交換レンズ実写ギャラリー

HD PENTAX-DA 21mm F3.2 AL Limited

周辺部の画質が向上。こだわりの単焦点広角レンズ

K-5 IIs / 1/400秒 / F8 / +0.3EV / ISO640 / 絞り優先AE / WB:CTE / 21mm

 このレンズのベースになった先代smc版の発売は2006年の6月で、DA Limitedシリーズとしては第2弾にあたる。シリーズの先陣を切ったのは40mmで、パンケーキレンズを現代に復活させることを第一義に据えたレンズだった。しかし、テッサータイプのパンケーキというコンセプトは好評を博したものの、40mmという焦点距離はAPS-Cでは望遠寄りの画角になってしまい、軽快なスナップに適した準広角レンズという本来の性格に沿ったものとはなり得なかった。

 おそらく、40mmを発売すれば、結果としてより広角のリミテッドを待望する声が起こることは、開発陣も先刻承知だったはずだ。21mmという焦点距離をDA Limitedのラインナップに加えることは、当初からロードマップに組込まれていたのだろう。

PENTAX K-5 IIsに装着したところ。発売はブラックが9月20日、シルバーが10月25日。実勢価格は5万9,800円前後。

 新しいHD DA21mm Limitedのサイズは、最大径63mm×長さ25mm、重さ134g。小さすぎてカメラバッグの中では少し収まりが悪いほどだが、付属のポーチにいれて普段使いのバッグに忍ばせておくにはむしろ丁度いい大きさだ。

 最短撮影距離0.2m、最小絞りF22などのスペックと同じく、基本的にはsmc版と変わりない。光学系は一眼レフ用21mmレンズとしては当然のレトロフォーカスタイプだが、非常にコンパクトにまとめられ、これをパンケーキレンズと呼んだとしても、その言葉のイメージを損なうことはないだろう。

 開放F値は控えめだが、高感度画質が向上した最新のペンタックス機との組み合せならば、F3.2で不足を感じることはないはずだ。35mm判換算の焦点距離は32mmにあたり、これ1本で“ぶらパチ”を決め込むにも無理のない、使いやすい画角のレンズだ。

 鏡筒をはじめとする機械系の基本デザインや光学系の設計はsmc版を踏襲している。コンケーブ形状の角形フードはデザイン上の特徴であるとともに、迷光をカットする機能も申し分無い。フィルターアタッチメントは鏡筒先端の49mmと、フードの内側に独立した43mmの2つを備えている。

 5群8枚の光学系の最後尾の凸レンズにハイブリッド非球面を採用するほか、近接撮影時の収差増大を抑制するフローティング機構も備えている。絞りは7枚の奇数羽で、F3.2~F4で円形絞りとなる。クイックシフトフォーカスや前玉最前面のSPコーティングなどは DA Limitedシリーズ共通の仕様として備え、写真機としての質感や操作性は高い。

 実写に先立ち行なったタイル壁による簡易テストでは、四隅以外は開放から優秀な解像力を見せてくれた。F4まで絞れば画面全域でシャープネスに不満はなく、そこから絞り込んでいった時の性能向上は、F8辺りを最高として、F11はそれに遜色ないが、F16では回折の影響で少し劣化する。F22も実用には問題なく、必要ならそこまで絞り込んでもいいだろう。

 歪曲収差は大きめで単焦点レンズとしては少し目立つ。陣笠型の傾向を示し、補正にはカメラの収差補正機能を使うか、あるいは対応した収差補正モジュールを持つ画像処理ソフトが必要になる。テスト条件にあたる2mくらいの撮影距離では、歪曲補正機能を使うと過剰補正になり軽い糸巻型に転んでしまうのはご愛嬌。おそらく補正の基準が無限遠での歪曲なのだろう。基準を合焦距離5mあたりに置いて補正テーブルを作り直せば、実際の使用条件によりよくマッチするように思われた。

 倍率色収差はほとんど気にならず、実写テストでも、レビュアーとして指摘しなければならないような問題は認められなかった。

 言うまでもなく今回のリニューアルの目玉は円形絞りとHDコーティングの採用であり、期待されるのは当然ボケ味と逆光性能の向上だろう。もちろんその効果は素晴らしかったが、それ以上に驚いたのは、この21mmの場合はそれ以外の要素として、周辺部の描写、特に解像力が向上していることだ

 最初、自分の勘違いか、あるいは私が使っていた手元のsmc版21mm Limitedに不具合があったのではないかとも考えたが、smc版とHD版を比較した経験のある何人かに聞いてみたところ、同様に「驚いた」というコメントがあったので、あながち私の気のせいとばかりはいえないようだ。実際にsmc版と比較して優れているのかという結論は、実写をご覧の上で多くの方のご判断を仰ぐしかないが、この新しいHD DA 21mm Limitedが、常用広角レンズとして一流の性能を持つものであることは確かなようだ。

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K-5 IIs / 1/500秒 / F9 / -0.3EV / ISO640 / 絞り優先AE / WB:CTE / 21mm
K-5 IIs / 1/60秒 / F16 / +0.3EV / ISO500 / 絞り優先AE / WB:太陽光 / 21mm
K-5 IIs / 1/50秒 / F11 / 0EV / ISO800 / 絞り優先AE / WB:オート / 21mm
K-5 IIs / 1/400秒 / F6.3 / 0EV / ISO1000 / 絞り優先AE / WB:オート / 21mm
K-5 IIs / 1/320秒 / F11 / -1EV / ISO500 / 絞り優先AE / WB:CTE / 21mm
K-5 IIs / 1/320秒 / F11 / 0EV / ISO500 / 絞り優先AE / WB:CTE / 21mm
K-5 IIs / 1/320秒 / F9 / +0.3EV / ISO500 / 絞り優先AE / WB:CTE / 21mm
K-5 IIs / 1/320秒 / F11 / 0EV / ISO640 / 絞り優先AE / WB:CTE / 21mm
K-5 IIs / 1/60秒 / F16 / -0.7EV / ISO640 / 絞り優先AE / WB:CTE / 21mm
K-5 IIs / 1/1,250秒 / F9 / 0EV / ISO500 / 絞り優先AE / WB:CTE / 21mm
K-5 IIs / 1/640秒 / F5.6 / 0EV / ISO1250 / 絞り優先AE / WB:CTE / 21mm
K-5 IIs / 1/2,000秒 / F10 / +0.3EV / ISO800 / 絞り優先AE / WB:CTE / 21mm
K-5 IIs / 1/800秒 / F10 / -0.7EV / ISO500 / 絞り優先AE / WB:CTE / 21mm
K-5 IIs / 1/2,000秒 / F7 / -0.7EV / ISO500 / 絞り優先AE / WB:CTE / 21mm
K-5 IIs / 1/200秒 / F11 / -0.3EV / ISO200 / 絞り優先AE / WB:CTE / 21mm
K-5 IIs / 1/640秒 / F8 / +0.3EV / ISO640 / 絞り優先AE / WB:CTE / 21mm
K-5 IIs / 1/80秒 / F8 / -0.3EV / ISO500 / 絞り優先AE / WB:太陽光 / 21mm
K-5 IIs / 1/60秒 / F11 / +0.3EV / ISO500 / 絞り優先AE / WB:太陽光 / 21mm
K-5 IIs / 1/1,000秒 / F10 / +0.7EV / ISO640 / 絞り優先AE / WB:CTE / 21mm

大高隆

1964年東京生まれ。美大をでた後、メディアアート/サブカル系から、果ては堅い背広のおじさんまで広くカバーする職業写真屋となる。最近は、1000年存続した村の力の源を研究する「千年村」運動に随行写真家として加わり、動画などもこなす。日本生活学会、日本荒れ地学会正会員

http://dannnao.net/