングパノラマ」に相当する機能といえる。

 撮影範囲は180度、または360度から選べる。カメラを縦に振れば、縦方向に長い画像を作ることも可能だ。つなぎ目の精度は比較的高く、旅行やイベントなどで、周囲の状況を収めたいときなどに十分使える。合成処理に要する待ち時間は、最長で2分ほど。

 現在各社の製品で、スライダーと平易な表現を組み合わせた初心者向けの補正機能が取り入れられている。COOLPIXでは「クリエイティブスライダー」という機能がそれだ。オート撮影モードと連写モードでのみ利用できるインターフェイスで、明るさ(露出補正)、鮮やかさ、色合いの3項目について、撮影前のライブビューで調整できる。露出補正時にヒストグラムを同時表示するなど、本当に初心者向けなのか疑いたくなるような渋い気配りも見られる。

「クリエイティブスライダー」の使用例。「明るさ(露出補正)」を選んだところこちらは「鮮やかさ」。「R」(リセット)を選択するまで、各パラメーターの組み合わせが本体内に記録され続ける。動画にも反映可能だ

 そのほか、アスペクト比選択、自動シーン判別、自動追尾AF、ペット自動シャッター、オート分類再生など、近年のトレンドを網羅。CMOSセンサーによる連写合成が可能になったためか、長年COOLPIXに搭載されてきた「BSS」が省略されているのが感慨深い。


フルHDからハイスピードムービーまで

 動画機能が充実しているのも本機の特徴だ。最大1,920×1,080/30fpsでのフルHD記録が可能。圧縮方式はH.264/MPEG-4。フルHD記録だけでも圧縮率の違いで2モードあり、さらに1,280×720ピクセルの720pでの記録も可能だ。

充実した動画設定

 また、1,280×720/60fps、640×480ピクセル/120fps、320×240/240fpsのいわゆるハイスピード動画も記録可能。加えてフルHD記録での早送り動画記録(15fps)も行なえるなど、一風変わった仕様となっている。さらに変わったところでは、アップルのiFrameフォーマットに対応した960×540/30fpsで記録するモードもある。

 動画記録中の光学ズームも可能。内蔵マイクはステレオで、風切り音低減機能も備えている。ほかにも動画記録中にシャッターボタン全押しで静止画を記録できたりと、スタイリッシュ系の製品としては、かなり動画に強い製品となっている。もちろん、光学18倍ズームも動画用途で有利な点だろう。


まとめ

 スリムタイプの製品としては大柄な方だが、このサイズのボディに光学18倍ズームレンズを搭載している点は、他機種にないアピールポイント。旅行など、荷物や行動が制限される状況で活躍するだろう。動作も全体的にきびきびしており、連写関連の諸機能やフルHD動画記録など、流行の機能も満載だ。特に動画機能の充実ぶりには眼を見張るものがある。

 ただし、小サイズセンサーと高倍率ズームレンズのためか、デジタル処理でつじつまを合わせているような階調と輪郭処理が気になる。加えて見た目の割にバッテリーが持たない点を妥協できるなら、旅行などで便利な1台といえるだろう。


実写サンプル

  • 作例のサムネイルをクリックすると、リサイズなし・補正なしの撮影画像をダウンロード後、800×600ピクセル前後の縮小画像を表示します。その後、クリックした箇所をピクセル等倍で表示します。

・画角

広角端 / COOLPIX S9100 / 4.4MB / 4,000×3,000 / 1/1,000秒 / F3.5 / 0.0EV / ISO160 / WB:晴天 / 4.5mm望遠端 / COOLPIX S9100 / 4.9MB / 4,000×3,000 / 1/640秒 / F5.9 / 0.0EV / ISO160 / WB:晴天 / 81mm

・感度
ISO160 / COOLPIX S9100 / 5.1MB / 4,000×3,000 / 1/4秒 / F5.1 / 0.0EV / WB:オート / 22.2mmISO200 / COOLPIX S9100 / 5.0MB / 4,000×3,000 / 1/5秒 / F5.1 / 0.0EV / WB:オート / 22.2mm
ISO400 / COOLPIX S9100 / 5.3MB / 4,000×3,000 / 1/10秒 / F5.1 / 0.0EV / WB:オート / 22.2mmISO800 / COOLPIX S9100 / 5.3MB / 4,000×3,000 / 1/20秒 / F5.1 / 0.0EV / WB:オート / 22.2mm
ISO1600 / COOLPIX S9100 / 5.3MB / 4,000×3,000 / 1/30秒 / F5.1 / 0.0EV / WB:オート / 22.2mmISO3200 / COOLPIX S9100 / 5.0MB / 4,000×3,000 / 1/60秒 / F5.1 / 0.0EV / WB:オート / 22.2mm

・ボケ
望遠端 / COOLPIX S9100 / 4.9MB / 4,000×3,000 / 1/200秒 / F5.9 / +0.7EV / ISO160 / WB:オート / 81mm

・手持ち夜景

 暗所を連写して合成、低ノイズの画像を作り出す。三脚使用時向けの通常の夜景モードも選択可能。

プログラムオート(三脚使用) / COOLPIX S9100 / 4.3MB / 4,000×3,000 / 1/2秒 / F3.8 / 0.0EV / ISO160 / WB:オート / 5.9mm手持ち夜景 / COOLPIX S9100 / 4.1MB / 4,000×3,000 / 1/15秒 / F3.8 / 0.0EV / ISO360 / WB:オート / 5.9mm

・HDR/D-ライティング

 「HDR」は「逆光」モードの中から選ぶ。効果は全体的にきつめ。CGっぽく不自然になる場合も多く、そういうエフェクトだと思って使ってみると面白いかもしれない。

プログラムオート / COOLPIX S9100 / 3.5MB / 4,000×3,000 / 1/320秒 / F3.5 / 0.0EV / ISO160 / WB:オート / 4.5mmHDR / COOLPIX S9100 / 3.7MB / 4,000×3,000 / 1/320秒 / F3.5 / 0.0EV / ISO160 / WB:オート / 4.5mm

 ニコンのデジタル一眼レフカメラや既存COOLPIXでおなじみのD-ライティングも利用できる。HDRより効果はさりげないが自然で好ましい結果になる。

プログラムオート / COOLPIX S9100 / 4.8MB / 4,000×3,000 / 1/3秒 / F3.6 / -2.0EV / ISO160 / WB:蛍光灯 / 5.1mm再生モードでD-ライティングを適用 / COOLPIX S9100 / 4.5MB / 4,000×3,000 / 1/3秒 / F3.6 / -2.0EV / ISO160 / WB:蛍光灯 / 5.1mm

・簡単パノラマ

 左右に振ると連写が始まり、自動的につなぎ合わせてくれる。ソニーの「スイングパノラマ」と同様の操作。つなぎ目は自然。旅行で活躍するだろう。180度と360度が選べる。

COOLPIX S9100 / 446K / 3,200×560 / 1/1600秒 / F3.5 / 0.0EV / ISO160 / WB:オート / 4.5mm

・カメラ内エフェクト

 「ソフト」、「ノスタルジックセピア」、「硬調モノクローム」、「ハイキー」、「ローキー」、「セレクトカラー」を撮影時に設定できる。比較的おとなしい効果のエフェクトで固められている印象。

ソフト / COOLPIX S9100 / 4.8MB / 4,000×3,000 / 1/15秒 / F4 / 0.0EV / ISO400 / WB:オート / 6.9mmノスタルジックセピア / COOLPIX S9100 / 3.7MB / 4,000×3,000 / 1/20秒 / F4 / 0.0EV / ISO400 / WB:オート / 6.9mm
硬調モノクローム / COOLPIX S9100 / 5.4MB / 4,000×3,000 / 1/13秒 / F4 / 0.0EV / ISO400 / WB:オート / 6.9mmハイキー / COOLPIX S9100 / 4.9MB / 4,000×3,000 / 1/13秒 / F4 / 0.0EV / ISO400 / WB:オート / 6.9mm
ローキー / COOLPIX S9100 / 4.4MB / 4,000×3,000 / 1/30秒 / F4 / 0.0EV / ISO160 / WB:オート / 6.9mmセレクトカラー(一例) / COOLPIX S9100 / 4.9MB / 4,000×3,000 / 1/20秒 / F4 / 0.0EV / ISO400 / WB:オート / 6.9mm
セレクトカラー(一例) / COOLPIX S9100 / 4.8MB / 4,000×3,000 / 1/20秒 / F4 / 0.0EV / ISO400 / WB:オート / 6.9mmセレクトカラー(一例) / COOLPIX S9100 / 4.8MB / 4,000×3,000 / 1/20秒 / F4 / 0.0EV / ISO400 / WB:オート / 6.9mm
セレクトカラー(一例) / COOLPIX S9100 / 5.1MB / 4,000×3,000 / 1/20秒 / F4 / 0.0EV / ISO400 / WB:オート / 6.9mm

ソフト / COOLPIX S9100 / 4.6MB / 4,000×3,000 / 1/160秒 / F5 / 0.0EV / ISO640 / WB:オート / 19.1mmノスタルジックセピア / COOLPIX S9100 / 4.1MB / 4,000×3,000 / 1/800秒 / F4.5 / 0.0EV / ISO160 / WB:オート / 10.9mm

 これらに加えて、「ソフト」、「セレクトカラー」、「クロススクリーン」、「魚眼効果」、「ミニチュア効果」を再生時に指定できる。
魚眼効果 / COOLPIX S9100 / 3.3MB / 4,000×3,000 / 1/50秒 / F5.5 / 0.0EV / ISO640 / WB:オート / 69.8mmミニチュア効果 / COOLPIX S9100 / 4.3MB / 4,000×3,000 / 1/125秒 / F4.2 / 0.0EV / ISO160 / WB:オート / 8.2mm

・動画
24.5MB / 1,980×1,080 / 30fps / H.264

16.0MB / 640×480 / 120fps記録(再生30fps) / H.264




本誌:折本幸治

2011/4/4 00:00