E-600(左)とDPP-F700(右) |
今回紹介するデジタルフォトフレームは2つ。エプソンの「E-600」とソニーの「DPP-F700」だ。ともにデジタルフォトフレームでありながらプリント機能という付加価値を持つ製品。今回は、同時期に発売された「プリント機能付きデジタルフォトフレーム」を比較しつつ紹介する。
E-600 | DPP-F700 | ||
---|---|---|---|
メーカー | エプソン | ソニー | |
実勢価格 | 30,000円前後 | 25,000円前後 | |
液晶ディスプレイ | サイズ | 7型 | |
解像度 | 800×480ピクセル | ||
内蔵メモリー | ― | 約1GB | |
対応メディア | CF, SDHC, メモリースティック/デュオ, xDピクチャーカードなど | ||
プリンター | プリント方式 | インクジェット | 昇華型熱転写 |
最大サイズ | ハイビジョン | ポストカード | |
本体サイズ | 228×158×192mm | 276×186×150mm | |
重量 | 約2.6kg | 約1.8kg |
■E-600(左)とDPP-F700(右)の外観
■どちらも7型液晶ディスプレイを搭載
さて、まずは個々の性能をみてみよう。エプソンのE-600は、7型(800×480ピクセル)の液晶パネルを採用したデジタルフォトフレームを搭載。リモコンでの操作に対応し、メモリカードスロットを内蔵する。インクジェット式のプリンター部は、4色一体型インク(ブラック、シアン、マゼンタ、イエロー)を用いて、ハイビジョン、KG、L、カードなどの各サイズにプリント可能。給紙容量はLサイズおよびハガキサイズで最大20枚となる。
E-600。液晶ディスプレイ部を上にスライドさせてプリントできる状態したところ | 背面の給紙トレーと排紙トレー(紙受け板)を展開させたところ。排紙用の受け板は別途取りつけて使う |
背面にはインクカートリッジの挿入口がある | 赤外線通信用の受信部。iPhoneからのワイヤレスプリントにも対応する |
キャリングハンドルを装備 | リモコン。全体的にボタンは大きく押しやすい |
一方、ソニーの「DPP-F700」も7型(800×480ピクセル)の液晶パネルを採用した点をはじめ、リモコンでの操作に対応する点、メモリカードスロットを内蔵する点などが共通する。ただしプリンター部はE-600のインクジェット式に対して、昇華型熱転写プリント方式を採用している。対応サイズは、ポストカード(KG)サイズとLサイズで、給紙容量は20枚。
どちらも対応メディアはCF、SDHC/SDメモリーカード、MMC、メモリースティック/メモリースティックDuo、xDピクチャーカードなど。
DPP-F700。立てた状態で底面に位置する部分には、ペーパートレイの挿入口がある。プリンターを利用するときには一度本体を寝かせてトレイを差し込む必要がある |
背面にある通紙扉。塞がないように気をつけよう | 右側面にはカートリッジの挿入口がある |
正面にあるタッチパネルボタン。印刷ボタンはペーパートレイを差し込むことで光るようになる | 液晶部の背面には、電源ボタンとビューモードボタンがある。基本的にリモコンで操作するので利用頻度は低そうだ |
リモコン。ボタンの数が多いが、それぞれ独立して機能が振り分けられているので使い勝手は悪くない |
■外観に現れる設計思想の違い
こうしておおまかなハードウェア構成だけを俯瞰すると、2機種はとても良く似た製品に感じられるかもしれない。ただし、それぞれ異なるコンセプトから「プリント機能付きデジタルフォトフレーム」という製品にアプローチしているところが興味深い。
それを如実に表しているのが、それぞれの製品キャッチフレーズだ。プリンターメーカーであるエプソンが「観て楽しい、プリントして楽しい。写真を楽しむ新しいカタチ」といえば、S-Frameというフォトフレームブランドを有する総合家電メーカーのソニーは「いつもはフォトフレーム。ときどきプリンター」といった具合。
つまり「プリンターにフォトフレーム機能をアドオンした」というエプソン(そもそもE-600はカラリオミーブランドの一員)に対し、「フォトフレームにプリント機能を付加した」というソニーという見方が可能なわけだ。これらは、各製品の仕様や使い方にも現れている。
まずE-600は同社のプリンター製品と同様、本体に写真保存用の内蔵メモリーを搭載しない。記録メディアをダイレクトに差し込み、必要なものをプリントするというスタイル。厳密にいえば、約100枚(1枚の画像データが2MB程度を想定)の印刷履歴保存機能が、一般的なデジタルフォトフレームでいうところの内蔵メモリーに当たりそうだが、一度印刷した画像を再び印刷する(いわゆる“焼き増し”)に使う機能であり、スライドショーのために画像を保存しておくという、一般的なデジタルフォトフレームと同じような感覚では利用できない。
E-600起動直後の画面。起動してすぐに印刷できるような画面になっている。リモコンのOKボタンを押すと、カードスロットで読み込んでいる写真を「選んで印刷」するか「すべて印刷」するかを選べる |
「いろいろな印刷」では、写真のサイズを変更して印刷したり、内蔵しているフレームデータと合成して印刷するといったことが可能 |
「フォトスライドショー」では、12種類の変化を付けながらスライドショー再生が可能 |
「データ管理」では、一度印刷して印刷履歴として残った写真データの削除やバックアップが行える |
画質調整画面 |
対してDPP-F700は、約1GBの内蔵メモリーを搭載。200万画素程度にリサイズされるが、約2,000枚の保存が可能。こちらは当然、スライドショーのための内蔵メモリーだ。保存できる約2,000枚の画像データをスライドショーで楽しむことができる。
写真の入力方法にも違いがある。DPP-F700はオーソドックスに、メディアスロットやカメラから入力した画像データを利用する。基本的にこのスタイルで過不足はない。
E-600は加えて、赤外線通信「lrDA」に対応。携帯電話で撮影した画像データ(最大2.5MB)をプリントアウトできる。また、Bluetoothユニットや有線/無線LAN接続が行える「TV・ネットワークプリントアダプタ」といったオプションを用意したことで、さまざまな機器から画像をプリントできる。これらのオプションは、同社が販売している多くのプリンターで利用可能。E-600がプリンターの性質を色濃く持っていることの証左といえる。
DPP-F700のメニュー画面。リモコンの「メニューボタン」を押すと表示される | 写真を再生する記録メディアの選択画面 |
黒地に白文字というコントラストの強い配色となっている | 基本的な写真プリントのほか、カレンダー、証明写真、分割写真が選べる |
内蔵メモリーやカードに保存された画像データを絞り込むことも可能 | ビューモード時の写真の表示方法 |
時計・カレンダー表示も複数種類用意 | 一枚表示の表示形式設定画面 |
インデックス表示の枚数設定画面 | プリント設定では、自動補正である「オートファインプリント」の設定が可能 |
■基本は“3ステップ”
細かな差は見受けらるものの、いざ使って見ると、どちらもそう難しくはない。たとえば、写真を印刷するという工程であれば、この2つの製品はどちらも“3ステップ”を特徴としている。
E-600は、1.「メモリーカードを入れる」、2.「写真を選ぶ」、3.「プリント完了」という3ステップ。
DPP-F700は、1.「プリントしたい写真を見つけたら」、2.「用紙をセットして」、3.「(印刷)ボタンを押すだけ」という3ステップ。
1ステップ目が同じではないが、極端な話、スライドショー表示されている写真で、お気に入りが見つかったら印刷ボタンを押すという、ただそれだけだ。強いていうなら、E-600は印刷予約ができるという点で一歩リードしているぐらいだろうか。ちなみに、印刷ボタンを押してから印刷完了までの時間を調べてみたところ、E-600は約51秒、DPP-F700は約46秒だった。
プリント画質については、判断がなかなか難しい。E-600はインクジェット式を採用し、一般的に広まっている方式なだけに、プリントアウトされた写真も見慣れた感じだ。使用する4色は染料インク。ハイエンド機に比べると実力不足は否めないが、顔自動判別による色補正や逆行写真補正など効果的な高画質化機能を搭載しており、一般的なコンパクトフォトプリンターに何ら劣るものではない。
DPP-F700は、昇華型熱転写プリント方式を採用している。滲みとは無縁ともいえる昇華型であり、安定した色再現と写真らしい風合いが楽しめた。約1,677万色(256階調×3色処理)と色再現性も十分。ラミネート加工により、多少飛沫が付いたぐらいではビクともしない点も心強い。
液晶ディスプレイとプリント画質の差については、さすがにまったく同じに見えるとまではいかなかった。E-600は、液晶ディスプレイが落ち着いた感じで、輝度は低く、コントラストが高い。“こってり”とした感じだ。プリントは、画面表示よりもあっさりしているが、明るく、鮮やかな印象。
DPP-F700は視野角も広く、高輝度、高コントラストの“パリッ”とした感じ。約115万ドットと、キメの細かいクリアフォト液晶の効果だろう。プリントは、E-600とは逆に、液晶ディスプレイよりこってりしている印象を受けた。
■まとめ
さて、今回の2製品はそれぞれどのような人にオススメなのだろうか。その答えの指標となるのが「リモコン」と「操作ボタン」だ。
E-600は、操作インタフェースを徹底的に簡略化。ボタン数を少なくすることで簡便な操作性を目指している。結果、操作手順が増えるものの、直感的に扱える分かりやすさは特筆すべき点だ。老若男女を問わず使えるので、ホームユースにはピッタリの製品だといえる。
では、DPP-F700はというと、ボディにはシンプルなタッチパネル式を採用。リモコンはテレビ用リモコンのようにボタンが多く、各機能がボタン一押しで呼び出せるようになっている。慣れてしまえばこちらのほうが簡単かもしれない。デザインはさすがS-Frameのラインナップといったところ。プリンター部があるので奥行きはあるが、正面からのデザインは他のラインナップ同様に質感がよく、インテリアの一部として置いても違和感がない。
E-600はというと、良くも悪くも「コンパクトフォトプリンター」だ。リビングに置くというよりはPCの近くに置く周辺機器といった具合。といっても、正面から見ると液晶ディスプレイ部がプリンター部を隠すような構造なので、それほど違和感はないのだが。
ホームユース向けの「E-600」 | インテリアとしても使える「DPP-F700」 |
撮りためた画像データをスライドショーで流しながら、気に入った写真だけをプリントするという、ありそうでなかなか無かったこの発想。PCを使わず、手軽に扱えることを考えても、今後このジャンルは伸びていくかもしれない。
どちらにせよ、購入する際は一度店頭で確認することをオススメする。プリント機能付きデジタルフォトフレームは案外ごついし、当然、壁掛けなどはできない。デジタルフォトフレームにプリンターが付いただけでしょ? とのイメージだけで、たとえば通販サイトなどを利用して購入すると、届いた際、その大きさにどこに置こうか迷うことになりかねない。
どちらも面白い製品だけに、その性質と、サイズをシッカリと把握したうえで購入を考えたいところだ。
2009/11/16 00:00