エプソン、インクジェット複合機2009年モデルの発表会
エプソンは17日、インクジェットプリンタ「カラリオ」シリーズ2009年モデルの発表会を都内で開催した。発表会にはCMに起用された俳優の役所広司さんと女優の竹内結子さんも応援に駆けつけた。発表したのは複合機など9機種。25日から順次発売する。各機種の詳細は関連記事をご覧いただきたい。
■プリンターとユーザーの距離短縮を
発表会の冒頭、セイコーエプソン取締役で情報機器事業セグメント担当の羽片忠明氏が2009年モデルの方向性などを説明した。2008年はインクジェットプリンタでトップシェアを獲得できたとしたが、需要が一巡したことに加え、画質やスピードでユーザーの要求水準を満たしており、成熟市場になっていると現状を説明。そうした頭打ちの状況を「スペックに偏った商品開発にあった」と分析。今後は、「PC周辺機器」というカテゴリーから「暮らしの中で無くてはならない身近な存在」への転換を図るという。
「購入してからのセッティングが煩雑であったり、プリント時に操作が面倒だった。ユーザーは、インクジェットプリンタに対してまだまだ心の敷居の高い商品と考えている」とした。その上で、使いたいときにすぐ使えるようにすることや、多目的な用途活用を図ることで、ユーザーとプリンターの距離短縮を狙うとした。
なお羽片氏によると、前年のモデルとの設計コンセプトや部品の共有化を進めておりコストダウンはかなり進んでいるという。金型の立ち上げ費用も大幅に改善しているとのことから、「収益に大きな貢献ができる」と話した。
2009年の世界売上台数は1,450万台を目標にしている。対前年比では微増するのではないかとのこと。現状ではほぼ目標通りに推移しているという。2008年の世界シェアは18%だった。2009年は19%以上を目指すとしている。
■無くてはならない存在を目指す
続いてセイコーエプソン業務執行役員情報画像事業本部副事業本部長の遠藤鋼一氏が製品の紹介を行なった。2008年にエプソンユーザーに調査したところ、引き続きエプソンを使い続けたいという顧客は、エプソン製品の価格、画質、操作性、サイズ、デザインをよい点として挙げていたとのこと。ただ、遠藤氏も「プリンターはまだまだ使いにくいもの」と話す。
ノートPCやネットブックの普及で、無線LAN環境が像がしていることを挙げ、今回の新製品に搭載したAOSSによる簡単な無線LAN接続機能などで簡単なセッティング性を説明。今後も優先接続の煩雑さを嫌って無線LANが更に普及を見せると予想している。
また、プリンタのセットアップについても、インストールダイアログの選択肢をできるだけ減らすことでユーザーの迷いを払拭したという。画面の用語についてもよりわかりやすい表記にしたとのこと。
プリンタのセットアップについては遠藤氏自身も被験者となり試したとのこと。「2008年のモデルは30数分かかっていたが、新モデルはITに不慣れな自分でも4分弱でセットアップできた。被験者の平均も4分程度だった」と簡単さをアピールした。
カラリオミーについては、今回から7型液晶モニターを搭載してデジタルフォトフレームとしての利用も提案している。「家族みんなで写真を見て、気に入った写真をその場でプリントできる」との使い方の例を示した。
デジタル一眼レフカメラユーザーをメインターゲットとしたプロセレクションシリーズのA2ノビモデル「PX-5002」は、ビビッドマゼンタとビビッドライトマゼンタを採用することで、従来より青や紫が鮮やかに再現できるようになり表現力が大幅に向上したとのこと。
なお、テレビからのプリント機能については、「著作権や肖像権の問題が複雑で、そのままプリントして良いのかという問題がある。まだ、障害が大きい」という。E-800およびE-500に搭載している液晶パネルが、エプソンイメージングデバイス製なのか? との問いには、ノーコメントだった。
遠藤氏は最後に、「ドット抜けや本体のサイズなどインクジェットプリンターが持つ潜在的な問題解決にも真摯に取り組んでいく。インクジェット技術はまだ発展途上。今後さらに向上の余地がある」とインクジェット方式の可能性を説いた。
会場では、参考出品としてインクカートリッジレスのプリンター「EC-01」(エコワン)を展示していた。4色染料でA4対応の単機能機だが、本体のフタ部分に大容量のインク袋を搭載したのが特徴。インク交換無しにA4換算で約8,000枚の印刷が可能。インクが空になるとプリンタ本体ごと回収してインクの充填を行なう。既に中国、台湾、欧州では2年ほど前から販売を行なっている。海外での主なユーザーはプリントラボという。国内では2010年の発売を予定しているが、価格は未定。
EC-01は、インクカートリッジを無くしたことでインク交換の煩雑さが無い点もメリットとしている。また、インクカートリッジがゴミにならないことからエコロジー面でも訴求する。各種メモリーカードスロットも備えている。なお、内部メカの消耗から本体のリユースは2回を上限としている。
■インクジェットでシェア50%以上を確保したい
エプソン販売代表取締役社長の平野清一氏からは、国内の販売戦略についての説明があった。
平野氏によると、2009年上期のインクジェットプリンタ売上は、推定で対前年97.5%になるとした。夏のボーナス商戦が想定ほど伸びなかったという。一方下期は、対前年98.1%を予想。「インクジェットプリンターにおけるトップベンダーの使命として、上期は市場の活性化を図りたい。できれば対前年プラスを狙う」と意欲を見せた。目標シェアについては、インクジェット複合機、コンパクトフォトプリンター、インクジェットプリンターの3カテゴリーで、それぞれ50%以上とした。国内での販売目標台数は240万台としている。
平野氏はPX-5002を、「増加しているデジタル一眼レフカメラのユーザーに向けた製品。プリントは、やっているうちにどんどん大きなサイズで印刷しなくなるもの。そうしたニーズに対応した。エプソンが持つプリント技術の粋を結集した」とアピールした。
なおエプソンでは、10月1日にPX-5002のブロガー向け発表会を開催する。また、参加者には後日PX-5002を貸し出す。当日は、中井精也氏(写真家)のトークセッションも行なう。イベントの詳細は「エプソンプロセレクションブログ」を参照いただきたい。
カラリオミーの新製品「宛名達人E-800」と「同E-600」は、ともに7型液晶モニターを搭載した製品。写真を楽しんでプリントもしてもらう提案で、プリントの潜在需要を掘り起こす。また、年賀状作成だけでなく年間を通して楽しめるとしている。「キーボード付きの製品は、まだまだ認知度が低く伸びしろがある。年間5万台が販売目標だが、必ず達成できると信じている」(平野氏)。
デジタルフォトフレームとプリンターが一体になった製品や、キーボード付きのコンパクトフォトプリンターの市場は、これまで伸びていないが? との質問には、「ブランドを活かして拡販していく。マス広告を強化することで新しいコンセプトを広げていきたい」と答えた。
■CMには役所広司さんと竹内結子さんが出演
会場には、新作CMに出演する役所広司さんと竹内結子さんが登場。トークセッションで写真の楽しみ方を話した。テレビCMは10月3日から順次全国で放映する。
新作CMでは竹内結子さんがカラリオの魅力を紹介し、役所広司さんがプリンターの新たな楽しみ方に創造を巡らせながらを使いこなしていくといった内容。「世界の映画界、映像界に無くてはならない存在のお2人に出演していただくことで、『デジタルライフに無くてはならない存在のカラリオ』というメッセージを伝えたい」(平野氏)。
会場では新作CMも上映した。
2009/9/17 22:47