リコーGXR【第2回】

A12ユニットの“AF高速化ファームウェア”を試してみた

Reported by 本誌:折本幸治


 カメラユニットのS10(RICOH LENS S10 24-72mm F2.5-4.4 VC)を紹介した第1回の掲載から、2カ月ほど時間が経ってしまった。その間、惚れ込んだS10を常用しつつも、もうひとつのカメラユニットであるA12(GR LENS A12 50mm F2.5 MACRO)を使いこなせず悩んでいた。

 というのも、コントラスト検出式AFの慎重な動作(遅い、迷う、あきらめる)に身体を合わすことができなかったため。A12のAF速度については、色んなメディアや口コミ情報で喧伝されており、それをもってGXRの購入評価を下げてしまった人もいるだろう。実感としては、屋外での無限遠や5m程度の遠距離だとほぼ問題なく、APS-CサイズセンサーのコントラストAFとして考えると、それなりに実用的な速度に感じる。条件によっては、一部のマイクロフォーサーズ用レンズに遜色ない実力といえるだろう。

 また、フルプレススナップに無限遠を設定しておけば、遠距離の被写体を高速に撮影できるし、Fn1またはFn2にAF/MF切替をアサインしておけば、「AFだと合わないな」という距離のとき、MFに即切り替えることも可能だ(ただしMFは液晶モニターだと輪郭がわかりづらく、近距離の被写体を合わせる自信はいまだなし。画面の中央しか拡大できないのも辛い。現在、使いこなせるよう研究中)。

 問題は1m以内の近距離。特に、30cm以下のマクロ域になると動作が極端に慎重になり、「遅い、迷う、結局合わない」というケースが頻出するようになる。屋内など条件が悪いとなおさらだ。

 もっとも、インナーフォーカスではなく繰り出し式で、しかもコンパクトデジカメよりも被写界深度が薄いAPS-CサイズのセンサーのコントラストAFともなれば、それなりに遅くて慎重な動作になるのは仕方がないだろう。位相差AF式の一眼レフカメラ用マクロレンズであっても、いまだにMFしか利用しないベテランは多いわけで、マクロレンズであるA12をAF速度の面で責めるのは少々お門違いな気がする。ただし最近の一眼レフカメラ用マクロレンズは、超音波モーター化やインナーフォーカス化により、AFでの操作性が飛躍的に高まっているのも事実。あれこれ考えると面倒くさくなり、ボケを強調した作品を意識しないなら、S10の50mm域でもまあ構わないかなと、これまで手を抜いてきたのだ。

 そんな中リコーは、ボディユニットGXR、A12、S10の新ファームウェア(Ver.1.07)を3月18日に公開した。そのうちA12にはセットアップメニューに「AFモード」が追加され、「QK-AF」(高速)と「FR-AF」(低速)が選べるようになった。つまりA12ユーザーが待ち望んだ「AFの高速化」がかなったわけだ。

 ちなみに今回がGXR初のファームウェアアップデート。ボディとカメラユニットを個別にアップデートする必要があるのかと思いきや、1回のアップデート作業でGXRボディとカメラユニットの両方のファームウェアを一変に更新できる。また、同じファームウェアを書き込んだSDHC/SDメモリーカードで、A12とS10のファームウェアバージョンアップが可能。S10の更新が終わった後、カメラユニットをA12に交換すると、そのままA12のファームウェアバージョンアップが可能だった。詳しい内容はリコーのダウンロードページを確認してほしい。

上ボタンを押しながら再生ボタンを長押しすると、ファームウェア更新画面になる自動的にカメラユニットとボディが同時にアップデート。まずはカメラユニット
その後ボディのファームウェアが自動的に更新
AFモードはセットアップメニューの一番下に出現。QK-AFは高速タイプ。FR-AFは従来タイプのAFと思われる

 注目のQK-AFは、AF動作中にモニターの画像の動きを省略することで、高速化を図ったフォーカスモード。シャッターボタンを半押しすると画面がフリーズし、その間レンズの駆動音と振動が続く。その後、何の予告もなくピントがあった状態に画面が変化。何というかレンズが動いた後、測距位置がワープしたような印象を受けるのだ。なおQK-AFはマルチAF、スポットAFとも使用できる。

 もう一方のFR-AFは、画像の動きが停止せず、従来のAFと同じものと考えてよいだろう。QK-AFより合焦速度は遅いが、「フレーム内構図が決めやすくなる」という利点がある。

【動画】従来のVer.1.06でのAF動作。被写体までの距離は30cmほど。逆光で光量の少ない屋内という悪条件だ
【動画】Ver.1.07のQK-AF。突然AFが合った画面になるのでドキッとする
【動画】Ver.1.07のFR-AF。こちらは従来通りの画面の変化

 そもそもQK-AFは急にピントがあった状態に画面が変わるので、体感的にはかなり速くなったように感じる。それを差し引いても、QK-AFは動作可能なほとんどのケースで、従来のAFより速くなったことを実感した。OKボタン長押しで現れる拡大画面も、QK-AF、FR-AFとも利用可能だ。

 ただし30cm以内のマクロ域になると、相変わらず迷っている時間が長く、結果としてQK-AFによる高速化が感じられないときもある。速くなったとはいえ、動きものを追う気になるほど高性能になったわけではないし、マクロ域でさんざん待たされた挙げ句、結局合わせてくれない状況に出くわすのも今まで通りだ。

 また、被写体が暗いときは自動的にFR-AFになるなど、いまだ暫定的な機能という印象も受ける。場合によっては家庭の室内光程度でもFR-AFになってしまうのだ。マクロターゲット機能と併用できないのも残念だ。

 とはいうものの結果として、特にスナップでの利用価値が高まった印象だ。さらなる機能に期待したい。



本誌:折本幸治

2010/3/23 00:48