新製品レビュー
Panasonic LEICA DG VARIO-ELMARIT 8-18mm / F2.8-4.0 ASPH.
常に持ち運べる超広角ズーム 逆光耐性も向上
2017年9月6日 07:00
フォトキナ2016で開発がアナウンスされていたLEICA銘を冠するパナソニック製マイクロフォーサーズ用ズームレンズ3本のうち、発売済みの標準ズームレンズLEICA DG VARIO-ELMARIT 12-60mm / F2.8-4.0 ASPH. / POWER O.I.S.に次ぐ第2弾として5月に登場した超広角ズームレンズである。
発売日:2017年5月25日
実勢価格:税込13万円前後
マウント:マイクロフォーサーズ
最短撮影距離:0.23m
フィルター径:67mm
外形寸法:約73.4×88mm
重量:約315g
特徴
マイクロフォーサーズ用AF交換レンズの中では、オリンパスのM.ZUIKO DIGITAL ED 7-14mm F2.8 PROとLUMIX G VARIO 7-14mm / F4.0 ASPH.に次ぐ超広角画角の焦点距離(魚眼レンズを除く)を有する。
ズーム全域での高い描写性能かつゴースト、フレアの低減のためにEDレンズ3枚、非球面レンズ4枚やナノサーフェスコーティングを採用した。耐逆光性能もこれまで著者が使ってきた超広角レンズと比べてかなり向上しているように思われる。
デザインと操作性
広角側の焦点距離8mmは35mm判換算で16mm相当となる超広角レンズでありながら、手にすると自然に手中に収まる比較的細身でコンパクトな筐体を実現している。
重さもわずか約315gと超広角ズームレンズとしては軽い設計であるが、金属マウントの採用や防塵防滴仕様などしっかりとした造りとなっている。
ズームリングを回して焦点距離を変えてもレンズの繰り出しがないので全長の変化もなく、フォーカスリングと併せて適度なトルクで動きもスムーズ。
これは写真撮影だけでなく4K動画など需要が増えているムービー撮影などでのズーミングやマニュアルフォーカスにも有効であることはもちろんだが見た目にも気持ちいい。
レンズフードは花型タイプのプラスチック製だが、バヨネット式でカチッとした音とともにロックされる信頼できる構造。ワイドレンズにとってのウィークポイントでもある逆光での撮影条件にうまく対処できるように計算されているようだ。
フードは見た目もスッキリしていてシンプルなデザインに仕上がっているし、装着することによって右手でカメラボディ本体、左手でレンズを下部方向からよりしっかりとホールディングできるのもうれしい。
作品
東京湾の夕暮れ。愛犬のボーダーコリーと散歩中の男性に声を掛けて撮らせてもらった。厳しい条件下だがF5.6まで絞ると明瞭な描写になり、空部分の周辺減光もほぼ感じられない。
西陽が傾く頃。ワイド端では自分の伸びた影を取り込むしか逃げ場がなくなってしまうほど十分広い画角がある。
逆光に浮かぶ葉に絞り開放でグッと迫って撮影。これまでのワイドズームレンズに比べてかなり逆光耐性が向上していると感じた。絞りは7枚羽根の円形虹彩絞りを採用。
葉山一色海岸。塩分不足なのか海水浴客が居ない場所を探して水分補給に来ていたアオスジアゲハに逃げられないギリギリの距離までほふく前進で近寄って逆光撮影してみた。
灼熱と化した砂浜の上にポツリと置かれた子供用のスニーカー。しばらくこの辺りで撮影していたが持ち主らしき子は見当たらない。泳ぎ疲れて忘れて帰ったのかな?
夏の終わりの植物たち。センター付近の花びらに合焦させて絞り開放で撮影。8mmの焦点距離でも前後をボカす表現ができる。
薄暮の半逆光の中でもコントラストある画質を得られた。
手持ちでの夜景撮影。開放絞り値は可変なので12mmの場合はF3.5となる。
久しぶりに訪れた真鶴の海岸線を歩いたが、以前はこれほど多くはなかったはずの波消しブロックが……。
この日の最高気温は35度。ひと休みに入ったお店で出てきた冷えた水のグラスが1番のご馳走に思えた。撮像面から23cmまで寄れるので18mm側だとかなりアップで撮影ができる。
古くからの木造の漁師小屋と鉄筋コンクリート製で大きく新しい施設の建物。漁に使う道具や計器類が対照的に配置されていた。色のりが良いレンズだ。
暗い作業場の中と明るい屋外ではかなりの明暗差があるのだが、ベルトコンベアの暗部から海面の反射部分までトーン描写を広範囲にカバーしている。
電車やバスから降りて小さな港町をブラブラするのが大好きだ。海の近くで生まれ育ったせいだからか、潮の香りを嗅ぐと落ち着く。
太陽光を受けた水面の反射が船の側面へ映ってキレイなので、PLフィルターを装着して強調した。やはりネジ込みフィルターが使えるのはとても重宝する。
ケープ真鶴に棲み着いて20年以上という長者ネコのチャコちゃん。高齢になると眠るのが仕事なので時折薄目で睨まれながらの接近戦だったが18mm側で前後のボケ味をチェックしてみた。
御用邸のある葉山の街並みもずいぶんと変わってしまった。数年前に訪れた時には昭和の雰囲気がある木造家屋が多く残っていたのに、今では郵便ポストだけがポツンと立ち尽くしているだけだ。
まとめ
パナソニックのマイクロフォーサーズ用超広角ズームレンズとしては開放絞り値がF4通しのLUMIX G VARIO 7-14mm / F4.0 ASPH.が以前からあり筆者も愛用してきた。
このレンズに限らず、ウルトラワイドレンズはいわゆる出目金タイプと呼ばれる1枚目のレンズが飛び出るようなデザインで、後付のフードやねじ込み式フィルターが使えないものも多い。
その中で本レンズは、67mm径のネジ込み式フィルターを前枠に装着できるという設計になっているのは大変ありがたい。これによって保護フィルター以外にも、例えばコントラストや光りの角度調整ができるPLフィルターやスローシャッターを使いたい時などにレンズへ入ってくる光量を軽減調整させるNDフィルターなどの装着が可能になった。
なんといっても、高画質でありながら軽量コンパクトで携帯性に優れているので重量を気にせず常時持ち歩けるのがよい。ワイド系を多用するマイクロフォーサーズユーザーにとっては強い味方がまた1本加わったことになる。LEICA DGズーム3本セットシリーズの残り1つの望遠ズーム、50-200mm F2.8-4.0(2017年以降発売予定)の登場が楽しみになってきた。