ニコンD700【第11回】

今さらですが、ピクチャーコントロールをいじってみました

Reported by 北村智史


 基本的にRAW主義者なものだから、作例として撮ったままの画像が必要なとき以外はRAWである。JPEGが必要なときも、RAW+JPEG同時記録で撮っているし、RAW現像もPhotoshop Lightroomを使っている。ということもあって、ピクチャーコントロールをはじめとする画像仕上げ機能はほとんどいじったことがない。

 D700も、ニコンの画づくりの基準だからという理由でスタンダードのまま使っているが、彩度の高い色がベタッと塗ったようになってしまうことがあるのを除けば、それほど悪くない発色だと思っている。で、今までずっと放置してきたわけだ。

 だからまあ、そのままでもいいのだけれど、無視しっぱなしというのもよろしくない気がして、ちょっといじってみようかなと思いはじめた次第である。

 ネットでいろいろ調べてみたら、これがまた一筋縄ではいかないらしい。まず、人によっていうことが全然違う。スタンダードは塗り絵みたいで使い物にならないという人や、ニュートラルのコントラストと彩度の設定をそれぞれ-1にしたのが好みという人がいる一方、ビビッドやランドスケープをべた褒めする人もいる。まるっきり参考にならないんである。

 で、少し慎重に眺めてみると、「PLフィルター常用してます」系の風景がメインのユーザーの多くはスタンダードやビビッド、ランドスケープを状況に合わせて使い分ける傾向があるが、各ピクチャーコントロールは初期設定のまま使っているような印象を受ける。

 同じ風景メインのユーザーでも、PLフィルターはあまり使わない派や女性ポートレートがメインのユーザー、ブツ撮り関係のプロあたりは、ピクチャーコントロールよりも以前の仕上がり設定を好ましく感じる傾向があるようで、ニュートラルをベースに微調整したのを固定的に使っている人が多いようだ(あくまで筆者の印象だだが)。

 とりあえず、スタンダードベースよりもニュートラルベースのほうが筆者的には好みに合いそうな感じがするのと、従来モデルの発色に近づけるにはピクチャーコントロールの明るさの項目を-1にしたほうがいいらしい、というのはわかった。

 が、明るさを-1にすると画面が暗くなるわけだから、その分露出をプラスしてやらないといけない(1/3EVくらいだけど)。となれば、早く白トビが起きることになるはず。だったら、+1にしたほうが白トビを抑えるにはいいのではないかと思ったりもするのだけれど、そんなこと書いている人なんていないところを見ると、やはりセオリーから外れてしまうということなのかもしれない。


ピクチャーコントロールの画面。PORTRAITとLANDSCAPEはオプション項目。カスタマイズ済みをあらわす「*」付きのは輪郭強調を統一したため。

 ややこしいことは考えないことにしよう。当初の目標は、スタンダードのベタ感をどうにかすること。であれば、スタンダードをベースにコントラストや彩度を下げる方向、もしくはニュートラルをベースにコントラストや彩度を上げる方向で考えればいいだろう。なので、スタンダードのコントラスト-2、彩度-2からコントラスト0、彩度0まで、ニュートラルのコントラスト0、彩度0からコントラスト+2、彩度+2までを撮ったのを見比べて、ほどのいいところに決めることにした。

 被写体はカミサン所有のミシン糸の見本帳をグラペの上から貼ったもの。45Wの蛍光灯を直接当てているので、光の質としてはかなり硬い。条件をそろえるために、ニュートラル系のは輪郭強調は+3に統一している。

※共通設定:Ai AF Micro Nikkor 60mm F2.8 D / 4,256×2,832 / 1/5秒 / F11 / 0EV / ISO200 / WB:マニュアル

 

ピクチャーコントロール:スタンダード(コントラスト±0 / 彩度±0)ピクチャーコントロール:ニュートラル(コントラスト±0 / 彩度±0)ピクチャーコントロール:ビビッド(コントラスト±0 / 彩度±0)
ピクチャーコントロール:モノクローム(コントラスト±0 / 彩度±0)ピクチャーコントロール:PORTRAIT(コントラスト±0 / 彩度±0)ピクチャーコントロール:LANDSCAPE(コントラスト±0 / 彩度±0)

 で、わかったのは、赤や黄、緑系の明るめの色ほど彩度の設定の上げ下げの影響を大きく受ける傾向があること。スタンダードのコントラストの設定が0の3コマを見比べると、最上段のピンクやオレンジ、黄色あたりは、彩度の設定が0だと思い切りハデになってしまう。左上のピンク(176番)や、右から2番目のブロックの最上段の黄(23番)近辺のは個人的にはきつすぎに感じる。その一方で、青系の色は彩度の設定の影響がかなり小さい。この傾向はニュートラルでも同じである。

 光が硬いのを差し引いたうえで、割とコントラストは高めが好きなことを考えると、スタンダードの彩度の設定を-1にするか、ニュートラルのコントラストの設定を+1にするかのどちらかでよさそうに思える。この2つは細かい違いはあるものの、全体的な雰囲気としてはかなり近いので、あとはお好みでといった感じ。とりあえず、ニュートラルベース、コントラストの設定だけ+1というのを基本にしてみようかなぁ、と思った次第である。

ニュートラルをベースにコントラストの設定だけ1ステップ上げてみた。これで高彩度な被写体のベタつき感がかなり軽減されるグリッド表示で見たところ。新しくつくったのは「1」の位置。特性的にはスタンダードとニュートラルのあいだあたりといえそう

スタンダード(コントラスト-2 / 彩度-2)スタンダード(コントラスト-2 / 彩度-1)スタンダード(コントラスト-2 / 彩度0)
スタンダード(コントラスト-1 / 彩度-2)スタンダード(コントラスト-1 / 彩度-1)スタンダード(コントラスト-1 / 彩度0)
スタンダード(コントラスト±0 / 彩度-2)スタンダード(コントラスト±0 / 彩度-1)スタンダード(コントラスト±0 / 彩度0)
ニュートラル(コントラスト±0 / 彩度0)ニュートラル(コントラスト±0 / 彩度:+1)ニュートラル(コントラスト±0 / 彩度:+2)
ニュートラル(コントラスト+1 / 彩度0)ニュートラル(コントラスト+1±彩度:+1)ニュートラル(コントラスト+1 / 彩度:+2)
ニュートラル(コントラスト+2 / 彩度:0)ニュートラル(コントラスト+2 / 彩度:+1)ニュートラル(コントラスト+2 / 彩度:+2)

 もうひとつ。Lightroomの設定をどうするかという問題もある。RAW画像をLightroomに取り込むと、同時記録のJPEG画像よりもかなり明るくなるし、彩度も高くなってしまう。カメラだけいじって現像ソフトはそのまんまというのも何だかだなぁだし、こちらも少しいじってみることにする。

 初期設定では「カメラキャリブレーション」パネルの「プロファイル」が「Adobe Standard」になっていて、これを「Camera Neutral」に変えるとピクチャーコントロールのニュートラルに近い再現になる。で、「色表現」パネルの「コントラスト」を初期設定の25から35に上げると、ピクチャーコントロールのコントラストの設定を+1にしたのに近づけられる。ただし、このままだと高彩度部分がベタつく感じがあるので、微調整したほうがよさそうだ。

 全体の彩度を変えずに高彩度な部分の彩度だけを下げたいので、「色表現」パネルの「彩度」を下げて、「自然な彩度」を上げてやる。「彩度」は画面全体にはたらくのに対して、「自然な彩度」は高彩度な部分にはあまり影響しない。地味色は地味なままで、ハデ色だけ抑えることができるわけだ。おおざっぱには「彩度」を-10、「自然な彩度」を+10にすると、まあまあ悪くない感じになる。この設定をプリセットに保存して、読み込み時に適用するようにすれば、撮ったままのJPEG画像に近い再現になってくれる。

Lightroom(プロファイル:Adobe Standard)で現像Lightroom(プロファイル:Camera Neutral)で現像Lightroom(プロファイル:Camera Neutral、彩度-10、自然な彩度+10)で現像

 一応、これで当初の目標はクリアしたことになるわけだが、ちょっとやっぱり地味っぽい発色になっちゃってるかなぁ、という印象。付属のブラウザーソフトViewNXで、ピクチャーコントロールをスタンダードに変更して現像したのと見比べると、被写体の色味にはより近い。それはいいのだけれど、ちょっと地味っぽくてさびしいなぁ、やっぱりスタンダードに戻しちゃおうかなぁ、って感じである。うーん、どうしよう。


AT-X 17mm F3.5 PRO / 4,256×2,832 / 1/500秒 / F5.6 / +0.3EV / ISO200 / WB:晴天 / 17mmAT-X M100 PRO D / 4,256×2,832 / 1/100秒 / F11 / -2EV / ISO200 / WB:晴天 / 100mm
AT-X M100 PRO D / 4,256×2,832 / 1/100秒 / F8 / -1.3EV / ISO400 / WB:晴天 / 100mmAT-X M100 PRO D / 4,256×2,832 / 1/500秒 / F8 / 0EV / ISO400 / WB:晴天 / 100mm
AT-X M100 PRO D / 4,256×2,832 / 1/320秒 / F8 / +0.3EV / ISO400 / WB:晴天 / 100mmAT-X M100 PRO D / 4,256×2,832 / 1/160秒 / F8 / -0.3EV / ISO400 / WB:晴天 / 100mm
AT-X M100 PRO D / 4,256×2,832 / 1/100秒 / F8 / +0.3EV / ISO400 / WB:晴天 / 100mmAT-X M100 PRO D / 4,256×2,832 / 1/160秒 / F5.6 / +0.3EV / ISO400 / WB:晴天 / 100mm
AT-X 17mm F3.5 PRO / 4,256×2,832 / 1/25秒 / F6.3 / 0EV / ISO200 / WB:晴天 / 17mmAT-X 17mm F3.5 PRO / 4,256×2,832 / 1/160秒 / F11 / +0.7EV / ISO200 / WB:晴天 / 17mm
AT-X 17mm F3.5 PRO / 4,256×2,832 / 1/1250秒 / F8 / -1EV / ISO400 / WB:晴天 / 17mmAT-X 17mm F3.5 PRO / 4,256×2,832 / 1/20秒 / F11 / +0.7EV / ISO200 / WB:オート / 17mm
AT-X 17mm F3.5 PRO / 4,256×2,832 / 1/60秒 / F8 / 0EV / ISO200 / WB:オート / 17mmAT-X 17mm F3.5 PRO / 4,256×2,832 / 1/320秒 / F8 / 0EV / ISO200 / WB:晴天 / 17mm


北村智史
北村智史(きたむら さとし)1962年、滋賀県生まれ。国立某大学中退後、上京。某カメラ量販店に勤めるもバブル崩壊でリストラ。道端で途方に暮れているところを某カメラ誌の編集長に拾われ、編集業と並行してメカ記事等の執筆に携わる。1997年からはライター専業。2011年、東京の夏の暑さに負けて涼しい地方に移住。地味に再開したブログはこちら

2010/3/31 00:00